公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

矢板明夫の記事一覧

産経新聞台北支局長 矢板明夫    「スパイ行為」を行ったとして今年3月に北京で中国当局に拘束された日本の大手製薬会社の50代の男性幹部が今月中旬、正式に逮捕された。これから起訴され、非公開の裁判が行われるとみられるが、有罪判決が下される可能性が極めて高い。  この幹部は北京に20年以上駐在した経験があり、中国の貧しい地域に定期的に薬品を寄付するなど、思いやりのある人物だ。筆者...

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産経新聞台北支局長 矢板明夫    3月11日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、香港の選挙制度の見直しに関する決定案を採択したことが注目された。香港の民主派を議会から排除することは昨年来の既定方針であり、全人代を10年以上取材してきた筆者にとって、特に驚きはなかった。しかし、王毅・国務委員兼外相が記者会見で習近平国家主席に公然と忠誠心を誓う光景は異様に感じ...

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 台湾の駐米大使に相当する蕭美琴・駐米台北経済文化代表処代表は1月29日、米国のシンクタンク「外交政策研究所」(FPRI)などが主催したオンラインシンポジウムに出席し、バイデン政権下の米台関係について「良いスタートを切った」と強調した。 中国と対決姿勢を貫いたトランプ前政権と「史上最も良好な米台関係」を築いたとされる台湾の蔡英文政権だが、1月20日に発足したバイデン政権と引き続き良い関係を構...

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産経新聞台北支局長 矢板明夫    米民主党のバイデン前副大統領が7日、大統領選挙の勝利宣言を行った。「開票に不正があった」と主張するトランプ大統領(共和)との法廷闘争を控え、米国の混乱はしばらく続きそうだが、中国の習近平国家主席はバイデン氏の当選確実に胸をなで下ろしているに違いない。トランプ政権との約2年にわたる対立で、習政権は内政、外交ともに大きなダメージを受け、中国の外交関...

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産経新聞台北支局長 矢板明夫    台湾の蔡英文総統は10月31日、国防部長(国防相)や外交部長(外相)ら政権の主要幹部が出席する「国家安全会議」を開き、台湾海峡で軍事的緊張が高まっていることについて「様々な事態を想定して、万全な準備を行うよう」と指示した。  中国軍は今年夏以降、台湾海峡周辺で軍事演習を何度も実施しただけではなく、軍用機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に頻繁に侵...

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産経新聞台北支局長 矢板明夫    中国・武漢発の新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。3月末現在、イタリアの死者は既に1万人を超えた。米国では1日に2万人のペースで感染者が増えている。しかし、不思議なことに、感染が最初に起き、拡大した中国では、新たな感染者が少なく、感染した人々も「9割以上が完治した」と政府が発表している。  日本のメディアの中には、対策で成功した中...

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産経新聞外信部次長 矢板明夫    中国の中南部・武漢発の新型コロナウイルス肺炎が猛威を振るっている。中国国内で感染が拡大し、複数の都市が実質封鎖され、交通網がストップされるなど、市民の生活は大きな影響を受けている。感染は周辺国にも及び、日本なども被害を受けている。  本来ならば、肺炎対策に全力を挙げなければならない中国の習近平政権だが、「人命より国家の体面」を重視し、「一つの...

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産経新聞外信部次長 矢板明夫    中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第4回総会(4中総会)が10月31日に閉幕した。内政外交などについて今後の課題や施政方針などを盛り込んだ約6000字のコミュニケが発表された。  「国家統治体系の能力の現代化を目指す」などの意味不明な言葉が羅列されたほか、「香港で一国二制度を堅持」や「台湾独立に反対」といった中国政府の持論も展開された。...

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 香港で「逃亡犯条例」改正案を機に起こったデモが6月から拡大し、世界中の関心を集めている。デモの当初は、条例案の撤回のみを求めていたが、その後、「行政長官の辞任」や「直接選挙の導入」などの要求に変わり、「香港を取り戻す、革命の時代だ」が合い言葉となった。これまでの中国支配に対する香港市民の不満が一気に噴出し、自由と民主主義を求めるデモとなった。  香港の林鄭月娥行政長官が9月4日、条例案の撤回を...

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 本部がフランスにある国際刑事警察機構(ICPO)の中国人総裁だった孟宏偉氏が一時帰国中に失踪し、中国公安省が10月8日に「汚職で調べている」と拘束を認めた。これに対し、孟氏の妻は欧米メディアなどに対し、「夫はえん罪だ」と訴え続けている。  ●背景に権力闘争、亡命阻止か  孟氏の出身母体は中国公安省だが、拘束された本当の理由はあきらかではない。ただ少なくとも、中国当局が発表した「汚職」では...

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産経新聞外信部次長 矢板明夫    中国北東部にある避暑地、河北省秦皇島市の北戴河で8月初めから、習近平国家主席ら共産党最高指導部と党内実力者の江沢民、胡錦濤両氏ら長老による重要会議が開かれている。15日前後まで続くとみられる。  関係者によれば、会議で長老から習指導部の外交、経済政策を批判する意見が多数出た。中には、習氏の強引な対外拡張路線や、習政権が掲げる民族主義をあおる政...

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産経新聞外信部次長 矢板明夫    中国の遼寧省と浙江省の裁判所は7月に入って、2015年にスパイ容疑で拘束された日本人2人にそれぞれ懲役12年と5年の厳しい判決を下した。李克強中国首相の5月の訪日以降、日中関係が回復基調にある中、外交交渉で釈放されることを期待していた家族にはショックだったに違いない。  2人が拘束された時、新聞社特派員として北京に駐在していた筆者は、事件につ...

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産経新聞外信部次長 矢板明夫    1913年10月に中華民国の大総統に就任した袁世凱は、自身の権力強化を図るため、皇帝になりたいと考え始めた。その意向を周辺に漏らすると、官製メディアはすぐに「中国には皇帝が必要だ」という世論作りを開始した。全国各地から「袁の即位」を求める陳情団が北京に殺到。1915年12月、参政院(国会)が満場一致で袁を皇帝に推戴したことを受け、袁は191...

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 米国のトランプ大統領が11月8日から10日にかけて中国を初めて訪れた。習近平国家主席と米中首脳会談を行い、北朝鮮、金融、南シナ海、台湾などの諸問題について意見を交わした。双方とも「大きな成果があった」としているが、メディアで報じられた内容を見る限り、実質的な進展はなく、交渉は中国のペースで進められた。トランプ氏はむしろ中国にしてやられた感がある。  ●28兆円で批判封じた中国  トランプ...

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 第19回中国共産党大会とその後の一中総会は10月25日に閉幕し、2期目の習近平政権が発足した。一連の会議で、注目すべきポイントは3つあると考える。①後継者のいない新指導部人事 ②〝習近平思想〟の党規約入り ③鄧小平が主導した「富国路線」から「強兵路線」への方向転換―である。  まずは人事。選出された新しい最高指導部の7人はいずれも60代。ポスト習近平世代の50代は1人もいない。習近平氏の後継者...

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産経新聞外信部次長 矢板明夫    中国で温泉探査などの地質調査を行うために3月に訪中した千葉県の地質調査会社の社員ら日本人男性6人が、スパイ容疑などで中国治安当局に拘束されたことが明らかになった。2015年以降、中国で「国家安全危害罪」などで拘束された日本人は計11人になった。異常な状態である。  拘束された日本人の中には、中小企業の会社員、日本語教師、パチンコ店のアルバイト...

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 長年中国の庇護下にいた北朝鮮の金正男氏がマレーシアの空港で殺害されてから2週間が過ぎた。北朝鮮の工作員らが暗殺を主導したことが地元警察の調べで明らかになった。全容はまだ解明出来ていないが、常識的に考えれば、正男氏の異母弟、金正恩氏が指示したことはほぼ断定できる。古今東西繰り返されてきた独裁者一家の骨肉の争いが再現された形だが、メンツをつぶされた中国の反応が注目された。  事件直後、中国が北朝鮮...

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 日本のホテルチェーンのアパホテルが「南京大虐殺」や「慰安婦強制連行」などを 否定する書籍を客室に備えているとして、中国当局が猛反発している。1月中旬から中国外務省の報道官が定例記者会見で3回もアパホテルを批判したほか、24日には、国家観光局が中国国内のすべての旅行会社に対し、アパホテルとの業務提携の中止を命じ、訪日の中国人観光客にも「アパホテルを利用しないよう」と呼びかけた。  ●過剰反応...

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