公益財団法人 国家基本問題研究所
http://jinf.jp/

今週の直言

田久保忠衛の記事一覧

国基研副理事長 田久保忠衛    日本のメディアも米英のメディアも一刀両断というわけにはいかないのだろう。戦後72年に及んだ国際秩序の枠組みをトランプ米新大統領はガラリと変えようとしているのに対して、トランプ政権内部には従来通りの思考で外交を続けようとする閣僚が少なくないのだから。  しかし、トランプ大統領は就任演説で、米国が戦後果たしてきた世界における指導的役割を、外国の...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    2016年最大のニュースは「トランプ現象」だったと思う。戦後71年間の米国史における異常な変化で、これが国際政治、外交、経済、軍事、情報、技術などの分野にどのような影響を及ぼしていくだろうか。  ●「絶対的衰退」への懸念  冷戦終焉の少し前に、米エール大学歴史学教授のポール・M・ケネディが「大国の興亡」を書いて世界的なベストセラーにな...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    いささか早とちりになるかもしれないが、米大統領選挙後の国際情勢は、恐らく戦後最大の混乱期に突入するだろうと予想する。  ●期待できない米のリーダーシップ  一つは、ウソ、信頼の裏切り、秘密の暴露など個人が持つ非道徳性を洗いざらいに出し合った2人の大統領候補の1人がホワイトハウス入りするのだ。新大統領は自分の党すらまとめられない上に、民...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    自民党の事情に詳しいとされる産経新聞の阿比留瑠比論説委員兼政治部編集委員が10月27日付の同紙に「悲願の改憲なぜ論議進まぬ」を書いているのを読んで、「やはり」と合点した。  いわゆる改憲勢力が衆参両院で憲法改正の発議に必要な3分の2を超えたにもかかわらず、安倍晋三首相をはじめ自民党がさっぱり腰を上げようとしない。その理由は、年末にも衆院解散...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    7月10日投開票の参院選で、自民、公明両党などいわゆる改憲勢力が非改選議員を含めて憲法改正発議要件である総議席の3分の2を上回る議席を確保したから、与党の大勝と称しても間違いないのだが、それにしても奇妙な選挙だった。かねて改憲論者だった安倍晋三首相は「改憲を争点にしない」と消極的発言を繰り返し、対照的に野党民進党の岡田克也代表は目を三角にして...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    英国の欧州連合(EU)離脱の是非について、国際情勢の客観的分析者であれば価値判断を軽率に下すべきではないと考える。離脱に票を入れた52%の英国人は愚鈍な人たちなのだろうか。良い悪いは別にして、国際秩序はこのような形でいつの間にか新しい局面を迎えるものだと私は見ている。  ●民主主義国に共通する国民の不満  注目すべき点の第一は、第2次...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    5月20日に台湾民進党の蔡英文主席は第14代総統に就任した。台湾史上初の女性総統が中国に接近していた国民党の馬英九前政権に比べてどのような方向性を打ち出すのかに関心を抱いていた私は、「自然体」と言っていい淡々とした就任演説にホッとした。    ●台湾新総統の就任演説  就任演説は理路整然さを要請される学会での報告ではない。台湾にいるのは...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    1月12日から台湾を訪問して17日夜に帰国し、日本の報道ぶりを一覧したが、朝日新聞の台北支局長が一面に書いていた「高まる台湾人意識」と題する豆解説は光っていた。民進党の蔡英文主席が16日の総統選挙に勝って、詰めかけた夥(おびただ)しい人々を前に演説をした場面を目にした者でなければ分からない。蔡主席は「ナショナル・アイデンティティー」という言葉...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    今年から来年にかけての世界の大問題は何か。残念ながら、東シナ海でも南シナ海でもない。国家ではない国際テロ組織またはその同調者が主権国家群を振り回している人類史上初めての現象だ。米国、ロシア、フランス、英国などの主要国はイラクとシリアにまたがる「イスラム国」(IS)の拠点を連日猛爆しているが、今年パリ(2回)と米カリフォルニア州サンバーナディー...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    日本人に国際情勢の分析で大局観に欠ける傾向があるのは、戦後も変わらない。だからこそ安倍晋三首相は機会あるごとに「地球を俯瞰する外交」を口にしているのだろう。  今の国際社会におけるトラブルはオバマ米大統領の不作為に原因があると断定しておこう。それがシリアの内戦につながり、「イスラム国」(IS)を生んだ。弱腰のオバマ政権はイラクに軍事顧問を送...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    点で観(み)るよりは、点を結ぶ線で判断する方が公平だろう。国家安全保障会議の設置、新防衛大綱の策定、集団的自衛権の行使容認などを盛り込んだいわゆる安保法制懇の報告書の受領、限定的ながら集団的自衛権行使を容認した閣議決定、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改訂、それに今回の安全保障関連法の制定という一連の動きを眺めてくると、安倍晋三首相...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    日本のジャーナリズムもこれほど薄っぺらになってしまったのか、との印象を持った。50周年談話(村山談話)や60周年談話(小泉談話)にあった「侵略」、「植民地支配」、「反省」、「謝罪」などのキーワードが安倍談話に盛り込まれているかどうかをめぐって大騒ぎを演じた。同じ言葉を使っても語調、文体は筆者の気持を表していて、書き様によっては意味が大きく違っ...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛      日本の学会、シンクタンク、新聞社などのマスメディアで専門家が尊重されるのは大いに結構だが、地域や国家を中心に深い研究を進めるうちに前後左右の見配りが不足してきたのではないかと思われる例が少なくない。中国が南シナ海に人工島をつくっているとなると「南シナ海」ブームがわき、東シナ海にプラットホームを構築したとのニュースが伝わると「東シナ海」騒ぎが発生...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛      日本では同意してくれる人は多くないと覚悟しているが、戦略的要衝である紅海の出入り口に位置するイエメンにサウジアラビアが攻撃を加え、アラブ連盟11カ国がサウジ支援態勢を固めたニュースは、この上なく大きいと思う。イスラム教スンニ派のサウジが敵視しているイエメンの組織はイランが背景にいるシーア派武装勢力「フーシ」で、中東においてイランとサウジの代理戦...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛      1977年に発生した日本赤軍の日航機ハイジャック事件で、福田赳夫首相は「人命は地球より重い」との迷台詞をはいて600万ドルを支払ったうえに、犯人たちを国際社会に放ってしまった。イスラム過激派組織の「イスラム国」とみられるグループが日本人二人を人質に取った事件はいま進行中だが、「人命第一」を唱える日本中の大合唱は四十年前の状況と全く変わっていない...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    国際情勢の1年間の推移を回顧するに当たって、勝海舟が述べた「着眼大局、着手小局」(物事を大局的に見て、小さなことから着手する)がいかに大切かを改めて痛感している。12月25日に国家基本問題研究所は米国、中国、インドの戦略家を招いて「戦後70年―国際政治の地殻変動にどう対処するか」をテーマに久しぶりの国際シンポジウムを開催した。中国の国際政治学者が直前...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    2001年の米同時多発テロに際して、当時のブッシュ大統領がアフガニスタン、イラクへの戦いを広げたのは完全に失敗だったとの俗説が米国内でも日本国内でも定着した感があったが、どうも最近の中東情勢を見ていると、その評価は逆転し、ブッシュ政権は正しかったのではないかとの評価がよみがえってきたような印象を受ける。  確かにブッシュ政権は巨額の戦費を費やし...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛     政治、軍事、経済など諸々の要素が絡む国際情勢の分析は、短期、中期、長期の時間的要素も入り込むので、難しい。中国の習近平国家主席が国家元首として北朝鮮よりも先に7月3日に韓国を訪問した。米中両国は9、10の両日、北京で閣僚級の戦略・経済対話を行った。時を同じくして、安倍晋三首相はニュージーランド、オーストラリア、パプアニューギニアを訪れた。アジア...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    日本のマスメディアは、5月20、21の両日上海で開かれた「アジア相互協力信頼醸成会議」(CICA)で主役を務めた中国の習近平国家主席に焦点を当てていたが、実はロシアのプーチン大統領こそ中国との「政略結婚」に成功して会心の笑みを浮かべているのではないか。  ロイター通信社の著名なコラムニストであるアナトール・カレツキー氏は5月23日付のインタ...

続きを読む

国基研副理事長 田久保忠衛    日本のマスメディアは盛んに「オバマ訪日」が成功したがどうかを論じているが、二国間関係だけで国際問題を論じる視野狭窄症はもういい加減に改めないといけない。  オバマ米大統領は、中国と領土問題を抱える日本、韓国、マレーシア、フィリピンの4カ国を訪れたのであり、その目的は、シリアやウクライナの問題にかまけて怠っているとみられていたアジアに対するリ...

続きを読む