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国家基本問題研究所

政治家が国家ビジョンをまず示せ 会員 児玉朗

政治家が国家ビジョンをまず示せ 会員 児玉朗

 TPP参加問題にしても原子力の電力利用の是非にしても、そこに横たわっている真の問題は、共に我が国の10年後、50年後の姿を政治家が国民に提示していないため、政官財のそれぞれの立場の人が、今までの既得権益の延長線上で各々論じていることに由る。
 日本の失業率,非正規雇用者数および年金受給者数などの数値が右肩上がりの現状をみれば、従前と同じ発想では国を維持できないことは誰がみても明白であり、その破綻を回避し、安全・安心で信頼できる国づくりへの舵取りを行うのは政治家の責務である。
 まず大所高所から日本のあるべき姿を政治家が述べることが必須である。そして、その下位の政策レベルにあるTPP参加や原子力政策,はたまた増税論の必要性を説くのが筋で、国政を担う今の政治家には具体的な国家ビジョンが完全に欠落している。
国基研の提言を全否定するものではないが、政治家の国家構想なくして末節論から入っていくのは甚だ危険と感じる。つまり「幹」があれば「末節」が間違っても「幹」まで戻れるが、「幹」がなければ全て拡散分裂するだけである。
 民主党政権は国家観を待たない,あるいは間違った国家観を持った政権であるので、様々な政策を施しても進捗が悪いか、国を貶める方向へ逆利用されるだけと危惧する。まともな政治家による体制を確立してからTPP参加を行うようにしたらどうかと進言したい。


TPPへの疑問点に答えます 山下一仁キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

TPP(環太平洋連携構想)については、国基研にもさまざまな疑問が寄せられました。平成23年10月にTPP推進の立場から報告書をまとめたキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹に、回答してもらいました。

 

 

1、TPPは国を売り飛ばす?
【疑問】TPPは日本の社会秩序を変え、国柄を変えてしまう危険な内容を含んでいます。TPPは日本にとって亡国協定となる恐れが大きいのです。TPPは金融、投資など24分野にわたって関税を撤廃しようとするもので、こんなものに参加すれば日本は関税自主権を失い、米国の餌食になって、その揚げ句、誇るべき伝統や文化までもが破壊され尽くされてしまうでしょう。国を売り飛ばすようなTPPをなぜ推進するのか、理解できません。

【答え】
  工業製品や農産物などの物品については、貿易を制限するために関税が課されています。貿易の自由化とは、関税の削減・撤廃を意味します。これまで我が国が結んできた自由貿易協定では、多数の農産物を関税撤廃の例外としてきました。これに対して、TPP交渉では、例外なき関税の撤廃が目指されています。しかし、例えば農産物の関税が撤廃され、農産物価格が下がっても、アメリカや欧州連合(EU)が行っているように、農家に直接支払いの補助金を交付すれば、農家は困りません。困るのは、農産物価格に応じて手数料収入を得ている農協なのです。「TPPと農業問題」というとらえ方は正確ではありません。正しくは、「TPPと農協問題」です。
  金融などのサービスについては、関税はそもそもありません。サービス分野の交渉では、各国の国内規制を前提として、例えばスイスに与えると同じ待遇をインドにも与えるという最恵国待遇の原則や、国内の事業者と外国の事業者を同一に扱うという内外無差別の原則をどこまで認めるかが、交渉の対象となります。サービス交渉で自由化とはこのことです。従って、自由化の約束とは、規制の撤廃を意味するものではなく、各国が自由に国内規制を作成、実施することを妨げるものではありません。つまり、これによって今の日本の医療制度や伝統文化についての規制が変更されるものではないのです。さらに、物品の関税と違って、サービス分野の自由化には例外が認められます。
投資についても、関税はありません。外国に投資を行う場合、①技術情報の開示を求められる、②その国の企業が製造した部品の購入を要求される、③投資収益を日本に送金できない―などの規制が課されることがあります。TPPなどの交渉は、こうした規制を取り除こうとするものです。我が国にはこのような規制はありません。TPPに参加することによって、我が国には不利益はなく、日本企業の海外への投資が自由に行われ、また、保護されるという利益を受けることになります。
  「関税自主権」に一言しておきます。確かに一部農産物については高い関税が残っていますが、それを除けば日本の関税はおおむね数%かゼロとなっています。しかも、農産物についての高い関税も含めて、世界貿易機関(WTO)にこれ以上あげることはしませんと約束しています。花や自動車については関税ゼロで約束していますから、関税をもはや課することはできません。これは、日本だけでなく、WTOに参加している国なら皆同じです。今やWTO未加盟国を除き、関税自主権を持っている国はないのです。

 

2、ISDS条項は危険?
【疑問】TPPには、外国企業が投資先の国を訴えることのできるISDS条項と、「TPP交渉で決まったことは修正不可能」という恐るべきラチェット条項があるのです。ISDS条項によると、企業は投資先の国の制度や政策によって不利益を被ったと思った場合、仲裁機関に訴えることができます。裁定基準は「企業が損害を被ったか」という一点だけです。これは米国寄りの無茶苦茶な制度です。国が負ければ巨額の賠償金を払うか、制度を変えるしかないのです。日本がTPPに参加して、米国企業が「日本の国民皆保険はわれわれのビジネスの障害だ」とか「遺伝子組み換え食品を受け入れろ」と訴えれば、日本は負けます。米国の狙いは、ISDS条項をねじ込んで米国企業が訴訟のテクニックを駆使して儲けることです。

【答え】
  ISDS(Investor‐State Dispute Settlement)条項とは、投資家が投資先の国家の政策によって被害を受けた場合に、その国家を第三者である仲裁裁判所に訴えることができるというものです。国有化に見られるような直接的な財産権の没収、収用の場合だけではなく、規制の導入や変更によって収用と同じような被害を受ける場合や、投資家の期待した利益が損なわれるような場合についても訴訟の対象とされるので、日本政府が外国企業から訴えられるのではないかという批判がされています。
しかし、単に投資家が損害を被ったというだけで、訴えることができるというものではありません。規制の変更などによって国有化に匹敵する「相当な略奪行為」があるような場合や、国内の企業に比べて外国の企業を不当に差別するような場合でなければ、ISDS条項の対象とはなりません。
  ISDS条項については、アメリカ、カナダ、メキシコが参加する北米自由貿易協定(NAFTA)のISDS条項を使って、カナダやメキシコの環境規制がアメリカの企業に訴えられたことから、環境団体が問題だと主張するようになったものです。しかし、問題となった事件は、カナダがガソリン添加物の規制を導入することによってアメリカの燃料メーカーが操業停止に追い込まれたために起きたものでした。ガソリン添加物の使用や国内生産は禁止しないのに、州をまたいだ流通や外国からの輸入については規制し、外国企業に一方的に負担を課すものでした。これは、ISDS条項の問題ではなく、訴えられた国の政策が明らかにおかしいものでした。
  また、仲裁裁判所の一つはアメリカ人が総裁をしている世界銀行の下に設けられているので、アメリカに有利な判断が下されるという主張がありますが、これは根拠のない主張です。世銀は仲裁判断に一切関与しません。また、NAFTA成立後20年近い間でアメリカ企業がカナダ政府を訴えたのは16件ですが、アメリカ企業が勝ったのは2件で、5件で負けています。
  外国企業のみを狙い撃ちするような不当な措置でなければ、医療政策、環境規制や食品の安全性・表示規制なども、問題とされることはありません。しかも、仲裁裁判所では金銭による賠償を命じるだけで、規制の変更が命じられることはありません。
  既に日本がタイや中国などと結んだ24の協定にもISDS条項は存在します。日本企業がタイを訴えるのは良くて、アメリカ企業が日本を訴えるのは問題だというのは奇妙な論理です。
  どの協定にも同じISDS条項があるのではありません。日本が懸念を持つ事項があれば、それを解消できる規定とするよう交渉することが可能です。アメリカもISDS条項に限定を加えてきています。他方、訴えられることばかり心配されますが、日本の投資家が海外で不利な扱いを受けないようにするためには、ISDSは実は必要な規定なのです。
  なお、米韓のFTAにラチェット規定があるので問題だという批判があるようです。これは、現状の規制水準を緩和したらもとの規制に戻さないという約束規定です。しかし、投資や一部のサービス(国境間のサービスおよび金融)について、米韓FTAで定めた原則に対して例外を設けた措置に限られるものです。しかも、例外措置にも、ラチェット規定が適用されない措置も存在します。ラチェット規定があるために、BSEについて、いったんアメリカ産牛肉の輸入条件を緩和すれば、元の規制に戻せないという主張がなされましたが、SPS(衛生植物検疫措置)は投資やサービスではありませんので、そもそもラチェット規定は適用されません。

 

3、農業とコメは壊滅?
【疑問】TPPに参加すれば、日本の農業は回復不能の打撃を受け、壊滅します。日本のコメは米国のコメよりずっとおいしいから、高くても購入したい人はいるので、勝ち残るチャンスはいくらでもあるといった考え方は安易です。カリフォルニア米と日本のコメを比べると、味は五分五分、あとは値段のみの勝負となります。

【答え】
  日本農業はアメリカやオーストラリアに比べて規模が小さいので、コストが高くなり競争できないという主張がなされています。農家一戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、EU9、アメリカ100、オーストラリア1902です。
  規模が拡大すれば、コストが下がることは事実です。しかし、この議論は、各国が作っている作物、単収(単位面積当たりの収穫量)、品質の違いを無視しています。この主張が正しいのであれば、世界最大の農産物輸出国アメリカもオーストラリアの19分の1なので、競争できないはずです。これは、各国が作っている作物の違いを無視しているのです。アメリカは大豆やトウモロコシが主体で、オーストラリアは牧草による畜産が主体です。米作主体の日本農業と比較するのは妥当ではありません。
  同じ作物でも単収に大きな格差があります。オーストラリアの農場規模は大きいのですが、小麦の単収はイギリスの5分の1しかありません。土地生産性はサハラ以南並みで世界で最も低いのです。
  米にはジャポニカ米(短粒米)、インディカ米(長粒米)の区別があるほか、同じジャポニカ米でも、品質に大きな差があります。日本国内でも、新潟県魚沼産のコシヒカリには、他の産地がどれだけ頑張っても勝てません。世界で日本のコメに匹敵するような品質のものが作れるという主張があります。それなら、日本の他の地域でも魚沼産と同じおいしさのコメが作られているはずです。農産物については、気候風土が違うので、同じ品質のものは作れないのです。同じフランス・ワインでも、ボルドーとブルゴーニュは違います。
国際市場でも、日本米は最も高い評価を受けています。現在、香港でのコシヒカリの価格は、日本産がカリフォルニア産の1.6倍、中国産の2.5倍となっています。私もアメリカで長年カリフォルニア米を食べていました。炊き立てはまずまずですが、少し冷めると食味は落ちてしまいます。品質の劣る海外の米と日本米の価格を比較することは、ベンツのような高級車と軽自動車を比べるようなものです。高級車は軽自動車のコストでは生産できません。
  日本米と中国米やカリフォルニア米と比べた内外価格差は、30%程度へ縮小しています。農水省はコメの内外価格差が4倍もあるので、コメは壊滅すると主張しましたが、これは現在の国産米価格と10年前の中国米の価格を比べたものです。仮に輸入によって国内価格が低下したとしても、低下分を財政で直接支払いすれば、関税撤廃によっても影響は生じません。そもそもTPPの下では、高い関税も10年かけてなくしていけばよいのです。規模拡大、品種改良等による単収向上で、競争力を強化する十分な時間があります。
  日本では1970年に生産を制限する減反を開始して以来、単収向上のための品種改良は行われなくなりました。今では飛行機から種まきしている粗放的なカリフォルニアの単収のほうが日本を4割も上回っています。単収がカリフォルニア並みになれば、大規模農家の米生産費6000円(60キロ当たり)は4300円に下がり、日本に輸入されている中国、カリフォルニア産の米価の半分以下となります。規模拡大と単収の増加によってコストをさらに低下できれば、米産業を輸出産業に転換できるのです。
  米の生産は1994年の1200万トンから減少し、2012年度の生産目標数量はとうとう800万トンを切ってしまいました。これまで高い関税で守ってきた国内の市場は、今後高齢化と人口減少でさらに縮小します。日本農業を維持、振興しようとすると、輸出により海外市場を開拓せざるを得ないのです。しかし、国内農業がいくらコスト削減に努力しても、輸出しようとする相手国の関税が高ければ輸出できません。貿易相手国の関税を撤廃し輸出をより容易にするTPPなどの貿易自由化交渉に積極的に対応しなければ、日本農業は衰退するしか道がありません。
  アメリカやEUは直接支払いという鎧を着て競争しています。日本の米だけが徒手空拳で競争するのは得策ではありません。減反廃止と主業農家に対する直接支払い、これが正しい政策です。守るべきは農業であって、関税という手段ではありません。

 

4、交渉からの離脱はできない?
【疑問】「交渉に参加して、どうしても妥結内容が気に入らないなら署名しなければいいし、加入した後に離脱する自由はある」という主張はうそです。TPPは実質的に日米間の協定であり、米国との交渉でわが国に自由はないことは歴史が証明しています。

【答え】
  国際交渉に参加すれば離脱は不可能という主張がありますが、本当でしょうか。制度から考えてみましょう。交渉参加国は、①交渉の結果でき上がった協定になお不満であれば、署名しなければ良い、②政府が署名しても、議会は批准・承認しないことができる、③協定に参加した後に不都合が生じた場合、協定の修正交渉を要求することができる、④修正交渉が実らない場合、最終的に通知をするだけで脱退することができる―のです。
  過去の国際交渉で、交渉からの離脱はないのでしょうか? アメリカは地球温暖化防止の京都議定書から、署名後に離脱しました。アメリカが怖いのでTPPから離脱できないという主張があります。しかし、タイ、マレーシアはアメリカとFTAの交渉を行っていましたが、アメリカの主張を受け入れられないとして、交渉から離脱しました。
  また、TPPの内容が分からないので参加できないという主張が行われました。しかし、それぞれの国の事情により、各国の意見は対立します。対立がなければ、交渉する必要はありません。ビジネスの世界で、最終的な合意内容がわからなければ、相手と交渉を開始しないというビジネスマンがいるでしょうか。
  交渉に参加すれば、状況が把握できるばかりか、不利な協定内容であれば    交渉で変更させ、日本の国益を反映させることができます。そもそも、日本が参加すれば、主要国である日本の主張を無視して交渉が進むはずがありません。
  最後に、「アメリカは怖い」という〝思い込み〟について述べます。日米保険協議で日本が敗北した経験が語られますが、これは二国間の協議であり、多国間の通商交渉ではありません。また、二国間の協議でも、日本は必ずしも負けているわけではありません。意気高く主張を繰り返すアメリカに対し、通商交渉の矢面に立ってきた農林水産省や経済産業省は、苦しみながらも、彼らの面子を立てつつ、日本の利益を確保するという、一段高い戦術をもって対応してきたというのが、私の感想です。
  例えば、1980年代の日米牛肉交渉で、アメリカは日本の牛肉の輸入数量制限の撤廃を要求しました。輸入数量制限がガット違反であることは明白でした。そこで日本は輸入数量制限を廃止して関税に置き換え、関税率を初年度70%、次年度60%、3年度50%と徐々に削減し、4年度以後はガットのウルグアイ・ラウンド交渉の結果に委ねるという決着に持ち込んだのです。この決着が、日本の牛肉産業に与えた影響はどのようなものだったのでしょうか。国産牛肉の生産量は1990年度(39万トン)と2010年度(36万トン)でほとんど変化していません。むしろ品質の高い和牛生産は増加しています。
  多国間交渉では、どうでしょうか? 例えばアメリカは1970年代に、外国の通商行為を不公正とみなせば、一方的に制裁措置を講じるという通商法301条を導入しました。しかし、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果、WTO紛争処理手続きを取らなければ制裁措置は取れないこととされ、通商法301条は事実上廃止に追い込まれました。そのイニシアチブを取ったのは日本です。多国間交渉では、争点ごとに利益を同じくする国と連携することが可能です。TPP交渉でも、アメリカの主張を封じ込めることは、困難ではありません。


首相は「国体護持」を表明せよ 会員 児玉朗

 環太平洋経済連携協定(TPP)参加の是非が国論を二分している要因の一つに、国体がさらに脅かされるのではないかという危機感がある。野田佳彦首相は「国益は守る」という抽象的な発言でなく、国益の定義を国民に説明し、不安と危機感を払拭するため、「国体を護持する」とまず表明すべきである。
 その上に立って、TPP自体が国の独立に関わる由々しき問題を抱えていることから、国益を損なうと懸念される全ての事項を洗い出し、時間はかかるであろうが、その対策を含めてネガティブリスト(自由化の例外リスト)に盛り込むことが重要だ。重要な懸念の一つにISD条項(外国の投資家が不平等な扱いを受けたとして相手国を提訴できる条項)がある。「忖度(そんたく)」という言葉をもつ日本人にはISD条項はそぐわない。賛成論者は日本企業も同じく相手国を訴えることができると反論するが、訴訟合戦になってはそれこそ国益はかなわないだろう。
 さらに玄葉外相の発言を参考にすると、TPPに絡めて移民計画を推進しているようである。我が国の少子化や労働力の問題を移民によって解決しようとするのは、少し短絡的に過ぎないか。真の問題と課題を見極めて、対策となる政策には慎重の上にも慎重な姿勢が必要である。移民政策を進めてきた欧州各国が現在抱える問題と、シンガポールなどうまくいっている場合とを十分考慮して、民族問題を日本国内に持ち込むようなことがあってはならない。
 それでもなお、反日国と親日国を一括りの条項で済ませるのは無理があるのではないか。首相が黙して語らずでは危機感が増すばかりである。


首相に日本を守り抜く覚悟はあるか 会員 森岡敬介(60歳 医師)

 2670年の日本の歴史の中で、人々は信頼と敬愛を寄せる天皇の御心を成就すべく励み、互いに気遣いながら助け合い、恵まれた自然と共生しながら心豊かに暮らした結果として国は栄え、人々はそれなりの幸せを実感してきた。しかるに、この度の環太平洋経済連携協定(TPP)は一部強国の経済事情の思惑がその本体であるがために、日本人の心を豊かにする方策は含まれていない。
 アメリカの圧力による1991年の大店法(大規模小売店舗の規制に関する法律)の改正の結果、個人商店は廃業を余儀なくされ、また商店街はシャッター街と成り果ててしまった。町の形が変わった。どこの町も同じ景色となって町は個性と活気を失った。また2004年の労働者派遣法の改正によって、会社と個人、個人と個人の関係が希薄になり、さらに不安定、不確実な収入は将来に夢を描けない人々を産み出した。人間関係、社会の形が変わった。
 この上さらに経済的有益性を理由にTPPに参加して国土の形を変えるのか。そして国の形を変えるのか。それは国民全ての幸せを祈念する天皇の御心に添うことなのか。それでもTPPに参加するというなら、野田佳彦首相をはじめ政治家諸氏は命を懸けて日本を守り抜く覚悟はおありかと、そして国民がそれを付託するに値する「やまとごころ」をお持ちかと問いたい。


看過できない金融部門への影響 岩崎良二

 もう一点どうしても指摘しておきたい点がある。環太平洋経済連携協定(TPP)の金融保険部門への影響である。2010年3月末時点でゆうちょ銀行とかんぽ生命を合わせて、我が国国債の3割強を保有している。一般銀行と保険会社を全て合わせて3割保有であることを考えると、単体としての保有率は群を抜いている。
 郵政事業は国営から民営への過渡期にあり、郵政民営化論と議論が交錯するが、政府が株式を保有する特殊会社であることと、高い国債の保有率は相関している。もちろんその負の面も承知しているものの、その議論はひとまず置く。私が言いたいのは、良きにつけ悪しきにつけ、順当な国債消化のためには、ゆうちょとかんぽは欠かすことのできない金融機関であることだ。
 TPPに加盟した場合、加盟国なかんずく米国の企業は、民業圧迫としてゆうちょ、かんぽの完全民営化を求めてくることが予想される。完全民営化された場合、ゆうちょとかんぽはこれまで通り国債を購入してくれるだろうか。
 企業融資を行わない銀行であるゆうちょは、増益のためには効率よく運用しなければならない。そうであるならば、そのポートフォリオから利率の低い日本国債の幅を狭めてくるのではないか。リスクの分散の点からも同様である。ゆうちょとかんぽが完全民営化した場合、将来、日本国債の札割れという最悪の事態を想定しておく必要があるのではないか。我が国を取り巻く国際情勢は小泉政権の時とは明らかに変わっている。TPPの面から郵政民営化を再考すべきと考える。


WTOとFTAで十分 岩崎良二

 「アジアの成長を取り込む」―。まじないのように語られるこの空疎なスローガン以外に、環太平洋経済連携協定(TPP)加盟のメリットがあるのか。
 日本をはじめ、米国はもちろんアジアのほとんどの国が世界貿易機関(WTO)加盟国である。これにより自由経済は守られ、関税の低減化が推奨され、主要な国内産業は何とか保護することができる。準自由経済の枠組みは担保されているのである。
 アジアの成長を取り込むのが真の目的ならば、円高こそが最大の障壁である。我が政府のアリバイ的為替介入、日銀の消極的金融緩和こそが、いま議論されなくてはならない大問題ではないか。
 TPPとは所詮、米国の国内問題のしわ寄せであり、じり貧の米国経済と失業率、オバマ大統領の輸出倍増計画と選挙、 域内化する世界経済における孤立感、リーマン・ショック以降の金融セクターの不振、これらを一挙に解決するため、アジアにテコ入れし、その主導権を手中にするのが米国の目的である。
 日本はWTOと自由貿易協定(FTA)で十分やっていけるのである。アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)は中国やインド、インドネシアなどの動きを見ながら決めればよい話である。
 いまTPPに加入しなければ米国に「主導権」を奪われるとの議論がある。主導権の意味は不明である。TPPは国内の規制、文化や慣習までをも根絶やしにするヴァンダリズム協定であり、そもそも主導権を喪失させることが目的ではないか。これまでの経済協定とは、全く異なるTPPの傍若無人さを国民は知るべきである。


いつでも席を立って日本を守る決意を 会員 村澤秀樹

 環太平洋経済連携協定(TPP)の賛否は、日米の経済および戦略的同盟関係に影響を及ぼす重大事項である。公益財団法人としての研究所である国基研の果たすべき役割は、その趣意書にのっとり、慎重に情報を収集し、日本の国益にかなった意見を提言することである。
 その前提で考えると、もしもこのまま日本が米国の傘下における無条件で恒久的な安全保障を望むということであれば、参加はやむなしとの考えになるであろう。
  一方で、「独立自尊の国家の構築」を目指すのであれば、いつかは米国の傘下から親離れし、「普通の国」として「日本に真のあるべき姿を取り戻す」必要がある。今、TPPへの参加を容認するのであれば、国益が損なわれると判断される時や条件があった場合は(今すぐか、数年後かは分からない)、毅然と米国の設けた席を立てる布石を何としてでも打っておかねばならない。それが外交交渉というものである。
 私はここで個人的な賛否を表明しないが、関税自主権は明治の先人や小村寿太郎など気概のある外交官の血と汗によって手に入れた権利である。その重みを十分に踏まえ、国基研趣意書からつながる理路整然とした議論をもって日本の行くべき道を示すべきである。
 日本の未来は日本人自身が決める。他国の意に完全に沿う外交はない。TPP問題はその信念で立ち向かってこその国家的課題である。


TPPは国益にかなうか 会員 原寿基

 環太平洋経済連携協定(TPP)の実質は、日本と米国の国益をかけたせめぎ合いである。しかし、その米国政府を相手に我が日本国政府はあまりにも稚拙で、またあまりに卑劣ではないか。
 国民に情報を開示しないばかりか、野田佳彦首相は「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と述べた。玉虫色の言葉で、世界には交渉参加を、党内反対派には交渉参加の事前準備だと印象づける。こんな姑息な外交で、日本の国益を守る毅然とした交渉ができるとは到底思えない。
 そもそも、政府・マスコミによって国民はTPPイコール農業問題であるように刷り込まれているが、農業はTPP24項目のうちの1項目でしかない。
 例えば、サービス・投資などについてはネガティブリスト方式(例外リストに入っていない品目はすべて関税が撤廃される方式)が採用されるといわれている。米国型システムの導入―それは訴訟社会であったり、自由な労働力の流入であったり、極端な株主偏重主義であったりする―が容易となることで、日本文化の「公」(おおやけ)の精神や、天皇陛下を中心とした家族国家としての文化が崩壊してしまうのではないかと危惧している。
 自由と自由がぶつかり合えば力の強い者が勝つ。極端な自由は極端な隷従に振れる。今こそ、日本国民は国家を意識し、日本の国益を、そして日本の在り方を考えなくてはならない。


TPPに参加すべし  会員 北秀司

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加、不参加をめぐり、与野党、団体、個人の意見が割れている。主張にはそれぞれ一理あるが、要は、この20年間閉塞した状況にある日本が経済、技術、知的文化という大いなる資産と武器(戦略)をもって、大いなる発展が期待される環太平洋地域において、日本の民主的なリーダーシップでお互いに利益を享受しようということである。また、その役割を担う資格が日本にあるということである。リスク無きところに大いなる成功はあり得ない。日本はTPP参加国全体の国内総生産(GDP)の3割を占める経済大国である。日本の公平な健康保険制度、その他の良い制度はむしろ宣伝流布すべきである。
 アジアの最大のリスクは、中国が軍事力を背景に政治、経済の両分野で支配国家になることである。そうなれば、中国と他のアジア諸国の関係はかってのソ連と東欧のようになりかねない。そうなってからでは米国も手を出せないし、米中の二極冷戦状況が生まれるかもしれない。その時、日本を含むアジア諸国は暗黒の時代を迎えるだろう。米国の意図も中国に対するけん制にあることは明白であろう。その辺のことは田久保忠衛国基研副理事長も論述されているし、国基研の会員であれば当然忖度(そんたく)しなければならない。日本が参加表明したことで、中国はあわてている。


TPP賛成は納得できない 会員 芝崎憲次

  国基研はいつからアメリカのポチになったのでしょうか。環太平洋経済連携協定(TPP)に関する限り、日本の国益を考えておられるとは思えません。それともよく言われるところの保守は経済に弱いということなのでしょうか。TPPは農業問題や輸出産業だけの問題ではありません。マスコミは最近でこそようやく農業問題以外もアリバイ的に取り上げようとしていますが、基本的には農業問題に矮小化しようとし、抽象論で既成事実化しようとしています。国基研が同じようなことをしないでください。

  TPPには、ISD条項(外国の投資家が不平等な扱いを受けたとして相手国を提訴できる条項)、最恵国待遇、内国民待遇、ラチェット規定(自由化の後戻りを許さない規定)、ネガティブリスト方式(例外リストに入っていない品目はすべて関税が撤廃される方式)、関税自主権の放棄があり、その他にも日本の国の在り方が変わりかねない問題がたくさんあります。このあたりのことは三橋貴明さんや中野剛志先生が散々言っておられます。この程度ことを国基研の賢明なる皆様が知らないとは思えません。

  このようなTPPを認めることは国基研の設立の趣意に反しないのでしょうか。私は賛助会員にならせて頂いておりますが、このような状態では退会も考えなければなりません。どうか今一度よく検討して頂けませんでしょうか。日本の未来と国益を考える一国民として伏してお願い申し上げます。


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