2016年7月の記事一覧
金正恩政権倒しにもつながるサード配備 西岡力(東京基督教大学教授)
米韓両国が在韓米軍防衛のため、韓国に最新鋭の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」を導入することを決めた。それに対して、北朝鮮と中国が激しく反発する一方、北朝鮮に従属する韓国内の従北派が配備予定地などで激しい反対運動を展開している。 人民日報系の環球時報は7月9日付社説で、「サードへの5つの対抗策」を提起した。すなわち、①配備に関与した韓国政府や企業との取引禁止②韓国政治家...
内藤氏の「今週の直言」で考えたこと 赤祖父俊一(アラスカ大学 名誉教授)
6月27日付の「今週の直言」(【第383回】英のEU離脱から学ぶべきこと)で、産経新聞外信部編集委員の内藤泰朗氏が述べておられたことについて、一言私見を申し述べたい。 内藤氏は、英国のEU離脱問題は、グローバル化を急ぎすぎたことによる結果のひとつとのご意見のようですが、私はグローバリゼーションに便乗している市場原理(至上)主義の制御が効かなくなっているからだと思います。 米国では工場を中...
中国の「人権」は「政体変更」視野に考えるべき 島田洋一(福井県立大学教授)
国基研「今週の直言」7月25日付に、「『自由世界のリーダー』はどこへ」と題して、ドナルド・トランプ氏の共和党大統領候補指名受諾演説の分析を寄せた。スペースの関係で割愛せざるを得なかった点を若干補足しておきたい。 トランプ氏は演説で、「我々は、ヒラリー・クリントンがイラクやリビア、エジプト、シリアで追及した国家建設と政体変更(regime change)という破綻した政策を捨てねばならない」と...
ウクライナは虐められているだけの国か? 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
最近のウクライナ情勢に関する報道を見ていると、ウクライナはロシアから虐められている被害者であるかのような内容が多い。だが、果たしてそうであろうか? 現在、中国海軍が保有している唯一の空母「遼寧」は、ウクライナから輸入した嘗ての「ヴァリヤーグ」である。また空母艦載機であるSu-33は、ロシアが中国への売却に応じなかったことから、ウクライナが試作機を中国に売却し、中国はそれを基に国産艦載機J-1...
対中ODAの効果を検証し責任質せ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
この1カ月間に中国は日本の接続水域や領海を侵犯し、今月発表された今年第2四半期の対中国軍機に対する緊急発進(スクランブル)で飛び上がった航空自衛隊の戦闘機は、四半期ベースで過去最多の199回に上った。 日本側の抗議に対して、中国は逆に「軍の行動は正当、日本が挑発」などと日本を悪者扱いしている。また、中国国内では、いまだに戦争中の旧日本軍の軍人を悪者に仕立てたドラマばかり放映され、さらに199...
「日本がファシズム回帰」とする米保守誌の歪み 島田洋一(福井県立大学教授)
ナショナル・レビューと言えば、アメリカの代表的な保守派知識人、ウィリアム・バックリー・ジュニアが創設した伝統ある論壇誌である。バックリー自身の全盛期に当たる1970年代、80年代には大きな影響力を持った。 そのネット版に7月16日付でJapan Reverts to Fascism−Tsunami in Japanese politics(日本、ファシズムに回帰−日本政治の津波)と題する論考...
皇室典範改正を「女系」復活につなげるな 髙池勝彦(弁護士)
7月14日付朝刊の各紙トップ記事は、今上陛下が「生前退位」の御意向を宮内庁関係者に伝えていたと報じる内容であった。宮内庁は、そのような事実はないと否定しているので、真偽のほどはわからない。 生前退位ということになれば、当然、皇室典範の改正が必要になる。ただ、陛下の御公務が多く、御高齢に対する健康への配慮が必要であるということが理由なら、摂政を置くなど、現在の皇室典範の規定内でも御負担軽減の...
「ならず者超大国」中国に対処するには 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国はならず者超大国。この表現は、今回の南シナ海に関する仲裁裁判所の裁定を無視する中国のことを表現した言葉ではない。2010年に海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長を拿捕した際、日本へのレアアース(希土類)輸出を制限した中国に対して、ノーベル賞経済学賞を受賞したポール・クルーグマン博士が米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿した中で述べている言葉である。 法によって行動しようとしない中国...
理解に苦しむ柄谷氏の「憲法9条信仰」 髙池勝彦(弁護士)
先の参院選では、憲法改正を求める勢力が議席の3分の2以上を確保し、改憲論議が一段と深まることが期待されている。 少し古いが、6月14日付の朝日新聞で、同紙が、哲学者、思想家とあがめる柄谷行人氏にロングインタビューし、憲法を考える・9条の根源と題して、あきれたことを語らせている。 少々引用が長くなるが、柄谷氏の発言は以下のようなものだ。 「9条は、確かに、占領軍によって押し付けられた」...
北朝鮮のムスダン発射が意味するもの 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
北朝鮮が6月22日、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射、報道によれば高度は1000キロ以上に達し、約400キロ先の日本海に着水した。 ムスダンは射程約4000キロであるため、まともに発射すれば日本の上空を通過することになってしまう。1998年8月31日に北朝鮮は、人工衛星の打ち上げと称して日本の上空を越えて長距離弾道ミサイル「テポドン1号」を発射したが、その直後に日本は、米国との弾道...