2017年5月の記事一覧
日・韓・グアムに同時発射の潜在力誇示か 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
北朝鮮は5月29日、東部の元山ウォンサン付近から日本海に向け、スカッド系と見られる弾道ミサイルを発射した。ミサイルは日本の排他的経済水域内に落下した。14日には西部亀城クソンから「火星12号」を、21日には内陸部の北倉プクチャンから「北極星2号」を発射したのに続き3週連続である。 これらの軍事的意味合いをどう見るか?今回の弾道ミサイルは韓国全域を射程に収めると同時に、30日に労働新聞が公表し...
改憲めぐる統幕長発言への批判を批判する 冨山泰(国際問題研究者)
自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長が安倍晋三首相の憲法改正提案に関連し、「自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるなら(一自衛官として)非常にありがたいと思う」と発言したことについて、朝日新聞や共産党、民進党が、またぞろこれを問題視している。 統幕長の発言について、朝日新聞は社説で「政治的な中立性を逸脱する」と批判し、「文民統制の観点からも見過ごせない」と書いた。共産党は、公務員の憲法尊重擁護義務に...
ブレジンスキー氏の死去に憶う 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
カーター米民主党政権時、大統領の国家安全保障問題担当補佐官(1977年1月20日~1981年1月21日)を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏が5月26日死去した。 筆者は1994年に、米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(School of Advanced International Studies-SAIS-)で彼の講義を半年受けたことがある。受講者は20名に限られ、それに...
コミー氏解任を衝動行動と捉える誤り 島田洋一(福井県立大学教授)
5月22日付の国基研「今週の直言」に「『トランプ弾劾』一色の報道に異議あり」と題する一文を書いた。 以下、スペースの関係で割愛した部分を若干補っておきたい。上記「直言」と併せ読んで頂けると幸いである。 コミー連邦捜査局(FBI)長官の解任は、トランプ大統領の独断ではなく、司法省からも解任を求める意見書が出されている。直言で触れたとおりである。 セッションズ司法長官が、トランプ選対の顧...
北の奇襲に日本も反撃体制早急に整えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
21日夕方、北朝鮮は再び内陸部西側の北倉プクチャン付近から弾道ミサイルを発射した。ミサイルは日本海の日本の排他的経済水域外に落下した。米側の発表によれば、本年2月に発射された「北極星2号」同様、固体燃料が使われたと思われ、飛行途中で2つに分離したようである。 先月の軍事パレード直後に筆者は、北朝鮮の弾道ミサイルを4つに分類した。その分類で、14日に発射されたロフテッド軌道の弾道ミサイル「火星...
改憲発議にウイング広げた総理の提案を評価す 西修(駒澤大学名誉教授)
この5月3日、安倍晋三総理は、自民党総裁として、民間憲法臨調(櫻井よしこ代表)と美しい日本の憲法をつくる国民の会(共同代表、三好達、田久保忠衛、櫻井よしこの各氏)が共催した第19回公開憲法フォーラムにビデオ・メッセージを発した。現在でも多くのテレビ番組で放映されている。その反響の大きさに主催者の一員として、感慨深いものがある。 メッセージでは、憲法第9条1項と2項をそのままにして、新たに自衛...
改憲に関する広報戦略に疑問 島田洋一(福井県立大学教授)
安倍晋三首相が5月8日、衆議院予算委員会において、「国防軍や公共の福祉、基本的人権の尊重といった自民党憲法改正草案の3点は取り下げるのか」という長妻昭議員(民進)の質問に対し、「自民党総裁としての考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてあるので、熟読してもらってもいい」と答え、物議を醸した。 憲法論議を政争の具にすべきではない。素直に読んでみようと思って、インターネット上を探したが、見つからない...
米朝の軍事的緊張は新たな段階にある 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
14日早朝、北朝鮮は北西部亀城クソン付近から日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した。約30分飛翔し、日本の排他的経済水域外に落下した。北朝鮮の朝鮮中央通信も15日、新型の中長距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験を14日に行い、成功したと報じた。金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会ったとしている。 亀城から北東方向に約800km飛翔したということから稲田朋美防衛大臣は、高度2000kmを超える新...
「ケイ報告」は第2の「クマラスワミ報告」の恐れ 石川弘修(国基研企画委員)
日本の報道は安倍政権の圧力で自由が一段と制限されている―とする事実誤認の報告書が米欧や国連で相次いでいる。 今年に入ってからだけでも、まず3月に米国務省が2016年版「人権報告書」を公表、この中で「日本のメディアへの圧力強化に懸念が強まっている」と指摘した。これは、昨年の国会で高市早苗総務相が、政治的公平性を欠く報道を重ねる放送局については電波停止を命じる可能性を否定しなかったことをとらえた...
憲法施行70周年、産婆役の“9条批判”に耳傾けよ 斎藤禎(国基研理事)
この5月3日、日本国憲法は施行70周年を迎える。 金森徳次郎(1886~1959)は、昭和21(1946)年、第1次吉田茂内閣の憲法担当国務大臣として入閣し、帝国議会で約千五百回もの答弁をこなした。自ら「憲法の産婆役」と称し、国民の憲法への理解を求めて各地を行脚した。 そのため、現憲法最大の擁護者と目された金森だが、昭和33年、日経新聞の『私の履歴書』に登場し、「(憲法の)実体に悪いとこ...
中国にTHAAD配備を非難する資格があるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備が韓国南部の星州ゴルフ場内で始まったことを受けて26日、中国外務省の副報道局長は「必要な措置を取る」と述べた。 4月27日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報には軍事専門家の意見として、①THAADレーダーに探知されないステルス性に如何に移行するか②THAADの脅威を取り除くための先制攻撃を如何に行うか――について、具体的...