2017年9月の記事一覧
官任せの景気回復では実感持てない 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁がタッグで進めてきた異次元の金融緩和。円ドル相場はいまのところ円安方向で安定しており、平均株価も2万円を挟むレベルまで回復した。いわゆる「アベクロ景気」は、9月で景気拡大が58カ月となり、戦後最長記録の「いざなみ景気」(73カ月)を超える可能性もでてきた。 しかし、国民の側にその実感は乏しい。賃金は上がらず、将来を考えれば、ついつい財布のひもも固くなる。企業の設...
米シンクタンクに影響与える中国マネー 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国国営通信、新華社の英文ウェブサイトは8月29日付で「米国の主要シンクタンク、ランド研究所が中国政策研究のため300万ドルを受領」とする記事を掲載した。 昨年1月には、同研究所の分析官が「尖閣をめぐる日中戦となれば日本は5日で敗北する」との衝撃的なシミュレーション結果を発表して話題を呼んだ。ほぼ同じ頃、ハドソン研究所の研究員2人も、よく似た内容のレポートを公表している。 この直後、「言...
日本人は共産党に甘すぎないか 梅澤昇平(尚美学園大学名誉教授)
10月の解散・総選挙が確実となったことで、民進党がまた性懲りもなく共産党との選挙協力に舵を切ろうとしている。人間の体で大事なのは免疫力だといわれるが、国民も、労働組合も、野党も、共産党に対する免疫力の低下が著しいようだ。 共産党は他の政党と、生まれも、育ちも、性格も、まるで違う。これを忘れてはいけない。猫なで声で近寄ってきても、指には鋭い爪が隠れている。 ●実体は革命目指す秘密組織 ...
プーチン時代の平和条約締結は困難か 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)
安倍晋三首相とプーチン大統領の19回目の顔合わせとなった9月8日のウラジオストクでの日露首脳会談は、肝心の北方領土交渉がさらに遠のいた印象を与えた。 首相官邸関係者は「安倍総理はプーチン大統領と今回も2人だけの交渉を重ねており、今後重要合意が飛び出す可能性もある」とし、なお期待を抱いているが、領土帰属交渉自体は明らかに後退しており、今後はプーチン後の政権との交渉も想定しておく必要があろう。 ...
攻撃の研究なくして防御はできぬ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
北朝鮮は「核爆発によるEMP(電子パルス)攻撃能力を手にした」と威嚇、我が国の対策が問われている。 ●北のEMP攻撃で甚大な被害も 元来、EMPは落雷によって電子機器が使えなくなる状況と同じである。EMP防護のためのスペックを、保有している電子機器に加えるとなると莫大なコストが必要になるが、簡単な防護方法は落雷同様、コンピューターの電源を抜く、あるいは携帯の電源をOFFにすれば良いだ...
危険増す日本の海、海自・海保の連携強化を 山田吉彦(東海大学教授)
日本の海は危機的な状況に置かれている。沖縄県石垣市の尖閣諸島は国有化から9月11日で丸5年となったが、日本固有の領土である同諸島海域への中国公船の侵入は常態化し、月に3回の頻度で領海侵入を繰り返している。 海上保安庁の巡視船は、尖閣諸島専従部隊を配備し、警戒を続けているが、中国公船の領海侵入は止まらない。そして、東シナ海では1000隻ほどの中国船が漁を行い、あたかも同海全域が中国の海であるか...
拉致問題を未解決で次世代に残すな 荒木和博(拓殖大学海外事情研究所教授)
北朝鮮が度重なる弾道ミサイルの発射に加え、9月3日には6度目の核実験まで行った。むかし流行った山本リンダの歌ではないが、まさに金正恩の「どうにもとまらない」だ。 あの歌には、「はじけた花火にあおられて 恋する気分がもえて来る」という一節があるが、米国との交渉に持ち込むためという理由など、すでに飛び越えてしまったようだ。もはや、パラノイア、ストーカーのレベルである。 これは冗談ではない。今...
民進党に政権取りの覚悟はあるのか 梅澤昇平(尚美学園大学名誉教授)
民進党の代表選挙が行われ、下馬評通り、前原誠司氏が新代表に選出された。むしろ枝野幸男氏を勝たせて民進党を割った方がいい、という裏の声も支持団体の労組関係者にはあったようだが、そうはならなかった。 2人の候補の立会演説をテレビで見たが、訴えで決定的に欠落しているものが2つあった。1つは、北朝鮮のミサイル発射問題にどう対処するかが、ない。もう1つは、次の選挙の話ばかりで、政権への準備をどうするか...
リー将軍と西郷さんの銅像に思うこと 斎藤禎(国基研理事)
外国理解の難しさは今に始まったことではないが、アメリカ南北戦争の南軍の英雄リー将軍の銅像撤去をめぐるバージニア州シャーロッツビルでの衝突事件を報じる日本の新聞、あるいは知米家といわれる人々の論評を見ると、首をかしげざるを得ない。 白人至上主義や今なお残る人種差別への言及、あるいは暴力を振るう双方どちらも悪いとツイートしたトランプ大統領への批判などがその大半だが、しかし、そんな論評は、あまりに...