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2020.03.18 (水) 印刷する

【韓国情勢】注目すべき「アンチ反日」の台頭 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 昨年あたりから、韓国の保守知識人のなかで、無条件の反日を批判する声が目立つようになってきた。それは日本の主張に同意するという意味よりも、このままでは反日が国を滅ぼすという憂国の立場からの主張とみるべきだ。日本でベストセラーになった『反日種族主義』の原本が韓国内で12万部売れたことがその代表的例だ。私はそれを「アンチ反日」の台頭と呼んでいる。
 そんな中、韓国の良識的保守を代表するジャーナリスト趙甲済氏が、自身が主宰するYouTube放送で、憂国の立場からのアンチ反日がよくわかる評論を行った。以下、その主要部分を日本語にして紹介する。

過去の記事はこちら

朝鮮を滅ぼした衛正斥邪派のDNAを受け継ぐ主思派が韓国を滅ぼす
今回の総選挙で審判を受けるのは私たち国民だ
(「趙甲済テレビ」3月3日アップ)

朝鮮王朝は高宗、閔妃、大院君が滅ぼしたと言えるかもしれません。(親日内閣の総理大臣として日韓合併条約に署名した)李完用が国を売り渡したと言えば、気持ちはいいです。しかし、王朝がそのように何人かによって滅びることはありません。

朝鮮王朝がなぜ滅びたのかということを、思想的に説明するのが的確かもしれません。みなさん、ソウルの中心にある光化門広場に立っているのはどなたの銅像でしょうか。(光化門広場のすぐ北側の)景福宮は朝鮮王朝の王宮ですが、光化門広場は大韓民国の広場にならなければなりません。

ところが、大韓民国を発展させるのに、設計士の役割をした李承晩の銅像もなければ、施工者である朴正熙の銅像もありません。大韓民国大統領の銅像は1体もありません。

銅像は世宗大王です。世宗大王は偉大な人物でしたが、そこに鎮座させるべきではなく、李承晩大統領に席を譲らなければなりません。世宗大王の銅像は全国に大変多いです。

それではなぜ、初代大統領で、大韓民国に自由民主主義、韓米同盟、市場経済、教育改革をもたらし、朝鮮戦争を勝利に導いた偉大な指導力を持つ偉大な独立闘士でもある李承晩、あの方のために一坪の土地さえ提供できないのでしょうか。

ここに、朝鮮王朝を滅ぼし、今の大韓民国を危機に追いやっている一つの精神思潮があります。それを衛正斥邪と言います。衛正斥邪派です。言葉としては良いです。正しいことを防衛し、邪悪なことを排斥する。しかし、その衛正斥邪派がまさに朝鮮王朝を亡国に導きました。

衛正斥邪派は性理学に基盤を置いていますが、ただ中国のことを父母のように見てお仕えする思想です。全ての判断基準が中国です。中国の皇帝です。中国は善なる存在で、中国文化、儒教、性理学は至高至尊の原理で、これに反対する西学、すなわち西洋の学問や陽明学は異端だ、斯文乱賊(儒教を惑わす反逆者)だとします。完全に最近の全体主義思想と同じです。

とくに、この衛正斥邪派の決定的な欠陥は、自分の国、自分の民族というものがないことです。判断基準は中国、皇帝、孔子、孟子、堯舜の時代です。それが絶対基準です。

このような事大主義の結果、祖国がありません。ただ義理、中国に対する義理だけを大切にして、ついに帝国主義勢力が東の方向に押し寄せてきた19世紀末、扉を内側から固く閉ざし、中国に忠誠を誓う国として生き残ることを望みました。ですから、あのとき開化を試図した人々は失敗してしまいました。

これが今日、どこにつながっているのか。まさに主思派にそのDNAの脈がつながっているのです。衛正斥邪派と主思派はまったく同じです。

どのような点で同じなのか。主思派の判断基準は金日成です。金日成を崇拝しています。理由は共産主義者だからです。ですから同じ共産主義者でも、金日成よりも偉大な毛沢東を崇拝します。中国を崇拝するのです。金日成崇拝が従北思想であるなら、主思派は必然的に従中思想、中国に従属する方向に傾くことになります。

文在寅大統領は新型コロナウイルス問題に対処しながら、ただ習近平への配慮から中国人の入国を禁止せず、むしろ日本にかっとなり腹を立てた。これがまさに衛正斥邪派です。衛正斥邪派の思想では、中国は至高至尊な善であり、米国、西洋勢力、日本は野蛮だとされます。

文在寅政権が、これをそのまま受け継いで政策に反映させていることは、本当に嘆くべきことです。衛正斥邪派、19世紀の衛正斥邪派が21世紀の主思派に姿を変えて、いまや政権を動かしています。世界のどの国でも見ることができないおかしなことが起きています。

衛正斥邪派、主思派、歴史のゴミ箱に入っていなければならない思想がいまだに韓国人たちの思考方式に決定的影響を及ぼしています。それがまさに反日種族主義として現れています。衛正斥邪派も主思派も反日種族主義です。

反日種族主義は、日本がいくら良いことをしても無条件で反対しなければならない。中国が悪いことしても擁護し、北朝鮮政権が悪いことをしても擁護する。日本は良いことをしても悪いことをしたと考える。米国も日本と同じ勢力だから反対する。

反日反米種族主義が主思派のDNAであり、衛正斥邪派からきています。性理学を基礎とする衛正斥邪派が朝鮮王朝を約500年以上支配して、その残滓がいまだに残っています。

ソウルは李承晩、朴正熙のおかげで、このようによく整えられた姿の世界的都市になりましたが、この世界的都市を運営する韓国の知識人たち、政治家たちの頭の中には偽善と独善があふれ、いまだに亡霊が住み着いています。そうした人々がマスコミ、官僚、検事、判事、政界、青瓦台に浸透して掌握しているので、大韓民国がこのような危機を迎えているのです。

衛正斥邪派と主思派の共通点は無能なことです。国政運営には無能ですが、有能なのは二つです。まず扇動です。そして権力闘争にも有能です。

朝鮮王朝600年は実は左派政権でした。李承晩以後、約70年は自由民主主義、市場経済を基盤とする右派政権が続いてきました。

しかし、左派600年の根を無視することはできません。そこに70年の自由民主主義、右派思想が根を下ろすには、まだ時間が十分ではなく、しっかり根を下ろすことができていない状態で文在寅政権という挑戦に出会いました。

ただし、私たちが目にする文明の力もまた無視することはできません。この文明世界は、事実、科学、法治を基盤としています。主思派、金日成派は、事実、科学、法治を否定する文明破壊勢力です。野蛮です。

衛正斥邪派は西欧文明を野蛮と見ましたが、いま大韓民国において野蛮と文明を区分する基準は、科学を尊重するのか、事実を信じるのか、法治を守るのかにかかっています。いま、青瓦台で権力を振り回しているあの人々は、法治を否定し、事実を否定する。そして科学を否定します。

世界最高の原子力発電所を、もっとも危ないもののように扱いました。その結果、世界最高の技術を持つ原子力発電所がいじめられ、そのために健全な会社だった韓国電力をだめにして、いまや斗山重工業まで休業を検討するレベルに追い込みました。

その心性はどこから出たのでしょうか。それがまさに衛正斥邪派のDNAを受け継ぎ、そこに階級闘争論まで加えた世界歴史上の最悪の政治理念なのです。いや、理念でもありません、一種の悪霊でしょう。

悪霊にとらわれている執権勢力から、どのようにしてこの文明世界を守ることができるのか。今回の総選挙でそれが分かります。

国民がこのようによく整えられた国を維持する資格があるのか、ないのか。あるいは犬や豚のように生きていくことがふさわしいのか。この間、李承晩、朴正熙という国民の水準よりもはるかに偉大な方の指導の下で、このように発展してきたのに、これからは国民の水準に沈んで行こうということになるかもしれません。

太陽は沈みます。しかし、また昇ります。4月15日の総選挙の後でも、太陽はまた必ず昇ります。大韓民国は流した血があまりに多いので必ず守ることができます。

自由という木は愛国者と独裁者の血を飲みながら育っていきます。この間、愛国者はあまりにも多くの血を流しました。これからは金正恩のような独裁者の血を飲みながらこの自由という木が再生しなければなりません。この山野、この都市、この高層マンション、この家庭、この職場を守るためには、勇敢な人がいなければなりません。その勇敢な人を支える勤勉な人たちがいなければなりません。

みなさん、今回の総選挙で審判を受けるのは私たちです。私たちはどのような水準の国民なのか。文在寅よりも優れているのか、文在寅よりもだめな存在なのかについて、審判を受けるのです。