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2009.09.18 (金)

【提言】 新政権への提言(日米関係)

平成21年9月18日
一般財団法人 国家基本問題研究所

新政権への提言(日米関係)

 
【提言】
1.鳩山首相は日米首脳会談で、価値観を共有する日米両国の関係は日本にとって最も重要な二国間関係であると宣言せよ
2.インド洋での自衛隊の給油活動を継続せよ
3.日米地位協定改定や米軍再編合意見直しは、オバマ政権の優先課題になり得ないことを心得よ
4.東アジアや世界の軍事情勢の変化を踏まえ、日米同盟を再定義する新たな日米安保共同宣言を2010年に出すよう米国に働き掛けよ
5.米国の核兵器の持ち込みを容認する方向で非核三原則を見直せ

  
  
1.鳩山首相は日米首脳会談で、価値観を共有する日米両国の関係は日本にとって最も重要な二国間関係であると宣言せよ
 鳩山新政権の「米国離れ」に対する懸念が米国で強まっている。鳩山氏は、米国で報道されて「反米的」であると物議を醸した論文の中で「日米安保体制は日本外交の基軸であり続ける」とも書いたが、信用されていない。
 加えて、新政権で外相に就任した岡田克也氏は、民主党代表時代の2005年に発表した外交・安保政策ビジョンで、日米同盟の対象範囲をアジア・太平洋地域に限定する考えを表明し、自民党政権下で日米両国が合意した「世界の中の日米同盟」という概念を真っ向から否定した。岡田外相の就任は、米国にとって新たな懸念材料となろう。
 「日米安保体制は日本外交の基軸」という信念が確かなら、鳩山氏は9月下旬にニューヨークでオバマ米大統領と初の日米首脳会談を行う際、「日米関係は世界で最も重要な二国間関係である」(“The U.S.-Japan relationship is the most important bilateral relationship in the world, bar none.” )と宣言し、米側の懸念の払しょくに努めるべきだ。米政界で超党派の尊敬を集めた故マンスフィールド駐日大使の有名な発言を借りてこのように宣言することは、鳩山政権が米国の信頼を得る助けになるはずだ。
 
2.インド洋での自衛隊の給油活動を継続せよ
 来年1月にテロ特措法の期限が切れるインド洋での自衛隊の給油活動については、国防総省報道官が「継続を強く働き掛ける」と明言した(9月9月)のに対し、国務省報道官は「アフガニスタンの安定にどうすれば最も貢献できるかは、各国が決めるべきことだ」と述べ(8月31日)、米政府内部でニュアンスの違いがうかがえる。しかし、給油活動はテロとの戦いにおける日本の貢献の象徴であり、継続すべきだ。民主党のマニフェストや、社民、国民新両党との連立政権合意書は、テロの温床を除去するためアフガニスタンの「貧困の根絶」と「国家の再建」に主体的役割を果たすとうたっているが、単なる小切手外交への回帰では給油活動に代わる象徴的な貢献になり得ない。
 
3.日米地位協定改定や米軍再編合意見直しは、オバマ政権の優先課題になり得ないことを心得よ
 米国務省報道官は在日米軍再編合意の交渉をやり直すつもりはないと言明し、国防総省報道官も米軍再編合意の実行を鳩山新政権に求めた。グリーン元国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長によると、「オバマ政権は世界中で外交・安保の課題を抱えており、たとえ1年後でも、米軍再編合意や日米地位協定を再交渉する意欲はまず起きない」とされる。もしこれらの合意や協定の早急な見直しを米側に迫るなら、鳩山氏は国際政治家としての感覚を疑われかねないことを肝に銘ずべきだ。鳩山氏が首相就任直後の記者会見で、9月下旬の日米首脳会談ではオバマ大統領に地位協定改定を提起しない意向を示したのは正しい判断だ。
 
4.東アジアや世界の軍事情勢の変化を踏まえ、日米同盟を再定義する新たな日米安保共同宣言を2010年に出すよう米国に働き掛けよ
 冷戦後における日米同盟の意義を再確認した日米安保共同宣言が1996年に発表されて以降、東アジアの安保情勢は、北朝鮮の核武装や中国の軍事的台頭によって、様変わりした。世界の安保情勢も、イスラム過激派のテロとの戦いが文明社会共通の重要課題に浮上するなど、大きな変化があった。
 こうした変化を踏まえ、2010年に日米安保条約改定50周年の節目を迎えるのに当たって、日米同盟を再定義し、不確実なアジアと世界の情勢に備えることを米国に提案すべきである。
 
5.米国の核兵器の持ち込みを容認する方向で非核三原則を見直せ
 日本の安全を究極的に保障するとされる米国の核抑止力が機能するためには、同盟国日本のため米国は核兵器を使用する意思があることを、日本だけでなく潜在敵国にも信じ込ませる必要がある。もし日本が「(核兵器を)持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を変更し、領域内への米軍核兵器の持ち込みを容認するなら、潜在敵国に米国の日本防衛の意思を明確に認識させ、対日攻撃を抑止する効果は高まる。
 民主党は非核三原則のうち「持ち込ませず」に日米密約の疑いがあるとし、米国に非核三原則を守らせると主張している。だが、同党が「対等な日米同盟関係」(マニフェスト)を目指すのであれば、論理的には、日本が核兵器を保有した上で、持ち込ませないと主張するのが筋ではないか。