公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

櫻井よしこ

【第228回】日本の気概と力を強める年

櫻井よしこ / 2014.01.07 (火)


国基研理事長 櫻井よしこ

 

 ●靖国参拝は戦後体制終焉の一歩
 日本は今年、あらゆる困難から逃げずに、賢く雄々しく闘わなければならない。
 「時代の変化を捉えて憲法の解釈変更や改正に向けて国民的議論をさらに進めて行くべきだ」
 安倍晋三首相は年頭の会見でこう語った。いま、日本は、小賢しい優先順位論を脱して、懸案事項の本質にズバリ切り込まなければならない。「べき」論を脱して、「実行」に向かって万全の準備を進めるときだ。
 憲法改正、集団的自衛権の行使容認は、尖閣諸島問題など眼前の危機の解決のみならず、日本の国家基盤の立て直しに欠かせない。真の目標は、憲法改正を達成して戦後体制を終わらせることだ。日本国の存続に責任を持てるのは日本だけであることを肝に銘じなければならない。
 その意味で、安倍首相の昨年末の靖国参拝は、戦後体制に終止符を打つ第一歩として大層意味のあることだった。

 ●米中関係の変化を覚悟せよ
 今年、日本がとりわけ注意深く見つめるべきは米中の動きである。中国の習近平国家主席への権力集中が急速に進んでいる。昨年秋に設立が決まった国家安全委員会は党、軍、政府の一体化を進めるものだ。武装警察も党中央軍事委員会の直属として改編されつつある。両委員会とも習氏がトップを務める。
 人民解放軍220万人に120万人の武装警官を加えた340万人が「戦えば必ず勝てる軍を目指せ」と鼓舞する習主席の下に集められる。こうした力を背景に「偉大なる中華民族の復興」を目指す習主席は昨年6月、「新型大国関係」の構築を米国に提唱した。
 太平洋における米国の姿勢にはブレが目立つ。昨年3月、米太平洋軍司令官は、アジア太平洋地域にとって最大の脅威は気候変動だという、中国の軍事的進出に米国が目をつぶるととられかねない的外れな発言をした。ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は11月21日、ジョージタウン大学での講演で、習主席の提唱した「新型大国関係」という言葉を用い、米国が中国の提案に乗るのかとの推測を許す余地を残した。
 こうした状況下、中国は11月23日、防空識別圏を設定、12月5日、中国軍艦が米イージス巡洋艦「カウペンス」にわずか100ヤード(約91メートル)の距離に迫った。
 冒険主義ととれる強気の行動に習主席が傾くのとは対照的に、米国のオバマ大統領の気概もしくは対中戦略は定かには見えてこない。
 米中関係が明らかな質的変化を遂げつつあると覚悟して、戦略を考えるときであろう。日米同盟を堅い絆となすあらゆる努力と並行して、日本の気概と力を強める年である。(了)