公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第2回】「自民惨敗、民主圧勝」の後にくるもの

遠藤浩一 / 2009.08.31 (月)


国基研企画委員・拓殖大学教授 遠藤浩一

民主党は圧勝し、自民党は壊滅的敗北を喫した。わが国は、かつて経験したことのない政権交代劇に直面することとなる。それも、有権者自身の意思によつて。

今年に入つて、ミニ統一地方選挙や東京都議選などで「現職」が落選する事態が続出した。今回の自民党惨敗も、言つてみれば、「現職」に対する不信任である。実績の否定であり、その実績を前提として引き続き政権を委ねることへの拒否である。

「実績」否定、「未知」を選択
高度成長期の日本は、冷戦構造といふ国際環境の中で、安全保障については米国に依存して専ら経済成長にエネルギーを集中でき、そこで得た富の再分配を政治の基本的な仕事としてきた。政治はしだいに弛緩し、対立と馴れ合ひを組み合はせた国対政治が定着する一方で、官僚主導システムも形骸化していつた。もちろん評価すべき点もあつたが、冷戦構造が崩れ、国際環境が激変したことによつて従来のやり方では対応しきれなくなり、それらの是正は回避できない課題となつた。要するに構造改革が求められたのだが、それは経済社会や地方分権にとどまるものではなく、国防・安全保障や教育も含めた、国家の再生を実現する包括的なものでなければならなかつた。

ところが自民党はこれを矮小化して「小泉改革」なるものを進めた。必ずしも日本発ではない経済金融危機にも見舞はれた。結果として「痛み」が拡大し、国民は自信を喪失し、その目には自民党の「実績」が色褪せて映るやうになつた。そこで有権者は民主党の胡乱うろんな政策については目をつむり、前のめりになつて政権交代を実現させることにした。過去の実績のうちに国家再建の可能性を見出せなくなつたので、新奇なものにすがつたといふのが、今回有権者が取つた行動である。もちろん、未知なるもの、新奇なものに当事者能力があるわけではないし、実績ある現職よりポッと出の新人のはうが優秀だといふことにはならない。今回の有権者の選択の是非は歴史の評価を待たなければならない。

民主人気はバブル
政権交代を意義あるものにするには、民主党は自民党を超えた理念と政策を提示しなければならない。しかし、民主党が示してゐるのは、いびつな「成長無き再分配」政策等でしかないし、国家再生への構想力を決定的に欠いてゐる。彼らはただ、自民党ではないといふ一点――「反自民」に存在理由を求めてきた。といふことは、今回自民党が崩れたことによつて、民主党は、これまで頼つてきた支へ棒を失つたのである。バブルがはじけるのは、時間の問題だらう。(了)
 

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第2回:「自民惨敗、民主圧勝」の後にくるもの(遠藤浩一)