公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第369回・特別版】北朝鮮とISがテロで連携?

西岡力 / 2016.04.18 (月)


国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力

 

 北朝鮮の金正恩政権がイスラム過激組織「イスラム国」(IS)に韓国内でテロを起こすことを依頼した、という驚くべき情報を私は最近入手した。2年前から北朝鮮の特殊部隊がシリア政府の軍事演習の教官になっている。今回のテロ連携依頼は従来の北朝鮮とシリア政府との関係を裏切るものだという。※
 3月の米韓合同軍事演習を自身に対する「斬首作戦」の訓練だと激怒した金正恩第一書記は、ISと秘密協議をして韓国内でのテロ実行を依頼し、見返りに武器支援を提示したという。ISがその依頼を受諾したかどうかについて私は情報を持たないが、まさに「悪の枢軸」によるテロ連携だ。
 一方、韓国公安当局は北朝鮮が韓国内でテロを行おうとしているとして、要人や脱北者活動家らの警護を強めている。
 韓国政府は今月、「北朝鮮人民軍偵察総局の大佐が昨年、韓国に亡命し、対南工作について詳細に証言している」と公表した。通常、このような機微に触れる情報を持つ亡命者の存在は伏せる。ところが今回は、亡命の事実だけでなく、「対南工作について証言している」と供述内容まで公表した。それは、テロ計画について具体的情報があって、その実行を阻止するためだったかもしれない。

 ●最悪の中朝関係
 中朝関係も最悪となっている。3月に中国が国連安保理の厳しい北朝鮮制裁決議に賛成した時、金正恩第一書記は「核弾頭と潜水艦発射弾道ミサイルを完成させ、米国が本当に恐れを抱くようになってから本格的な米朝交渉を行う。俺は首領様(金日成主席)と将軍様(金正日総書記)ができなかったことをする。中国と韓国は計算に入れていない。中国が俺を倒して代わりに(異母兄の)金正男政権を作ろうとするなら、北京と上海に核を撃ち込む」と語ったという。
 金正恩第一書記は正男氏を中国が保護していることに神経をとがらせ続けている。叔父の張成沢氏処刑の背景にも「張成沢、中国、正男」が裏でつながって自分を追い落とそうとしているのではないかとの疑心暗鬼があったという。
 中国首脳も全く言うことを聞かない金正恩第一書記にあきれて、厳しい制裁で屈服させるか、本人抜きの「新しい朝鮮」すなわち、親中で改革開放を行い、米韓の影響力を北進させない新政権の樹立を構想し始めている。                                 

 ●幹部が離反
 北朝鮮国内では、軍や治安機関の幹部でさえ金正恩第一書記への忠誠心はない。これら幹部は、近く改革開放政権ができることは必至とみなし、その時にまとまった外貨を持っていて鉱山などを買い占めればよい暮らしを維持できるが、それに失敗すれば軍や党の幹部もみな乞食になると考えている。
 ついに、2月から国家保衛部(政治警察)、人民保安省(一般警察)の末端職員の家族に対する配給が止まったという。いつ何が起きてもおかしくない末期現象だ。(了)

※当初の原稿で「2年前から北朝鮮の特殊部隊がIS支配地域に入り、軍事演習の教官になっているという」とあったのは誤りでした。正しくは「2年前から北朝鮮の特殊部隊がシリア政府の軍事演習の教官になっている。今回のテロ連携依頼は従来の北朝鮮とシリア政府との関係を裏切るものだという」でした。