公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

櫻井よしこ

【第416回】焦眉の急を要する憲法改正

櫻井よしこ / 2017.01.10 (火)


国基研理事長 櫻井よしこ

 

 安倍晋三首相は元旦の新年の辞で「自由民主党は、国民と共に、新たな国づくりを本格的に始動する」と語った。5日の自民党仕事始め式では、今年はただのとり年ではなく、大きな変化が始まるひのととりだとし、「新しい時代に相応ふさわしい憲法はどんな憲法か。議論を深め、その姿形を私たちが作っていく年にする」と決意を表明した。
 自国を守るに十分な軍事力を持つことは如何なる国にとっても自然権の内であるが、わが国の実情はそうした国際社会の常識と懸け離れているどころか、自衛隊は憲法のどこにも明記されていない。厳しさを増す国際情勢を見れば憲法改正が焦眉の急を要するのは自明であろう。

 ●活発な中国軍の動き
 尖閣諸島周辺で中国軍の活動はとみに活発化しており、中国空軍爆撃機の通過も、軍艦を改造した中国公船の尖閣の海への侵入も、日常の風景となったかのようだ。
 日本全体が眼前の危機に鈍感になりゆく中で、恐れるべきは中国軍事力のグローバルな展開であり、海外に築き始めた中国軍施設である。習近平国家主席は2015年に人民解放軍の全面的な組織改革に着手した。紆余曲折があるとしても、中国共産党の軍に対する統制力を強め、統合作戦能力を高めていくであろうこの大規模改革は、自身を「核心」と位置づけ、強力な指導者たらんとする習氏の執念に見える。
 アメリカに対する中国の挑戦は武力紛争に至らないレベルを保ちながらも、南シナ海での米軍無人潜水機の奪取、空母の展開に見られるように、中国は強気である。とりわけ台湾を巡る米中間の緊張は日本に直接の影響を及ぼす。

 ●不透明な国際情勢
 中国の挑戦的軍拡に対し、トランプ政権の中枢で重要な役割を果たすピーター・ナヴァロ氏は、近著『米中もし戦わば』(文藝春秋)で強い警戒観を披露している。
 中国はアメリカ太平洋艦隊をアジア海域から駆逐し、アメリカの人工衛星を叩き落とし、アメリカがロシアと共に核弾頭の保有数を大幅に減らしているのとは対照的に、全長5000キロに及ぶ「地下長城」を構築中で、そこに弾道核ミサイルを保管している、とナヴァロ氏は書く。そのうえで「現時点では、歴史はひたすら(米中の)衝突へと向かっているように見える」と警告する。
 軍事大国化とそれに伴う中国式価値観に基づく新たな国際秩序構築という中国の夢に、強い不信感を抱く人物がトランプ政権で重責を担う。
 米中、米露関係の展望はまだ見えにくく、国際情勢はかつてなく不透明だ。その中で日本が外してはならない路線は日米同盟の強化である。また、たとえ同盟国であっても、アメリカへの一方的依存はもはや許されないいま、日本の最大の課題が憲法改正なのである。(了)