公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

湯浅博

【第419回】日本は防衛責任分担を明確にせよ

湯浅博 / 2017.01.30 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博

 

 予測不能のトランプ米政権下で、日米同盟はどのように生き残るのか。トランプ大統領は就任演説で「古くからの同盟を強化する」と述べ、安倍晋三首相も日米同盟を「永遠の同盟」と位置づけている。しかし、大統領は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を葬り、1980年代の古いイメージで日本の不公正貿易をなじるばかり。対中抑止に欠かせない同盟の行方が見えてこない。マティス国防長官の2月初旬の初来日は、同盟がいかにギブ・アンド・テークの盟約であるかを確認する機会になる。
 
 ●米新政権の対日要求拡大へ
 トランプ大統領の就任演説は、米国の伝統的な価値である「自由」「民主主義」の理念が抜け落ち、「米国第一」の損得勘定にしか目が向かないものだった。選挙期間中から「米国が攻撃されても、日本は何もしなくていい。彼らは家でソニーのテレビを見ていられる」などと、対日観が屈折している。その延長で、大統領の要求は米軍駐留経費負担の増額や責任分担の拡大につながっていくだろう。2月半ばの日米首脳会談でも何らかの「取引」を持ち込みながら、日米新貿易協定の交渉に乗り出すようだ。
 いずれにしろ、トランプ政権が台湾や南シナ海の問題で対中対抗を軸にする限り、日米同盟の重要度が下がることはない。大統領が台湾は中国の一部とする「一つの中国」原則を否定的にとらえ、南シナ海を「一つの国による占拠から防衛する」(大統領報道官)方針である以上、日本にある米軍の前方展開基地の戦略的価値は大きい。とくに、大統領が「一つの中国」原則をいとも簡単に足蹴にしたことで、恐慌をきたした中国が軍事力を行使する危険は高まる。そうした発言をした以上、米国が実際に抑止行動を示さなければ台湾を危険にさらすことになる。

 ●時代遅れの専守防衛
 トランプ政権は今後、米軍の戦力提供の負担が日本の負担よりも大きいとの主張によって、再び責任分担論をよみがえらせるだろう。日本の駐留経費負担は70%以上で、韓国やドイツに比べて突出して多く、これ以上の増額は米軍将兵を傭兵化させてしまう。過去にも、財政赤字に苦しむ初代ブッシュ政権下で、日米のバードン・シェアリング(役割分担)として、日本が中南米向け経済支援の負担で米国の肩代わりを請け負ったことがあった。
 今後はむしろ、日本が軍事面でより大きな責任を引き受けるいわばリスポンシビリティ・シェアリング(責任分担)が求められよう。それは米国から要求されなくとも、中国の膨張主義と北朝鮮の核による恫喝を前に、日本が率先して実行すべきことだ。対中抑止のため米最新鋭兵器を購入し、対北抑止のため敵基地攻撃を可能にする必要がある。時代遅れとなった専守防衛の政府方針を変え、日米同盟の双務性と日本の自立性を高め、日米安保条約の改定や憲法改正につなげるべきであろう。(了)