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石川弘修

【第449回・特別版】偏った歴史観に立ち向かう「日本研究賞」受賞者

石川弘修 / 2017.06.28 (水)


国基研理事兼企画委員 石川弘修

 

 国家基本問題研究所は7月5日、今年の日本研究賞に決まった米マイアミ大学のジューン・ドレイヤー教授と、日本研究特別賞のヘンリー・ストークス元ニューヨーク・タイムズ紙東京支局長への授賞式を行う。ドレイヤー教授は、受賞作品となった「中華帝国と旭日帝国―日中関係の過去と現在」(オックスフォード大学出版、邦訳なし)について特別講演を行うが、先の大戦後、幅を利かせる中国主導の「日本悪者」論に異を唱え、1400年にわたる日中関係の長期的な枠組みの中で公平な見方を貫いた。また、ストークス氏は「英国人ジャーナリストが見た連合国の歴史観の虚妄」という英文の著作(ハミルトン・ブックス)を発表、欧米のジャーナリズムに大きな波紋を投げかけた。両氏に共通しているのは、当然視されている一方的な歴史観に立ち向かう勇気である。

 ●お寒い欧州の日本研究
 ドレイヤー女史は元来が中国専門の政治学者で、1960年代後半、中国の少数民族問題を研究するために京都大学に留学するという、中国研究の不自由さを身をもって体験した。だが、それが日中関係研究のきっかけとなったのは日本にとって幸いであった。両国関係の資料は圧倒的に中国寄りのものが多い。女史は、日本語資料を読み解き、不足分をカバーした。
 国基研は4年前、日本の真の姿を見て研究、発信をしてくれる研究者を発掘するため、調査団(団長・田久保忠衛副理事長)をロンドンに派遣した。欧州で日本研究の中心といわれるロンドン大学を訪れたほか、オックスフォード、ケンブリッジ両大学やその他の民間研究機関の関係者に会い、実情を調べた。英国、ドイツ、フランス、オランダなど40~50人の名前が上がったが、結果はお寒いものだった。多くの学者に、①マルクス主義史観を引きずる②東京裁判史観を踏襲している③白人優越主義か宣教師的な教えを垂れる―といった傾向があり、公平な見方を期待するのが難しい状況だった。

 ●創設10周年の国基研の役割
 まず、外国人に事実関係を知ってもらうという櫻井よしこ理事長の信念の下に、国基研は平成26年、民間研究機関では初めて外国人研究者を対象とする日本研究賞を創設した。以来、米国、中国、ロシア、台湾、英国、日本に帰化した中国・内モンゴル出身者など11人の受賞者を決めている。
 しかし、まだ大海の一滴である。朝日新聞による慰安婦誤報撤回事件などを境に、日本からの英語発信量も少しずつだが増え始めた。ところが欧米の学者には、自らの立場を守るためか、日本に対して歴史修正主義だとか軍国主義への回帰だとか言って意固地になる傾向もある。今年末で創設10周年の節目を迎える国基研の役割の重さを改めて思う。(了)