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太田文雄

【第451回・特別版】第二のINF条約を推進する覚悟が日本にあるか

太田文雄 / 2017.07.03 (月)


国基研企画委員 太田文雄

 

 6月20日、米下院軍事委戦略戦力小委員会は2018年度国防授権法案の最終原案で、ロシアが2月に欧州へ配備した巡航ミサイルSSC8を中距離核戦力(INF)条約違反と認定、1987年に米ソが射程500〜5500キロのミサイルを全廃した同条約からの離脱を大統領に勧告するとともに、地上移動発射式巡航ミサイルの開発と導入を進言した。
 米国ではロシアの軍事力への警戒が強まっており、6月29日には国防情報局(DIA)が、1980年代に国防総省が発行していた年次報告書「ソ連の軍事力」の今日版といえる「ロシアの軍事力」を初めて発行した。

 ●NATO二重決定を生んだ西独首相
 INFミサイルをめぐっては、1977年に当時のソ連が欧州にSS20の実戦配備を開始。これに対し北大西洋条約機構(NATO)は1979年の外相・国防相会議で、パーシングIIミサイル108基と地上発射巡航ミサイル464基の欧州配備を進めつつソ連と軍備管理交渉を行うという「二重決定」を下した。二重決定の生みの親は当時の西独のシュミット首相だったといわれる。
 1980年に米国はINFミサイル(米国のパーシングII、地上発射巡航ミサイルと、ソ連のSS20、SS4、SS5)の全廃をソ連に提案し(いわゆるゼロ・オプション)、同時に西独、イタリア、英国にINFミサイルを配備し始めた。1986年に至って、当時のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長はINFミサイルを含め欧州に配備された全ての核兵器を2000年までに禁止することを提案し、INF条約は1987年に最終的に合意された。

 ●非核三原則修正の必要
 本年4月、ハリス米太平洋軍司令官は、中国が保有しているミサイルの9割はINF条約で米国が保有できないもので、「米国は身ぐるみ剥がされたも同然」と述べた。北朝鮮もINF条約に縛られていないのを良いことに、射程500〜5500キロのミサイルを開発し、実戦配備している。
 現実問題として、中国や北朝鮮に嘆願しても、中距離ミサイルの開発・配備をやめないであろう。米ロだけでなく多国間のINF条約を構築し、最終的にゼロ・オプションにより中距離ミサイルを全廃させるためには、現INF条約の交渉時と同様に、軍備制限を求めつつ軍備増強を行い、日本に米国の中距離ミサイルをいったん配備してロシア、中国、北朝鮮に全廃を迫る以外にないのではなかろうか。それには日本が非核三原則の一つ「持ち込ませず」を修正することが必要になる。その覚悟が日本にあるだろうか。なければ、無条約状態の軍拡を東アジアで傍観するしかなくなってくる。(了)