公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第455回】テレビファシズムを止めよ

小川榮太郎 / 2017.07.24 (月)


文藝評論家 小川榮太郎

 

 テレビの暴走が止まらない。
 学校法人の森友学園と加計学園をめぐる「疑惑」報道は既に半年に及ぶが、内実はいずれも、安倍晋三首相の職務権限とは全く無関係である。加計問題では文部科学省の「文書」が出てきたが、作者不明の部署内メモに「総理の意向」と書かれていれば、首相の側に説明責任が生じる――そんな無原則な話を許せば、安倍政権に限らず、全ての組織は崩壊する。しかも流出文書全体を熟読すれば、首相側近の義家弘介文科副大臣や萩生田光一官房副長官らが「総理の意向」を全く聞いておらず、行政プロセスを丁寧に踏んでいる実態が逆に明らかになる。ところが、メディアは文書全体を隠し、「総理の意向」の一言だけで安倍叩きに狂奔している有様だ。

 ●参考人発言を抹殺した報道
 とりわけテレビの無理筋が露呈されたのは、7月10日の国会閉会中審査についての報道だった。参考人として、前川喜平(前文科事務次官)、原英史(内閣府国家戦略特区ワーキンググループ委員)、加戸守行(前愛媛県知事)の3氏が出席したが、テレビは全局とも、政権叩きに使えない原氏と加戸氏の発言を殆ど報道せず、膨大な時間を前川氏の発言中心に組み立てていた。(今、放送時間などの詳細を調査中である。)
 テレビは電波を寡占的に使用できるため、放送事業者は放送法4条で「政治的に公平であること」や「報道は事実をまげないですること」などを義務付けられている。
 言うまでもなく、今回の事例は放送法4条違反だ。が、もうそういう次元を超えているというべきだろう。参考人3人のうち、政権攻撃に使えない2人をテレビ全局横並びで抹殺するというのは、もはや、テレビによる恐怖社会、あるいはテレビによるテロリズムが静かに日本を占領している事態と言ってよい。

 ●テレビの説明責任を義務化せよ
 私は一昨年「放送法遵守を求める視聴者の会」を立ち上げ、活動を続けてきたが、放送局の良識に期待しながら放送法遵守を求めるのは不可能だと結論せざるを得ない。
 かと言って、正式な監督機関の設置や4条違反の罰則化は時間がかかる。私としては、即座に可能で国民にも納得のゆく方法として、各テレビ局自らが毎週、定例記者会見を開き、自社番組の枠内で中継することを義務化する放送法改正を提案したい。
 説明責任という言葉をメディアは振り回すが、絶大な力を持つ彼ら自身、放送内容の説明責任があるに決まっている。衆人環視の中で、捏造や虚偽報道の説明責任を果たさせることしか、当面テレビの暴走を止める方法はないのではないか。罰則や報道規制でないので、言論の自由とも矛盾しない。
 急がねばならない。既にテレビファシズムは実現してしまっているのである。(了)