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西岡力

【第458回・特別版】映画「軍艦島」の恐ろしさ(下)

西岡力 / 2017.08.02 (水)


国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 私が繰り返し指摘してきたように、文在寅韓国大統領とその支持勢力は戦前日本に協力した親日派が処断されず、反共・親米派に化けて主流勢力となったという「反韓自虐史観」に立ち、主流勢力を全部交代させると公言している。それが彼らの言う「ロウソク革命」だ。映画「軍艦島」も同じ歴史観に立っており、「人民裁判」や「武装蜂起」など暴力による革命を肯定する独善さが映画の底流をなしている。

 ●親日派告発に力点
 柳昇完監督は7月28日、日本からの批判に対する反論を公表し、その中で「取材した事実を基にして、当時の朝鮮人強制徴用の悲惨な実態と日本帝国主義の蛮行、そして日帝に寄生した親日派の人倫に反する行為を描こうとした」と述べ、親日派告発が映画の主題の一つだったことを認めた。
 映画では、分かりやすい親日派として、鉱夫を虐待する労務係の宋ジョング(日本名松本)が出てくる。宋は日本人に2回裏切られる。1回目は空襲の時、日本人だけが防空壕に入り、宋は入るのを阻止された。2回目は武装して脱走を図った朝鮮人と日本人が銃撃戦を展開する中、宋は部下の朝鮮人と日本人側に立って交戦するが、日本人幹部の山田は「労務係であっても朝鮮人は全員殺せ」と命令し、宋の部下は日本人に撃ち殺された。
 朝鮮人慰安婦の呉マルニョンは、朝鮮人の女衒(ぜげん)や慰安所主人によってひどい目に遭ったと語り、親日派朝鮮人への怨みを口にした。呉を演じた女優の李ジョンヒョンは韓国紙インタビューで「『日本が無条件に悪い』と言わないところが気に入った。実際の歴史をみても、朝鮮人が同じ朝鮮人をだましてもいた」と親日派批判を展開している。
 独立運動家出身で朝鮮人鉱夫から「先生」として尊敬されている尹ハクチョルが、実は親日派だったというどんでん返しもあった。尹は会社側と交渉する役割を果たしながら、裏で朝鮮人鉱夫の賃金や死亡補償金などを横領していた。その事実を隠蔽するため、女子供を含む全ての朝鮮人を坑道に生き埋めにして殺そうという会社の陰謀に加担した。
 尹は韓国独立運動組織の光復軍から派遣された工作員の朴ムヨンによって公開処刑された。朴は鉱夫らが集まった中で「民族の敵と内通し、人民の血を売って私利私欲を肥やした罪、指導者になりすまし民衆を欺瞞した罪、反民族行為を朝鮮の名前で処断する」と断罪して、尹の喉を切り裂いた。まさに暴力礼賛の人民裁判だ。

 ●従北左派の影
 朴らは武装して島を脱出する計画を立てるが、そのとき鉱夫は皆、ロウソクを持って計画参加を誓う。今日、革命勢力の従北左派がロウソク集会で文大統領を支える姿と重なる。
 映画の中で鉱夫らは石炭運搬船を奪って長崎へ向かうが、そのとき長崎に原爆が落とされる。それを船の上から黙って見詰める彼らの姿で映画は終わる。「あそこにも朝鮮人がいるのに」と1人がつぶやくが、日本人の被害に触れる者はいない。私の偏見かもしれないが、日本人への復讐の成功を喜んでいるようにも見え、従北左派が北朝鮮と統一国家をつくって核兵器を持った時に何が起きるか想像して背筋が寒くなった。(了)