公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第461回】徴用工問題で事実に基づく反論をせよ

西岡力 / 2017.08.21 (月)


国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 韓国の文在寅大統領が8月17日の記者会見でいわゆる徴用工問題について「強制徴用された者個人が、三菱などをはじめとする相手の会社に対して持つ民事上の権利はそのまま残っている」として、従来の韓国政府の日韓請求権協定(1965年)で解決済みという見解を覆した。これに対して日本政府は即時に抗議し、歴史問題で韓国に同情的な朝日新聞を含む日本のマスコミも一斉に批判した。
 
 ●謝罪路線が招いた文発言
 しかし実は、文発言は日本の一部政治家や外務官僚そして朝日新聞などが誘発したものだった。文大統領は8月15日の演説で以下のように述べている。
 「この間、その努力が日韓関係の未来志向的な発展に寄与してきました。こうした歴史認識が日本の国内政治の状況によって変わらないようにしなければなりません」(傍点西岡)
 文大統領は河野洋平元外相や朝日新聞などが行ってきた「事実を調べずにまず謝り、人道的立場という理屈をつけてカネを払う」という謝罪路線を高く評価し、安倍晋三政権や産経新聞などが「事実に基づき言うべきことは言う」という是々非々路線を提起していることを非難しているのだ。
 私は1992年に拙著『日韓誤解の深淵』で次のように訴えた。25年経って事態はここまで悪化したが、それでも同じことを訴えていくしかないと思っている。
 「筆者が今声を大にして訴えたいのは、日韓両国の関係者、とりわけマスコミ関係者が事実解明を重視し、両国の民族的対立を煽ることを止めるようにぜひ努力して欲しいということだ」
 「このままだと、日本の真面目な人たちはどんどん韓国から離れていくだろう。『厭韓』から『離韓』への過程が確実に進行していっているのだ。日本告発を第一とする『反日』日本人と、それと呼応する『反日』を大きな声で叫ぶ必要がある韓国人とだけが連帯し、両国マスコミが意図的誤報をまじえてそれを大きく増幅させ、両国政府がそれに流されて定見のない反応をみせた結果、日本の国を愛し、その上で韓国とも仲良くしたいと考えていた人たちはどんどん韓国離れをしていっている」

 ●ウソまき散らす「良心的」日本人
 日本における文発言批判は、徴用工の実態に触れず1965年の協定で払った5億ドルで清算は完了したと説いている。しかし、日韓の反日勢力は、法に基づく徴用工動員が「強制連行による奴隷労働」だったというウソをまき散らしてきた。例えば、日本人活動家、柴田利明・長崎在日朝鮮人の人権を守る会事務局長は20年にわたり「朝鮮人強制連行」の実態調査を行い、韓国映画「軍艦島」の制作に協力し、韓国紙で「良心的日本人」として大きく取り上げられている。
 我々は徴用工の歴史的事実について体系的に資料と証言を集めて、ありのままの姿を発信し、奴隷労働説に反論しなければならない。私は2005年に『日韓「歴史問題」の真実』という本を書き、そのことを試みた。関心のある方はぜひ手に取ってほしい。(了)