公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第15回】北方領土問題、家康の手法に学べ

内藤泰朗 / 2009.11.30 (月)


産経新聞 SANKEI EXPRESS 副編集長兼論説委員 内藤泰朗

鳩山由紀夫首相は首相就任直後、北方領土問題について「半年でめどをつけたい」と述べ、問題解決に並々ならぬ意欲を示した。しかし、プーチン、メドベージェフ双頭体制下のロシアは、領土問題解決にメリットを見いだしてはおらず、日本側がいくら働きかけても、ロシアが北方四島を返還する状況にはない。ロシア側の戦略が、時間稼ぎにすぎないことを心すべきである。いま、日本がなすべきことはまず、北方領土が終戦後、ソ連に略奪され、65年近くにわたり不法占拠され、国家主権が侵害され続けている事実を再認識し、近年ぐらついてきている北方四島返還の国家の大方針を再確認することである。そのうえで、日本側の態勢を立て直し、来るべき「時」をつくり出す努力をすることにある。好機を忍耐強く待ちながら狡猾こうかつに布石を打ち、チャンスを逃さず一気に天下を手中にした徳川家康の手法に学ぶべきだ。そのために以下のことを提言する。

●ロシア研究・情報収集・分析体制の強化
中国の国力増大に伴う覇権的な行動の増大や、エネルギー中心の経済構造のきしみ、人口減少など、ロシアの弱点を中心とした情報の収集と分析、研究、その対露政策への活用は重要であり、首相官邸を中心にさまざまな研究機関が互いにけん制しながら、より真実に近い現状を認識し、対露戦略を国家戦略局で構築すべきである。

●北方領土問題への関心喚起
積極的な対露外交は国民世論の後押しなしにはできない。この重要な問題に国民の関心を向けるため、学校教育だけでなく、さまざまな形での啓蒙活動が必要だ。

世の中、検定ブームである。「北方領土問題検定」の創設を提案したい。検定で一定の点数を得た者に、北方領土へのビザなし交流に参加する資格を与えてもいいのではないか。ビザなし交流のやり方を見直し、より効果的に使う時がきている。さまざまな角度からのアプローチでロシア側を揺さぶれるようにしていく努力がいま求められている。

●対ロシア情報戦略の見直し
もう一つ重要なのが、ロシアへの働きかけ方だ。これまでの文化・経済中心の交流事業から政治的な分野、特に歴史の共同研究などに力を入れていくことを提案したい。ロシア人によるソ連史の研究を支援し継続していくなど、親日派知識人の獲得に向けた「種まき」をすることが重要である。(了)
 

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第15回:北方領土問題、家康の手法に学べ(内藤泰朗)