公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

大岩雄次郎

【第17回】景気低迷は鳩山政権の不作為によるものだ

大岩雄次郎 / 2009.12.14 (月)


国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎

12月8日、今年度第2次補正予算案による緊急経済対策がようやく決まった。鳩山政権の初めての経済政策であるが、執行の一部を停止した前政権の1次補正と比較して、とくに画期的な内容も見当たらない。それどころか、もともと鳩山政権が配慮をしてこなかった景気対策や「二番底」懸念、またマニフェストには全く触れていない財政再建とのつじつま合わせに終始し、相変わらず、本来のマクロ経済の視点に立つ景気対策からは程遠い内容である。

「二番底」論は言い訳にすぎない
二番底の懸念を主張することは、現下の経済状況があたかも前政権の景気対策の不適切さ・不十分さに起因する印象を与える。前政権の追加経済対策の内容のすべてが的確であったというつもりは全くないが、二番底懸念を理由にすることは、現政権が果たすべき責任の回避と言わざるを得ない。

二番底とは、通常は、「国内景気が本格回復前に再び下降する」事態を意味する。つまり、景気回復局面は一時的であり、依然として景気は悪化局面に止まっていることが前提とされる。しかし、鉱工業生産指数や景気動向指数から判断すると、日本経済は既に二番底を懸念する状況には当てはまらない。つまり、景気回復局面は2009年4月を起点とすれば、二番底懸念の範囲を優に超えている。したがって、もし今後、適切な対策が実行されずに景気後退に陥るようなことがあれば、それは現政権の景気対策に対する基本的な認識の甘さ故であり、当初からマクロ経済政策や景気対策に無関心であった鳩山政権の不作為というべきものである。

経済メカニズムに関する基本認識の欠如
現在の日本経済は辛うじて諸外国の景気回復に支えられているにすぎない。自律的な経済回復を目指すためには、鳩山政権は、まず、基本的なマクロ経済メカニズムへの理解を深める必要がある。雇用や賃金の源泉は、生産と投資活動を基盤とする企業収益である。したがって、過度に個人消費に向けた対策に偏向することは、社会的費用を増加させ、企業収益を圧迫し、結局は雇用・賃金を減少させるという悪循環を引き起こす危険性が高い。

2次補正の中身を見ると、依然として雇用対策に重点をおくセーフティーネット中心で、経済成長の源泉である企業の設備投資の拡大を促す施策に乏しい。今は、内需主導に拘泥するときではない。むしろ、外需を戦略的に取り込む成長戦略を描くことが先決である。(了)
 

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第17回:景気低迷は鳩山政権の不作為によるものだ(大岩雄次郎)