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田村秀男

【第37回】鳩山政権は中国バブル崩壊に備えよ―ギリシャ危機の教訓

田村秀男 / 2010.05.10 (月)


産経新聞編集委員 田村秀男

「100年に一度の大津波」(グリーンスパン前米連邦準備制度理事会議長)から世界の金融市場が立ち直りかけていた矢先の「ギリシャ・ショック」である。世界金融危機はまだ収束には程遠い。

日本はここで何をすべきだろうか。ギリシャの問題は財政危機が発端なのだから、先進国中最高水準の政府債務を持つ日本は早く財政均衡化の道筋を示すのは当然としても、もっと喫緊の課題がある。中国バブル崩壊に備えた危機管理である。なぜか。

懸念される中国への飛び火
第1に、ギリシャ危機はグローバル金融危機の一環である以上、いつどの国に飛び火するかもしれない。ちなみに、5月7日時点で株価の下落幅が最も大きかったのは独仏など欧州ユーロ圏だが、上海株価は東欧新興国並みに急落した。ブラジル、ロシア、インドを含めた4大新興国中、最悪である。

第2に、中国のバブルは異常なまでに膨張しており、崩壊の可能性が極めて高いのと、それが及ぼす世界への影響はギリシャの比ではないと予想できる点である。上海株式動向はニューヨーク株式を先導する傾向が昨年から強くなっており、上海発世界金融危機が起り得る。

第3に、独仏などユーロ圏が中心となって支援体制を組み、国際的な危機管理が可能なギリシャと違い、中国は共産党指導部が国内事情を優先して適切なバブルのコントロールができない。危機に際しても、国際的な協調の枠組みに背を向ける可能性が高い。

中国のバブルは、言わば人民元バブルである。各種統計によれば、人民元のマネー量(現金と預金の総量=M2)は3月末、ドル換算で米国を1兆ドル上回った。国内総生産(GDP)が米国の3分の1の中国は、自国のGDPの2倍近くの人民元を垂れ流している。人民元の洪水が中国の株と不動産市場になだれ込んでいる。特に上海株式はばくち好きな国民性を反映し、いったん下がり始めると、底なしの暴落局面に突入する恐れがある。

人民元の変動制移行を迫れ
「友愛」路線の鳩山政権はこの中国バブルに能天気で、「バブル」とはみなさず、「ブーム」(好景気)だと熱いまなざしを送る。日本の内需に取り込もうというわけで、中国人向けビザの発給を拡大し、日本で大いにショッピングしてもらおうという観点でしか見ない。 

中国に対して、日本は強い意志でバブル抑制策の実行を迫るべきである。抑制策は、人民元バブルの元凶である人民元対ドル固定制を改めて、変動制に移行することであり、日本は米国と足並みをそろえて北京に迫るべきだ。(了)

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第37回:鳩山政権は中国バブル崩壊に備えよ―ギリシャ危機の教訓(田村秀男)