2018年3月の記事一覧
米国はなぜ中国をWTOに提訴したか 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
トランプ米政権は3月23日、中国を知的財産権侵害で世界貿易機関(WTO)に提訴した。同日未明、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限も発動された。 これらは、予想通り各国の反発を招き、批判の矛先は米国に集中している。しかし、知的財産権侵害の問題はもとより、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限も、本質は中国の過剰生産に端を発している。中国のWTOルール違反など国際ルールを守ろうしない姿勢にこそ問題がある...
米国も懸念する韓国の政情 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
3月19日から1週間、米国の海軍大学院(カリフォルニア州)、ミシガン大学、マイアミ大学、空軍大学(アラバマ州)で、「北東アジアの安全保障情勢:日本と同盟国への影響」と題して講演した。北朝鮮の挑発、中国の軍事的膨張、ロシア軍の極東における活動の活発化に対する対抗策として日米豪印の4カ国協力構想を説明したのであるが、全ての講演場所で出た質問は「(協力構想には)何故韓国が入らないのか?」であった。特に...
欧州政治の潮目告げたイタリア総選挙 ロマノ・ヴルピッタ(京都産業大学名誉教授)
3月4日に行われたイタリアの総選挙は、予測通りイタリア政治体制を揺さぶる津波となった。中道左派、中道右派と新しい政党である「五つ星」による三極体制が形成されたが、どう見ても安定多数に支えられた内閣の誕生は現時点では不可能で、これから不安定の時代に入ると懸念されている。 この選挙で、「五つ星」は得票率で32%と単独政党としては第一党の座を占めた。既成政治への不満票を集め、特に深刻な不景気に悩ま...
終わりの始まりかプーチン4期目 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)
ロシア大統領選でプーチン大統領は76%の得票で予想通り圧勝した。次の6年の任期を全うすれば、首相としてメドベージェフ大統領体制を事実上仕切った時代を含め、実質在位は24年となり、ロシアではスターリン以来の長期政権。世界的にも異例の長さになるが、複雑かつ多角化する現代社会で長期政権は現実離れしており、変化に対応できない気がする。プーチン大統領が異常に高めた国粋主義の行方も気になる。 ●高ま...
文政権が仕組み、北が乗る政治劇 久保田るり子(産経新聞編集委員)
米ホワイトハウスに金正恩氏のメッセージを伝えた鄭義溶・国家安保室長ら韓国の訪朝団は、北朝鮮の代理人そのものだった。彼らは、金正恩氏が「善人に変身した」と説明行脚に余念がない。実に奇妙な光景だ。 訪朝時に韓国メディアを同行しなかった彼らは、金正恩氏の前で全員が首を垂れてメモを取り、その様子が北のメディアから世界に配信されて恥をかいた。しかし、彼らが伝える金正恩氏の言葉はどこまで正確なのか、韓国...
連立成ってもメルケルの求心力は低下 三好範英(読売新聞編集委員)
昨年(2017年)9月24日の総選挙以来、5カ月余り続いてきたドイツの政治空白に3月4日、終止符が打たれた。社会民主党(SPD)の党員投票でキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との「大連立」が承認されたことから、ようやく3月14日、メルケル第4次政権が発足する運びとなった。 ただ、この間、断続的に続いた連立交渉はドイツ社会の亀裂の深さを露わにした。CDU・CSUとSPDの執行部間では、...
インドも警戒する中国の「一帯一路」 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
3月7日、国家基本問題研究所とインドのシンクタンクであるヴィヴェカナンダ国際財団との定期意見交換会が東京・永田町の国基研で行われた。日本側は日米印豪の4カ国協力に関して発表したが、インド側は中国の「一帯一路」に関する発表を行い、彼らがこの構想に相当な警戒感を抱いていることがあらためて明らかになった。 筆者は5日の「今週の直言」欄で、中国の「一帯一路」は、実は「六帯三路」であることを指摘した。...
プーチンの核軍拡は「弱さ」の表れか 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)
ロシアのプーチン大統領が3月1日に行った年次教書演説は、ロシアが開発中の新型戦略兵器などの動画を公開しながら威力を誇示し、「世界中どこでも到達可能な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発した」「ロシアの最新兵器で米国のミサイル防衛(MD)は無意味になる」と強調した。 対米強硬路線を改めて示した形だが、演説をよく読むと、米国に対し、ロシアを無視せず、軍備管理交渉に入るよう呼び掛けるメッセージ...
ペンス氏の〝ほほえみ外交〟潰し 島田洋一(福井県立大学教授)
平昌五輪の開会式に出席のため韓国を訪問していたペンス米副大統領と、金正恩の妹与正を中心とする北朝鮮代表団との会談が設定されながら、直前に北朝鮮側がキャンセルを申し出て中止に至っていたと2月21日、日本のメディアが一斉に報じた。20日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)の記事に基づくものであった。 これを受け、アメリカが「柔軟路線」に転じたのではないかと、懸念ないし期待を表明する声も上がった。...