2018年4月の記事一覧
有害無益な「2020年まで」発言 島田洋一(福井県立大学教授)
4月25日、訪米中の自民党の河井克行総裁外交特別補佐が現地シンクタンクで講演し、北朝鮮に対して「2020年まで」と期限を切って、「完全な核放棄」を迫るべきだと訴えた。期限については、「アメリカ大統領選挙と東京オリンピックが開かれる2020年までとすべきだ」と敷衍した。 ●なぜ「即時」でないのか なぜ「即時」でないのか。これが最初に湧く疑問である。 米大統領選挙も東京五輪も、速やか...
くすぶるトランプの対日通商要求 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
4月17、18日に開催された日米首脳会談での通商政策協議の結果について、政府及び経済界は一様に安堵の胸をなで下ろした様子である。鉄鋼・アルミ商品の輸入制限措置では日本を対象国の適用除外とする確約は得られなかったが、2国間の自由貿易協定(FTA)交渉入りについては言質を与えなかった。新たな市場開放や為替問題への言及もなかった。 しかし、トランプ大統領の「結果の平等」を求める「相互主義」には変化...
ワイドショー並みのNYタイムズ紙 冨山泰(国際問題研究者)
テレビのワイドショーで、コメンテーターと称する出演者が専門外の問題について知ったかぶりの無責任な発言をするのは、視聴者をばかにしている表れであり、日本の情報番組の質の低さを物語る。だが、この安直な番組づくりが米国の世論にまで影響を与えかねないとあっては、笑ってすまされなくなる。 ●タレント発言を無責任に引用 米紙ニューヨーク・タイムズは最近の日米首脳会談について、貿易問題や北朝鮮問題...
先祖返りした岸田氏の安保政策 有元隆志(産経新聞編集局編集総務)
中国の「韓非子」に「守株」がある。ある日、農夫は一匹の兎が切り株に激突して死んだのを見て、耕すことを止めて、再び兎が切り株にぶつかるのをいつまでも待っていた。つまり進歩のないことを表す故事だ。自民党の岸田文雄政調会長が率いる岸田派(宏池会)がまとめた政策骨子「宏池会が見据える未来」の安全保障政策は、この「守株」と同じだといえるだろう。 ●政策のどこが「リアル」か 政策骨子では「Hum...
シリア攻撃が与えた北への衝撃 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
先週4月16日付の「ろんだん」で、米英仏によるシリア攻撃は「化学兵器を依然として製造・保有している北朝鮮や、中国に対する有効なシグナルでもある」と書いた。その後、攻撃の詳細が判明するに及んで、筆者が想定していた以上に北への強いメッセージになっていることが分かってきた。 ●劣悪な防空システム 当時、シリアの防空システムは、地中海に展開する艦艇から低空で侵入してくる巡航ミサイル・トマホー...
シリアの化学兵器は「法の支配」への挑戦 黒澤聖二(国基研事務局長)
米英仏3カ国は現地時間13日、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、ダマスカスなどの関連施設3カ所に対しミサイル攻撃を実施した。端緒は今月7日、反体制派が支配するシリアの東グータ地区ドゥーマに対し、シリア政府軍が化学兵器攻撃をした疑いが持たれたことだ。 米国はシリア政府及びアサド政権を支援するロシアやイランを非難し、軍事オプションも辞さない構えを示し、反体制派にこそ責任があるとする...
実はシリアへの関心薄いトランプ 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助手)
13日(日本時間14日未明)、トランプ米大統領は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして首都ダマスカスと西部のホムス近郊に局所的な攻撃を行った。トランプ政権がシリア内戦へ直接介入するのは、昨年の2017年4月に続いて2回目であるが、昨年の単独攻撃とは異なり、今回は英仏を率いての105発のミサイル攻撃となった。 ●露との直接対決は望まず トランプ氏は、3月末に米軍はシリアから撤退...
TPPは米国復帰より拡大を目指せ 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
トランプ米国大統領は、日米首脳会談を目前に控え、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)復帰の〝検討″を指示し、揺さぶりをかけてきた。その真意は知る由もないが、米国内でも株価を変動させるほどの驚きをもって受け止められた。 日本政府は、トランプ大統領の思惑に翻弄されることなく、各国との緊密な連携の上で、TPP11協定(包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP))のつつがない発効に...
武力行使は解決策にならないのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米英仏がシリアの化学兵器製造・貯蔵施設に対して100発以上の巡航ミサイルを打ち込んだ。これに対して化学兵器の使用に対しては何ら解決策にならないとか、トランプ大統領が女性スキャンダルを躱すためだとかいうメディアの論調がある。だが筆者はそうは思わない。 この攻撃は化学兵器を依然として製造・保有している北朝鮮や、中国に対する有効なシグナルでもある。抑止には、事後の再行動を踏みとどまらせる懲罰的抑止...
日米で「拉致」解決目指す重要さ 久保田るり子(産経新聞編集委員)
日米首脳会談の日本側の課題は①非核化プロセスに関する認識のすり合わせ②日本人拉致問題に対する米国の立場の確認-である。しかし、5月または6月初旬に開かれる予定の米朝首脳会談における拉致問題の取り上げ方は簡単ではない。史上初の米朝間のトップ会談という機会をとらえ拉致問題を解決へ導く妙手はあるのか。 横田めぐみさんが拉致されて昨年秋で40年が経過した。昨年9月、トランプ大統領は国連総会の演説で拉...
「日報問題」は論点がずれていないか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米シンクタンク「プロジェクト2049」が3月30日、「White Warship and Little Blue Men(白い軍艦と小さな青い人達)」というタイトルの出版物を刊行した。副題は「The Looming “Short Sharp War” in the East China Sea over Senkakus(起こりそうな東シナ海での尖閣を襲う短期・急激戦)」。著者は、かつて米太平洋...
習が正恩に誓わせた「戦略的意思疎通」 西岡力(麗澤大学客員教授・モラロジー研究所歴史研究室長)
3月26日午前11時、私の携帯電話が鳴った。「金正恩が訪中したという噂が丹東で広まっている。正恩専用の一号列車が今朝早く、丹東駅で目撃され、北京に向かった」。正恩訪中の第一報だった。何人かの知り合いにすぐ伝えたが、ある関係者から後日、「先生が日本で一番早かった」と誉められた。 金正恩は26日午後、北京で習近平と会談し、その後、習との夕食会に臨んだ。翌27日、正恩一行は午前中、中国科学院と天壇...
放送法の改正反対論への疑問 髙池勝彦(弁護士)
政府が、放送法を改正して第4条第1項の撤廃を検討しているとのことである。結論から言うと、私はこの条項は残しておくべきであると思うが、一部マスコミなどに見られる撤廃反対論とは一線を画しておきたい。以下その理由を述べる。 ●留意すべき占領下の法制定 まず、放送法4条1項の条文は次のとおりである。 放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところ...
首相は3選見据え長い目で改憲を 屋山太郎(政治評論家)
今年中に憲法改正を行うという安倍晋三首相の願望は山口那津男公明党代表の〝サボタージュ〟によって怪しくなってきたのではないか。 安倍氏の、9条2項をそのままにして自衛隊の存在を書き加えるとの改正案は、公明党の賛成をにらんで固めたものである。本来なら石破茂氏が言うように9条2項を削って、自衛隊を戦力と定める方がすっきりする。本来の安倍氏の保守思想からすれば、安倍氏がなぜ石破案に反対するのか不思議...
拉致解決はなぜ日米共同の課題か 島田洋一(福井県立大学教授)
拉致被害者、曽我ひとみさんの夫で、作年亡くなったチャールズ・ロバート・ジェンキンス氏の回想録『告白』(角川書店)に次の一節がある。夫妻には2人の娘がいる。 ≪1995年、幹部たちが何人かやってきて私たちに告げた——「金正日同氏の偉大なるお心遣いによって、あなたがたの子どもたち全員が平壌の外国語大学へ入学できることになった」。その時、「組織」が私たちの子どもたちを全員工作員に仕立て上げようとし...
米韓演習「対北配慮で縮小」はウソ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米韓合同の軍事演習が4月1日から約1カ月の予定で始まった。報道によれば、今回の演習は、4月末に南北首脳会談、5月には米朝首脳会談が控えていることから、北朝鮮を刺激しないよう演習期間を半分に短縮、規模の面でも空母や爆撃機が参加しないことにしたという。だがこれは、軍事を理解していないメディア側の誤った判断である。 ●もっぱら軍事的観点で判断 本来、冬季の米韓合同軍事演習は、田畑が凍結する...
公明は改憲推進を、さもなくば政権去れ 梅澤昇平(尚美学園大学名誉教授)
改憲問題は今年が勝負の年だ。自民党内の論議は活発だが、カギを握るのは公明党だろう。衆参両院で「改憲派」が議席数で3分の2を超える政治状況は今をおいてないかもしれない。 自民党単独ではないから、一定の妥協なしでは、国会発議はない。その内容も残念ながらベストなものとは程遠いだろう。平和安保法制の時もそうだったが、極めて不十分なものしかありえないと判断する。「半歩」前進するかどうか。逆に将来に禍根...