2018年7月の記事一覧
御嶽海初Vで浮き彫りになった大相撲の不安 佐野慎輔(産経新聞特別記者)
大相撲名古屋場所は関脇御嶽海が初優勝を飾り、一人気を吐いたが、肝心の3横綱がすべて休場し、話題の新大関、栃ノ心までが右足を負傷し途中休場した。 25歳、新星御嶽海の台頭に、新聞、テレビが〝救世主〟のように騒ぐのも無理はない。きたる9月の秋場所で11勝すれば、大関昇進の目安となる直近3場所33勝に届く。気の早い向きは、「次は大関」、そして「横綱」と、御嶽海フィーバーをあおり始めている。 し...
海の底で専守防衛は機能せず 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
「宇宙・サイバー空間の戦いが同時並行する現代戦において、日本が国是とする専守防衛は機能し得ない」。平成29年版の防衛白書を取り上げた2017年8月14日付の「直言」欄でそう書いた。宇宙空間、サイバー空間とも防御には限界があり、「やられたらやり返す」攻撃能力を保持することで、敵の攻撃を抑止する態勢を整えておかなければならないという意味である。今回は、海底の安全保障に関しても全く同様であることを述べ...
出生率回復あってこその移民政策 堀茂樹(慶應義塾大学名誉教授)
さる6月15日、いわゆる「骨太の方針」の2018年版が閣議決定された。中身を見てみると、外国人就労に関して、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れるため、就労を目的とした新たな在留資格を創設」という文言が入っている。 翌16日付の日本経済新聞は、「単純労働への外国人就労に門戸をひらくものとみられ、事実上の政策転換といえる」と報じた。過剰解釈の報道とはいえまい。経済財政...
全体構想なき日本の外国人受け入れ 浅川晃広(名古屋大学大学院講師)
政府は、人手不足に対応するために、新たな在留資格を創設し、外国人労働者を50万人受け入れていく方針を表明した。筆者としては、今回の方針は、近視眼的、なし崩し的という印象であり、なにより、中長期的な日本の外国人政策をどうするのかというグランドデザイン(全体構想)が見えてこない。 政府は今回の方針を「移民政策ではない」としている。では、そもそも移民政策とは何を意味するのか。なにより、「移民」とは...
矛盾だらけの新エネルギー基本計画 奈良林直(東京工業大学特任教授)
7月3日に第5次エネルギー基本計画が閣議決定され公表された。これは2002年6月に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、前回は2011年の福島第1原発事故を踏まえ、原発と化石資源依存度の低減、再生可能エネルギーの拡大を打ち出し、第4次エネルギー基本計画としたが、気候変動に対処するパリ協定の発効を受け、2030年および2050年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性を示すものとして見直し、第5次...
自民党総裁選は憲法改正論議を進める好機だ 榊原智(産経新聞論説副委員長)
憲法改正論議が停滞している。このままでいいはずがない。自民党が、国家国民の未来を重んじる政党であるなら、憲法改正論議を盛り上げるべく一層の努力を払ってほしい。そのための機会はまもなくやってくる。 自民、公明両党は、憲法改正国民投票に関する規定を公職選挙法に合わせる国民投票法改正案の今国会成立を断念し、秋に想定される臨時国会へ先送りする方針を固めた。極めて残念なことである。 森友、加計問題...
「サムライ」の名に値する戦が見たかった 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
サッカー日本代表「SAMURAI BLUE(サムライ・ブルー)」がワールドカップ(W杯)のロシアから帰国して出迎えの大歓迎を受けた。決勝リーグではベスト8進出は果たせなかったものの強豪ベルギー相手に見事な試合ぶりであった。だが、予選リーグでのポーランド戦における時間稼ぎのパス回しはいただけなかった。勝ち上がるための作戦だったとはいえ、観客席からブーイングが巻き起こったのは当然だった。日本サッカー...
サイバー戦士の大量投入で脅威増す中国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
任務が増大・拡大した反面、国防予算の強制削減が続いたことにより、岐路に立つ米軍の現状を別項で論じたが、本稿では、緒戦でものを言うサイバー戦に投入している人的資源について米中の差を比較してみたい 2016年の統合軍四半期刊行物(Joint Force Quarterly)に掲載された、米サイバー軍司令官ロジャーズ海軍大将(当時)へのインタビュー記事によれば、米サイバー任務軍の規模は約6200名...
「クリミア」容認に踏み込むトランプ外交 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)
トランプ米大統領は7月16日にフィンランドで行う米露首脳会談で、ロシアによるウクライナ領クリミア併合を容認する可能性のあることを示唆した。米欧の同盟関係に亀裂が深まる中、11、12日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を含め、西側同盟はかつてない試練に直面している。 トランプ大統領は大統領選挙戦中も、「クリミアの人々はロシアと一緒になりたかった」などと、ロシアのクリミア併合を支持するような...
米軍は今、広く薄い展開に 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
このところ在日米軍に絡む事故が続発している。航空機事故にせよ艦船事故にせよ、米軍基地の存在に反対する人達にとってみれば、不満の温床となっているであろうが、自衛隊(軍)経験者から見れば、それだけ与えられた任務が過酷で、人的にも機材面でも無理を強いられているのであろうと慮ってしまう。 その主たる原因は、北朝鮮情勢の緊迫化等に伴って任務が増大・拡大した反面、2013年から約5年にわたって国防予算の...