2019年9月の記事一覧
まだまだ甘い情勢激変への国防認識 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
令和元年版防衛白書が9月27日、閣議で了承された。今回の情勢判断の特徴としては、北朝鮮の核開発について「核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っているとみられる」としたことが大きい。 一方、気がかりなのは、同盟国アメリカのトランプ大統領が「日米同盟は不公平」と再三発言したことについて、何故か白書が全く取り上げていないことだ。 第3に、これまで安全保障上の友好国として認識されていた韓国が親北的な...
対中総力戦へ一体感強める米国 湯浅博(国基研企画委員兼主任研究員)
中国は繁栄するにつれて周辺国を脅し、南シナ海の人工島を軍事化し、略奪的な貿易慣行などで国際規範を無視してきた。時にトランプ米大統領に心変わりがあったとしても、彼の政権や米議会はもはや、これら傲慢な覇権主義行動を許さず、米国民の対中認識は後戻りできそうにない。 なかでも、クリストファー・フォード国務次官補が9月11日、中国の「地政学的な競争戦略」に対応して、各省、各局が政府全体で取り組んでいる...
前環境相の発言から考えたこと 西本由美子(NPO法人ハッピーロードネット理事長)
9月10日、原田義昭前環境大臣が退任直前、東電福島第1原発施設内のタンク群に大量に溜まったトリチウム処理水について、「思い切って放出して希釈するしか方法がないと思っている」と発言したことが話題になっています。この発言を失言だ、被災者を傷つける、などと批判的に報じるメディアがあります。しかし、はたしてそうでしょうか。 私は原発が立地する福島県双葉郡の住民として、こうした批判には短絡的な印象づけ...
軍事的マッチポンプ役は中国だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
19日のBSフジ「プライムニュース」に中東問題専門家として出演した田中浩一郎慶応大学教授は、今回のサウジ石油施設攻撃について「米トランプ大統領は歴史や国際法を知らず、イラン核合意から離脱して今回の危機を生んだマッチポンプ」と酷評し、「安倍総理はトランプ大統領にイラン核合意に復帰するように直言すべき」と主張した。 田中氏の〝助言〟を安倍総理が真に受けるとは思わないが、仮にそんな話になれば、平素...
小泉大臣はパフォーマンスより具体策を 奈良林直(東京工業大学特任教授)
東京電力福島第1原発でたまり続けるトリチウム処理水について原田義昭前環境大臣が退任直前、「思い切って(海に)放出して希釈する他に選択肢はない」と発言したことについて、後任として初入閣したばかりの小泉進次郎大臣は、発言はあくまで原田氏の個人的な見解だとし、お詫びしたいと述べた。 小泉氏は就任後直ちに福島県の内堀雅雄知事や地元漁連関係者を訪ね、「福島の皆さんの気持ちを、これ以上傷つけるようなこと...
オブライエン新安保補佐官への期待と懸念 島田洋一(福井県立大学教授)
トランプ米大統領が9月18日、辞任したボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の後任に、ロバート・オブライエン人質問題担当大統領特使を任命した。日米関係のさらなる緊密化に貢献して欲しいところだが、期待と共にいくつか懸念もある。 ●候補5人で最も安全な存在 オブライエン氏はポンペオ国務長官の下で、2018年5月以来、トルコ、リビア、イエメンなどで拘束された米国人の解放交渉に当たってき...
オイルショック前夜の兆候 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
14日にサウジアラビア東岸の国営石油会社施設二箇所が数十機の無人機(ドローン)と巡航ミサイルによって攻撃を受けた。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が犯行声明を出したが、ポンペオ米国務長官は攻撃にはイランが関与していると主張し、トランプ米大統領は備蓄石油の放出を決断した。サウジも、攻撃したドローンがイラン製と断定している。 15日のニューヨーク市場の原油先物価格は一時1バレル63ドル代と先週...
北東アジア情勢揺るがしかねぬ香港デモ 矢板明夫(産経新聞外信部次長)
香港で「逃亡犯条例」改正案を機に起こったデモが6月から拡大し、世界中の関心を集めている。デモの当初は、条例案の撤回のみを求めていたが、その後、「行政長官の辞任」や「直接選挙の導入」などの要求に変わり、「香港を取り戻す、革命の時代だ」が合い言葉となった。これまでの中国支配に対する香港市民の不満が一気に噴出し、自由と民主主義を求めるデモとなった。 香港の林鄭月娥行政長官が9月4日、条例案の撤回を...
在韓米軍の撤退に備えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を韓国が一方的に破棄を決めたことにより、米韓関係も極めて厳しくなってきた。嘗て1970年代末期に米大統領となったカーター氏は在韓米軍の撤退を選挙公約に掲げたものの実現できなかったが、韓国の文在寅現政権と同じ左翼政権であった盧武鉉政権時代の2004年に米国は、在韓米陸軍の主力である第二歩兵師団隷下の一個旅団をイラクに派遣して、その後、韓国に復帰させていない...
新内閣は「国の基本」に果敢に取り組め 榊原智(産経新聞論説副委員長)
いよいよ安倍政治の集大成を図るときがきた。 第4次安倍再改造内閣が発足し、自民党執行部も改まった。 安倍晋三首相の自民党総裁任期は、再来年の9月末日までだ。総裁4選があるかどうかはまだ分からない。ならば、まずは残る任期を使って、国家国民のため最大の成果を挙げるよう努めてほしい。 新内閣には、2つの大きな国家的、国際的行事が控えている。 第1は、10月、11月と続く、今上陛下の即位...
米有力紙が掲載した「原発のすゝめ」 島田洋一(福井県立大学教授)
米紙ワシントン・ポスト9月4日付に、原発に関する興味深い論説が載った。筆者は常連コラムニストのヘンリー・オルセン氏。タイトルは単刀直入に「原子力を無視する候補者は信用するな」(Don’t trust candidates who ignore nuclear power)である。日本にも参考になる、というより、日本にこそ一層当てはまる論点が多々ある。コラムの骨子を紹介しておこう。 ●大統...
中国のウクライナの航空エンジン会社買収の真相 グレンコ・アンドリー(ウクライナ出身の国際政治学者)
最近、ウクライナの航空エンジンメーカーが中国国有の航空エンジン開発・製造企業グループ「中国航発」の子会社による買収攻勢にさらされ、注目されている。ウクライナの「モトール・シーチ(Motor Sich)」で、飛行機やヘリコプター用のエンジンを供給する大企業である。品質が良いとされ、世界的に需要がある。主な市場はロシアやアジア諸国である。 数年前から「モトール・シーチ」のエンジン技術に中国航発が...
人民解放軍は既に香港に介入している 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国防大学は先ごろ、2015年から始まった中国人民解放軍の改編と、それによって生じた事象を纏めた『習主席の人民解放軍再建(Chairman Xi Remakes the PLA)』を出版した。厚さ6cmもの詳細な報告だが、それによれば、2003年に政治工作条例によって規定された世論戦、心理戦、法律戦の「三戦」を司る台湾対岸の福建省福州市にある第311基地は、改編後、電子戦、サイバー戦、宇宙戦を司...
韓国人のうぬぼれと偽善 鄭大均(首都大学東京名誉教授)
日本人へのうぬぼれを見せびらかす韓国人が増えているのが気になる。文在寅大統領は8月29日の閣議で、日本政府の韓国に対する輸出規制について「日本は経済報復の理由すら正直に明らかにせず、言葉を変えながら合理化しようとしている」と批判し、「歴史問題に対する態度も正直でない」とも述べた。 文大統領の対日発言には、ときに子の間違いを正す親風の発言があって気色悪い。「盗人猛々しい」と訳されて話題になった...
韓国で日章旗は問題とされない 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
高校野球日本代表チームが韓国遠征に際して、わざわざ日章旗のエンブレムがついたシャツの着用を取りやめたことに対し、日本ではかまびすしい議論になっている。しかし、これは韓国に関する大きな無知が原因だと思う。 韓国でスポーツの日本代表が日の丸をつけていることが、問題になったことは過去に1度もない。今回も、韓国入りした後は日の丸がついている服を着用したというが、一切悶着は起きていない。たぶん、現地で...