公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2020年7月の記事一覧

 中国がインドの隣国ブータン東部の領有権を主張し始めた。6月初め中国は、世銀グループの地球環境ファシリティ(GEF)によるブータン東部「サクテン野生動物保護区」への支援案件に対して「中国が領有権を主張している地域だ」として反対した。 ブータンと中国は国交がないが、これまで国境画定協議を24回行っている。しかしブータン政府によると、これまで中国側が主張したのはブータン西部のドクラム高原と中部の...

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 アメリカの南北戦争(1861~1865)に関連した作品で、「聖書のように読まれ、聖書のように売れた」と喧伝される作品が、少なくとも2作ある。ストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』とマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』である。 南北戦争から70余年の視点 ミッチェルは『風と共に去りぬ』の中で、戦後アトランタに進駐してきたWASP(ワスプ)の夫人たちをこう非難している。「『アンクル...

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 7月10日、99歳の生涯を閉じた韓国の英雄、白善燁将軍に対する文在寅政権側の冷遇が自由世界の心ある人々を怒らせている。白将軍が逝去したのは10日の午後11時だが、同じ日の零時過ぎ、セクハラで告訴されて自殺した朴元淳ソウル市長の死体が山中で発見されている。つまり、ほぼ同じときに、韓国の国是である反共自由民主主義を守るために命がけで戦った英雄と、国是を崩すために左派市民運動家、人権弁護士、政治家とし...

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 10日に韓国陸軍の白善燁元参謀総長が亡くなった。白将軍は、朝鮮戦争勃発時、未だ米軍が本腰を挙げる前に第一師団長として釜山を死守、自ら突撃を敢行し米軍の本格的参戦を助長させた。彼の行動がなければ現在の韓国はなかったことから救国の英雄と言える。この「天は自ら助くる者を助く」の教訓は、我が国の防衛にも当てはまる。 ハリー・ハリス駐韓米国大使やロバート・エイブラムス在韓米軍司令官が埋葬式にまで参列...

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 国境問題を巡って中国とインドの関係が急速に悪化している。6月15日にはインド北西部のヒマラヤ山中の国境地帯ラダック地区にあるガルバン溪谷で軍事衝突が起き、20名のインド兵と43名の中国兵の死者が出た。1962年に突然の中国の侵略を受けたネルーと同じように、モディ首相は関係改善を目指してきた中国に裏切られたことを思い知らされた。 中印関係の虚実 インドは反中陣営の一員であるかのような感...

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 中国の国内総生産(GDP)は、新型コロナウイルスの影響で1~3月期は前年同期比6.8%減と統計開始以来、初のマイナス成長に陥ったが、4~6月期は物価変動を除いた実質で同比3.2%増と市場予想を上回る回復を見せた。なお、年初来の1~6月期で見ると、前年同期より1.6%減で、依然としてマイナス圏で推移している。 足下の急速な回復は、まずは、一定の感染抑制による生産活動が再開できたことによるが、...

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 令和2年版の防衛白書が7月14日、公表された。今回の白書では中国に対する厳しい表現が目立っているが、それでも冷戦時代に旧ソ連に対して使われていた(潜在的)「脅威」という言葉は使われていない。尖閣諸島という日本の領土を侵略しようとしている国が脅威でないとでも言うのだろうか。 気になる点がもうひとつ。米国の日本に対する防衛努力を求める声が殆ど無視されていることである。 日本の防衛努力は十...

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 韓国の朴元淳ソウル市長が7月10日、市内の山中で遺体として発見され、自殺と断定された。朴市長は8日までは、不動産価格の暴騰を抑制する問題で、長年の左派運動の同志である与党「共に民主党」の李海瓚代表と会談するなど通常に業務をこなしていた。 ところが、9日に市庁に出勤せず全ての日程をキャンセルしていた。夕方、同居していた娘が(妻とは別居中)、「父が遺言めいたことを残して市庁官舎を出た後、携帯電...

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 韓国総選挙の与党圧勝で政治基盤を盤石に固めた文在寅政権が7月3日、北朝鮮担当の閣僚や大統領府幹部を総入れ替えする人事を発表した。その陣容は、親北、従北の勢ぞろいで、まるで「北朝鮮の御用聞き」といった布陣である。 文政権は年内の米朝首脳会談再開に向けて、仲介の働きかけを続けているとされるが、北朝鮮ナンバー2の金与正第1副部長の指令一下、南北共同連絡事務所を爆破され、窮地に陥っている。文大統領...

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 自民党の二階俊博幹事長は自他ともに認める「親中派」である。自民党外交部会などが香港統制を強める中国の香港国家安全維持法に抗議し、習近平国家主席の国賓来日中止を求める決議案をまとめたときも、「日中関係を築いてきた先人の努力を水泡に帰すつもりか」と不快感を示し、決議案を後退させた。二階氏の認識は間違っている。一方的に現状を変更しようとしているのは中国だ。 岸田、石破両氏の二階詣で 決議案...

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 中国の人民解放軍海軍は6日までに、南・東シナ海と黄海の3海域で同時に軍事演習を行った。これに対抗するかのように1日から5日までの間、米海軍の空母ニミッツとロナルド・レーガンの2隻が南シナ海で演習を行い、米海軍の健在ぶりを示した。米空母にとって怖いのは中国大陸と駆逐艦に配備されている対艦ミサイルであり、仮に人民解放軍海軍保有の空母2隻と戦闘状態に陥入っても米海軍の完勝であろう。理由は艦載戦闘機の作...

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 中東で新型コロナ感染者が急増している。新型コロナはイランが主要感染ルートとなって瞬く間に中東へ広がった。サウジアラビアでは3月2日に初の感染者が報告され、全国で厳しい移動制限や罰金を科して感染収束に努めてきた。 だが、新型コロナ対策による経済活動の制限と原油減産は、原油収入に依存するサウジの財政を苦境に追い込んだ。ロイターの試算によるとサウジの外貨準備高は、3月には前月から約270億ドル減...

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 新型コロナ禍で今春深刻化した国内のマスク不足は解消し、4月に1枚80円だったマスクの平均価格は6月末には20円まで下落した。多くの日本企業が大量生産しており、今度は逆に、マスクの過剰生産、過剰在庫が予想される。 政府はこの際、余剰マスクを買い上げて、米国に無償支援したらどうか。米国のコロナ感染者は6月末で255万人、死者12万5000人。新規感染者が再び増加し、1日4万人に上るなど苦境にあ...

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 あえて取り上げるのも馬鹿々々しい話の一つが、「尖閣諸島は中国のもの」という荒唐無稽な主張だろう。最近、中国は特に武装公船を尖閣周辺に常駐させ、我が国漁船が操業すればちょっかいを出し、周辺の海底地形に勝手な中国名を付けるなど、言葉だけではなく、様々な形で行動をエスカレートさせている。気付いた時には中国の軍人が住み着いていたなんてことは、南シナ海で現実に起こっている。 他方、わが国で尖閣諸島に...

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