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国家基本問題研究所

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新たな危機、北朝鮮が核を小型化 櫻井よしこ

新たな危機、北朝鮮が核を小型化

櫻井よしこ

 

「我々(北朝鮮)はすでに核兵器の小型化に成功し、小型化した核を多数保有している」

北朝鮮外務省の李根アメリカ局長が昨年秋に訪朝した米中央情報局(CIA)の元関係者にこう述べたと、6月15日付の「産経新聞」がソウル発で報じた。

ミサイルに積めるほど核を小さくしたというのだ。事実なら、日本及びアジア諸国、米国への北朝鮮の核の脅威は飛躍的に高まる。新たな、大きな不安要因でアジア情勢は大きく変化すると見なければならない。

北朝鮮は、核の運搬手段としてのミサイルも開発済みで、年来、ノドンミサイルをパキスタンをはじめとする第三国に秘密裡に輸出してきた。

たとえば1993年12月、北朝鮮はパキスタンにノドンミサイルを30億ドルで売り、これは現金で決済された。パキスタンは後にこのノドンを、ヒンズー教徒と戦ったイスラム戦士の名をとってガウリと命名した(ゴードン・コレーラ『核を売り捌いた男』ビジネス社)。

北朝鮮のミサイル売却先はパキスタンにとどまらない。2000年にはノドン50基をリビアのカダフィ大佐に6億ドル(約480億円)で売った。イラン、ベネズエラ、メキシコにも売った。北朝鮮は現金を得るためには、いまやおよそ、何でも売るだろう。

北朝鮮をはじめ、これらの国々が、或いはアルカイダなどの勢力が、ミサイル技術と小型核の双方を保有すればどうなるか。これこそ世界中が怖れるシナリオである。北朝鮮は本当に小型核の技術を手に入れたのだろうか。

韓国国防相の金寛鎮氏は、6月13日、国防委員会で、北朝鮮は核の小型化に成功したとの認識を述べた。根拠は、06年と09年に核実験を実施した北朝鮮には、そのときから今日まで、小型化技術を開発する十分な時間があったというものだ。

国際情勢の深い闇

金国防相は、「北朝鮮が修辞的脅威を通してわれわれに圧力を加えながら、さまざまな手段と方法で奇襲挑発する可能性が漸増している」「北朝鮮は東海(日本海)・西海(黄海)侵入勢力の海上侵入訓練を繰り返している」とも述べている。

北朝鮮の核に関する今年2月の韓国の世論調査によると、北朝鮮の核に対して韓国も核武装すべきだという回答が66・8%に達している。北朝鮮が核を小型化したとすれば、韓国世論はさらに厳しくなるだろう。民族と国家の生存に関わる危機について備えなければならないのは当然だと、「統一日報」論説委員の洪熒(ホン・ヒョン)氏は語る。

「ところがいま、韓国の政界で議論されている選択肢は主として二つです。①韓国自身が外交交渉で対北抑止力を発揮する、②米国の戦術核を再度韓国のために備えてもらって抑止力とする、というものです。

①では埒が明かないことは目に見えています。国民の方がはるかに現実を見ているのであって、李明博大統領も政治家も韓国自身の核武装を考えなければならない局面なのです。

政治家や外交官が妥協の精神から②を選択することはあり得ないでしょう。韓米関係はいま、緊密ですが、韓米連合司令部は2015年に解体されます。米国は来月にもアフガニスタンから撤退を始めます。撤退、縮小傾向に入った米国に再度、韓国に戻ってもらい、韓国防衛の前線に立ってもらえるのか。米国の意思以前に、この道は独立国として考えるべき道ではないでしょう」

洪氏は、韓国の国防体制が脆弱になりつつあると指摘する。

「連合司令部の解体で、韓国は北朝鮮に基本的に自力で立ち向かう形になります。北朝鮮とその背後の中国に、自力で立ち向かうということです。北朝鮮を事実上の保護国にしつつある中国に備えるためにも、我が国はいますぐにでも強力な備えの構築に入らなければ、連合司令部解体後では間に合わないのです」

韓国には少なくともこうした危機感があり、来年の大統領選挙では安全保障問題が最大の争点となると見られている。他方、日本では、北朝鮮の通常核についても小型核についても、これを国防の危機ととらえる議論そのものが欠けている。いまこそ、北朝鮮が核小型化の技術をどのようにして手に入れたのかを考え、その背後にある国際情勢の深い闇を見なければならない。

北朝鮮が独自の努力で小型核を開発した可能性は一般論としてないわけではない。専門家は失敗だったと見るが、彼らは06年と09年に核実験を行ったのであり、核製造の先に小型化技術の開発が来るのは不合理ではないからだ。

「新悪の枢軸国家」

だが、もうひとつの、より高い可能性は、パキスタンの技術を手に入れたことだ。周知のようにパキスタンは中国の助けを得て、核を開発した。鄧小平が1982年にイスラム教圏と社会主義圏を中心に第三世界に核を拡散する方針を定めて、積極的に技術を拡散させたのだ。結果、いまやパキスタンは100発以上の核を保有し、英国を抜いて世界第5の核保有国になったと見られている。核兵器の小型化にも成功したと見られており、インド情報筋はその数を少なくとも50発と推測する。

パキスタンの小型化技術が北朝鮮に渡ったと断定する材料はないが、両国の年来の濃密な関係からその可能性は大いに考えられる。

先に暗殺されたパキスタンのベナジール・ブット氏は、首相時代、自らを「ミサイルの母」と呼び、北朝鮮との取引に積極的だった。パキスタンが北朝鮮のミサイルを最初に購入したのは、彼女が首相だったときだ。前述のように、その取引は現金で決済され、パキスタンのミサイル購入はその後も続いた。
97年から98年にかけて、ノドンミサイル12基が30億ドルで取引されたが、このときに、パキスタンのウラン濃縮技術が代金の代わりに北朝鮮 に渡ったとみられている(前掲書)。

両国はミサイル技術、ウラン濃縮技術など、国家の最重要の機密をやり取りしてきたわけだが、そこに小型核の技術が加わった可能性はあるだろう。

現実に北朝鮮はいま小型核で武装したと宣言する。これら一連の動きを、止める意思があれば十分に止める能力を持っているのが中国だ。中国は北朝鮮にもパキスタンにも、両国の運命を決するほどの経済援助、武器援助を行っているからだ。しかし、中国は止めなかった。とすれば、中国、北朝鮮、パキスタンこそ、「新悪の枢軸国家」と呼ばなければならない。

こうした状況を眼前にして、前述のように韓国には少なくとも危機感がある。安全保障の危機意識を欠落させているのが日本だ。これでは滅びるのではないかと、私は怖れている。

『週刊新潮』 2011年6月30日号
日本ルネッサンス 第466回

自由と民主主義の価値観を共有する台湾の運命は日本の運命と重なる 櫻井よしこ

自由と民主主義の価値観を共有する台湾の運命は日本の運命と重なる

櫻井よしこ

 

台湾が国家として現状維持を貫けるのか、それとも中国の一部となるのかは、台湾のみならず、日本を含むアジア全体の運命にかかわってくる。6月初旬にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議でも、焦点の一つが台湾問題だった。

記者会見でのゲーツ国防長官に対する質問のほとんどが、強大化する中国の軍事的脅威に、とりわけ台湾有事の際に米国はどう対処しうるのかというものだっ た。アジア諸国に中国脅威論が充満していること、最も切実で緊急な課題が台湾の安全であることが浮き彫りになった会議だった。

そうしたなか、台湾では来年1月14日に行われる総統選挙に向けて、熾烈なせめぎ合いが進行中だ。国民党の馬英九総統が勝つのか、民進党の蔡英文代表が勝つのかによって、台湾の運命は決まる。両氏の違いはいわゆる「92年合意」を認めるか否かである。

92年合意とは、1992年に中台間で「中国は一つ」と合意したというものだ。当時の国民党政権と中国共産党との合意だそうだが、李登輝・元総統をはじめ台湾人がこれを否定する一方で、外省人と中国政府は、確かに合意したと主張するのだ。

今年5月11日にも国民党名誉主席の呉伯雄氏以下国民党代表団が中国の成都を訪れ、経済交流の深化、直行便の拡充などを話し合った際、「両岸の平和発展の土台は92年合意」にあると強調した。92年合意の心は、中台統合は当然だというものだ。

中国共産党が一度も足を踏み入れたことのない台湾がなぜ、中国と統合されなければならないのか、とうてい理解出来ないのだが、いわゆる92年合意の考え方は想像を超えて広く深く浸透していると思わせられたのが、6月6日、北京を訪れた台湾の退役将官約20人の言動だった。

許歴農・元総政治作戦部主任が率いる台湾軍の退役将官らが中台軍人交流座談会に出席、中国政府約300人の前で、以下の問題発言を行った。

「われわれ国軍(台湾軍)も共軍(中国共産党軍)も共に同じ中国軍だ」「歴史的な任務と使命である(中台)統一に向けて共に頑張ろう」

台湾側の発言に対して、中国側から現役軍人の羅援少将が応えた。

「中台が統一すれば、21世紀はわれわれ中国の世界だ」

ちなみに羅援少将は右の軍人交流座談会に先立って、シンガポールでのアジア安全保障会議に出席し、中国軍を代表して発言した人物である。台湾軍の代表の許 歴農・元総政治作戦部主任は、肩書からもわかるように政治将校のトップである。政治将校は軍人の思想を取り締まる役割を担うもので、軍に対して圧倒的な支 配力を持つ。

いかなる意味でも台湾の安全に全責任を持たなければならない軍が、現役を退いた元将校であるとはいえ、中国との統一、さらにいえば中国に吸収合併されるこ とを「歴史的な任務と使命」と宣言したことの衝撃は大きい。にも拘わらず、馬総統は「困惑し、心を痛めている」と語ったのみだ。

本来の任務からはるかに逸脱した軍人らの言動は厳しく処罰すべきものだが、そうしなかったのは、「中国は一つ」という92年合意の虚構を馬総統自身が支持しているからである。

来年1月の馬総統vs蔡英文代表の一騎打ちは、したがって、中台統一か事実上の独立国としての現状維持かを決する戦いとなる。現状で五分五分の戦いに半年 あまりで結論が出る。日本国民も日本政府も深い関心を持ちたいものだ。台湾は東日本大震災で世界一心のこもった支援をしてくれた、世界一の親日国家であ る。自由と民主主義の価値観を共有し、歴史観もきわめて近い。その台湾の運命は日本の運命と重なる。だからこそ、台湾が台湾人の望むかたちで存続出来るよ う、日本は官民挙げて支援していくのがよい。

『週刊ダイヤモンド』   2011年6月25日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 892

日の丸を日の沈む象徴にするな 平川祐弘

日の丸を日の沈む象徴にするな

比較文化史家・東京大学名誉教授 平川祐弘

 小鳥でさへも巣は戀し、

 まして青空、わが國よ、

 うまれの里の波羅葦増雲(パライソウ)。

 19世紀南仏の詩人オーバネルは「青い空の私の故国は楽園だ」と歌った。その郷土賛歌を、上田敏は南蛮時代に伝わったキリシタンの語彙「波羅葦増雲」を借りて、異国趣味の日本語芸術作品に仕立てた。パライソウとはポルトガル語でパラダイスの意味だが、原詩「故国」は宗教的な天国賛歌ではない。天草に旅したとき、私は地方新聞にそんな説明をした。

 ≪在米の新渡戸、内村国恋うる≫

 その日本人にとっての故国の問題だが、明治初年にキリスト教に改宗した新渡戸稲造や内村鑑三は米国へ渡って、祖国を恋しく思った。日本が異教の国として米国で野蛮視されればされるほど、釈明したい気持ちはつのったに相違ない。新渡戸は英文で『武士道』を著し日本人の倫理性を強調した。内村は宣教師の無知と偏見に憤慨し、無教会主義を唱え、西洋人宣教師の傘下を離れた。だが西洋に反発した彼らの日本人としての自己主張には力みが強過ぎる。

 米国で排日移民法が成立するや内村は徳富蘇峰と手を握り、「米国に有るものは金である。金を除いて米国に有るものは殆(ほとん)ど無い。かつて有りし高貴なる精神は今は消えて殆ど跡なしである。文明国として米国マイナス金はゼロである」と、幼稚な反米主義を繰り返した。しかし新渡戸や内村が、外国にさらされた日本人として、祖国を愛したことは間違いない。

 だが、昨今は日本人が日本を必ずしも肯定的にとらえない。日本国民であるより世界市民であれ、と鳩山由紀夫前首相は主張した。自国を批判する人がいることは大切だ。しかし日本の悪口を言う方が恰好(かっこう)がいいという知的ファッションに乗っただけの人もいる。世間には親が嫌いな子供もいるようなものだ。確かに親に楯突くことで子は育つ。そんな反抗期の子に親孝行を説いても無駄だろう。だが気がついてみると、孝行しようと思うときには親は亡い。

 ≪反国旗・反国歌の奇妙な論理≫

 民主党の指導者には国家観が欠落しているといわれるが、彼らが学生運動をしていた1960年代は国家を否定することが恰好がいい時代だった。菅直人首相の世代にとって日の丸掲揚などどうでもよかった。現に菅氏は君が代の歌詞に文句をつけている。造反児に似て、国家が嫌いな子供も大人も、また大人子供というべき教師もインテリもいる。なにしろ、この国には外国語で外国人と対決したことのない国内向けの国際主義者が多数いる。大新聞や大書店も反国家を売り物にしている。

 ミッション左翼の学校も反天皇・反国家で、建国記念を祝わぬようにと2月11日を試験日にしたりする。だが、そんな学校を出た人が、国のためになにかしようと思うときには国は亡い、では取り返しがつくまい。左翼系の閣僚も世間の目を気にして国旗に一礼して記者会見に臨む昨今だが、気がついてみると、かつて rising sunと海外で呼ばれた日の丸は、民主党政権下で日の出よりも日の沈む setting sun の象徴になりつつある。

 こんなままでよいのか。反国旗・反国歌主義の人に聞きたい。西洋のキリスト教学校で自国の国旗掲揚や国歌斉唱に反対の学校はあるのか。母国が恋しいのは人間性の自然、自分の母が好きと同じだろう。信者が天国に憧れるのも同じだろう。それをよもや偏愛とは言うまい。敏の訳詩が故国賛歌とも天国賛歌とも読めることは両者に大差がないことを示唆している。日本軍が掲げた旗の下で残虐行為が行われたと主張する人は、十字軍の旗の下でも赤軍の旗の下でも、さらに多くの人が虐殺されたことを想起すべきだろう。

 ≪素直に国愛する子供育てたい≫

 しかし一部の先生たちは、国歌斉唱の際、起立を命じた校長の職務命令を最高裁が合憲と判断したことに不満顔だ。特定の国を他国より愛するのは平等の精神に反する、それで愛国に反対だという。それを聞いた私は「それでは特定の女を妻としてほかの女よりも愛するのは平等の精神に反しないのですか?」と、ミッション系の大学の講演の席で言ってしまった。聴衆が爆笑したこともあって、その場では誰も私に反論しない。しかし後で「誰だ! あの良心の自由に理解のない平川を講演会に呼んだのは!」とぶつぶつ言ったそうである。

 自分の親や先生を素直に愛することのできる子供は幸せだ。素直に国を愛する子供を育てたい。公平に自国を愛する自敬の人こそ隣人や隣国をも大切にする人だからだ。日本の多くの国立大学は日の丸を掲揚しない。反対者がいるからだ。東京外国語大学の学園祭では、大学で教える26外国語の国の国旗を掲げる。それに伍(ご)して日章旗がやっと掲げられたのは、外国人のための日本語学科が開設されたつい先年からである。それまでは左翼の「良心的」教授が大学院生をけしかけて日の丸の旗を降ろさせたのだと学長が苦笑した。(ひらかわ すけひろ)

6月27日付産経新聞朝刊「正論」

6/24月例研究会 静岡新聞に掲載

平成23年6月24日に行った月例研究会「放射線被害の虚実」の模様が、6月25日静岡新聞朝刊に掲載されました。

 

 

 

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アジアに充満する中国脅威論 櫻井よしこ

アジアに充満する中国脅威論

櫻井よしこ

 

6月5日までの3日間、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議は、アジア、ユーラシアで先鋭化するであろう米中の対立関係を 浮き彫りにした。そこに見えたのは、中国に対する怖れが強い警戒心となって、米国接近を加速するアジア諸国の姿でもあった。

30ヵ 国以上の防衛閣僚らが出席する同会議は英国の国際戦略研究所(IISS)が主催し、そ の時々の世界の軍事情勢を映し出してきた。10年目の今年、世界情勢を象徴していたのは、リー・クアンユー公共政策大学院のマーブバニ院長によるゲーツ米国防長官への問いと答えだった。

マーブバニ氏はこう尋ねたのだ。

「ゲーツ長官、我々は皆、この地域に米国が存在し続け米軍駐留を維持し続けるとの発言に心を打たれました。しかし、経済原理からして、米国の軍事支出は減 り、中国のそれが増えるとき、当地域の軍事状況も変化を迫られます。米国の影響力低下が懸念される中、5年後も米国がこの地域にとど まり秩序を守ってくれると考えてよいのでしょうか」

ゲーツ長官の基調講演は3日間の会議の中日に行われ、マーブバニ氏の質問は講演に続く質疑の最後の問いだった。小国シンガポールの 知識人は、事実上、米国に、アジアを守り続けて欲しいと訴えたに等しい。

長官は答えた。

「答えはシンプルです。5年後、当地域における米国の影響力は現在より強まることはあっても弱まることはありません。そのことに私 は100ドルを賭けましょう」

会場は爆笑に包まれたが、右のやりとりほど、アジアで起きつつある「衝撃的かつ驚くべき変化」「米国とより強い軍事的協力を打ち立 てたいという切望の広がり」(ゲーツ長官演説)を表現していたものはない。

「海空戦」

基調講演で長官は米国の目標を4点にまとめた。①自由で開放された貿易、②国際法の遵守と各国の権利と責任に基づく秩序、③海、 空、宇宙、サイバー空間へのアクセスの自由、④紛争の平和的解決、である。

長官は米国のアジアへのコミットの証しとして東日本大震災での日本との協力を例に挙げた。震災発生から24時間以内に米国は「トモダチ 作戦」を開始、ピー ク時には2万4,000の軍人、空母2隻を含む24隻の艦船、190機の航空機を派遣したと語り、日本、韓国、インド、豪州、シンガポール、ベトナムなど との個別の協力関係を詳述したうえで、米国がアジアにおける軍事力の強化に努めること、米軍は北東アジア、東南アジア、インド洋に展 開し続けることを強調 したのだ。

米軍は戦略的、質的改善策によって以前にも増して強力であると強調しつつ、長官は、米軍は海洋及び通信におけ る接近拒否問題に直面していると語った。米軍 を特定の地域から遠ざけるために高度な技術を駆使した、新たな妨害作戦が行われていることを指摘し、対して米国は「海空戦(エア・シーバトル)」という新 戦術を構築したと述べる。

名指しは避けたが、いずれも中国を念頭においた発言だった。無論長官は中国に「前向きかつ協力的で総合的な関係」構築を呼びかけ、 軍相互の関係を強化する必要性も強調した。

講演後の質疑応答では、高まる中国の脅威の前で、ゲーツ長官の答えよりも、30ヵ国余りの専門家や政府関係者の質問がアジア諸国の本音を表していて興味深い。わかり易くするために質問に多少の注釈を加えて幾つか紹介してみる。

◎米軍に対する接近拒否は、中国の台湾侵攻において最も懸念されるが、米国は対処出来るのか。
◎中国艦船はベトナムの石油資源探査船のケーブルを切断し、フィリピン領有の岩礁に構造物を建築した。この問題をどう解決出来る か。
◎中国が強める対米接近拒否能力にどう立ち向かうか。
◎米国はある種のサイバー攻撃は戦争行為と見做すとの方針を定めたが、中国を起点とする夥しい対米サイバー攻撃に対応出来るのか。

次々に発せられる問いはどれもみな、中国への不信と反発と怖れから生まれていた。いまやアジアには中国脅威論が充満しているのである。

中国に厳しい視線が注がれる中で、中国人参加者も問うた。復旦大学の呉心伯(ウーシンボ)副院長は以下のように反問かつ反撃した。

米中関係深化の妨げとなっているのが米国の台湾への武器売却であり、中国近海における米国の軍事的及び情報収集活動である。米国は世界 のどの地域にも自由 に接近出来ることを当然視するが、中国にとって米国の活動は恫喝的かつ押しつけがましく映る。米国は大国として自らを律し、弱小国に対して繊細でなければならない。こうした点に米国が配慮することが、米中の軍事的信頼関係を醸成する上で欠かせない。

対中国で国際社会が連携

呉氏の対米批判は、実は全て、中国自身にはね返ってくる性質のものだ。しかし、中国はそうは考えない。それにしてもゲーツ長官の回答は明快だった。

「米国の行動は全て国際法に則ったもので、海洋及び空における行動は諸国の領海、領空のルールを遵守したうえで行われている。いま この議論で重視すべきことは透明性の一語に尽きる」

軍事力を増強するにしても、意図と目的を明らかにしさえすれば、他国の懸念は招かないと、長官はごく当然の主張をした。国際法を無視し、透明性を欠く中国は反論できない。

日本に当てはめれば、なぜ中国は沖縄本島と宮古島の間を大艦隊を組んで航行するのか。なぜ、尖閣諸島や東シナ海の領有権を主張し、なぜ 沖縄も中国領だと言 うのか。大海軍を作り上げたうえで武力で奪う気なのか。意図をはっきりさせよ、ということになる。ゲーツ長官の透明性の強調は、至極納得のいくことだ。

そのあとの問いが、冒頭で紹介したマーブバニ氏の、米国はずっとアジアにいてくれるのかというもので、これを以てゲーツ長官への質疑応答が終わったのだ。

翌日、中国の梁光烈国防相が演説し、冒頭で「核心的利益は尊重されなければならない」「第三国を狙った同盟関係は許されない」などと強調した。対中国で国際社会が連携する状況への強い警戒心を抱きつつ、中国外交の最重要の柱である核心的利益、台湾、チベット、南シナ海には第三国の干渉を許さない、という柱は断固として守る姿勢である。しかし中国が強硬な対外政策を維持することは各国の警戒体制を強化させるだけである。外交巧者の中国はすでに外交における柔軟性を増しつつある。その背後で国内を固めるために苛烈な弾圧が行われているのが現状である。

『週刊新潮』 2011年6月23日号
日本ルネッサンス 第465回

6月24日「放射線被害の虚実」開催

平成23年6月24日(金)全国町村会館にて、「放射線被害の虚実」と題し月例研究会を開催しました。
 詳報は後日掲載致します。

 

 

原発問題で肩すかしの提言 冨山泰

PDFファイルでご覧ください。
第95 回:平成23年6月27日原発問題で肩すかしの提言(冨山泰)

 

 

 

 

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自民は大臣ポストに釣られるな 遠藤浩一

自民は大臣ポストに釣られるな

遠藤浩一

 

≪大連立に乗らなかった吉田茂≫

 昭和22年4月25日、新憲法下初の総選挙で社会党が第一党に躍り出ると、西尾末廣書記長の口から「そいつぁえらいこっちゃあ」という一言が漏れた。

 社会党に政権担当能力がないことを弁(わきま)えていた西尾は、第二党の自由党を率いる吉田茂に大連立を打診し、「総理大臣は必ずしも第一党でなければならないということはない」と、“吉田首班”容認にまで踏み込んだ。まず連立政権に参加し、その過程で与党としての訓練を積むべきだというのが、西尾の考えだった。

 これに対し、吉田はもう一枚老獪(ろうかい)だった。第一党に政権を譲り自らは下野するのが「憲政の常道」であると主張し、党内にくすぶる連立参加論を抑える一方(当時から“大臣病症候群”が見られたらしい)、社会党に対しては「容共左派と手を切れ」と迫った。むろん無理難題であることを百も承知で敢(あ)えてふっかけたのである。

 一旦は社会党に政権を担当させても早晩行き詰まるに決まっているから、ここは野党としての筋を通して、満を持して政権を奪還すればいい、というのが吉田の肚(はら)だった。

 結局、「大連立」は成らず、社会、民主、国民協同の3党による中道・左翼連立政権が成立するも、片山(社会)-芦田(民主)両内閣は1年半で瓦解(がかい)する。この間、国民の間では保守政権復活への期待が高まり、昭和24年1月の総選挙で、(自由党改め)民主自由党は264議席を獲得して、圧勝する。

 ≪恋々とせず返り咲けたと伴睦≫

 吉田の番頭役(自由党幹事長)として対社会党折衝に臨んだ大野伴睦は、「政権に恋々としなかったことが、かえって国民全体の信任を獲得、次に堂々と第一党になりえた」と振り返っている。

 60余年前の経験から、今日の自由民主党が政略上学ぶべきことは、はっきりしている。大臣ポストの1つや2つに釣られてはならないということである。政権を奪還するという目的を達成するために自民党が採るべき選択肢は、野党としての筋を通して政権に恋々としないこと、これ以外にない。

 茶番のような菅直人首相による退陣表明のあと、一旦は高まった大連立熱が自民党内で急速に冷めつつあるのは、自由党以来の遺伝子が残っているということか。それはそれで結構なのだが、事はそう単純ではない。今日の状況は、自民党をして専ら政略上の要請をもって判断せしめることを許してはいないからである。

 「大連立」の掛け声の下、大臣ポストに群がろうとすれば、その浅ましさはただちに見透かされるだろうし、所詮、オール与党体制(ないしその変形)の構築だから、議会が狎(な)れ合い、機能停止状態に陥る危険性もある。

 他方、「筋を通す」と言えば聞こえはいいけれども、野党が被災地の復旧・復興に非協力的な態度をとりつづけたならば、これまた有権者の批判を浴びることになりかねない。特に衆参“ねじれ”状況にある以上、野党の責任は重く、国民はその行動を注視している。自民党としても、判断が難しいところだと思う。

 ≪民主党との狎れ合いは禁物≫

 筆者は、いくつかの条件が整えば「大連立」(閣外協力が望ましい)も当面の選択肢として有効と考えている。すなわち、(イ)期間は半年から最長でも1年以内(ロ)連立解消後はただちに解散・総選挙を断行して国民の信を問う(ハ)取り組む課題は、(1)被災者救済と被災地復旧(2)緊急不可欠の復興策策定と実行(3)福島第1原発の事故処理(4)選挙管理、の4つに絞る-という条件である。

 一部に、与野党が協力体制を構築して、復興・原発対策のみならず、税と社会保障の一体改革から選挙制度、憲法にいたるまで議論すべきだという意見もあるが、これは邪道だ。こうした基本的な、しかも大きな問題を処理するには、現在の議会構成には重大な欠陥があるからである。

 平成21年総選挙においては、どの政党もこうした問題についてまじめに政策提起をしたとは言い難い。特に、子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、農家への戸別所得補償などのバラマキ政策を羅列する一方で、増税を否定して政権を獲得した現民主党政権は、莫大(ばくだい)な財源を要する復興策や経済再建策、一体改革を策定する適格性を欠いている。本格的な政策について国会で検討する前に、政党が真剣に政策を練り上げ、提示したうえで民意を問うことが、必須の条件となる。

 また、早期の解散・総選挙含みで「大連立」を認めるということにすれば、与野党の狎れ合いも一定程度抑制できるだろう。

 つまり、前掲諸条件の最後に示した「選挙管理」とは、なるべく早く解散・総選挙が実施できるよう被災地の復旧を急ぐことにほかならない。そこにこそ「大連立」の意義がある。被災地に配慮したフリをして、「選挙なんてやってる場合か」と嘯(うそぶ)くのは“御為倒(おためごか)し”以外の何ものでもない。(えんどう こういち)

6月21日付産経新聞朝刊「正論」

自国を守る軍備が十分でなく心構えも欠けている日本 櫻井よしこ

自国を守る軍備が十分でなく心構えも欠けている日本

櫻井よしこ

 

6月初旬、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議は、アジアで中国対非中国陣営の対立構造がより顕在化し、諸国が軍事的な備え を急速に強化しつつあることを明らかにした。
6月4日、同会議でゲーツ米国防長官が行った演説は、力を誇示する中国を念 頭に、米国は太平洋国家であり、これからもそうであり続けるとの強い意思を示すものだった。

歴代8人の大統領に仕えた国防長官は、「イラクとアフガニスタンというコストのかかる長引く2つの戦争で、米軍の負担は増し、国民の 忍耐が薄れ、将来の外 国への介入能力が低下しているのは事実」と述べたうえで、米国の繁栄は米国が貿易の大半を依存するアジアの繁栄と共にあることを強調 した。問題は存在して いても、米国のアジアに対するコミットは変えないとして、近年、同海域での米国の存在は顕著に広がり深化していると語った。

「3年前、この同じ会議で私は、国防長官就任1年半で、アジアを4回訪ねたと言いました。今、4年半で私のアジア訪問は14回に達し ています」「アジアを 訪問するたびに、衝撃的かつ驚くべき変化を見てきました。米国とより強い軍事的協力を打ち立てたいという切望が諸国間に広まっている ことです。過去20年 間、米国政府で働いてきた体験に基づいて考えても、米国との軍事協力への要望がこれほど高かったことはありません」

こうした要望への米国の対応能力の高さの一例として、長官は東日本大震災における日米協力について語った。

「大震災発生から24時間以内に米国は『トモダチ作戦』を立ち上げ、被災地での自衛隊の救援活動への支援を開始しました。ピーク時に は2万4,000人の 兵、空母を含めて24隻の船、190機の航空機を動員しました。兵力の半分の10万人を投入した自衛隊との緊密な協力が実現されまし た」

ゲーツ長官は、日米両国は、大震災によって同盟関係の維持だけでなく、より強固でより機動的な実質的同盟関係を築くに至ったと、誇っ た。

長官が米国の目標として「くどいようだが」と前置きして列挙したことが4点ある。(1)自由で開放された貿易、(2)国際法の遵守 と、各国の権利と責任の秩序ある体制、(3)海、空、宇宙、サイバー空間へのアクセスの自由、(4)紛争の平和的解決、である。

いずれも中国を意識したもので、中国への強烈な非難ともなっている。長官が強調したように、今、東南アジア諸国、インド、オーストラ リア、アジア海域諸国 のすべてが米国との軍事協力を強化させている。一方、インドに典型的に見られるように、独自の努力も重ねている。インドはこの五年間 で戦闘機や潜水艦の調 達を進め、中国を追い抜いて世界最大の通常兵器輸入国となったのだ。理由は明らかで、中国やパキスタンとの緊張に備えるためだ。

そのような緊張感をいっさい感じていないのがわが国の民主党政権だといってよい。日米同盟に頼り切って、自助努力を怠ってきた日本 は、大震災でさらに力を落としつつある今、中国やロシアのみならず、韓国からさえも脅かされている。

防衛省は8日、中国海軍の艦艇8隻が沖縄本島と宮古島のあいだを通過したと発表した。確認されていないが、潜水艦も潜伏航行している はずだ。

外務省は中国艦隊の航行は「公海上」なので抗議しないそうだが、昨年、米韓両国が公海である黄海で軍事演習を予定したら、中国は「近 海への外国海軍の進入 は許さない」として猛烈に抗議した。沖縄本島と宮古島のあいだは、わが国の近海そのものだ。自国を守る装備も十分でなく、心構えも欠 けているのだ。今、日 本がすべきことは、抗議すべきときには抗議する強い国家意思を持つこと、少ない予算で効果的に中国の軍事力に対処するために、潜水艦 の数を増やすことだ。

『週刊ダイヤモンド』   2011年6月18日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 891

「ポスト冷戦後」に大乱の兆あり 田久保忠衛

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第94 回:平成23年6月20日「ポスト冷戦後」に大乱の兆あり (田久保忠衛)

 

 

【投稿】仙台空港再開に尽くした業者と官庁に拍手 (会員 村澤秀樹)

 

 

 

 

 

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