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国家基本問題研究所

JINFニュース

2012/01/28 09:35

平林博日印協会理事長と「日印戦略的パートナーシップ」 について意見交換

 

国会の付帯決議で日印原子力協定交渉妥結を
 平林博日印協会理事長は1月20日、国家基本問題研究所で「日本とインドの戦略的グローバル・パートナーシップ」について語り、同研究所企画委員と意見交換した。この中で、平林理事長は、懸案となっている日印原子力協定交渉において、インドが核実験を行った場合に原子力協力をストップできることをどう担保するかが問題になっているとし、妥協策として、「日本が原子力協力をストップしうることを協定に明文化することはインドが受ける可能性はないので、協定に書き込むことには固執せず、別途、国会批准の際の付帯決議でその旨を宣言することでもよいのではないか」との個人的見解を明らかにした。
 平林理事長によると、米印原子力協定でも核実験と原子力協力のリンクにインドが強く反対したため、結局アメリカは協定の中に条文化することは諦め、米国国内法で処理することで妥協した。つまり、仮にインドが核実験を行った場合、アメリカは、協定の条文に基づくのではなく、米国国内法に従って原子力協力をやめる、ということである。
日本でも協定にこの趣旨の条文を挿入することではなく、協定本体はそのままにして、国会の付帯決議を行えば、インド側も反対する理由がない、と同理事長は語った。さらに、同理事長は、国会の付帯決議には法的拘束力はないが、国会の決議であるから一定の政治的重みはあるし、過去において法律や条約を国会で承認する際に付帯決議はよく用いられた、と述べた。ただ、法律によらず国会の付帯決議で処理するやり方については、NPT加盟国でないインドに対する原子力協力につき根強い反対論があるので、実現が難しいとの見方もある由である。

 インドは輸出管理規制外に
 また、大量破壊兵器拡散防止のための輸出管理政策では、経済産業省が北朝鮮やイランの企業とインドの企業(国防省と関係の深い)を同列に置き、日本企業が取引をやめるように指定している。この点について、平林理事長は、インドといえども信用はならないとの意見もあるが、「アメリカは徐々に指定から外してきている。日本も段々外すのでは」との見通しを述べた。
 平林理事長は、駐印大使(1998-2002年)、駐仏大使(2002-2006年)、査察担当大使(2006-2007年)などを務めている。インド関係で、現役時代から言い続けていることとして、平林理事長は 1)インドは中国に対して対抗意識があり、包囲網を固めたいと思っているが、公に言うのを嫌う。非同盟という遺伝子ともいえるDNAもあるので、インド側の微妙な感情を配慮する必要がある 2)印パと言わないで欲しい。英語で「ハイフナイゼーション」、両国をハイフンで結んで欲しくないとの思いが非常に強い。要するに、インドはパキスタンとは民主主義や軍事的な体制で全然異なっており、格が違うのだ、という自負がある、ことをあげた。                         (文責・国基研)

 

 

2012/01/13 17:31

中野義久防衛省陸幕情報通信・研究課長 「サイバー戦」について意見交換

 中野義久防衛省陸幕情報通信・研究課長は1月13日、国家基本問題研究所で「サイバー戦の実態と対処」について語り、同研究所企画委員と意見交換した。中野課長の主な発言要旨は次の通り。

 

 サイバー攻撃の態様
 サイバー犯罪は、昨年6月に対応する刑法が成立、情報通信技術を悪用した犯罪として位置づけられたが、サイバー戦については、日本政府、各省庁、重要インフラなどの機能への攻撃、一般的にネットワークや情報システムを利用した電子的な攻撃と考えられている。その攻撃の態様は以下のように大きく三つに分けられる。
 1 データ詐取 パソコンのデータがいつの間にか抜き取られてしまうことだが、最近では特定の標的に限定して入り込む「標的型攻撃」(Advanced Persistent Threat)が問題となっている。三菱重工など防衛産業がこの被害を受けている。
 2 サービス使用拒否(Denial of Service,DoS攻撃)コンピューターが処理できる以上のデータを送ってオーバーフローさせる。或いは、あらゆるところからメールを送り、アクセスが殺到するという「分散DoS攻撃」(Distributed,DoS)を使ってシステムを破壊する。グルジア紛争ではD-DoS攻撃を受けて必要なインフラがダウン、軍事作戦が影響を受けるという事例が出ている。
 3 システム破壊による物理的被害 銀行などの金融や交通システム、その他のインフラのシステム破壊により、社会に大きな被害が生じる。イランの核施設のケースでは、スタックスネット(Stuxnet)といわれるウィルスが原子力発電所の制御系システムに入り込み、遠心分離機の誤作動を生じさせた。同国の核開発を遅延させたといわれる。

 

サイバー戦への対処 
 サイバー攻撃がいわゆる自衛権発動の前提となる武力の行使にあたるのか。また、国連憲章51条やわが国の武力攻撃事態対処法でいう事態にあたるのか。個別的、或いは集団的自衛権の発動は可能か、などの法的な議論がある。
 法的な問題とは別に、外部からの脅威については、侵入されることを前提にして対処する必要がある。常時監視を続け、異常が検知された場合、ネットワーク遮断も実行する。また、ソフトウエアの欠陥に対する修正や機能変更、製品自体にウィルスが組み込まれるサプライチェーンなどの対応策は絶えず進めていかなければならない。
 また、内部からの脅威への対応だが、防衛省内、自衛隊内のパソコン使用については厳しく規定している。例えば、補助記憶装置のUSBについて、個人使用のものを防衛省のパソコンに繋ぐことを厳禁しており、違反すれば処分される。

 

 アメリカ、日本の体制
 アメリカは昨年7月、サイバー空間作戦のため、5つの柱からなる国防省戦略を公表した。その柱は、1)サイバー空間は新たな作戦領域である2)新たな防衛運用コンセプトの適用3)省庁間、官民の連携、協力を強化する4)同盟国、国際パートナーとの連携を強化する5)国家の技術を高め、創意力を活用するなどで、サイバー攻撃に対しては物理的な攻撃も含めあらゆる対抗手段で応じる、ことを明らかにしている。
 これに対し、日本では政府が平成12年にIT戦略本部を立ち上げたのに続いて、15年には情報セキュリティ政策会議及び内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を設置した。NISCでは重要インフラを所管する官庁と情報セキュリティを所管する官庁に分けて、それぞれ民間の重要インフラ、個人等の情報セキュリティについて総合調整する。
防衛省についても陸海空の自衛隊がそれぞれのシステムの防護等に対し責任を持って対処しているというのが現状。これを現在、さらに統合的にサイバー攻撃に対応できるように整備を行っている。
                          (文責・国基研)
 

 

 

2012/01/12 15:23

山下一仁キャノングローバル戦略研究所研究主幹 「TPPの論点、TPPお化けの正体」について意見交換

  キャノングローバル戦略研究所の山下一仁・研究主幹は1月5日、国家基本問題研究所で、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の論点 TPPお化けの正体と農業再生」のテーマで語り、同研究所企画委員と意見交換した。

TPP参加以外に選択肢はない


 この中で、山下研究主幹は、TPPに対する基本認識として 1)日本が今のペースで経済成長すると、2020年には一人当たりGDP(国内総生産)が韓国、台湾に追い抜かれる。それを防ぐためには海外と結びついて、もう一段高いレベルの成長をする必要がある2)貿易の利益は基本的に消費の利益にあるが、被害を受ける農業や輸出産業が儲かるという生産者サイドの話が中心になっている、と述べ、日本にはTPP参加以外に選択肢はないと強調した。
また、世に流布するTPP反対論に対し、以下のような反論を展開した。同主幹の主な反論は次の通り。

 

- TPPはアメリカの陰謀説-

 米国が日本市場を奪おうとしているというが、アメリカの全輸出に占める日本の割合は5%に過ぎない。これをどんなに増やしてもアメリカの全輸出が倍増するものではない。TPP参加8カ国に対するアメリカの輸出の方が、対日輸出よりも大きい。むしろアメリカにとって日本からの工業製品の輸入増につながる可能性がある。事実関係は、TPP反対論の主張とは逆である。菅政権がTPPに参加したいと言い出しただけで、アメリカが日本に参加を求めてきたわけではない。アメリカの議会や労組・産業界は日本のような工業製品の輸出国からの輸入が増えることを警戒している。予想したとおり、日本の参加表明に早速自動車業界は反対の意思を表明した。
 アメリカの農産品については、トウモロコシや大豆はすでに関税なしで日本に輸出しているので、状況は何も変わらない。アメリカの牛肉や豚肉業界は、関税の撤廃やBSE問題の解決を期待するだろうが、障害が除去され、牛、豚肉の対日輸出が増えると、家畜のエサとなるトウモロコシの輸出が減ることになり、差し引きすると、食肉業界の付加価値分しか増えない。

 

-公的医療保険が破壊される-

  公的医療保険などの政府によるサービスは、そもそもWTO(世界貿易機関)・サービス協定の定義・対象外である。これまでの自由貿易協定でも対象としていない。先進国で国民皆保険が実施されていないのはアメリカだけで、日本はオーストラリアなど他の加盟国と共通の立場にいる。アメリカのオバマ政権もこれはひどいとして見直そうとしたのであり、外国にアメリカの制度を押し付けるとは考えられない。混合診療については、米国は2006年に関心を示したのみで、主要要望項目ではない。混合診療は、国内で未承認の医薬品を使うと、それ以外の治療費もすべて自費負担になるというがん患者等の訴えから起きている議論であり、単なる「米国の理不尽な要求」ではない。医療についての外資規制はない。すでに台湾や韓国の医院が活動。将来的には外国人医者の参入の可能性は否定できないが、アメリカの医者が過重労働の日本に参入するかどうか。い。

 

-地方自治体の政府調達が開放され、地方の中小土木・建設会社が打撃を受ける-

 すでに我が国はWTOの政府調達協定(GPA)でTPP参加国以上の開放を実施。TPPのような複数国間の協定では、参加国が共通の義務を負うことが基本。日本だけがGPA以上の義務を負い、アメリカがバイアメリカンで義務を免れることなどあり得ない。アメリカは50州のうち37州でしかWTOで約束していない。日本に開放要求がきたら、「ジョージア州の政府調達をすべて開放せよ」と言えば、アメリカは立ち往生する。連邦政府の権限は州内の通商活動には及ばない。

 

-遺伝子組み換え食品について規制が撤廃されるという主張-

   どの国も安全性が確認された遺伝子組み換え食品しか流通を認めていない。各国で規制が異なるのは、安全だとして流通を認めた遺伝子組み換え食品についても表示の義務付けを要求するかどうかである。日本、EU、米国とみな立場が違う。国際的な基準作成について合意ができていない。豪州、ニュージーランドもアメリカのような表示制度には反対の立場である。日本の規制が見直されるとは考えられない。

 

-ISDS(国対投資家の紛争解決)条項で外国企業に訴えられ、規制を変更させられる-

  問題視されている案件は、国有化に匹敵するような「相当な略奪行為」があり、且つ外国の企業を差別したもの(例えば、環境規制と称し、化学物質の国内生産は禁止せず、海外からの輸入だけを禁止)。仲裁裁判所は金銭賠償のみで規制変更を命じない。すでに日本が中国やタイ等と結んだ24の協定に存在する。これまでは問題視しなかったのに、なぜTPPの時だけ反対するのか。例えば、いまでもアメリカのタイの子会社が日本に投資した際、タイと日本の自由貿易協定の投資章を活用して、日本政府を訴えることが可能だが、行ったことはない。
 ガソリンの有毒添加物に対するカナダの規制(エチル事件)が、米国企業の訴えで撤廃させられた、との例が引き合いに出されるが、実際は違う。カナダ連邦政府が規制を作る際に州政府の意見を十分に聞かなかったとして、国内の裁判で州政府に敗訴したために規制を撤廃した。カナダの規制自体、ガソリン添加物の使用や国内生産を禁止せず、海外からの輸入と州を越えた取引のみを禁止する、内外差別の疑いが濃いものだった。国内敗訴を受け、カナダ政府は國際仲裁で争うのをやめて和解に応じた。米国企業がカナダやメキシコを訴えたケースで米国企業が勝ったのはわずかである。

 

農業問題ではない、農協問題だ


 関税を下げても、アメリカやEUがやっているような直接支払い方式で農家を保護すれば、農家は困らない。しかし、農協は農産物の価格が下がると、販売手数料が減収となり、農協が困ることになる。本当はTPPと農協問題であり、だから農協は医療業界や土木業界を巻き込んで反対運動を展開している。政治家も、農業票を失う恐怖心から農協には反対しにくい。特に小選挙区制下での接戦の場合、農業票はたとえ少なくなったとはいえ、選挙結果を左右しかねかねない懸念がある。

                             

                      (文責・国基研)

 

 

 

2012/01/06 16:20

永井達也警察庁警備局警備企画課長と意見交換

 平成24年1月6日(金)研究所会議室にて、永井達也警察庁警備局警備企画課長と「サイバー攻撃」について意見交換をおこないました。

 

 

2011/12/27 16:00

近藤正規国際基督教大学上級准教授「日印経済関係」について意見交換

  国際基督教大学の近藤正規准教授は12月16日、国家基本問題研究所で、日印経済関係の現況と展望について語り、同研究所の企画委員と意見交換した。特に今後の展望と課題についての同准教授の主な発言要旨は次の通り。

 

外務省にインド課の設置を
  まず政治外交の課題について幾つかあげてみたい。
1) 日印外交を文言だけでなく本当の意味で「グローバルで戦略的」にする必要がある。インドが最も望んでいる原子力協定に向けての政府間協議が遅れているため、欧米や韓国と比べ戦略的な展開がない。
2) 政治レベルの結びつきを密にすべきである。05年以来、日本の首相は隔年で訪印しているが、首相以外の国会議員はあまりインドを訪問していない。
3) 外務省の南西アジア課の位置づけが高くない。将来的には、南アジア7カ国を担当する南西アジア課に代わる「インド課」を設置、対印外交を強化したい。

 

インド市場、長期的視野で
次に日本がインドでのプレゼンスを高めるための5つの経済上の課題をあげたい。
1) 日本の企業は、長期的な視野でインド市場を見ていくことが大切である。例えば、企業のインド担当者の人事査定に関連して、駐在期間を長くして、長い目で査定を行うことが求められる。成功例としてあげられる自動車会社のスズキでは、駐在員のインド滞在期間を最低5年としている。
2) 自動車や電気、電子以外の進出があまりみられない。インドの小売市場の外資開放が近いとされるが、日本の対応は消極的である。他国の多国籍企業は、インフラから日用消費財にいたるまで、幅広い投資を行っている。
3) グローバルビジネスにおけるインドの位置づけを明確にする。日印EPA(経済連携協定)や、印ASEAN、印タイとのFTA(自由貿易協定)、印星EPAなどの活用も検討し、インドを世界戦略に組み込みたい。
4) 日本企業がM&A (合併や買収)などの形で、出遅れを挽回しようとするのはいいが、その際、対象企業の不動産や金融資産などの調査活動をするデューディリジェンスを行うことが望ましい。
5) デリームンバイ産業大動脈構想(DMIC)やデリームンバイ貨物専用鉄道建設計画(DFC)は官民協調の象徴とされているが、DFCの遅れやDMICでは官民の温度差が目立っている。官民のインフォーマル(非公式)な対話の場を広げて、実現性の高いプロジェクトを進めていくべきである。

 

    中国の周辺国との関係を深める 
  インドと中国の政治・経済関係を要約すると、
1) インドからみた中国は、軍事・政治的には脅威の存在であるが、経済的には最大の貿易相手国でもある。マンモハン・シン首相の見方は、中国は信用できないが、経済的には得るものが多い、あえて喧嘩する必要はない、といったところか。
2) インドが外交上重視している国は、中国の周辺国である。日本を筆頭にベトナム、オーストラリアなどである。これらの国と経済関係を深めることにより、中国を間接的に牽制しようとしている。
3) 中国からみると、インドの存在は経済的に小さいため、あまり議論になっていない。
   

                      (文責・国基研)

   

 



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