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国家基本問題研究所

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国益を考えない菅政権はいま 暴力集団に屈しようとしている 櫻井よしこ

国益を考えない菅政権はいま 暴力集団に屈しようとしている

櫻井よしこ

 

菅直人首相は大震災の混乱の最中、自らが議長を務める行政刷新会議を主導し、4月8日、強い反対の声を押し切って中国人観光客への「マルチビザ」発行を閣議決定した。一度でも沖縄を訪れれば、3年間何度でも、最大90日間、日本訪問が出来るビザだ。

同ビザは7月1日に施行され、中国人にとって日本は自国同様、気楽に来られる国となった。大量の中国人を送り込み、その地に強い影響力を及ぼすのが中国の勢力拡大の手法である。であれば、この無防備な出入国政策の大幅緩和に、政権与党内からでさえ反対の意見が上がったのは当然だった。

国益を考えない菅政権の下では、いまや何が起きても不思議ではない。捕鯨問題もその一つである。

7月16・17日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙が「鯨会議、保護海域をめぐって混乱して終了」という写真付きの大きな記事を掲載した。同記事は冒頭、「国際捕鯨委員会(IWC)は商業捕鯨禁止海域設定をめぐって大混乱して終わったが、それは日本とその同調国が(採決に必要な)定数割れを狙って退場したからだ」と書いた。

明らかに一方的な鯨保護の観点から、記事は、「会議では重要な論点がほとんど議論されなかった」と日本が協力しないからだとばかりに報じた。それでも「IWCは一つの前向きの結果を生み出した」として、加盟国が分担金を会場で現金や小切手で支払うことを禁止する決議案が採択されたことを報じている。

従来、IWCの反捕鯨国は、小さな国々が会場で「突然」分担金を支払うのは不自然だ、彼らの分担金を日本が支払い、事実上、票を買っているのだと疑ってきた。会場で現金の受け渡しをするなどのあからさまな手段を日本が取ってきたわけではあるまい。日本が長い年月と信じがたい努力を傾注して行ってきた科学調査こそが多くの国々を動かしてきた要因であろう。日本の捕鯨支持を是とする科学調査は、IWCの科学委員会では多数の支持を得てきた。それが政治的、感情的色彩を強くする総会になると、いつも、五分五分の論に後退させられてしまうのだ。

先の決議案に関しても、日本は反対せず、IWCは全会一致で採択した。にもかかわらず、世界中の読者に日本が疑わしい行為を行っているという印象を与えるような記事が書かれるのである。

一方、日本国内の報道はかなり異なり、鯨問題についての彼我の感じ方の相違が明らかだ。共同通信を除き、「産経新聞」も「朝日新聞」も、反捕鯨団体「シーシェパード」(SS)の妨害行為を抑止するための取り組みを全会一致で採択したことを軸に報道した。総会の混乱に関して「朝日新聞」は日本の退場に触れはしたが、米国など反捕鯨国の対日非難には触れていない。

日本の報道は、相手側の非難を十分に伝えない。同時に日本の主張を世界に発信するわけでもない。鯨に関しては、日本は「理」で迫り、米国などは「情」で迫る。その構図を打ち破る努力が双方にないのだ。

そうしたなかで、今年の捕鯨についての政府判断が迫られている。科学的見地に立った理論に加えて、捕鯨の文化的要素、さらに、捕鯨に関して日本はあらゆる面でIWCの決定、国際社会のルールを徹底して守ってきた点、道義上、批判される理由はまったくない点などを強調しなければならない。

にもかかわらず、民主党政権はなんと、今年の捕鯨を中止しようとしている。菅首相および鹿野道彦農林水産大臣は、IWCが全会一致で非難したSSにさえも屈服しようというのだ。国際的暴力集団にすぎないSSに屈服することは、日本はもはや国家ではないと内外に宣伝することだ。このような原則なき外交で国益が守られるはずがない。国家観なき人物の下で国家としての日本が崩壊しようとしているのだ。

『週刊ダイヤモンド』   2011年7月30日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 897

黒木昭弘日本エネルギー経済研究所常務理事と意見交換

 平成23年7月29日(金)研究所会議室にて、黒木昭弘日本エネルギー経済研究所常務理事と「福島第一の事故と我が国エネルギー需給の将来」について意見交換を行いました。

 

発言要旨はこちらから

 

 

中国が影を落とす台湾総統選挙 櫻井よしこ

中国が影を落とす台湾総統選挙

櫻井よしこ

 

台湾政界は、半年後に迫った総統選挙を前に、熱い戦いの真っ只中だ。政権与党の国民党は早々と現職の馬英九氏を総統候補に、呉敦義行政院長(首相)を副総統候補に決定した。政権奪還を目指す民主進歩党は、総統候補の蔡英文主席を中心に、副総統候補と対中政策を8月に開催予定の党大会で発表する。

台湾は世界一の親日国である。その国の行方に日本人と日本国が無関心でいられるはずはない。東日本大震災に対する、人口2,300万人の台湾からの義援金は200億円に上っている。これは馬英九総統が主導して集めたわけではなく、台湾国民ひとりひとりが自発的に拠出したもので、台湾の人たちの日本と日本人に対する親愛と友情の発露である。

私は震災から1週間後の3月19日、世界台湾人大会で講演するために台北を訪れたが、街の角々で、胸が熱くなる応援の声をかけてもらった。見ず知らずの人々から、「日本、頑張れ!」「大丈夫、日本はきっと復興できる」「台湾人はみんな応援している」という声を、本当に多くいただき、台湾の人々の日本を想う気持の有難さに涙しそうになったものだ。

その台湾は、来年1月の総統選挙で、またもや国民党を選ぶのか、民進党に政権奪還させるのか。1月の選択は台中関係を規定するだけでなく、日本とアジア全体の運命に大きく関わってくる。

国民党馬政権の特徴は、急速な対中接近にある。それを象徴するのが、「92年合意」で、馬総統は蔡主席に「92年合意を認めるのか、否定するのか。否定するなら、民進党は対中政策をどのように進めるのか」と質している。

必ず総統選挙の焦点のひとつとなるであろう92年合意とは、中国と台湾が行った92年の香港会談で成立したといわれる「一個中国、各自表述」のことだ。その意味は、「中国はひとつの国、その表現は中国と台湾各自に任せる」。つまり、中国はひとつだと認めたうえで、台湾側はそれを中華民国、中国側は中華人民共和国と呼べばよいというものだ。ポイントは「ひとつの中国」を台湾に認めさせることだ。

「新台湾人」

この合意の存在が台湾政界で指摘されたのは2000年だった。しかし奇妙なことに、92年当時、台湾を代表して中国側と接触していた海峡交流基金会理事長の辜振甫(コ・シンポ)氏はこれを全面否定した。早稲田大学で名誉博士号を授与されたときの記念講演でも、明確に、合意は存在しなかったと語っている。台湾元総統の李登輝氏も同合意の存在を否定する。

にも拘らず、今も台湾で92年合意が議論されるのは、馬総統自身が同合意を対中政策の基本と位置づけるからだ。前駐日台湾代表の許世楷氏が説明した。

「92年合意は、元行政院大陸委員会主任委員の蘇起(ソキ)氏が2000年に創作して広めたはなしであることが、すでに判明しています。今では蘇起氏もあのはなしは創作だったと公に認めています。しかし馬氏は中華民国の憲法は『中国はひとつ』とする立場に立つと主張し、このありもしなかった92年合意が恰も存在していたかのような議論をするのです。彼は『中国はひとつ』という立場をとらない限り、台湾は中国との対話が望めないと恐れているのです」

現実には存在しなかった92年合意を中国は大いに利用する。彼らが強調するのが、「各自表述」の部分ではなく、「中国はひとつ」の部分であることは言うまでもない。

さて、先に触れた馬総統の問い、「92年合意を認めるのか」に、蔡主席はどう答えただろうか。この知的な50代の女性は物静かながら歯切れよくこう語った。
「台湾は国際社会の王道と歩みを一にします。従って、台湾外交は世界から入って、その延長線上で中国と接触します。中国から入って世界に行くのではありません。台湾の選択は世界と連携することで中国との協調を拡大する道です」

蔡主席は92年合意を直接、否定するわけではない。「台湾独立」も決して口にしない。現状維持で台湾の安全と発展を調和させようとする構えである。無意味に中国を刺激せず、米国に対しては、台湾側から台湾海峡及び周辺海域に問題を起こすことはしない、安心してもらってよいという意思表示である。陳水扁総統時代に台湾の独立を掲げたことで米国との関係が悪化したこともあり、蔡主席は慎重な構えをとり続ける。大人の政治家なのだ。

台湾政治について回る中国の影は、二人の候補者に「あなたは誰か」という問いも突きつける。蔡主席は、自らを「台湾人」と呼ぶが、これは馬総統への痛烈な問いかけだ。馬氏は08年の選挙で李登輝氏に倣って、「私は新台湾人だ。死んで灰になっても新台湾人だ」と訴えた。中国語、フランス語、英語は流暢でも、台湾語は不十分で、台湾人意識に欠ける親中派というイメージを変えるために、馬氏は盛んに新台湾人だと訴えた。そして勝った。

急速に進んだ親中路線

ところが、総統になった途端、氏は「新台湾人」だと言わなくなった。そんな馬氏を揶揄する次のような冗談話が台湾で流行っているそうだ。

〈馬さんはどこの国の人?/日本のある地方、四国の人だよ/なぜって彼には国籍が四つもあるからね/中華民国、米国、英国、中国だよ〉

中華民国は言うまでもなく台湾だ。米国は、馬氏が米国の永住許可証のグリーンカードを取得したことがあるからか。英国は、氏が香港生まれだからか。中国に関しては、氏の親中姿勢への痛烈な皮肉であろう。要は、馬総統の心は台湾人かという風刺だ。当人には迷惑至極であろうが、台湾国民の馬総統への感じ方がよく表現されている。

馬政権下で急速に進んだ親中路線の代表例が昨年6月29日の中台経済協力枠組み協定(ECFA)である。国民党側はECFAで5万7,000人分の新たな雇用が生まれ、平均収入も増加したと強調する。民進党側は貧富の格差は史上最悪の75倍になり、実質月収は12年前の水準に落ちた、失業率は韓国、香港、シンガポールよりも高いと反論する(「産経新聞」6月30日)。
たしかなことは、台湾の中国依存が深まったことだ。

他方、この間に中国は台湾海峡の対岸に13万の台湾陸軍の3倍強、40万人の人民解放軍を展開し、核搭載可能なミサイル1,400基以上を据えつけた。92年合意を認める馬総統の政策はこの中国の手に台湾を投げ込むことを意味する。中国の台湾併合は日本の命運に決定的な負の影響を及ぼす。だからこそ、民進党の蔡英文氏の総統就任が日本の国益により適う。蔡主席への支援こそ重要である。

『週刊新潮』 2011年7月28日号
日本ルネッサンス 第470回

「放射線被害の虚実」詳報

 国家基本問題研究所は平成23 年6 月24 日、東京・永田町の全国町村会館で月例研究会「放射線被害の虚実」を開催しました。東京電力の福島第一原子力発電所の事故を受けて開かれたこの研究会には、原発事故担当の首相補佐官の細野豪志衆院議員、がんの専門家の山口建静岡県立静岡がんセンター総長、原子炉に詳しい山名元(はじむ)・京大原子炉実験所教授がパネリストとして登壇し、櫻井よしこ理事長と議論を交わしました。会場は285 人(会員212 人、一般42 人、議員3 人、議員秘書2 人、報道関係者7 人、役員9 人、パネリスト関係者2 人、スタッフ8 人)の参加で、熱気に包まれました。パネリストの細野氏は3日後の27 日、菅内閣改造の「目玉」人事の一つとして、原発事故担当相に起用されました。

 

全文はこちらよりダウンロード下さい。

六者協議再開を誘う対北支援に反対せよ 島田洋一

PDFファイルでご覧ください。
第99 回:平成23年7月25日六者協議再開を誘う対北支援に反対せよ(島田洋一)

 

 

 

 

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エネルギー事情や安全保障体制が異なるドイツと同じ道は歩めない 櫻井よしこ

 エネルギー事情や安全保障体制が異なるドイツと同じ道は歩めない

櫻井よしこ

 

7月13日夕方、菅直人首相は官邸で記者会見を行い、「原発に依存しない社会を目指す段階に来た」と語った。だが、首相の言葉は少なくとも2つの点でうつろである。

まず、これまでの首相提言同様、具体的中身に欠ける。震災の復興も満足に指揮出来ない首相が、将来のエネルギー戦略の大転換を打ち上げるのは勘違いもはなはだしく、不遜である。第一、首相は近々辞める人ではないのか。

次に、原発すなわち原子力研究の国家的意味合いをまったく踏まえていないことである。原発および核について今世界には、二つの大きな流れがある。ドイツやイタリアなどEU諸国の脱原発の流れと、核不拡散条約(NPT)体制にもかかわらず核保有を強め、あるいは新たに核を開発しようというパキスタン、インド、北朝鮮、イラン、イスラエルなどの流れである。

原子力技術は原発など原子力平和利用と政治的、軍事的武器としての核兵器開発の二つの側面を持つ。両側面はすべて基本の部分で通じており、表裏一体である。原発で原子力平和利用の技術を向上させることが、核技術の向上に連動するのは明らかで、原発がエネルギーと安全保障の両面で国防力の基本を構成しているのである。

ドイツを筆頭に、いくつかのEUの国々が脱原発を唱えることが出来るのは、不足のエネルギーを原発大国フランスから購入する政治的、経済的体制が出来上がっているからだ。自国内の原発は許さないが、他国の原発に依存することは構わないという価値観がEUでは許容されているのだ。

国防上欠かせない核戦力についてはどうか。ドイツは原発放棄で核開発も放棄したことになる。かといって核の脅威に対する備えを諦めたわけではない。北大西洋条約機構(NATO)の一員としてフランスや英国、さらに米国の核に守られているからだ。

加えて、21世紀の紛争の海はもはや大西洋ではない。第三次世界大戦はロシアの脅威から起きるのではなく、21世紀の争いの海は中国が支配権確立を目指す西太平洋とインド洋であるというのが、国際社会の一致した分析である。

ドイツと日本を取り巻く状況はあまりにも異なる。わが国には不足の電力を輸出してくれる陸続きの国は存在しない。わが国周辺には、世界制覇の野望に燃える中国が存在する。中国の手助けですでに100発以上の核兵器を保有すると見られるパキスタン、中国の黙認の下、ミサイル技術を輸出し、核の増産に励む北朝鮮が存在する。中国、北朝鮮、パキスタンの連携で、第三世界に核とミサイルが拡散しつつあり、前述のように人類が今世紀体験する安全保障の大問題は、わが国周辺海域で発生すると見られている。

中国海軍のただならぬ動きを誰よりもよく知っているのが菅首相のはずだ。中国海軍はこの6月、じつに6度にわたって南シナ海で軍事演習を実施した。軍の機関紙、「解放軍報」は6月14日、南シナ海を「古来、自国領」と主張し、南シナ海問題が発生したのは、「関係する国々が身分不相応に、同海域の石油・天然ガス資源を求めたことが原因である」と解説した。中国政府はすでに「中国の海」の防衛のため、周辺海域の監視要員を現行の9,000人から1万5,000人に、航空機を9機から16機に、監視船を260隻から520隻以上に増やすと決めた。

去る3月に発表された中国の「国防白書」はこれからの10年間を「中国の重要な戦略的チャンスの時期」と定義し、富国強兵政策の推進を強調した。

周辺状況を見れば、菅民主党が原発離れを加速させ、エネルギー戦略も国防戦略もない丸裸の国家になっていくことの危うさに背中が寒くなる。日本の取るべき道は再び事故を起こさない世界一の原発技術を開発し、それを安全保障の基盤につなげることだ。

『週刊ダイヤモンド』   2011年7月23日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 896

最高の原子炉開発し世界に売れ 屋山太郎

最高の原子炉開発し世界に売れ

評論家・屋山太郎  

 菅直人首相が7月13日に突然、記者会見を求めて「将来的に原発に依存しない社会を目指す」と明言した。この首相発言は、福島第1原発事故に驚愕(きょうがく)している国民の受けを狙ったものに違いない。支持率が10%台まで落ちた首相が、起死回生の策と信じて打ち出したものだろう。しかし、国家の浮沈にかかわるこのような問題を首相が一存で発表すること自体、正気の沙汰ではない。果たして、翌日の閣僚懇談会では閣僚から強く文句をつけられ、首相は「私個人の考え」と釈明したという。

脱原発で日本企業生き残れず

 首相の言う「脱原発」に国民は大きく心を動かされたろう。20~30年がかりで原発を廃止に持っていく。その間に風力、太陽光、地熱、石炭・石油火力発電を充実させるといえば、一見可能と錯覚させるが、果たしてそうか。

 北欧の風力発電を見学に行ったことがあるが、洋々たる大地が広がり、そこに穏やかな偏西風が常時吹いている。見た瞬間、「台風常襲国の日本では無理だ」と実感したものである。太陽光発電パネルも良いが、孫正義氏によると、全国の休耕田に設置するという。休耕田を全部潰すつもりなのか。田畑はパネルなどよりも、もっと貴重な農業用財産なのだ。

 いずれにせよ、再生エネルギーが仮にものになるにしても、ここ何十年かはコストの高い電力になる。現在、韓国の電気料金は日本の4割で、法人税も日本の40%に対して24%である。日本の企業が国際競争で生き残れなくなり、海外に出ていけば、日本人は高い電気料金を払えなくなるだろう。

 戦時中に米軍機の空襲で夜毎(よごと)、灯火管制を余儀なくされた。いま「でんき予報」を聞かされるたびに、灯火管制の不愉快さを思い出す。当時は、いつか戦争が終われば、明るい電気の下で家族そろってご飯が食べられると我慢できたが、今回の「でんき予報」には永久に続く恐怖感、不快感を覚える。国全体をこんな縮み志向に陥れて繁栄するわけがない。

ドイツの選択は駝鳥の平和

 地球を守るために全世界が一体となって原子力発電を止めようというなら話は別だが、地球のエコのためには原発がいいという国もある。世界は原発設置派と脱原発派で二分されている。フランスは全電力の80%を原子炉で生み出し近隣諸国に売電もしている。隣のドイツ、イタリア、スイスは福島の事故を見て脱原発を決めたが、実は、フランスの原発で生まれた電気を買っている。この夏、フランスに行ったが、フランス人は笑っていた。原発は事故の危険があるから造らないと、ドイツ人は言っているが、われわれの原発はドイツとの国境近くに並んでいる。原子炉さえなければ安全だと思うのは、駝鳥(だちょう)の平和だ、と。

 英国は1970年代に設置した原子炉の寿命が来て建て替え期に入っている。福島の事故は英国にも衝撃を与えたが、英政府は「大地震や大津波の心配はなく、建造中の新原子炉の安全性は福島の旧式のものより進歩している」と判断、新設計画を進めている。石炭火力発電所を欧州連合(EU)の環境規制で2015年までに閉鎖せざるを得ない事情もある。

 中国は原発建設方針を変えていない。中国で事故があれば日本は黄砂被害どころではない。

 世界の原発設置派と脱原発派が調和する方法がひとつある。どの国のどこの原発も事故が起こらないものにすることである。

福島の事故はミスによる人災

 福島の事故を考えてみると、これはどうみても人災としかいえない。第一に、貞観地震による14~15メートルの津波の記録を無視して建てられた。交流電源喪失でも大丈夫だという原子力安全・保安院の指針も大間違いだった。なぜ、こんな初歩的ミスを犯したのか憤りを覚えるが、その背景が事故後に露(あら)わになってきた。東京電力とそれを規制する経済産業省、監督する同省の保安院が天下りを通じてずぶずぶの関係になっていたのだ。さらに、東電から流れる研究費という名のカネによって、学者までが一体となり、「原子力ムラ」を形成し、安全神話を広めてきた。これを可能にしたのは、地域独占という電力会社の体質だ。

 東電の官僚体質はかつての国鉄と運輸省の関係そっくりだ。国鉄は毎年2兆円の国費を食っていたが、分割民営されてJRになってからは補助金なしで、逆に7000億円の税金を納めるようになった。福島の事故は東電の官僚体質がもたらした人災と断じてよい。東電はすべからく破産させ、発送電分離を進めるべきだ。東京を除き、各ブロックの経済団体会長は電力会社トップで占められている。親方日の丸の会社が経済団体の長を務めることは、経済活動の活性化を損なうと知るべきだ。

 さて、日本は原発をどうすべきか。日本の技術力を結集して、世界最高の原子炉を開発することである。地震にも津波にも耐え、事故も起きない炉をつくり、世界の原子炉を日本製にすることを目指せ。これは夢物語ではない。日本にしかできない業だろう。(ややま たろう)
7月21日付産経新聞朝刊「正論」

疑問を抱く菅首相の政治資金 櫻井よしこ

疑問を抱く菅首相の政治資金

櫻井よしこ

 

菅直人首相は得体の知れない人物だ。横田早紀江さんはそれを「深い闇の中で、どこかとつながっているような印象」と表現し、どこかとは、「得体の知れない北朝鮮のような国」だとも語った。

めぐみさんを拉致されて34年、早紀江さんは穏やかながらも深い憂いの表情をみせる。

「菅さんが首相になった昨年6月、家族会の一員として官邸に伺いました。菅さん、仙谷官房長官、拉致問題担当大臣の中井洽さんら4人と面会しました。そのときの菅さんの対応は本当におざなりで、私たち家族の心に響く言葉はありませんでした。事前に抱いていた不安感や危惧が的中したと、感じました」
不安感とはなにかと問うと、「辛光洙(シン・ガンス)に関することです」と即答した。

北朝鮮の大物工作員、辛は1980年に発生した原敕晁(ただあき)さん拉致事件の実行犯だ。韓国に潜入中、逮捕され、死刑判決を受けたが、菅首相や千葉景子元法相(2010年の参院選で落選)らは1989年、日本人拉致の犯人である辛の早期釈放嘆願書に署名していたのだ。

菅首相も千葉氏も辛が拉致犯だとは知らなかったと後に釈明した。だが、一国の政府が正式の裁判を経て死刑判決を下した犯人を釈放せよと、他国の政治家が要求するのは軽い行為ではない。強い思い入れと揺るがぬ信念を反映した重い政治決断のはずだ。その重い決断で日本人拉致の実行犯である北朝鮮工作員の釈放を嘆願した人物が、揃いも揃って、首相及び法相となり、嘆願した事実が露見したとき、これまた示し合わせたかのように「知らなかった」として責任をとらなかった。知らなかったとしたら無能故であり、知らずに嘆願したとしたら日本と日本国民への背信である。そんな人物にはそもそも首相や法相になる資格はないのだ。

「不思議な流れ」

首相が選りに選って北朝鮮工作員の釈放を嘆願したことに疑念を抱くのは当然で、早紀江さんはその思いを事前に岡田外相に伝え、岡田氏は必ず総理に伝えると約束したという。

「その後で菅さんにお会いしたのですが、菅さんは一所懸命頑張りますとは仰いました。けれど殆ど話さず、掴みどころのない方でした。本当に努力してくれるのかと不安に思いました」と早紀江さん。

北朝鮮工作員に不可解な支援をして見せた菅首相は、在日韓国人から違法献金も受けていた。外国人からの政治資金受け取りは政治資金規正法で禁じられており、同法第26条の2で、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金と規定されている。3月11日午前、在日の男性から104万円を受け取っていた明らかな違法行為が発覚し、首相は辞任の崖っぷちに立たされた。だが、同日午後、東日本大震災が襲い、状況は一変した。

日本大学法学部教授の岩井奉信氏が解説した。

「100万円単位の金を簡単に寄付してくれる人はそうはいないと思いますよ。その点、昔からの知人で在日の人からの5万円で外相を辞任した前原さんとは違います。菅さんと、100万円を超える違法献金者との関係はなんなのか。菅さんには明らかに説明責任がありますね」

だが首相は説明しないどころか3月14日、日本中、世界中が東日本大震災と福島原発事故で騒然としていた最中に、こっそり返金していたのだ。辞任寸前まで追い詰められていた首相は震災で息を吹き返し、国民に向かって大震災に命懸けで取り組むと力説した。その裏で返金で事をおさめ、口を拭って知らぬ顔を決め込もうとしたのであろう。

同件は、しかし、東京地検特捜部に告発され、特捜部は5月10日、これを受理した。菅政権の下でいま、特捜部の力を弱める司法改革が進行中だが、それでも、首相は国民の目、司法の監視を甘く見てはならない。

国民に説明出来ない違法献金を受け取っていた一方で、菅首相はこれまた、国民には納得出来ない得体の知れない献金を行っていた。首相の資金管理団体「草志会」が「政権交代をめざす市民の会」(以下めざす会)に6,250万円もの政治献金をしていたと、7月2日、「産経新聞」がスクープしたのだ。首相はこれを認めたが、「当時の党の役職者(代表代行)としての責任において、職務遂行の一環としてのものであり、法に則り適正に処理している」と語っている。
菅氏の政治資金管理団体にこれほど高額の資金を他の政治団体に寄付する余裕のあること自体が驚きだが、それ以上に刮目すべきは献金先の異質さである。岩井氏が語った。

「普通、政治家は政治団体を通して子分の政治団体に献金することはよくあるのですが、菅さんのこのケースのように外部団体に政治資金を回すのは、僕はあまり見たことがない。日本の政治の常識から考えると、不思議な流れではあります」

一日も早い退陣が必要

政治資金は、自身の選挙や子飼いの政治家を養うのに使われるのが普通である。外部の政治団体への、しかも、6,250万円もの大金の寄付は聞いたことがないと、岩井氏は強調するのだ。それだけの資金を渡すからには、菅氏は「めざす会」について十分知っているはずだ。「めざす会」とはどんな組織なのか。「産経」が報じた事実は驚くべきものだ。

「めざす会」は「市民の党」から生まれた団体で、市民の党の横浜市議井上さくら、与那原寛子両氏は02年5月29日、市議会本会議場で議場内の国旗を引き下ろそうとして、市職員と揉み合いになった。同年6月5日の本会議では同じ2人が議長席と事務局長席を占拠し、6時間近く議事を妨害、2人は地方自治法上、最も重い除名処分を受け失職した。

市民の党はまた、今年4月、よど号ハイジャック犯の故田宮高麿と妻の森順子容疑者の長男を三鷹市議選に候補者として擁立した。森容疑者は1980年に石岡亨さんと松木薫さんを欧州から北朝鮮に拉致したとして国際指名手配されている。

「菅さんの寄付にはたしかに法的問題はないのでしょうが、なぜ、6,250万円もの額をこの特定の政治団体に出したのか、説明責任は必ず出てくるでしょう。寄付した先の団体にどんな人たちが関与し、その関連政治団体からどんな人が政界に入り、何をしているのか、そうしたことについて菅さんはきちんと調べてわかっていなければならないからです」と岩井氏は指摘する。

辛光洙救出の嘆願書、在日男性からの違法献金、疑問の残る巨額の政治献金と重ねていくにつれ、菅首相の得体の知れなさが鮮明になる。得体の知れない首相には、もはや国民の信頼はない。国民の信頼なしには政治は機能しない。首相には拉致問題をはじめ、如何なる問題も解決出来ないだろう。だからこそ、一日も早い退陣が必要なのだ。

『週刊新潮』 2011年7月21日号
日本ルネッサンス 第469回

首相献金が浮かび上がらせた闇 西岡力

首相献金が浮かび上がらせた闇

東京基督教大学教授・西岡力 

 菅直人首相が、拉致実行犯として指名手配されている容疑者の長男が所属する極左政党の関連団体に多額の献金をしていたことが明らかになり、物議を醸している。首相の資金管理団体が平成19~21年に6250万円を「政権交代をめざす市民の会」に献金し、同時期に民主党から1億2300万円を受け取っていた。めざす会は極左政党「市民の党」(酒井剛代表)の政治団体だ。鳩山由紀夫前首相をはじめとする民主党国会議員も同様の献金をしており、民主党側から市民の党側に流れた資金は合計で8740万円に上る。

 ≪流れた先は北工作の先兵組織≫

 市民の党は「セクトに所属していないさまざまな左派、元活動家が集まった団体」(公安関係者)で、菅首相を30年以上支援してきたという左翼活動家、酒井剛氏が昭和57年に田英夫・元社民連代表や宇都宮徳馬・元衆院議員らと旗揚げした政治団体、「MPD・平和と民主運動」を前身とする。同党は北朝鮮の対日政治工作と関わりがあるという疑いを私は持つ。田、宇都宮の両氏は代表的な親北政治家で、平成元年に、拉致実行犯、辛光洙らの釈放を求める要望書に菅首相、江田五月法相らと署名している。菅首相は田氏に頼まれて署名したと弁明している。

 市民の党が平成6年以降、事務所を構える東京都千代田区平河町の龍伸ビルはもともと、朝鮮総連の大物商工人であった故具次龍・龍伸興業会長の持ち物だった。龍伸興業は今も、このビルに事務所を置いており、現代表の具本憲氏は在日朝鮮青年商工会長を務め、平成16年5月に民主党のパーティー券を30万円購入している。

 ≪総連大物絡みのビルに入居≫

 平成6年に何者かに射殺された具次龍会長は、北朝鮮への大口献金者として知られ、昭和57年の故金日成主席の70歳の誕生日には、1億円の祝賀金を出し、愛国賞銀メダルをもらっている。具会長は昭和42年に脱税容疑をかけられて税務調査を受けたが、朝鮮総連が不当弾圧だと激しく抵抗した。総連は昭和51年、高沢寅男・社会党国会議員を仲介に立てて国税庁幹部らと交渉し、裁判中だった脱税事件を示談に持ち込んでいる。

 市民の党はこの4月の統一地方選の三鷹市議選候補に、よど号ハイジャック犯元リーダーの田宮高麿を父とし、欧州で松木薫さんと石岡亨さんを拉致した森順子を母とする森大志氏を擁立した。大志氏は今も、「金日成主義による日本革命を目指す北朝鮮の工作員」との見方もあり、担いだ市民の党も、北朝鮮の対日政治工作を担う政治勢力ではないかという疑いがある。菅首相をはじめとする民主党関係者が、そうと知らずに献金したのなら、あまりにも不注意かつ無責任であり、分かりながら利用したのなら、許し難い。

 大志氏は昭和58年に北朝鮮で生まれ、平成16年に帰国した。関係者によると、帰国した他の子供らと緊密な関係を維持し、訪朝しているとの話もある。彼が北朝鮮で受けてきた教育を紹介しよう。

 大志氏は平壌郊外の三石区域元新里の「日本革命村」に生まれ育った。「日本革命村」では、早い時期に粛清されたとみられるメンバー1人を除く8世帯が共同生活を送り、18人の子供らが生まれている。金正日総書記直属の朝鮮労働党連絡部56課の指導の下、「自主革命党」というダミー政党が作られ、メンバー全員が「一、我々(われわれ)日本革命家は偉大な首領金日成同志の革命思想で日本を金日成主義化するため青春も生命も捧(ささ)げて闘うことを誓います」で始まる「十の誓い」を毎朝宣誓していた。

 ≪日本革命教育の申し子?擁立≫

 「日本革命の偉業を代を継いで最後まで継承し完成させていく」との誓いもあり、田宮を校長とする「日本革命村小学校」では、大志氏をはじめとする子供らを「立派な金日成主義革命家にするための」洗脳教育がなされた。帰国した5人の拉致被害者の子供が小学校から朝鮮人の学校で教育されたのと違って、彼らは「日本人だから日本のことをいっぱい勉強してください」と指示されていた。

 自主革命党は金総書記から「日本革命テーゼ」を与えられた。私は有本さん拉致に関与した八尾恵氏から「(革命テーゼを)暗記している」と直接、聞いている。彼らは党員を増やすため、欧州などで日本人を拉致した。柴田泰弘と妻の八尾氏は自衛隊員の中に党員を作れとの指令を受けて帰国、昭和63年、ソウル五輪へのテロを厳戒中の日本警察に逮捕された。

 八尾氏は、横須賀で防衛大学校学生らが出入りするスナックを経営、自衛隊工作を着々と進めていた。田宮は死ぬ直前、自分らが拉致した日本人は20人ぐらいだと語っており、自主革命党を通じた北朝鮮の対日工作の全貌は未(いま)だに不明だ。大志氏は自主革命党員であるはずだが、両親らによる拉致など対日工作について語ってはいない。特に、モンゴル旅行に行くとだまされて拉致された福留貴美子さんについて、情報を持っているはずなのに隠蔽(いんぺい)し続けている。

 そんな人物の政界進出を、菅首相らが助けている。闇は深い。(にしおか つとむ)

7月20日付産経新聞朝刊「正論」

求む、価値観説き品格ある首相 平川祐弘

求む、価値観説き品格ある首相

比較文化史家・東京大学名誉教授 平川祐弘

 ■求む、価値観説き品格ある首相

 2001年9月11日以後、米国は変った。テロリズムの元凶は地球上のどこに潜伏しようが、必ず見つけ出して殺す。その正義の大原則を貫徹した。この10年来、飛行場で靴まで脱がされるが、そんなチェックも甘んじて受けた米国民はそれだけ対テロ戦争への協力も本気だったのだ。だからこそ、国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディンが殺害されるや、手放しで歓喜したのだ。相手がテロリストであれ、人の死をあんなに喜んでいいのかと私は複雑な気がした。タリバンが将来、核兵器を手に入れたとき、どうなるのか心配だ。ただし米国の過剰反応を懸念はするものの、米国が内向きになって、アジアから手を引かれてはさらに困る。

 ◆日米とも「・11」で変わった

 11年3月11日以後、日本も変った。菅直人左翼政権の下であったが、日本人は日米同盟の重要性を再認識した。米軍が「トモダチ作戦」に動くや、日本人は支援に感謝した。鳩山由紀夫前首相が傷つけた日米の絆の修復にほっとしたのである。自衛隊には国民はかつてない感謝を示した。古風な言い方をすれば、「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉」ずる防衛力が日本にある。国難に立ち向かう頼もしい国軍がいる。ありがたい。自衛隊に対する信頼はかつてなく高い。

 だからといって、わが国を大東亜戦争下のような挙国一致体制にしないでもらいたい。わが国の新聞記者の多くは昭和10年代は軍部に、20年代は占領軍に、安保闘争以後は社会主義勢力に色目を使った。良心面しているが、新聞人は心のどこかで怯(おび)えていたのだ。軍部や革命勢力に対する恐怖心が心の隅にあって、一部大新聞は戦前は右翼日本主義の、戦後は左翼進歩主義のお先棒を担いだのだ。

 それにしても、なぜ新聞は今回もまた揃(そろ)いも揃って政府のスポークスマンと化したのか。福島原発事故で当局は、戦時下の大本営報道部同様、正確な発表をしなかった。私が問題としたいのは政府・東電・保安院の情報管制のペースになぜ新聞テレビが知ってか知らずか乗ってしまったのか、だ。

 ◆命捧げた人祀り責任者厳罰に

 原発建屋爆発後、外国から電話があり、「いま、風はフクシマから東京方向へ吹いている。大丈夫か」と心配してくれた。私は最初は日本側の発表をナイーブに信じていたから、外国から案じてくれる人の言葉を「風評被害」と内心で憫笑(びんしょう)した。だが後で見ると、枝野幸男官房長官、西山英彦原子力安全・保安院審議官(当事)の発表より外国報道の方が事件の核心をついていた。憫笑すべきは「メルトダウンはない」と口走って「報道ナショナリスト」ぶりを発揮した人の方だった。日本政府に対する信頼はかつてなく低い。

 この際、国民の深層意識の変化に政党も留意してもらいたい。新内閣には何党であれ、自らの命を延ばすことが自己目的化している人は、首班に選んでほしくない。日本を品位ある国にしてほしい。新内閣はまず他人のために自己の命を犠牲にした人の霊を弔っていただきたい。水門を閉めようとして殉職した消防団員、津波警報を最後まで放送して死んだ役場職員、そうした義人を国や地方自治体は必ず祀(まつ)っていただきたい。自衛隊員に殉職者がいるなら靖国神社や護国神社に祀るべきだろう。

 その際、新首相には言いにくいことも言っていただきたい。人はいざという時、命を捨てる覚悟がなければならぬ、ということを。そして、公のために身を犠牲にした人は敬意をもって遇せねばならぬ、ということを。それは、炎上するビルに突入して殉職したニューヨークの消防士についても同様である。大震災は命の尊さを教えたが、同時に保身や延命だけが全てでないことも教えてくれた。

 日本人が真に守るべき価値は何なのか。そのことを率直に説く人に首相になっていただきたい。そして、犠牲者を弔う一方で、事故の責任者も厳罰に処してもらいたい。けじめをつけることが大切だ。今回の原発事故は天災であると同時に人災である。その人災の真実を明確にして、責任者はパージ(職務追放)すべきである。

 ◆禍転じて福となす政治家必要

 敗戦は尊王攘夷の軍部を切る機会となり、日本は昭和20年、開国和親に転じ、明治維新以来の国是である「知識ヲ世界ニ求メル」平和的近代化路線に復帰した。私たちが選択した発展モデルは欧米民主主義であり、その健全性を疑う人は少ない。中国とも和して同ぜぬ関係を維持すべきだが、政治現代化の範を中国に求めようとは誰も思うまい。太子党の新指導者は中国人民を動員し毛沢東崇拝の愛国行進曲の大合唱をやっている。そんな北京に朝貢することが正しい歴史認識だと思う小沢一派は、さっさと消えるがいい。「ペテン師」も困るが、「トラスト・ミー」と嘘をつく男はもっと困る。

 民主党指導者は日本の品格を傷つけた。震災後のわが国には禍を転じて福となす政治家が必要だ。日本人が国難に際して心の深層で感じた価値観に訴えることこそが次の首相には大切なのである。(ひらかわ すけひろ)

7月19日付産経新聞朝刊「正論」


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