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2011.09.27 (火) 印刷する

【詳報】 月例研究会 「原発抜きで日本は生き残れるか」

国家基本問題研究所は平成23年9月12日、東京・永田町の全国町村会館で月例研究会「原発抜きで日本は生き残れるか」を開催しました。東日本大震災による福島第一原子力発電所の放射能事故を受け、原発の将来をめぐって国論が割れる中で開いたこの研究会には、319人(会員240人、一般41人、国会議員2人、前議員1人、議員秘書5人、報道関係者4人、役員14人、招待者3人、スタッフ8人)が参加しました。パネリストは北海道大学大学院工学研究院の奈良林直教授、日本エネルギー経済研究所の黒木昭弘常務理事、前福島県知事の佐藤栄佐久氏の3人で、国基研の櫻井よしこ理事長が司会役を務めました。

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櫻井 東日本大震災から半年が過ぎました。日本に54基ある原発の中で、今日現在で運転しているのは11基です。日本のエネルギーの3割弱が原発によってまかなわれていました。6割強が火力、8.5パーセントが水力です。1.2~1.3パーセントが太陽光をはじめとする再生可能エネルギーです。原発再稼働が許されないとすると、年末にはさらに6基が動かなくなり、来年の春には全部止まります。そのような事態になり、その上、民主党政権が示している方向のように脱原発ということになった場合、わが国は経済的、政治的に、さらに技術面そして安全保障面でも、日本国として基盤を保ち得るのかということを今日は議論していただければと思います。

奈良林 福島第一原発で何が起きたかといいますと、地震で開閉所の受電設備の碍子(=絶縁器具)が割れたり、敷地内の鉄塔が倒れたりして外部電源喪失になりました。非常用ディーゼル発電機が作動して、運転中だった原子炉の炉心の冷却が始まったのですが、約1時間後に大津波が発電所を襲いました。屋外の機器や電源盤、モーターに浸水して海水による冷却機能が停止し、タービン建屋にも大物搬入口のシャッターなどから海水が浸入し、地下1階にあった非常用ディーゼル発電機や電源盤、蓄電池も浸水して、全電源喪失という極めて深刻な事態となりました。非常用炉心冷却系のポンプも止まってしまったのです。

1号機には、非常用復水器(IC=アイソレーション・コンデンサー)と呼ばれる強力な冷却系がありましたが、冷えすぎないように運転員がオン・オフを繰り返して、津波が来てバッテリーが浸水して制御盤が作動不能になる時にモーターで動く弁を閉じて、作動を完全に止めてしまっていたのです。炉心の水位は急速に低下し、約2時間後には炉心の燃料が上部から水面上に露出し、燃料が冷却されなくなって高温となり、燃料を収納した金属管が水蒸気と反応して酸化し、水素を発生し、燃料は溶融しメルトダウンに至ったわけです。その後、消火用水ポンプを用いて海水を注入し、格納容器減圧のために圧力抑制室経由のベントを実施しました。放射性物質を外部に出したわけです。これは格納容器破損を防ぐためでした。実は3月11日の夜半には、すでに格納容器の圧力、あるいはタービン建屋の放射能レベルは上がっていました。私はマスコミの取材に対して、3月11日の夜が勝負であった、その後は負け戦でしたと言っていますが、3月11日に非常用復水器の操作を止めたままにしてしまったのが致命傷になりました。格納容器の内圧が上昇して、水素と放射性物質が上蓋から原子炉建屋の最上階のオペレーションフロアにリークして水素爆発の原因となったのです。

2号機、3号機でも蒸気タービンで駆動される隔離時注水系(RCIC)と呼ばれる高圧注水ポンプが作動していましたが、この蒸気タービンの制御器のバッテリーが枯渇して冷却機能喪失となり、1号機に続いて3号機で水素爆発が発生し、2号機は格納容器の下部が破損しました。この破損で放射性物質が大量に環境に飛散し始めました。さらに、定期検査中で炉心に燃料集合体が無かった4号機も、3号機から来たと推定される水素で水素爆発が発生しました。

私が東工大を出て(1年後輩が第一原発の吉田所長です)、メーカーに勤めて1年目に、アメリカのスリーマイル島の原発事故が起きました。その後ずっと原発の安全研究をしていました。国際会議の技術委員長を務めたこともあります。そして、これから造る原子力発電所は外部注水に頼らず自然冷却で事故収束するタイプにしようということで、AP1000原子炉を開発し、ESBWR(次世代単純化沸騰水型原子炉)を開発しました。これらの原子炉は格納容器を空冷冷却器として冷却に利用したり、水の蒸発で冷却したりするアイソレーション・コンデンサーがついています。1号機にも自然冷却系があり、アイソレーション・コンデンサーが備えられていたわけで、これを止めなけば1号機の事故は防げました。そして、1号機から放射性物質が付着した瓦礫が爆発で飛ばなければ、2号機、3号機の事故の収束もより容易になったのではないかと思います。

3月11日以降、原子力学会で私がチームの代表になって提案したのは、循環注水冷却システムです。これを3月28日に原子力学会のホームページで公表するとともに、テレビ等にも出演して、必要性を説きました。当時は全く見向きもされませんでしたが、格納容器を水棺にする方針が無理だということになって、6月の時点で急遽この案が採用されることになり、事故収束の決め手となり、今や冷温停止に近づいております。

チェルノブイリの事故では、原子炉が暴走をして出力が100倍にも急増し、ヨウ素やセシウムだけでなく、燃料のウランもプルトニウムも蒸発してヨーロッパ全土に撒き散らされてしまったわけです。このときの教訓から、ヨーロッパの原子力発電所はフィルター付きベントを採用しました。原子炉の格納容器からベントをする際に、ただスタック(排気筒)に持っていくだけではなくて、タンクの中に水と砂を入れ、あるいは金属の積層板によって吸着して、放射性物質を100分の1とか1000分の1に低減する。こういったフィルター付きベントをヨーロッパの多くの国々が採用しました。フランス、ドイツ、スイス、フィンランド、ノルウェーなどです。なぜ日本の原子力発電所にはこれが採用されなかったのか、私は返す返すも残念です。放射能が暫定基準値の7倍になりましたけれども、これが100分の7倍、1000分の7倍であったら、原子炉は壊れたかもしれませんけれども、少なくとも地元には一切迷惑をかけないで済んだわけです。避難した方々も速やかに戻り、元の生活を再開することができたのです。なぜこれが福島になかったのか。

黒木 櫻井理事長から「日本は原子力なしでやっていけるか」というご質問がありましたが、簡単に言いますと、もちろんできます。時間と費用を無視すればいくらでも可能だと思います。ただし、いろんな条件があるので、そこを考えてみなければいけません。今、太陽光や風力による発電について過大評価する人が多いですね。しかし、ドイツ連邦政府が今年発表したドイツのエネルギーの様子を見ると、再生可能エネルギーは、全体の11パーセントしかありません。その中でも中心はバイオマスで、風力は全体の1.5パーセントしかない。さらに太陽光は0.5パーセントに達していない。ドイツはヨーロッパの優等生で、新エネルギーをどんどん使って原子力がなくても済む生活をしているという幻想を持たれるかもしれませんが、実は太陽光や風力の貢献度は1割にも満たないのが現状だということをまず頭に入れていただきたいと思います。

ドイツの風力発電所は2008年、2009年、2010年と順調に増えているのですが、発電量は2008年をピークに、下がっています。別に風があまり吹かなかったというわけではなく、恐らく全部の風力発電所が発電したら送電網がもたないので、無理に止めたという事情があるのではないかと思います。例えば夜とか、電力需要がほとんどない時に風が強く吹いて発電しても、受電するわけにいかないんですね。送電網がいっぱいになってしまうから、大型の発電所に対しては停止命令ができるように法改正をして、ここ何年かは停止命令が頻発しています。日本ではヨーロッパと違って台風があるので、もっと難しくなります。風力発電では各社だいたい風速15~20メートルになると止めることになっているようです。低い風速で発電効率がよくなるよう設計してあるものですから、20メートルなんていう風が来ると壊れてしまう可能性が高くて、安全上の配慮から止めるケースが非常に多いのです。そうすると、もし台風が来た場合、広範囲の風力発電所が一斉に止まってしまう。そのときはどこに電源を求めるかという、相当大きな問題になるだろうと思います。ですから日本で電力全体の20パーセントも30パーセントも風力でまかなうのは難しいだろうということになります。

太陽光は、あまりにも費用が高いのです。ドイツでは月間10億ユーロくらい補助金が出ているとドイツの研究者が言っています。ですから、これまでに数十兆円以上お金を遣って、発電量がたった0.5パーセントではいったい何をやってるんだと、ドイツ版『ニューズウィーク』が非常に批判的な記事を書いています。ルーア大学の分析では、太陽光発電の二酸化炭素(CO2)削減コストが716ユーロで、平均価格の50倍かかっているといいます。スペインも電力買い取り補償制を作って一時期ドイツを抜く太陽光発電の導入国になりましたが、政府が財政負担に耐え切れなくなって補償を打ち切り、大きく減ってしまいました。そのスペイン政府の負債総額は約15兆円です。ですから、日本が太陽光発電でやるとなったら数十兆円、あるいはそれを上回る費用がかかることを覚悟しなければならないとまず知っていただきたいと思います。

ただ、新エネルギー派の主張が非現実的だと言うなら、日本の原子力発電はもっと非現実的なことをやっているのです。原子力計画はいつも過大で非現実的でした。1979年の計画では95年に7800万kWになるはずでした。84年の見通しでは2000年に9000万kW、それから直近の見通しでも、kWhで表示していますが、2010年に4800億kWhに増えることになっています。実績が2713億kWhだったので、57パーセントしか達成していません。原子力発電が日本の電力の半分以上を占めるような計画は、福島の事故以前でも不可能だったわけですから、これからはもっと難しくなると考えざるを得ません。

福島第一原発の事故の最終原因を考えますと、東京電力はひどいことを三つやりました。第一は、6系統ある外部交流電源が全部喪失したこと。これはあり得ない話です。なぜそういう送電線の引き方をしたのか。他の発電所では、送電線の1系統は必ず生き残っているんですが、今回の事故でも福島第一原発だけが全電源を喪失した。第二に、津波の想定が5.7メートルと非常に低かった(女川は10メートル)。第三に、先ほどお話のあったように、非常用電源の津波対策が全くなされていなかったことです(東海第二は実施した)。こんな三つのひどいことをしていた。にもかかわらず、実は事故は起こらなかったかもしれません。IC(非常用復水器)さえ動いていれば冷却はちゃんとできたはずです。このICが止められた理由は、最初は「冷却が速すぎたので操作員が止めた。止めた後に津波が来てバッテリーが沈没したために弁をもう一度開けることができなかった」ということでしたが、後で「蒸気が上がっていないので壊れたと思って止めた」という説明に変わりました。このあたりの事故原因の究明が非常に大事で、私は、最終的には、単純にヒューマンエラーによって事故が起こったと考えております。原因は単純でも結果は重大なのですが。

では今後はどうなるかというと、安全な原子炉は、できると思います。それから今動いているABWR(改良型沸騰水型炉)は、福島第一原発にあったマークⅠという格納容器のBWR(沸騰水型炉)よりずっと安全性が高いです。ですけれども、もう原子力の復活はそう簡単にはできないだろうと思います。スリーマイル島の事故の後、アメリカでは20年間新規立地ができませんでした。そうすると、もし2020年の一番楽観的な図を描けと言われたら、ドイツ方式の廃炉シナリオでいっても、原子力は3000万kW残って、稼働率85パーセント。今の稼働率は70パーセントですからこれは非常に楽観的な数字です。それからベースロード(安定的な電力)として期待できるバイオマス、小水力、地熱を、今の倍に持っていく。太陽光、風力を、これもかなり楽観的に10倍まで持っていく。環境派は50倍とか100倍にしようとか言いますが、用地の問題を考えると全く無理、フィジカルに無理な話です。こういう楽観的シナリオでも、やはり化石燃料に相当頼らざるをえない状況です。原子炉の稼働率は、もしかすると来年の夏までにはゼロになるかもしれない。その場合には、もう代替するのは液化天然ガス(LNG)しかありません。早急にLNG発電所を造らねばなりませんが、だいたい3.5兆円くらいの燃料費増になると考えています。日本の貿易黒字は、最近は2兆円とか4兆円のレベルになってきていますので、これは日本が貿易赤字国になるかどうかの瀬戸際の数字だと考えてください。

櫻井 黒木さんは、今回の事故はヒューマンエラーであったと言いました。佐藤さんは福島県知事をしていた時に、初めは新しいタイプの原子力発電に賛成したわけですね。しかし、現場でどのようなオペレーションが行われているかを知るにつれて反対の立場になっていきました。そのへんのヒューマンエラーについて、誰よりも悔しい思いをしておられるのが佐藤さんだと思います。

佐藤 1998年11月、福島県としてプルサーマルをOKしました。日本の原子力発電はトイレのないマンションでありまして、使用済み燃料を捨てる場所もない中で進めていた。しかし資源エネルギー庁長官が来て、高レベル廃棄物の処理についても法案を提出するという確約が得られたので、四つの条件を付けて了解しました。①MOX燃料(混合酸化物燃料)の品質管理の徹底 ②取り扱い作業員の被曝低減 ③使用済みMOX燃料の長期展望の明確化 ④核燃料サイクルの国民理解―です。しかし、見事に裏切られました。JCOの臨界事故が起きて2人が亡くなったんです。続いて、データ改竄が明らかになったばかりの高浜原発用のMOX燃料について、再びデータ捏造があることがイギリスの再処理工場作業者の内部告発によって明らかになりました。政府の係官もイギリスに行ってチェックしたはずなのに。

そういういい加減なことが出てきましたので、私はプルサーマル強行に待ったをかけました。すると、東電の副社長が「新規電源開発を凍結する」と記者会見で発表しました。私は、プルサーマルを受けないなら福島県内で建設中の他の発電所も止めるよ、という脅しだと思いました。福島県として、「電源立地地域としては、この際、国及び事業者の責任のもと、将来の需給動向をしっかりと見据え、新規電源開発のみならず、核燃料サイクルを含めたエネルギー政策全般を抜本的に見直し、これらを国民、県民に分かりやすく説明し、理解を求める必要があるのではないかと考えております」というコメントを出しました。

すると翌日には東電社長が訂正会見をしました。この経過を考えますと、東電の後ろに経産省がいてコントロールしているのだろうなと感知しました。プルサーマル凍結をめぐって水面下の攻防をしていた2001年3月、双葉郡の2万2150戸全戸に、「プルサーマルと原子力安全」と題したチラシが配られました。配布を主導したのは資源エネルギー庁の原子力政策課長でした。原子力安全・保安院の新設で260人、原子力安全委員会の強化で100人が原子力の安全を守るとうたい、きちんと監督されるからプルサーマルは心配ないと請け合っているのです。安全性の確認や原発政策の透明化を求める私に対する陰口や恫喝はすべて経産省から聞こえて来ていましたが、原子力安全・保安院はその経産省の傘下にある。原発政策の推進と監視を同じ組織が行うわけで、泥棒と警官が一緒のような仕組みで、果たしてきちんと働くのかと思わざるを得ません。なによりこのチラシは、地方自治への重大な挑戦でした。福島県でこれからプルサーマルについて議論しようとしている時に、中央官庁がこんなチラシを撒き、地方政府の領域に直接手を突っ込んできたもので、民主主義のプロセスをないがしろにする行為です。

私は中曽根首相の随行でチェルノブイリ事故の半年後に東欧を回りました。その時、外務省に注意されました。車の中での会話も、ホテルの部屋からかける電話も全部盗聴されているから気を付けてくださいと。自由、民主、公開でない、そういう国の体質だからチェルノブイリ事故が起きたと思いました。まさに今、経産省のどうしようもない姿を見ますと、自由、民主、公開という民主主義の原則と全然違う国の体質こそがこの日本の事故を起こしたんだと思うんです。双葉郡には300の神社、鎮守の森がありました。そのコミュニティーが全部吹き飛ばされました。全部難民になっている。1869年に会津藩は官軍に負けて下北半島六ヶ所村に移されました。あれは戦いに負けたからしかたないですが、今度は戦いに負けたわけでもない、一生懸命国に協力して、東京の皆さんに電気を送ってきただけです。そして今、核燃料廃棄物、放射性廃棄物の中間貯蔵を約束もしたことないのに、福島県でやってくれと言われているんです。

櫻井 佐藤さんのお話は、会津の歴史を踏まえて、今回もまた大変な悲劇に遭ったということで、日本人であれば本当に良く理解できることです。奈良林さんと黒木さんに伺いたいのですけれども、原発について未来があるとしたら、どういうことがあり得るのでしょうか。

奈良林 福島の場合には、残念ながら一時的に原子炉の冷却と放射能の閉じ込めを人間がコントロールできなくなる事態が生じましたが、これは原子炉の原理から言うと単純なことでした。ウランの核分裂反応をした燃料の中に核分裂生成物というのがあって、それがだんだん違う物質に変わっていく時に発熱をします。これを崩壊熱といいますが、このわずかな熱を冷やすことができなかった。地震については長い間議論をしてきて、福島でも地震では原子炉本体の損壊はなかったのですが、津波対策に大きな穴が開いていたのです。その根本には本質的な安全文化の欠如、危機意識の低さの問題があると思います。アメリカのデービス・ベッセ原子力発電所で、原子炉の上に大きな穴が開いたことがあります。その時に幹部は総入れ替えになって、新しい幹部が改善目標を示して、従業員が改善提案をしました。それが厚さ何メートルもの書類になりましたが、それを全部実行すると明言して、地元に説明し、最終的に運転再開にこぎつけました。その後の運転成績は大幅に改善しました。幹部の心の持ち方ひとつで、大事故寸前だった発電所が全米でトップクラスの発電所に生まれ変わっています。

佐藤 2006年に、神戸大名誉教授の地震学者、石橋克彦さんが原子力安全委員会の耐震対策検討分科会を辞任しています。「このような分科会のありさまでは、このままここにとどまっていても、私は社会に対する責任が果たせないと感じます」という、読むと涙が出るような辞任の弁でした。人がどうこうという問題ではなく、原子力安全委員会でさえパブリックコメントを無視しているという、システムそのものの問題だと思いますが。

奈良林 今回の問題は原子力関係者のみならず、この大津波を地震や津波の専門家の誰も予測していなかったということにあります。しかし、危機感を持った備えがあれば防止できるのです。ただ、東北電力の女川原発に行きましたら、やはり津波の被害はあったんですが、最終的に大事故にならずに食い止めています。この所長さんに、なぜ14.8メートルという高い敷地にしたのですかと聞きましたら、三陸沖は歴史的に見て非常に津波が多いから、当時の先輩たちが津波に対する安全性を増すために東電よりも5メートル高くしたと言っていました。所長さんいわく、「先輩たちの志を継いで安全を守って行くのが私どもの使命だ」と。そういう取組が災害に対していかに大切かということですね。電源盤のケーブル火災などが発生しましたが、所員を区画から退避させ、炭酸ガス消火設備を作動させて無事鎮火させています。女川市内の津波で避難してきた地元の何百人もの方々を発電所が受け入れて助けています。安全規制には常に危機感を持った取り組みが必要です。

佐藤 その割には、原子力安全委員会とか、一番リーダーシップを発揮しなきゃならないところが腐っていたということも言えるのではないですか。これだけの事故なのに、原子力安全委員長が2~3週間たってやっとテレビに出てきて、言ったことが「私は総理にアドバイスするのが仕事です」。東電がどうのこうのよりも、どの役所もガバナンスがなくなっている、チェックする機関がチェックできなくなっている。それこそが問題だと思いますね。

櫻井 佐藤さんの話を聞いていると、いちいちその通りだと残念ながら思ってしまいます。しかし、東京電力など原子力発電をしているところの説明不足、情報隠しを見ていますと。もう一方の事実も私たちは見なければいけないと思います。女川原発、それから福島第一原発の5号機、6号機は大丈夫だったんですね。女川原発は福島第一原発より今回の震源地に近いにもかかわらず、です。5.4メートル高いところに設置した。それは、歴史的に考えて津波が来ると考えたからです。そして、1000年に一度のマグニチュード9.0の地震に耐えて、津波にも耐えた。同じ電力会社でも、防備についてしっかりしているかどうか、経験知をどう生かすかということで決定的な差が出てくるわけです。この原発の技術をどう評価できるかを冷静に考えなければならないと思います。その上で、この原発を動かす日本人の能力がどうかという点で、佐藤さんのご意見、体験が生きて来ると思うんです。

黒木 ドイツのメルケル首相が「あんなに素晴らしい技術を持った日本ですら事故が防げなかったのだから原発はやめるべきだ」と言いましたが、ここには二つ誤解があると思います。まず、原子力というのはそんなに高度な技術ではないのです。古い技術なのです。二つ目に、日本が技術的に素晴らしいクオリティコントロールをやっているかというと、これもかなり疑問があります。日本は製造業は確かに強いのですが、金融業界を見ても、バブルの時は世界の銀行のトップ10はほとんど日本の銀行が占めていましたけれども、結局、金融設計技術では何のアドバンテージもなくて、みんな負けてしまいました。原子力も似たようなもので、電力会社は護送船団方式だったために、当時の通産省が軽水炉の改良計画を立てても、今あるもので十分じゃないかと、非常に後ろ向きでした。結局アメリカの技術をそのまま使っているだけで、今回の事故を見ても、送電線の件しかり、津波の想定しかりで、マネジメントとしては非常にずさんなことをしてきたのが分かると思います。10年前、20年前に、原発の輸出の話があった時、日本の偉い先生方が、東南アジアに原発を造ったら、そこで事故が起きて日本は大変なことになると言いました。しかし、私はフィリピンの発電所に行ってきましたが、非常に立派なマネジメントをしています。日本人は少し思い上がっていたと、反省することが大事だと思います。

日本の原子力は戦線を広げ過ぎたと思うのです。54基も造ってしまいました。核燃料サイクルもやる、FBR(高速増殖炉)もやるといって、人材も土地もないのに広げてしまった。だから古い原子炉も使わなければならなくなる。福島第一の1号機は、40年前の車のようなものです。シートベルトもエアバッグもないまま走っていて、ドンと事故を起こしたという感じなのです。それから、核燃料サイクルという、もうとっくに頓挫しているものに何十兆円というお金と人材をかけ、そのため肝腎なところにお金も人材も集まらない。原子力は全体を縮小して、軽水炉の安全対策をきちんとして、そこだけを守るようにして、いかに生き残るかを考える時期にきているのではないかと思います。

櫻井 日本の原子力発電の稼働率は、世界でもまれに見るほど低いわけです。ですから、54基すべてを動かす必要は実はないわけですね。稼働率を85パーセントとか95パーセントに持っていくことが政治的、社会的、そして技術的にできるとしたら、原子力発電所はもっと少なくて済むということはあります。それから、何で日本は40年も前の古い原発を使っているかというと、これを廃炉にしたらその後にもう新しく造らせてもらえないという、社会的コンセンサスが得られないという要素があるわけです。この件については、私は電力会社はむしろ可哀そうという見方をしています。なぜならば、誰も原発に関する情報公開をしてこなかったために、国民の間に原子力発電や放射能に対する理解もほとんどない。今回の事故でも放射能の基準値がどうだ、超えたかどうか、怖いか怖くないかというようなレベルでしか捉えられなくなっている。これは情報を発信しなかった企業もいけないけれども、メディア、そして私たち国民の側にも問題があるんだろうと思います。で、まず技術的な議論をクリアしていきたいと思いますが。

佐藤 ちょっとその前に。

櫻井 はい、どうぞ。

佐藤 4月11日にドイツの雑誌『シュピーゲル』の取材を受けました。それが5月23日号に載っています。「原子力産業、電力業界、政党、学者は一体となって、民主主義を脅かす不可侵の聖域を作り上げてしまったのである。原子力村の馴れ合いの根回し談合が、この大事故を助長してしまったのは、確かである。最高5.7メートルの津波しか福島には来るはずがない、と東電は算出していたが、これは日本のエンジニアグループで編成される委員会が出した資料を根拠にしている。しかしこの委員会の35人のメンバーのほとんどは、電力会社の元社員か、電力会社が出資するシンクタンクに従事する人間である」。この人数は私は確認しておりませんが、私が原子力委員会で問題提起したときの委員も8~9割は原発に賛成の皆さんですよ。シュピーゲルは「マスコミの大半も電力産業を大スポンサーとして潤い、この談合世界の一部であると言っていい」と書いていますが、まさに日本のマスコミこそ大変な問題を抱えていると思っています。ドイツはナチスにやられた国なので、民主主義について日本より深刻に考えているということはあると思います。

櫻井 ドイツと日本の比較は難しいところがあります。確かにドイツではメルケル首相が脱原発を決めました。しかし、風力や太陽光の発電は、大変なお金をかけて努力してはいますけれど、実戦部隊にはなり得ていないわけです。加えて、隣国フランスから原子力によって生産した電力を買うことができる。ですから自分で原発をしなくても、経済の血液といわれる電気を十分に賄うことができているわけです。わが国は島国ですので、どの国とも電線がつながっているわけではありませんから、ドイツとは物理的にも政治的、経済的にも違う状況におかれているということをまず明確にしたいと思います。3.11を境にして、原発をやめた国はドイツ、スイス、ギリシャ、イタリアとかありますけれども、その他の主要な国は原発推進です。新しい原子力発電の設備を各国が開発していく時に、技術的には世界の原発がどこに向かい、日本がどういう位置を占めていて、どんな可能性があるのかを論じていただければと思います。

奈良林 私が勤務する北海道大学に昨年サウジアラビアの王立大学の副学長が二人来て、原子力教育に協力してほしいということでした。石油がなくならないうちに原子力発電所を10基、20基造って、それを国の宝にするというのです。この間はマレーシアに行ってきましたが、ここも、天然ガスの輸出国から輸入国に転じてしまったので、原子力発電所を造ろうとしています。世界では原子力を基幹電源として使っていくという国がたくさんあります。日本のプラントを作る技術は優れていると思います。北海道の泊原子力発電所にしても、最新鋭のフルディジタルの制御盤などを持っています。圧力や温度を大型画面に表示し、プラントの状況を把握して、全交流電源喪失時にも運転手順書を自動で表示していきます。冬場の厳しい気候への備えに4000kVAの大型ガスタービン電源車も所有していて、地元や大勢のマスコミを呼んで、公開で制御室での運転員の操作や注水訓練を5月に実施しました。技術はどんどん進歩しています。今回の福島第一原発事故は、常に新しい知見に基づいて原子力発電所を改良し続けるという安全規制の根本的な仕組みが抜けていたと私は思います。今回、大津波に対しての備えができていなかったのは反省しなければなりません。たとえ津波に襲われても電源を供給して安全を守る、冷却機能を設けて事故を自分で収束できるような原子炉にするということをこれから進めなければいけないと思います。

黒木 日本のプラント技術は確かに世界最高です。たとえば今、中国に対していろいろな国が原子力の輸出をしようとしていますけれども、どこが落札しても、ロシア以外であれば日本のIHIしかタービンを造れないと思います。圧力容器もたぶん日本で製造するでしょう。基幹部品の製造と性能保証能力は世界一だと思います。ただ、炉心の設計とかになると、日本が最高とは言えないと思いますが。確かにサウジアラビアをはじめいろいろな国で原子力推進の動きが出ていますから、これを日本の輸出産業として育てていくことは非常に重要だと思います。

ちょっと櫻井先生に反論させていただきたいのですが、新しい原子炉は1基130万から160万kWになりますから、仮に30基持てば3000万kWから4000万kWの大台に乗せられるわけですね。古い発電所をリプレースして大きな発電所にする方法を取れば、お金も人材も集中できることになると思っています。あまりにも手を広げると、太平洋戦争の過ちをもう一回繰り返すんじゃないかと心配されます。

櫻井 逆にお尋ねしたいんですけれども、戦線を広げないで日本にとって一番いい規模の原発はどのくらいとお考えですか。

黒木 電力の25パーセントはどうしても原子力に頼らざるを得ないと思っています。今の発電設備を利用してですね、その地域の方には大変恐縮ですけれども、もう一度原子力に付き合っていただいて、増設ではなくてリプレースという形で発電所を造っていくのが一番いいと思います。そうすれば、(放射性廃棄物の)中間貯蔵の問題もある程度敷地内での解消ができるのではないでしょうか。

櫻井 リプレースというのは30年、40年運転した古い原子炉を一回壊して、その同じサイトに新しいものを造るという意味ですか。

黒木 たぶんそれでは時間がかかりすぎると思いますので、廃炉にして同じ敷地内の別の場所に新しいのを造るということで、結果的には大きくなってしまいますが、敷地に結構まだ余裕のあるところがあるんですね。

佐藤 原発を造ると、農業は駄目になって、建設業はどんどん増えて、30~40年はいい思いをするんですよ。しかしその後どうするか。そこにあなた方の子供さんは住まないでしょう。私が知事に就任してすぐ、双葉町が、2基原発があるのに、もう1基増設したいって言って来たんですよ。金を生む、地域にとって夢のような施設を既に持っているのに、おかしいと思っていました。原発が存在することで巨額の固定資産税が30年間保証されるし、電源三法交付金(電源開発促進法、特別会計に関する法律、発電用施設周辺地域整備法による地方自治体への交付金)も得られる。しかし補助金頼みの自治体は、金がじゃぶじゃぶ入ってくるうちに目的と手段が逆転してしまい、「金がないから原発をまた誘致したい」という発想になるんです。その周期は30年です。戦後間もなく水力発電ダム建設に沸いた福島県只見地方も深刻な過疎にあえいでいるように、原発もいつか廃炉になります。原発を誘致する世代はいいですが、将来の世代に責任が持てない。世代間の共生ができません。

黒木 原発が誘致されて最大の恩恵は巨額の固定資産税なのです。数千億円の建物が建って、その固定資産税ですから、地元は非常に潤うのです。ところが、償却期間が終わるとそれがゼロになってしまう。ですから、固定資産税欲しさに、増設、増設となってくるわけです。その時に、増設じゃなくて新設にして、古い原子炉をリプレースしてくれればいいのですけれど、それだと原子力計画が達成できないので、古いのを残したまま7基も8基も造るとなると、いろんな問題が生じてくる。

佐藤 いや、原発の場所はもうなくなりますよ。使用済み燃料を持っていくところがないのですから。経産省の若手の官僚が書いたのではないかと思われる、「核燃料サイクルをいま止めなければ、実用化しないのに19兆円のコストが発生する」という怪文書が出回ったことがありましたが、こういうことを真剣に国民的に議論しないと、どこかで事故を含めて犠牲が起きますよ。

櫻井 私は原子力発電に関して、『クリスチャン・サイエンス・モニター』というアメリカの新聞の助手をしていた時から関心を持って、東京電力のいろいろな所を見に行きました。で、地震に関しては日本はよくやっているという印象を持っています。ただ、佐藤さんが言ったように、原発を受け入れるための大きな構図ができていないんです。よくトイレのないマンションと言われるわけですが、使用済み核燃料をどうやって処理していいか分からないから、今回の事故でも、原発の建屋のプールの中に取りあえず置いておいてというようなことがありました。これは技術というよりは政治的、社会的な問題です。それで、日本が世界に伍していくために、技術的に原子力がわが国の力で可能なのか、また、佐藤さんが言ったような人的被害をどう防げるか、伺いたいと思います。

佐藤 それからもう一つ質問ですが、ワンスルー(ウラン燃料を再処理しないで一回だけ使ってそのまま貯蔵すること)は、日本の地震などの条件下でも可能なのかどうか。そのほうがコストは安いはずですが、日本は再処理の方針でここまで来てしまった。

奈良林 ワンスルーは日本でも可能です。既にそういう施設があって、巨大な鋼鉄製の容器の中に燃料を入れて保管しています。六ヶ所村の再処理施設にある最終段階のガラス固化体を作る設備は今動いていないのですけど、実は、技術があるのにコストダウンさせられて、前処理の沈殿槽というのを取り払ってしまったのです。それが六ヶ所がうまくいっていない原因なのです。設備を変えればいいのですが、今の設備をちゃんと動かさないと次に進むのを認めないとなっていて、いつまでたってもやらせない。そこさえ変えればうまくいくのは、反対派の人も知っています。高速増殖炉「もんじゅ」も、しっかり続けるべきだと思います。ただ、日本は一回トラブルがあると14年止めさせられる。フランスでは32年間に35回ナトリウム漏れ事故を起こしています。でも、貴重なたくさんの事故データを取ってちゃんと進めました。今、中国、ロシア、アメリカも、みんな研究開発を再開しています。将来の人類のエネルギーをどう確保するかという観点でやれば、開発を進めるべきなのです。

黒木 日本のエネルギーは2007年の実績で石炭が25パーセント、原子力が26パーセント。四分の一ずつですが、残念ながら再生可能エネルギーや水力は9パーセントなので、石油、天然ガスの依存度が41パーセントなんです。これを石油・ガスも25パーセントにして、四つとも25パーセントにしたい。それから、電力会社との癒着は何とかしなければいけないのですが、あんまり生々しいことを言いたくないので……。

櫻井 どうぞ言ってください。

黒木 ある事故があったときに、電力会社の人が来て、「明日、長官のクビを飛ばす」と言った。そういう力関係があるわけです。そこを何とかしなければ、きちんとした安全確保はできない。形式的に保安院を経産省から離しても駄目で、癒着の構造を変えなければ。それから、人材にはどうしても限りがありますから、戦線を縮小して、きちんと管理できる体制にまで持っていかないと駄目だと思います。

奈良林 火力発電と原子力発電のコスト競争になって、電力会社が新卒学生の採用を極端に減らしたことがありました。それで、原子力工学科は就職できないわけですから、学生が来なくなってしまった。この間、新潟県の泉田知事に「人材育成をしっかりしてください。東京電力を嫌って優秀な人材が電力会社に入らなくなると、原発の地元は心細くてなりません」と言われました。これは地元にとっては切実な問題であると思います。幸いなことに、私の1学期の講義に、10人以下になってしまうかと心配していたら160人の学生が来てくれました。講義室は満室で、床に座って聴講する学生もいました。熱心に受講する学生たちの真剣な眼差しと熱気でいっぱいになりました。全15回の講義、反対の立場の先生や再生エネルギーの専門の先生にも講義をお願いしました。冷房もなく汗だくになりながらメモを取り、受講の感想をびっしりと書いてくれる学生たち。私は学生の迫力から大変な元気をもらいました。まだ日本の未来は明るいと思います。

佐藤 先ほど、もんじゅの話も出ましたが、もんじゅ事故のときの情報隠しのようなことをやると国民の信頼がどんどんなくなっていく。以前、私は原子力委員会の安全部会に出席して、「フランスは16年もかけ、ドイツは20年もかけて議論しているのに、4~5か月で結論を出していいのか。あなた方はマインドコントロールされている」と言いましたら、検事出身のある委員は「失礼ね」と二度も言いました。原子力発電は国会が制定したエネルギー政策基本法には全く記述がなく、閣議決定で定められるエネルギー基本計画になってようやく出てくるんです。そんな狭いところでちょろちょろやらないで、国民にオープンにして議論してくださいと言いたいんです。

櫻井 原発は安全であるという建前で、安全だからリスク管理をしなくてもいい、しようとすると、なぜそういうことをするのか、安全であるならばしなくていいのではないかという、普通なら考えられないような議論が長年行われてきて、今回の失敗につながったのだろうと思います。安全保障と全く同じです。憲法に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書いてある。世界はそのような善意の国々の集まりであるから、わが国は悪いことをしなければ、攻撃しなければいいのだということですね。私たちの国はそのような建前の中でこの数十年間、日本国の安全保障の充実ということを怠ってきたわけです。本質的に全く同じ精神構造なのではないかと思います。

そこに今回は保安院の失態と、民主党の無能が重なり、大変な時期に大変な災害が起きたと思います。私は、佐藤さんが言ったことは本当によく分かるのです。被災者の方々の気持ちもよく分かります。でも、この悔しさを乗り越えていかなければならないわけで、そのために何ができるのかということを客観的に考えなければならないと思います。今、石油はほとんど中東から来ています。日本まで運ぶ間にチョークポイント、つまりここを止められたら運べなくなるという重要な接点がたくさんあります。ホルムズ海峡、マラッカ海峡、台湾海峡、バシー海峡などがあって、どこかの国が日本を危機に落としてやろうと思ったら、かなり容易にできてしまう。わが国はそういった意味で、世界で最も脆弱性が高い国なのです。隣に中国、ロシア、北朝鮮がいて、自由主義陣営の中でも競争相手のアメリカがいて、その他の国々がいて、もちろん親しい国、同盟国もいるけれども、結局、日本国を担保し国民を担保するのは、日本国自身の力でなければならないのだと思います。

そのときに、原子力発電というのは日本を支える有効な一つの手段だろうと思います。エネルギーの問題は、日本の生き残り、つまり、安全保障そのものであるということなのです。黒木さんが、25パーセントずつ4つの分野でやったらと言うのは、かなり妥当な線なのではないかと思います。そこで問題は、このような妥当な線に行き着くだけの知性の成熟度を私たち国民が持てるかどうかということです。情報が十分に供給されず、しかも供給された情報は非常に偏ったものが多いのが現状である中で、私たち国民は本当にしっかりと今の世代、次の世代、またその次の世代を通じて、国際社会の中で立派に国家としてやっていくだけの力をどうやって身に付けていくかということを考えなければならないと思います。(了)