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国家基本問題研究所

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国基研代表団が訪米

国基研代表団が訪米

 

  国基研は平成21年4月12~18日、櫻井よしこ理事長を団長とする4人の代表団をワシントンに派遣しました。滞在中、有力シンクタンクのハドソン研究所主催のシンポジウムで櫻井理事長が講演し、中国の台頭と日米同盟の将来に関して国基研の基本的考え方を明らかにしました。講演内容(邦訳)は別掲の通りです。
 また、一行は米政府内外のアジア専門家約20人と会見し、中国問題のほか、6カ国協議のボイコットを表明したばかりの北朝鮮への対応などについて意見を交換しました。
 ハドソン研究所やヘリテージ財団では、研究所同士の協力関係の構築についても話し合いました。代表団の顔触れは櫻井理事長のほか、田久保忠衛副理事長、島田洋一評議員兼企画委員、冨山泰主任研究員兼企画委員でした。
 今回の訪米に関しては、6月24日(水)に東京・九段会館で報告会を開催します。
詳細については、HPや会報に同封したちらしをご覧下さい。

 

 代表団が会見した米側の主な人々は次の通りです。

 

●元政府高官 :(ブッシュ政権)アーミテージ元国務副長官、グリーン元国家安全保障会議上級アジア
          部長、リビー元副大統領首席補佐官、イエーツ元副大統領副補佐官/
          (クリントン政権)コーエン元国防長官
●国務省    :アルビズ次官補代理
●議会      :(米中経済安保再検討委員会)バーソロミュー委員長/
          (議会調査局)ニクシュ・アジア専門官/
          (上院)サイモン・エネルギー天然資源委員会スタッフ部長
●シンクタンク :(ハドソン)ワインスタイン最高経営責任者、クロプシー上級研究員/
          (国防大学国家戦略研究所)クローニン所長、プリスタップ上級研究員/
          (AEI)プレトカ副理事長、ブルメンソール研究員、オースリン研究員/
          (ヘリテージ)ローマン・アジア研究部長、シザーズ研究員/
          (国際評価戦略センター)フィッシャー上級研究員
●大学      :(ジョージタウン大)ドーク教授、サッター客員教授
●その他      :(北朝鮮人権委員会)ダウンズ会長

 

櫻井理事長のハドソン研究所での講演(邦訳)
 皆様、こんにちは。
 米国で最も権威ある研究機関のハドソン研究所がこのような機会を与えてくださったことに心から感謝の意を表します。私にとって大きな名誉であり、発足間もない日本における純粋な民間のシンクタンクである国家基本問題研究所(JINF)にとって、画期的な仕事の一つになることでしょう。また、今日のシンポジウムは日米関係にも少なからず貢献できると信じています。

 来年、日米安全保障条約は現在の形に改定されてから50周年を迎えます。50年前、日本の最高指導者だった岸信介首相は、国内の治安を維持するために在日米軍の助けを借りる国家は独立国家ではないとの考え方から、条約の片務性を少しでも双務性に近づけたいとの志を抱いて、それまでの安保条約改定を試みました。当時、国内世論や野党は、安保反対を唱え激しく抵抗しましたが、私は岸首相の信念は正しかったと思います。日本は負担の分担、あるいは責任分担を果たし、同盟関係の双務性に向かって大きな一歩を踏み出さなければなりません。
 岸政権以来の歴代政権がこの単純かつ自明な方向性を打ち出せなかったのには二つの大きな理由があります。一つは、日本が米軍に占領されていた時代に連合国軍総司令部(GHQ)から事実上日本に押しつけられた日本国憲法の効果が絶大で、しかも憲法改正の手続きが国会の3分の2の支持と国民投票による承認を必要とするように、難しいことです。元々軍事力の保有を禁じた現行憲法の下、朝鮮戦争をきっかけに作られた自衛隊は「通常の概念」による「軍隊」ではなく、システムも法体系も普通の国のそれと異なっています。自衛隊にはROE(武器使用基準、交戦規定)がなく、警察法によって行動しなければなりません。加えて、第九条に基づく諸々の規制、例えば専守防衛、非核三原則などの政策のほか自衛隊法、防衛省設置法が存在し、集団的自衛権の行使を禁じる内閣法制局の解釈が自衛隊の活動を大きく規制しています。
 二つ目の理由は、日米同盟が50年間続くうちに米国の軍事力への依存心が強まり、独立自尊の精神が次第に希薄になってきたことです。自らが守るべき固有の領土に関して、「米国は日米安保条約に基づいて守るべき義務がある」と主張するのはその好例でありましょう。周囲の国際情勢に緊張感を抱かぬ日本人の無頓着さが、日米同盟の産物だと言えるのは皮肉なことです。日本は現実がいかなるものかに目覚めなければなりません。JINF創設の理由の一つは、pacifism(絶対平和主義)の深い眠りに陥った日本人を覚醒させるところにあります。
 日本再生に必要な憲法改正は現在の日本の政治状況から見て、簡単な課題とは考えられません。しかし、与党の自民党にも野党の民主党にも憲法改正の志を持った政治家は少なくありません。これらの人々を中心とした新しい政治に私は期待を懸けていますが、当面早急に実現すべきは集団的自衛権の行使です。「日本には集団的自衛権はあるが、憲法上その行使は認められない」という非論理的な内閣法制局の解釈を改めるため、安倍晋三首相は専門家からなる「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を発足させました。同懇談会は2008年6月に集団的自衛権の行使に道を開く報告書を出しました。しかし、安倍首相は病に倒れ、後任の福田康夫首相には報告書を実現するつもりはなく、その後任の麻生太郎首相もこの問題をすぐにも取り上げる気配はありません。JINFとしては、提言、説得を通して、速やかに「行使」への道を開きたいと考えています。
 13年越しに未解決のままとなっている沖縄県普天間基地の移転は、いまだに中央政府と沖縄県との間で合意に至らず、恥ずかしい限りです。ソマリア沖の海賊対策は海上自衛隊の派遣で中国に後れを取り、集団的自衛権の歪んだ解釈のため、新しい法案が成立するまでの期間は、護衛の対象は自国船のみに限られます。海賊からの攻撃にも刑法上の正当防衛もしくは緊急避難の適用で対処する「異常な日本」の実情を米国人の多くは理解できないことでしょう。

 

 21世紀の日本にとって国運を左右するほどの重大性を帯びているのは「台頭する」中国といかに対応するかです。もちろん、ボーダレス社会でヒト、モノ、カネなどの交流を通して日中関係はますます相互依存度を深めていくでしょう。米中関係も中台関係も同じことでしょう。ここで最も重要なのは中国の本質である一党独裁体制、人権の抑圧、仮借のない軍事的増強をどう考えるかです。とりわけ、日本にとって中国の軍事的増強は脅威以外の何ものでもありません。
 中国の軍事費は21年間にわたって連続二桁の増加を示しており、米国防総省、英国際戦略研究所(IISS)などは一貫してその不透明性を指摘してきました。しかし、中国側にとってはそのような米欧諸国の懸念は理解できないことでしょう。1996年に、中国の駐日大使徐敦信氏は「中国は列強の侵略を受けたが、その中で一番大きな被害を与えたのが日本だ。中国人民は苦しい歴史の中から、自分の国が弱ければいじめられるとの教訓を得た」と公言しました。昨年12月に空母建造計画を明らかにした中国国防省の黄雪平報道官は定例の記者会見で「空母は国家の総合力の表れだ」と明言しました。中国にとっては、軍事力の増強そのものが目的であります。軍事力は着実に外交力に反映されることを知っているのです。セオドア・ルーズベルトが言った〝Speaking softly, while carrying a big stick〟(棍棒片手に猫なで声で)を実行しているにすぎません。したがって長年にわたる軍事費の増加は、中国にとって当然の行動であり、不透明ではないのです。
 中国海軍がこれまでどれだけ日本の領海を侵犯し、東シナ海で軍事的プレゼンスを背景に中間線ギリギリにいくつもの天然ガス田を開発したことでしょうか。日本が現実に実効支配し、歴史的にも国際法上も日本の領土である尖閣諸島を、勝手に自国領だと主張してきました。1992年に国家主席名で領海法を突然公布し、領海侵犯の外国船を実力行使で退去させると宣言する国が、果たして正常な国家でしょうか。

 

  ここで、本当に残念ながら、私は、日本人の外交的ナイーブさを白状しなければなりません。日本はあまりにも安直に謝罪を繰り返してきました。日中関係が悪化していた時期の1995年8月15日、第二次世界大戦終戦50周年記念日に当時の社会党委員長の村山富市首相はいわゆる村山談話を発表し、改めて、こう謝罪しました。
  「私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」
 この表現が以後の日中、日韓関係で常に利用されてきました。「反省とお詫びを行動で示せ」という露骨な要求が首脳会談で示され、結果、国民の間にフラストレーションが蓄積されました。村山談話を作成した日本政府関係者の責任は重大だと考えます。
  地政学的に大陸の中国と島国の日本の関係がどれだけの緊張を生むかについて、私は、米国側に十分な理解があるかどうか疑問に思います。戦後の長い日米同盟の歴史と米中関係の間には、基本的に相違が存在するというのが大方の日本人の理解です。経済力と軍事力を背景に、アジアの代表的国家として振舞い、日本の教科書の内容、首相の靖国神社参拝、領土権などに露骨な介入をする中国への、日本人の受け止め方と米国人の受け止め方には、相違があります。
  私たちはいたずらに中国と摩擦を起こしたり、ことを構えたりするつもりは全くありません。民主化され、平和を愛好する中国との正常な友好関係を望まぬ日本人はいないでしょう。しかし、覇権主義的中国には身構えないわけにはいきません。ブッシュ前政権時代のゼーリック国務副長官は米国が日中関係の摩擦回避に一役買うつもりであると述べ、中国には「責任あるステークホルダー(利害共有者)」であれ、と呼び掛けました。現実の政治における米国政権の中国への傾斜を見ると、ワシントンと北京、東京と北京の間には若干の距離感の違いがあるように見えます。
 日本の将来の選択は大別して三つあります。①日米同盟をさらに強化すると同時に日本の同盟上の役割を強化する。②米国との関係を弱め、日中関係を緊密に構築する方向に踏み出す。③日米同盟を解消し、自主防衛を決断する。
 JINFを含めて国民の大多数はゆっくりしたテンポではありますが、①を選択しています。①の選択肢を支える人々の中にも、改憲に反対し、日本の軍事的役割はいま以上に増やしてはならぬとの意見が一部に存在するのも事実です。しかし、①の選択は、日本国内の主流をなすと考えてよいと思います。しかしゼーリック氏のステークホルダー発言をはじめ、ここ数年の米国の政治の潮流は、米国が日本の選択として、②が好ましいと考えているかのようにみえます。
 クリントン国務長官が一昨年「フォーリン・アフェアーズ」誌で、「21世紀、米国にとって最も重要な二国間関係は中国との関係だ」と書いたのは、事実そのとおりでしょう。経済の相互依存関係から判断すると、すでに米中関係は戦略的経済対話の場を政治、安全保障へと広げつつあります。実際にクリントン長官は訪中の際に米中戦略経済対話を米中戦略対話に格上げする合意を北京側と取り付けました。さらに、コンドリーザ・ライス前国務長官は昨年の「フォーリン・アフェアーズ」誌で、北朝鮮の核開発を論議してきた6カ国協議を「北東アジア平和安全保障メカニズム」(NAPSM)という恒久機関に切り替え、「北東アジアの安全保障フォーラムに向かっての第一歩」にしてはどうかと提唱しています。ライス前国務長官の意見が、果たして、どこまで、米政府を代表しているのかはわかりませんが、NAPSMは日米同盟といかなる関わり合いを持つのでしょうか。私はここで、88年前の1921年から22年に開かれたワシントン軍縮会議を想起せざるを得ません。日英同盟が破棄され、さして意味もない四ヵ国条約に切り換えられていったあのときのことです。

 

 GHQにはウィロビー将軍を長とする情報・公安局とホイットニー将軍に率いられた民政局がありました。前者は日本にある程度の軍事力を残さなければいけないとする「ストロング・ジャパン」派であり、後者はケーディス大佐を中心に、日本国憲法草案を起草し、軍事力の保有を禁じた第九条を重視する「ウィーク・ジャパン」派であります。
これは、国際共産主義の脅威に対する認識と日本の国柄についての見方の相違によるものです。前者は日本を自由民主主義陣営の独立した一員として迎えることを正しい選択と考えました。 後者は、日本に対する不信感ゆえに自立を許してはならないと考え、アメリカの完全なる保護下に置こうとしました。1952年4月に主権を回復して以降の日本が、前者すなわちアメリカとともに自由民主主義陣営の一員として生きていく決意をしたのは歴史が示すとおりです。
 しかし、最近日本で村山談話に反する意見を公にした理由で航空幕僚長が罷免される事件が起きました。彼の真意は、国を守ろうとする自衛隊員が自国の歴史に誇りを持たなければ防衛の責任を全うできないし、日米同盟も健全に機能しないとの点に尽きます。彼の解職に関しては、国内でも賛否の意見が分かれています。解職は当然だとした人々は村山談話を支持する「ウィーク・ジャパン」派であります。他方、解職を問題視する私たちは村山談話に疑念を抱く「ストロング・ジャパン」派です。私たちは日米同盟の強力な信奉者であり、より一層の責任を日本が果たすべきだと考えています。

 

  歴史観の統一は個人間でも国家間でも不可能でしょう。米英両国がいまのような「特殊な関係」を構築するまでにどれくらいの長い期間を必要としたか、それは皆様のほうがよく御存知です。そもそも、ジョージ・ワシントンは米国では建国の父ですが、英国では「植民地の反乱軍の首領」だったはずです。米英両国は二度戦い、世界各地でもトラブルを起こした。〝Anglophobia〟(英国恐怖症)という言葉は20世紀初頭の米国にも残っていました。その両国がお互いを必要な存在と認め合い、今日のような確固たる基礎を築いたのは20世紀もかなり進んでからでありましょう。民主主義の寛容の精神に富んだ米国民の中に、「村山談話を否定する日本人の考え方もよく理解できる」と発言する人々が増えれば増えるほど、日米関係は現在の米英の「特殊な関係」に近づくことと思います。
 「ウィーク・ジャパン」派がいまでも米国内に根強く残っているのを、私は、よく承知しています。冷戦末期の1990年に沖縄駐留米海兵隊の首脳が、在日米軍のもう一つの目的は日本の軍事的台頭を押える「ビンのフタだ」と述べたことは、私たちの記憶に新しいのです。最近では民主党政権の外交政策に影響力を持つと言われるマデレーン・オルブライト元国務長官が昨年出版した著書〝Memo to the President Elect〟(次期大統領への覚書)の中で日本の軍事力強化に反対し、次のように述べています。
 「アジア・太平洋地域における米国の軍事的プレゼンスに異議を唱えることは、たとえ中国でもめったにしない。なぜなら、米軍は日本を守るためにアジアにいるのだが、同時に日本を抑える効果もあると考えられているからだ。日本の軍隊への制限を外せば、中国をより一層の軍備増強に駆り立てる可能性があるし、韓国と北朝鮮を中国に接近させかねない。さらに、自立した日本の軍隊が常に米国の利益に沿って行動すると想定することもできない。安倍(晋三元首相)が新憲法制定を訴えたセールスポイントは、日米同盟重視よりナショナリズムだった。進駐軍に押し付けられた憲法に代えて、真に日本的な憲法をつくろうと彼は強調していた」
 このような見方は、戦後の日本が国家として他国に比べていかに「異常」であるかを知らない論評であると言わざるを得ません。米国、韓国、中国が共通の日本批判の歴史観で日本を封じ込め、結果、日本が「普通の国」になれずに身動きもできない状態に陥り続けることが、今後の日米関係にプラスかマイナスか賢明な皆様方にこれ以上の説明は不要と思います。日米関係の輝かしい将来を熱望しつつ、このプレゼンテーションを終わりたいと思います。御静聴ありがとうございました。

 

 

ハドソン研究所でのシンポジウム風景

ハドソン研究所でのシンポジウム風景

 

 

アーミテージ元国務長官(左から3人目)と

アーミテージ元国務長官(左から3人目)と

 

 

ヘリテージ財団で会見

ヘリテージ財団で会見

古庄幸一元海上幕僚長講演・動画配信開始

平成21年3月10日(火)星稜会館において古庄幸一元海上幕僚長が「海自はソマリア沖で何ができるか」と題して講演を行い、その後、中谷元自民党衆院議員・長島昭久民主党衆院議員を交えシンポジウムを行いました。

 

皆様ご覧ください。

 

 

こちらからご覧いただけます。

日本政府は北朝鮮に対し、モノ、カネ、ヒトにわたる全面制裁を発動せよ

日本政府は北朝鮮に対し、モノ、カネ、ヒトにわたる全面制裁を発動せよ
-北朝鮮のミサイル発射をうけて-

 

平成21年4月5日

 

国家基本問題研究所緊急提言

 

 

 本日(平成21年4月5日)、北朝鮮は「人工衛星」打ち上げの名目で長距離弾道ミサイルの発射実験を強行した。
 先端部に何が搭載されていようが、北朝鮮の弾道ミサイル実験は、日本および同盟国アメリカに対する核攻撃能力確保を主目的としたものであり、我が国安全保障上の重大な脅威だ。
国連は、北朝鮮による弾道ミサイル発射を非難した安保理決議第1695号(2006年7月15日)において、「こうしたシステムが、核、化学及び生物兵器弾頭の運搬手段として使用される可能性にかんがみ、重大な懸念を表明」し、「こうした発射は、特に北朝鮮が核兵器を開発中である旨宣言したことにかんがみ、地域内外の平和、安定及び安全を危うくすることを確認」した上、北朝鮮に対し、「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止することを要求」、またすべての加盟国に対して、「北朝鮮によるミサイル又はミサイル関連品目、資材、物品及びテクノロジーの調達並びに北朝鮮のミサイル又はWMD計画に関連した資金の移転に警戒を払い、防止するよう要求」している。
 日本政府は、領海領土を侵される場合はMDにより迎撃し、それ以外の場合でも日本独自で追加制裁(輸出の全面禁止など)を発動し、国連安保理での非難・制裁決議をめざすとしている。米国、韓国をはじめとする多くの国の首脳が我が国政府のこの姿勢を支持している。
 私たちもこうした政府方針は評価する。
 その上で、私たちは、我が国政府が以下の措置を講じることを提言する。

 

 

提言
・日本政府は、全面制裁を発動し、国連安保理決議1695号などを実効あらしめる措置を取れ。
(1)決議を遵守しない国へのODA(その他あらゆる援助)停止。
(2)国際機関が北に提供するあらゆる支援の阻止。
・日本政府は、安全保障能力を高め、日米同盟を実効あらしめる措置を取れ。
(1)ミサイル迎撃能力整備と共に、敵基地攻撃能力の確保に踏み出すこと。
(2)日米同盟の自己否定である現行の集団的自衛権解釈を改めること。

 

 

■北への全面制裁発動とともに、安保理決議を実効あらしめる措置を
日本政府は、追加制裁として輸出の全面禁止を検討しているが、それ以外にも対北送金停止と日本人・在日朝鮮人の往来全面禁止も行い、モノ・カネ・ヒトの流れを全面的に断つべきだ。第三国経由などの抜け穴をふさぐ努力も強化せねばならない。
また、新たな国連安保理決議に向けた外交努力は重要だ。だが、決議ができたところで有効に実施されなければ意味がない。
過去および将来の決議に実効あらしめるため、日本政府は、
(1)決議を遵守しない国に対するODA(その他あらゆる援助)の停止
(2)国連機関が北に提供するあらゆる支援の阻止
など具体的行動を取る必要がある。
 上記(2)に関しては、国連経常費の分担で一、二位を占める日米両国が緊密に連携し、拠出金の一部留保を含む圧力の行使にも踏み込まねばならない。日本の国益を損なう機関に漫然と日本国民の税金を提供することは許されない。

 

 

■安全保障能力を高め、日米同盟を実効あらしめる措置を
日本にとっての最大の脅威は今回発射されたテポドンミサイルでなく、すでに150基以上実戦配備されているノドンミサイルである。それへ対処するためにも日本政府は、MDによる迎撃能力の整備をさらに進めるとともに、敵基地攻撃能力の確保に踏み出さねばならない。
 過去、例えば北朝鮮によるテポドン1号の発射後の記者会見(1998年9月4日)において、額賀福志郎防衛庁長官(当時)が、「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。ほかに手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地を叩くことは法理的には自衛の範囲に含まれ可能である」との1956年の政府統一見解に言及した上、「見解の考えは生きているし、そういう選択肢はあり得る」と明言している。
 ところが、日本政府は敵基地攻撃力の整備を先送りし続けてきた。北朝鮮が攻撃力を高める中、もはやこうした怠慢は許されない。
また、日本政府は、日米同盟の自己否定である現行の集団的自衛権解釈を速やかに改める必要がある。
 

◎どこへ行った?「ヘッジ」戦略

◎どこへ行った?「ヘッジ」戦略
=米報告書「中国の軍事力」からキーワード消える=

 

主任研究員 冨山泰

 

 

 米国防総省は2009年3月25日、年次報告書「中国の軍事力」を公表した。オバマ政権下で初めてとなる今回の報告書をブッシュ前政権下で出された過去数年の報告書と比較すると、米国の対中軍事政策のキーワードだった「ヘッジ」という言葉が、最も目立つ巻頭の「要約」から消えていることが分かる。
 「ヘッジ」とは、中国の不透明な軍事力増強に対して「保険をかける」とか「防衛措置を講じる」といった意味で、2006年の報告書から一貫して使われてきた。例えば2008年の報告書は、中国の軍近代化の動機などが不明なことに懸念を表明した上で、「この状況は当然ながら、不明なことに対してヘッジすることにつながる」と記述していた。つまり、増強される中国の軍備が何に使われるか分からないので、米国は周到に準備しておくべきだという警戒心を表明したのだった。
 ヘッジの具体的内容は昨年までの年次報告書に明示されなかったが、米国の有力シンクタンクの報告書や研究者の論文には、①中国に対する軍事的優位の維持②日本などとの同盟関係の強化③米軍事力の大西洋から太平洋へのシフト―などが例示されている。
 しかし、今年の「中国の軍事力」では、ヘッジに触れた文章がなくなり、代わって「米国は域内の同盟・友好国と協力して事態を見守り、政策を適宜調整する」という当たり障りのない文章が挿入された。この置き換えが何を意味するか今のところ分からないが、オバマ政権の対中警戒心の低下を物語るとしたら看過できない。
また、昨年まで問題視してきた中国の軍事面での「透明性欠如」が、今年は「限られた透明性」と表現が和らげられ、透明性の若干の向上を評価するかのような言い回しに変わった。
さらに、今年の報告書は、中国の軍近代化は「台湾以遠」にも影響を及ぼすと従来通り警戒を示しながらも、中国は軍近代化のおかげで「(国際)平和維持、人道支援・災害救済、海賊対策などの分野で国際社会の責任に協力的に寄与できるようになった」と指摘し、軍近代化の肯定的側面にわざわざ言及している。
今年の報告書であと一つ目を引くのは、ブッシュ前政権後半における対中政策のもう一つのキーワードだった「ステークホルダー(利害共有者)」も姿を消したことだ。2006年以来の年次報告書は「中国が責任あるステークホルダーとして(世界の問題に)参加することを促す」とあった。それが今回は「中国が世界の問題に責任を持って参加することを促す」に変わった。
両者の間に実質的な違いは直ちに読み取れないので、オバマ政権はブッシュ前政権のキーワードを単に使いたくなかっただけかもしれないが、米国の対中政策を注視する立場からは、気になる変化ではある。(了)