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2009.04.05 (日)

【提言】 日本政府は北朝鮮に対し、モノ、カネ、ヒトにわたる全面制裁を発動せよ

平成21年4月5日
一般財団法人 国家基本問題研究所

日本政府は北朝鮮に対し、
モノ、カネ、ヒトにわたる全面制裁を発動せよ
-北朝鮮のミサイル発射をうけて-

 
 本日(平成21年4月5日)、北朝鮮は「人工衛星」打ち上げの名目で長距離弾道ミサイルの発射実験を強行した。
 先端部に何が搭載されていようが、北朝鮮の弾道ミサイル実験は、日本および同盟国アメリカに対する核攻撃能力確保を主目的としたものであり、我が国安全保障上の重大な脅威だ。
 国連は、北朝鮮による弾道ミサイル発射を非難した安保理決議第1695号(2006年7月15日)において、「こうしたシステムが、核、化学及び生物兵器弾頭の運搬手段として使用される可能性にかんがみ、重大な懸念を表明」し、「こうした発射は、特に北朝鮮が核兵器を開発中である旨宣言したことにかんがみ、地域内外の平和、安定及び安全を危うくすることを確認」した上、北朝鮮に対し、「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止することを要求」、またすべての加盟国に対して、「北朝鮮によるミサイル又はミサイル関連品目、資材、物品及びテクノロジーの調達並びに北朝鮮のミサイル又はWMD計画に関連した資金の移転に警戒を払い、防止するよう要求」している。
 日本政府は、領海領土を侵される場合はMDにより迎撃し、それ以外の場合でも日本独自で追加制裁(輸出の全面禁止など)を発動し、国連安保理での非難・制裁決議をめざすとしている。米国、韓国をはじめとする多くの国の首脳が我が国政府のこの姿勢を支持している。
 私たちもこうした政府方針は評価する。
 その上で、私たちは、我が国政府が以下の措置を講じることを提言する。

【提言】
1.日本政府は、全面制裁を発動し、国連安保理決議1695号などを実効あらしめる措置を取れ。
(1)決議を遵守しない国へのODA(その他あらゆる援助)停止。
(2)国際機関が北に提供するあらゆる支援の阻止。
2.日本政府は、安全保障能力を高め、日米同盟を実効あらしめる措置を取れ。
(1)ミサイル迎撃能力整備と共に、敵基地攻撃能力の確保に踏み出すこと。
(2)日米同盟の自己否定である現行の集団的自衛権解釈を改めること。

 
 
北への全面制裁発動とともに、安保理決議を実効あらしめる措置を
 日本政府は、追加制裁として輸出の全面禁止を検討しているが、それ以外にも対北送金停止と日本人・在日朝鮮人の往来全面禁止も行い、モノ・カネ・ヒトの流れを全面的に断つべきだ。第三国経由などの抜け穴をふさぐ努力も強化せねばならない。
 また、新たな国連安保理決議に向けた外交努力は重要だ。だが、決議ができたところで有効に実施されなければ意味がない。
 過去および将来の決議に実効あらしめるため、日本政府は、
(1)決議を遵守しない国に対するODA(その他あらゆる援助)の停止
(2)国連機関が北に提供するあらゆる支援の阻止
など具体的行動を取る必要がある。
 上記(2)に関しては、国連経常費の分担で一、二位を占める日米両国が緊密に連携し、拠出金の一部留保を含む圧力の行使にも踏み込まねばならない。日本の国益を損なう機関に漫然と日本国民の税金を提供することは許されない。
 
安全保障能力を高め、日米同盟を実効あらしめる措置を
 日本にとっての最大の脅威は今回発射されたテポドンミサイルでなく、すでに150基以上実戦配備されているノドンミサイルである。それへ対処するためにも日本政府は、MDによる迎撃能力の整備をさらに進めるとともに、敵基地攻撃能力の確保に踏み出さねばならない。
 過去、例えば北朝鮮によるテポドン1号の発射後の記者会見(1998年9月4日)において、額賀福志郎防衛庁長官(当時)が、「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。ほかに手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地を叩くことは法理的には自衛の範囲に含まれ可能である」との1956年の政府統一見解に言及した上、「見解の考えは生きているし、そういう選択肢はあり得る」と明言している。
 ところが、日本政府は敵基地攻撃力の整備を先送りし続けてきた。北朝鮮が攻撃力を高める中、もはやこうした怠慢は許されない。
 また、日本政府は、日米同盟の自己否定である現行の集団的自衛権解釈を速やかに改める必要がある。