【第1257回】中国の侵攻能力強化に日本は目を覚ませ
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 防衛省によれば、5月25日から29日にかけて、空母「遼寧」を含む中国海軍艦艇数隻が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間の海域を南東進し、太平洋へ向けて航行した。 この間、25、26の両日、尖閣諸島・久場島の北約240キロ及び久米島の北西約190キロの海域において、空母搭載の戦闘機による発着艦が約90回、ヘリコプターによる発着艦が約30回確...
【第1256回】日本は尖閣有効支配の本気度を示せ
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 5月3日12時21分ごろから約15分間、尖閣諸島周辺の日本領海内の中国海警船から発艦したヘリコプターが領空侵犯をした。航空自衛隊のF15戦闘機が那覇基地から緊急発進したが、約400キロ離れた尖閣諸島に到達する前に、中国ヘリは海警船に戻った。 中国による尖閣諸島領空への侵犯は3回目である。中国の態様がこれまでと異なるのは、日本の民間...
【第1255回】食料品の消費税をゼロにする財源はある
国基研企画委員・元内閣官房参与 本田悦朗 食料品、エネルギー価格の上昇を主因に、総合物価指数が上昇率3%台半ばと高止まりしており、消費者の負担が大きくなっている。 食料品の価格上昇は、食料自給率が低いことも相俟って、輸入価格上昇に伴う「コストプッシュ・インフレ」によるところが大きい。コストプッシュ・インフレは実質賃金の上昇が遅れている現状では、国民生活を苦しめる一方、消...
【第1254回】中国封じの決め手は人民元相場の自由化
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 米国と中国は5月10、11日のスイスでの高官協議で、米国の対中関税の145%から30%への引き下げなどで暫定合意した。両国は今後90日間、包括的な経済の枠組みを話し合うという。トランプ米政権が包括協議の主要テーマとして取り上げるべきは、人民元相場の管理制度の撤廃である。 ●貿易秩序を破壊した中国 高関税は百害あって一利...
【第1253回】皇位安定継承を破壊する読売の提言
国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志 「『安定的な皇位継承の確保』をうたいながら、議論集約をぶち壊そうとしているのではないか」。読売新聞社が15日に発表した皇位継承に向けた提言を読んだある政府高官の感想である。安定的な皇位継承や皇族数確保を図る法案をめぐって、令和4年1月提出の政府の有識者会議が示した皇統に属する男系男子の養子縁組による皇室復帰案と、女性皇族が婚姻後も...
【第1252回】確認できたトランプ政権の拉致解決への意志
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 私は北朝鮮による拉致被害者の支援組織「救う会」会長として、4月29日から5月4日まで、家族会および拉致問題に取り組む国会議員らと一緒に訪米した。トランプ米政権が日本人拉致問題解決への強い意志を持っており、米議会の共和、民主両党議員もそれを支持していることを確認できた。 ●米議会にも連帯の動き ルビオ国務長官がトラ...
【第1251回】米英合意の含意は対中戦略の共有にあり
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 米国と英国が関税交渉で合意した。トランプ米政権による「相互関税」の基本税率10%を堅持しつつ、鉄鋼・アルミニウム、自動車への25%の追加関税については、乗用車への関税を10%に低減する輸入枠を設け、鉄鋼・アルミニウムは無税とした。 石破茂政権は米英合意について聞かれると、米国に高関税の撤廃をあくまでも求めると言う。だがトランプ...
【第1250回】尖閣防衛の抜本的見直しを
国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志 沖縄県の尖閣諸島周辺で5月3日、中国海警局の艦載ヘリコプターが短時間ながら日本の領空を侵犯した。中国ヘリによる領空侵犯は初めて。日本の民間機が尖閣周辺を飛行したためヘリを飛ばして警告したと中国側は主張しているが、そうした既成事実を積み重ねる「サラミ戦術」を中国は繰り返してきた。日本政府は「極めて遺憾」と抗議したが、従来型対応では限...
【第1249回】中国軍第2の海外基地始動―カンボジア
国基研研究員 中川真紀 4月5日、カンボジア南西部の同国海軍リアム基地で、中国の支援による基地拡張工事の完了式典及び基地内に設置された中国カンボジア・リアム港共同兵站訓練センターの発足式が挙行された。同センターには中国人民解放軍が常駐することになっており、中国はアフリカのジブチ基地(2017年開設)に続く第2の海外軍事基地を実質的に保有した。 ●軍人が常駐、軍艦も停...
【第1248回】VOJを設立し中朝との認知戦を戦え
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 米政府は冷戦時代から、国家予算を投入してソ連、東欧、中国、北朝鮮など全体主義国家の住民に真実を伝える活動をしてきた。今風にいえば「認知戦」である。その担い手がVOA(ボイス・オブ・アメリカ)、RFE(自由欧州放送)、RFA(自由アジア放送)だった。 所属する記者は政府の広報を一方的に流すのではなく、独自に取材して記事を書...