【第988回】防衛国債こそ安定財源だ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 年末の来年度予算案編成最大の焦点は防衛力増強の財源で、優先すべきは故安倍晋三元首相が言及した「防衛国債」の発行論議である。防衛国債は経済、防衛を含む国力挽回の決め手になり得る。ところが、岸田文雄首相に対する「有識者会議」提言は国債発行を否定し、増税を求めている。国民から需要を奪い、経済及び防衛力のゼロ成長を招いてきた緊縮財政路線の...
【第987回】戦時労働者問題で安易な譲歩をするな
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 11月13日、岸田文雄首相が訪問先のプノンペンで尹錫悦韓国大統領と初の公式会談を行った。韓国大統領府の関係者は、懸案の一つである朝鮮人戦時労働者問題について、「首脳間で具体的な議論はなかったが、両国の実務者間で解決策は1~2個に絞り込まれた」と説明した。 尹錫悦政権は発足以来、日本企業の財産が現金化され、それに我が国が制...
【第986回】中国の微笑外交にだまされるな
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 バンコクで11月17日に行われた約3年ぶりの日中首脳会談前の写真撮影で、習近平中国国家主席は笑みを絶やさず岸田文雄首相と握手を交わした。2014年に安倍晋三首相(当時)と会談した時には無表情だったのと対照的である。中国の微笑外交には魂胆がある。米バイデン政権は新たな対中半導体輸出規制に取り組むなど、厳しい姿勢で中国に臨もうとして...
【第985回】共和党主導で米の対中強硬姿勢強化か
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 米中間選挙の結果、下院で共和党が多数となり、来年1月以降、議長および全委員長ポストを確保して、議事運営の主導権を握る方向となった。 下院外交委員長に就任予定のマイケル・マッコール議員(現外交委員会共和党筆頭理事)は米議会きっての対中強硬派として知られる。 ●下院外交委員長にタカ派 台湾の防衛力および国際的地...
【第984回】首脳会談で繰り広げる「半導体の供給網」の綱引き
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 今月11日以降、アジアにおいては東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の一連の首脳会議、主要20か国・地域(G20)首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催された。注目すべきはその機会に行われた日米韓、米中、日米、日中、中韓などの首脳会談だ。それらに共通する経済分野でのキーワードは「サプライチェーン(供給網)」だ。 ...
【第983回】デサンティス知事の圧勝が教えるもの
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 米中間選挙は本稿執筆時点で、上院における民主党の優位維持が決まったものの、下院はまだ大勢判明に至っていない。そこで、以下、最も印象的で示唆深いフロリダ州知事選に焦点を絞って論じたい。日本にとっても参考になる点が多々あると思う。 ●ぶれない政治姿勢で「時の人」に フロリダは、選挙のたびに民主、共和両党が競り合う、...
【第982回】習氏3期目で激化する技術争奪戦に要警戒
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 習近平中国国家主席が共産党総書記としての3期目をスタートさせた。注目すべきは10月の共産党大会における習氏の活動報告だ。ここ数年、習政権が長期的な米中対立を見越して展開している「強国」路線が明確に示されている。そこでのキーワードは「双循環」「自立自強」「国家安全」の三つだ。 ●外国企業の中核技術を狙う 「双循環」とは、半導...
【第981回】中国を脅威でないと言い切れるのか
国基研副理事長 田久保忠衛 国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)は11月3日、フランスの歴史人口学者・家族人類学者エマニュエル・トッド氏を招き、「安倍以降の国際秩序」と題する討論会を開いた。著書「最後の転落」の中で1991年のソ連崩壊を言い当てた伝説的予言者だけに、参加者の関心は大きく、この日も終始一貫して日本人の常識を超える発言を続けた。 ●トッド理論に欲しい補...
【第980回】キリスト教信者から見た旧統一協会問題
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 私事で恐縮だが、私はキリスト教信者だ。その中でも新旧約聖書は間違いのない神の言葉であり信仰と生活の唯一の規範だと信じるプロテスタント福音派だ。イエスは処女マリアから生まれ、死人を生き返らせ、十字架で処刑された3日後に復活した、などと聖書に書かれている超自然的な内容をそのまま信じている。 キリスト教の立場からすると、文鮮明...
【第979回】小型核融合炉は実用段階に程遠い
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 高市早苗内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が昨年の自民党総裁選の時から主張している小型核融合炉の開発戦略を策定する政府の「核融合戦略有識者会議」の初会合が9月30日に開催された。世界の開発競争に負けないように開発投資を急ぐべきだとの意見も一部にあるが、実は核融合炉が商業用発電炉として実用化される見通しすら付いていないことを指摘した...