野村明史の記事一覧
ネタニヤフ後も混乱必至のイスラエル政局 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助教)
歴代最長の連続12年間、通算15年にわたるイスラエルのネタニヤフ政権がついに終焉を迎えようとしている。 イスラエルは、この2年間、4度の総選挙(定数120)を繰り返し、政局は混乱が続いていた。イスラエルでは第一党が単独で過半数を獲得できなかった場合、大統領は各党に意見を聞き、連立政権を運営できる可能性の高いリーダーに組閣を委任する。3月の総選挙結果からリブリン大統領は、比較第一党となった「...
中東の新たなゲームが始まる 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助教)
中東で新たなゲームが始まった。8月13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化に合意した。合意はアメリカの仲介の下に行われ、イスラエルはヨルダン川西岸併合の一時中断を約束した。 1979年、エジプトのサダト大統領はイスラエルとの国交正常化を果たしたが、多くの中東諸国から裏切り者との批難を浴び、最後は過激派に暗殺された。だが、今のところ中東で大きな混乱が起こる気配はない。パレス...
コロナ禍の今、日本は積極的な中東支援を 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助教)
中東で新型コロナ感染者が急増している。新型コロナはイランが主要感染ルートとなって瞬く間に中東へ広がった。サウジアラビアでは3月2日に初の感染者が報告され、全国で厳しい移動制限や罰金を科して感染収束に努めてきた。 だが、新型コロナ対策による経済活動の制限と原油減産は、原油収入に依存するサウジの財政を苦境に追い込んだ。ロイターの試算によるとサウジの外貨準備高は、3月には前月から約270億ドル減...
中東のパワーゲーム映すカショギ事件 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助手)
サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された事件で、サウジ検察当局は11月15日、実行犯ら11人を起訴し、このうち5人に死刑を求刑した。サウジのジュベイル外相はムハンマド・ビン・サルマン皇太子の事件への関与を強く否定している。サウジは失墜した国内外の信頼回復と事態収拾に追われている。 ●サウジ追いつめるトルコの狙い トルコのエルドアン大統領...
実はシリアへの関心薄いトランプ 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助手)
13日(日本時間14日未明)、トランプ米大統領は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして首都ダマスカスと西部のホムス近郊に局所的な攻撃を行った。トランプ政権がシリア内戦へ直接介入するのは、昨年の2017年4月に続いて2回目であるが、昨年の単独攻撃とは異なり、今回は英仏を率いての105発のミサイル攻撃となった。 ●露との直接対決は望まず トランプ氏は、3月末に米軍はシリアから撤退...
くすぶる不満、大規模デモ再燃の懸念も 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助手)
2017年12月末より、イランの各地で政府に対する大規模な抗議デモが発生した。28日に北東部のマシャド、ニシャプール、シャーハルードなどの都市で始まり、29日には、首都テヘラン、シーア派の聖地としても知られるコムやエスファハーン、ケルマンシャー、シラーズなど全土に拡大した。このような大規模デモは2009年のアフマディーネジャード氏の大統領当選に対し、対抗馬であった元首相のムサーヴィー氏側が不正を...
エルサレム首都認定が映す中東の現実 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助手)
トランプ米大統領が6日(日本時間7日未明)、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、テルアビブにある米大使館を移転すると公式に発表した。米議会は1995年、大使館のエルサレム移転を義務付ける法律を可決しており、トランプ氏も就任前から公約に掲げていた。 しかし、歴代の米大統領は中東での混乱を避けるため、その決定を先送りする文書に半年ごとに署名してきた経緯がある。今回は、先送り決定の期限が4日に再...
注視怠れぬサウジの〝宮廷政変〟 野村明史(拓殖大学海外事情研究所助手)
サウジアラビアの政治的変化は突然やってくる。サウジ国民は、1、2時間前に王宮庁から国王勅令が発表されることを初めて知らされ、テレビの前にくぎ付けとなる。ここ数年見られる急激な改革もこのように国民に知らされ、希望や不安を与えている。 サウジはアブドッラー前国王までバランスを重視した政策を採っていた。2005年、アブドッラー国王時代は、スルターン(皇太子兼国防相)、ナーイフ(内相)、サルマーン(...