13日(日本時間14日未明)、トランプ米大統領は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして首都ダマスカスと西部のホムス近郊に局所的な攻撃を行った。トランプ政権がシリア内戦へ直接介入するのは、昨年の2017年4月に続いて2回目であるが、昨年の単独攻撃とは異なり、今回は英仏を率いての105発のミサイル攻撃となった。
●露との直接対決は望まず
トランプ氏は、3月末に米軍はシリアから撤退すると述べている。シリアそのものに大きな関心はないとみられる。今回の攻撃も、化学兵器の使用に対するものであり、アサド政権の存続やシリアの行く末に関与しようとしたものではない。
トランプ氏はまた、攻撃前にロシアを名指しして「準備せよ」と、まるで猶予を与えるような宣言をツイッターで行っていた。今回の局所的攻撃を見ても、米英仏がロシアとの直接対決を望んでいるとは考えづらい。
トランプ氏は、アサド大統領を「殺人ガスのけだもの」とこき下ろし、ロシアに協力すべきでないと宣告することによって、化学兵器使用についてもロシアの共犯を印象付けた。ロシアは、米英仏3カ国に対する非難決議を提出したが、反対多数で否決されている。
米英仏によるシリア空爆は、欧米との対立を深めるロシアの国際社会での影響力低下を狙ったものと見ることもできるだろう。
●日本は人道支援に徹すべし
現在のシリア情勢は、ロシアとイラン、トルコの3カ国によって動かされていると言っても過言ではない。米英仏による攻撃後、ロシアとイランは非難の姿勢を示したが、トルコは歓迎の意向を示した。
ロシアとイランにとって、シリアでの影響力を確保する上でアサド政権の存続は必要不可欠である。しかし、多数のスンナ派国民を抱えるトルコは、シーア派系のアサド政権の正当性を認めておらず、シリア内でたびたびアサド政権側と小さな衝突を起こしている。
トルコのシリア内戦での関心は、自国での影響力拡大を懸念するクルド系勢力の動きにある。ロシアとイラン、トルコは、シリア問題についてたびたび協議を重ねているが、現在までお互いの落としどころを見出せずにいる。
トルコでは4月3日、ロシアが建設する国内初の原子力発電所の起工式が行われるなど、最近の両国は良好な関係にあるが、今回の米英仏の攻撃によって、ロシアとイラン、トルコの見解の相違が改めて浮き彫りとなった。3カ国の関係が、今後のシリア情勢にどのように影響していくかしばらく注視する必要がある。
このように複雑な状況の中、隣国にロシアを持ち、中東諸国に多くのエネルギーを依存している日本は、政治的に大きな関与を示すことは難しいだろう。しかし、中東の人々の望みは、紛争の終結とともに、犠牲になっている多くの同胞の命を救うことだ。日本は彼らに寄り添い、医療団の派遣など行動を伴う積極的な人道支援を行うことによって日本の中東での立場を鮮明に示していくことが必要だろう。