公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研 日本研究賞

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寺田真理記念 日本研究賞

「国基研 日本研究賞」創設の趣旨

 十年前、私たちは日本国の基本をゆるぎなく立て直し、本来の日本らしい姿を取り戻したいとの思いで国家基本問題研究所を創立した。日本独自の価値観を守りつつも、広く世界に視野を広げ、国際社会のよき一員でありたい。そのために、憲法、安全保障、教育など、日本が直面する国家的課題に果敢に取り組み、日本再生に貢献したいという切望が、私たちの原動力だった。
 志を実現するには国際社会の日本理解を深め、諸国との相互尊重を確立することが欠かせない。だが、現実は私たちの願いから程遠く、多くの点で日本は誤解されている。とりわけ歴史問題に関する誤解は根深く、その誤解の壁は現在も私たちの前に立ちはだかる。日本と価値観を同じくする西側諸国でさえも、必ずしも、例外ではない。
 誤解を解くのに一番よいのは、外国の人々に日本を知ってもらうことであり、なんとか日本研究の人材を育てたいと考えていたときに、寺田真理氏より御厚志をいただいた。志を同じくする氏の思いも反映して創設したのが日本研究賞である。
 同賞に托す私たちの願いは、日本の姿、歴史、文化、文明、政治、戦争、価値観のすべてを、二十一世紀を担う国際社会の研究者に極めてもらうことだ。日本研究賞が自由かつ誠実な日本研究を進める一助となれば、それは私たちにとっての大いなる喜びである。
 成功も失敗も含めて日本のありのままを研究してもらえれば、そこから生まれる評価は肯定的否定的とを問わず、自ずと偏見の壁を打ち破るはずだ。学問的誠実さに裏づけられた研究は、その全てが私たちにとっても貴重な学びとなるはずだ。
 「国基研 日本研究賞」によって、日本の真の友人が国際社会にふえていくことを心から願っている。同時に、私は日本の文化文明、日本人の生き方を決定づける価値観は、必ず、二十一世紀の国際社会のより良い在り方に貢献できるものと、信じている。

国家基本問題研究所理事長 櫻井よしこ

「国基研 日本研究賞」への名称変更
「寺田真理記念 日本研究賞」は、寺田氏本人からの申し出により、昨年度から「国基研 日本研究賞」に改名しました。寺田氏やその他の有志の方々のご厚志を基本に日本研究賞は今後もさらに拡充いたします。日本研究賞の名称変更に合わせ、対象となる外国人研究者には日本に帰化した一世も含めるなど賞の要綱も一部改正されております。

櫻井よしこ・田久保忠衛写真

日本研究賞を創設した意図と将来に向けてのビジョンについて、櫻井理事長と田久保副理事長が対談しました。


櫻井国家基本問題研究所の創設の趣旨はいくつかあったと思います。第一は戦後の日本のあり方を根本的に変えなければならない。そのためには、憲法改正が重要だということでした。もう一つは、それと同時進行で、海外における日本に対する、歪曲された理解、誤解を ... 続きを読む


要綱

一.
国家基本問題研究所は、政治、経済、安全保障、社会、歴史、文化の各分野で、日本に対する理解を増進する、内外の優れた日本関係研究を顕彰し、奨励する。
一. 
原則として個人に対し、日本研究賞1点、1万ドルを受賞者に贈る。奨励賞は5千ドルとする。特別賞を出す場合もある。
一. 
対象となるのは、近年刊行、発表された日本語か英語による作品で、日本に帰化した一世を含む外国人研究者とする。
一. 
候補作品は、毎年末までに推薦委員その他識者に広く推薦を依頼、その結果を基に選考委員会が翌年春までに選考する。
一. 
授賞式及びレセプションは、通常、毎年7月に行う。

第四回「国基研 日本研究賞」

 

受賞作品

日本研究賞ジューン・トーフル・ドレイヤー マイアミ大学政治学教授
  • 「Middle Kingdom and Empire of the Rising Sun: Sino-Japanese Relations, Past and Present」(Oxford University Press, 2016)
    (中華帝国と旭日帝国:日中関係の過去と現在、邦訳なし)
日本研究特別賞 ヘンリー・スコット・ストークス 元米ニューヨークタイムズ紙東京支局長
  • 「Fallacies in the Allied Nations' Historical Perception as Observed by a British Journalist」(Hamilton Books, 2017)
    (英国人ジャーナリストが見た連合国の歴史観の虚妄)

選考の経緯

第四回「国基研 日本研究賞」
ジューン・トーフル・ドレイヤー マイアミ大学教授
「Middle Kingdom and Empire of the Rising Sun: Sino-Japanese Relations, Past and Present」(Oxford University Press, 2016)
(中華帝国と旭日帝国:日中関係の過去と現在 *邦訳なし)

 「第二次大戦後の日中間における緊張はいくつもの不穏な時期を経てきた。中国政府は問題を、日本の戦争責任に対する反省の表現が不十分であるからとか、戦死者を祀る日本の社の靖国神社に政治家が引き続き訪れないと約束しないためだ、と述べてきた。中国側が十分な謝罪を受けたと受け取ったり、靖国参拝が止まないかぎりは緊張は増大する、と中国は警告する。本書の中心テーマは、こうした諸問題が両国関係の初期に遡って通底する問題の一兆候にすぎないということだ。すなわち中国も日本もお互いに対等であると受けとめようとしないし、どちらも他に対する劣った立場は認めようとしない。緊張の根本は、両国文明の一部接触が始まった七世紀にたどることができる。」
 本書の第一章、イントロダクションの最初に登場する文章だ。冷静に読めばそのとおりであるが、戦後の日中関係で対等の立場で話し合った例があっただろうか。うんざりした気持を味わってきた私はこの書き出しにやや救われた思いがした。
 悪化した日中関係が早い時期に改善されることを大方の日本人は期待しているが、東京の目に映る北京の対日外交は、「高圧的態度で圧力を加えないかぎり日本人は中国に従おうとはしない」と信じ込んでいるかのようだ。いわゆる「歴史認識」の一言を大声で叫ぶと実際にこれまでの日本は黙り込むか、謝罪の意を何らかの形で表明するかのいずれかであった。靖国神社には東京裁判で決めたA級戦犯が祀られているから、との勝手な理由で政治家の参拝に反対の声をがなり立てる。対等の立場同士のやり取りかどうかを著者は観ている。
 安倍晋三首相が誕生しただけで「ナショナリストの出現」と騒ぎ立てたのは中国だけでなく、歴史を一次方程式でしか解釈できないニューヨーク・タイムズなど米リベラル系新聞だ。ただ、一、二の例外を除いて中国が一貫して毎年軍事費を二桁台で増やし、数年前から南シナ海に人工島をつくり上げ、そこに軍事基地を置こうと露骨な進出を続ければ、米国、日本、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国のほか世界各国の中国に対する評価は自ずから変わってくる。
 ドレイヤー教授は七世紀にまで舞台を戻して千四百年間にわたる日中交渉史を公平な立場から分析された。ジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」で明確になっているような左翼史観が多かった米学界の中で、「日中両国に対して公平」を叫ぶには勇気を要したに違いない。
日本の国体の特質である皇室についても教授は見事な観察をしている。時代が進むにつれて朝廷は次第に権威の象徴として天皇と、権力を持つ実力者の幕府への分化の過程をたどっている。祭祀王で万世一系の皇室の持続は外国に例のない存在で、明治以降の日本史の中だけで皇室を論じてもあまり意味がないことを本書は教えてくれる。

講評 選考委員 田久保忠衛 国基研副理事長 杏林大学名誉教授



第四回「国基研 日本研究特別賞」
ヘンリー・スコット・ストークス 元米ニューヨークタイムズ紙東京支局長
「Fallacies in the Allied Nations' Historical Perception as Observed by a British Journalist」(Hamilton Books, 2017)
(英国人ジャーナリストが見た連合国の歴史観の虚妄)

 「Fallacies in the Allied Nations' Historical Perception as Observed by a British Journalist」(Hamilton Books, 2017)(英国人ジャーナリストが見た連合国の歴史観の虚妄)は、ヘンリー・S・ストークス氏が1964年の初来日から50年を経てまとめた書である。『フィナンシャル・タイムズ』の初代支局長として東京に赴任した当時、氏は強い対日憎悪の感情を抱いていたという。だが半世紀をこの国で過ごす中で、深く日本を理解するようになる。
 日本に滞在する外国特派員の圧倒的多数がいわゆる東京裁判史観に染まったまま、そこを突き抜けてより深い日本理解の域に達することがないのとは対照的に、ストークス氏は日本文明の真髄に近づくことのできた少数の外国人の一人である。本書でも触れられているが、三島由紀夫はストークス氏と徳岡孝夫氏を、自身を理解し得る人物と思い定めて事実上の遺書を両氏に残している。
 そのように深い日本理解に至った人物が、大東亜戦争における日本悪玉論を脱して、「われわれ(英国)は日本人に対してフェアでなかった」とし、マレーへの日本軍侵攻に関して、「私は日本が大英帝国の植民地を占領したことに、日本の正義があると思った」と書いた。
かつて林房雄が日本の戦争を100年戦争と呼ぶべき長い軋轢の中でとらえたのと同じ、フェアで奥深い歴史観がストークス氏の作品を支えている。そのような歴史観に基づいたストークス氏の考察に、深く注目するものである。

講評 選考委員 櫻井よしこ国基研理事長

 

選考委員

委員長櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長
副委員長田久保忠衛 同副理事長・杏林大学名誉教授
伊藤隆 東京大学名誉教授
平川祐弘 東京大学名誉教授
渡辺利夫 拓殖大学学事顧問
髙池勝彦 国基研副理事長・弁護士
 

推薦委員

推薦委員 ジョージ・アキタ 米ハワイ大学名誉教授
ジェームズ・アワー 米ヴァンダービルト大学名誉教授
ブラーマ・チェラニー インド政策研究センター教授
ケビン・ドーク 米ジョージタウン大学教授・第一回「寺田真理記念 日本研究賞」受賞
ワシーリー・モロジャコフ 拓殖大学日本文化研究所教授・第一回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞
ブランドン・パーマー 米コースタル・カロライナ大学准教授・第一回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞
許世楷 津田塾大学名誉教授
アーサー・ウォルドロン 米ペンシルベニア大学教授
エドワード・マークス 愛媛大学准教授・第二回「寺田真理記念 日本研究賞」受賞
デイヴィッド・ハンロン 米ハワイ大学マノア校教授・第二回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞
楊海英 静岡大学教授・第三回「国基研 日本研究賞」受賞
陳柔縉 コラムニスト・元聯合報(日刊紙)政治部記者・第三回「国基研 日本研究奨励賞」受賞
ロバート・D・エルドリッヂ 元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長・第三回「国基研 日本研究奨励賞」受賞

(順不同)