公益財団法人 国家基本問題研究所
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第二回(平成27年度)寺田真理記念 日本研究賞

寺田真理記念 日本研究賞

第二回「寺田真理記念 日本研究賞」

 

受賞作品

日本研究賞エドワード・マークス 愛媛大学准教授
  • 「レオニー・ギルモア:イサム・ノグチの母の生涯」(彩流社,2014年)
日本研究奨励賞デイヴィッド・ハンロン 米ハワイ大学教授
  • 「Making Micronesia : a political biography of Tosiwo Nakayama」
    (ミクロネシアをつくる トシヲ・ナカヤマの政治的経歴 *邦訳なし =米ハワイ大学出版,2014年)

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選考の経緯

第二回「寺田真理記念 日本研究賞受賞」
エドワード・マークス愛媛大学准教授
「レオニー・ギルモア:イサム・ノグチの母の生涯」(彩流社,2014年)
“Leonie Gilmour: When East Weds West” (Botchan Books,2013)

 個人的な話で恐縮だが、イサム・ノグチには人並み以上の関心を抱く環境に置かれていたと思う。私の長年の友人である藤原作弥氏(元日銀副総裁)が時事通信にいた頃、イサム・ノグチの奥さんだった山口淑子(李香蘭)の「李香蘭 私の半世紀」(新潮社)を書いて贈られて読んだ。イサム・ノグチについてはドウス昌代氏の「イサム・ノグチ-宿命の越境者」(講談社)と題する書物が出ている。恥かしいことに、実際には読んでいないのだが、ドウス昌代という著者の弟がこれまた私の古くからの友人である梅澤昇平氏(元尚美学園大学教授、現国基研評議員)だったからである。
 エドワード・マークス氏の「レオニー・ギルモア イサム・ノグチの母の生涯」(彩流社)は私が事前に抱いていた好奇心を十分に満足させてくれた。レオニーに知的水準の高い、人生のけじめ、けじめに自分で決断する米国女性の一典型を見つけた思いがした。ハーバード大学よりも難関といわれたブリンマー大学の入学試験は外国語四科目のうち三科目に合格しなければならず、小論文は「『仮面劇コーマス』の価値は、物語性、人物描写、言語表現の美しさのいずれによりあるか。あなたの考えを述べなさい」がテーマ。歴史は古代史、英国史、アメリカ史からの選択だったという。ブリンマ―大学の上級生には、津田塾女子大学の創設者津田梅子がいた。
 詩人野口米次郎が米国滞在中に英語の作品の校正をたまたまレオニーに依頼したのが契機になり、二人は親しくなり、イサムが生れる。日露戦争前から始まった日本人排斥の動きの中で日本人の子供を生むことがどのように苛酷な環境であったか。野口に他の女性ができる中でレオニーはシングル・マザーとして他の日本人との間にも娘を生み育てる。とりわけイサムには芸術家になれと教育する。自分を育てた米国の教育は強烈に伝わっていく。イサムのほかに日本人との間にできたアイレスについても同じだ。
 レオニーの生い立ちから死に至るまでの生涯を軸にマークス氏は詳細に、このアメリカン・レディの生き様を辿っていく。材料は残されているぼう大な量に上る手紙、随筆などレオニーが書いたもの、それに対する肉親、恩師、米次郎、子供たちらからの返事である。米次郎、イサムがあまりにも有名になっている中で、日米両国間において自分の人生を貫いたレオニーを描き上げるうえでの社会科学的手法とも考えられる学問的追跡はまさに日本研究賞に価する。

講評 選考委員 田久保忠衛 国家基本問題研究所副理事長・杏林大学名誉教授



第二回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」
デイヴィッド・ハンロン・ハワイ大学マノア校教授
受賞作品“ Making Micronesia : a political biography of Tosiwo Nakayama”
(ミクロネシアをつくる トシヲ・ナカヤマの政治的経歴 *邦訳なし)(University of Hawaii Press ハワイ大学出版,2014年)

 昭和54年(1979年)5月10日、ミクロネシア連邦(FSM)が独立し初代大統領にトシヲ・ナカヤマが選出された。チューク諸島(旧トラック島)やヤップ、ポンペイなどからなり、総面積は260万平方km、西太平洋の広大な地域を占める。(参考までに、太平洋総面積は1億5555万または1億6500万平方)。本書は、トシヲ・ナカヤマに焦点を当てて、ミクロネシアの過去・現在・将来を分析したものである。トシヲ・ナカヤマは、1931年11月23日、チューク諸島の北西246キロメートルにあるナモヌイト環礁で、日本人の父親ナカヤマ・マサミと現地人の母親との間に生まれ、2007年3月29日に亡くなった。
 FSMは、1991年には国連にも加盟した。
 いうまでもなく、この地域は、1920年から1945年まで、日本が、それ以前の、スペイン、ドイツの統治の後を受けて国際連盟の委任統治を行っていた。そして第二次世界大戦の激戦地となった所でもある。
 本書は、日本統治以前と日本統治時代を分析し、日本の敗戦後、アメリカが行った国連の信託統治をも分析している。多くの日系人が活躍し、ナカヤマが、利害の異なる多くの地域をいかにまとまりをもって独立させたのかを描いた緻密な研究書である。

講評 選考委員 髙池勝彦 国基研副理事長・弁護士

 

選考委員

委員長櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長
副委員長田久保忠衛 同副理事長・杏林大学名誉教授
伊藤隆 東京大学名誉教授
平川祐弘 東京大学名誉教授
渡辺利夫 拓殖大学総長
髙池勝彦 国基研副理事長・弁護士
 

推薦委員

推薦委員ジョージ・アキタ 米ハワイ大学名誉教授
ジェームズ・アワー 米ヴァンダービルト大学名誉教授
ブラーマ・チェラニー インド政策研究センター教授
ケビン・ドーク 米ジョージタウン大学教授・第一回「寺田真理記念 日本研究賞」受賞
ワシーリー・モロジャコフ 拓殖大学日本文化研究所教授・第一回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞
ブランドン・パーマー 米コースタル・カロライナ大学准教授・第一回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞
許世楷 津田塾大学名誉教授
ヘンリー・ストークス 元米ニューヨークタイムズ紙東京支局長
アーサー・ウォルドロン 米ペンシルベニア大学教授

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