公益財団法人 国家基本問題研究所
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第11回(令和6年度)国基研 日本研究賞

国基研 日本研究賞

第11回「国基研 日本研究賞」

 

受賞作品

 
日本研究賞 ジョン・マーク・ラムザイヤー 米ハーバード大学教授
  • 『慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破』(ハート出版、2023)
日本研究特別賞 鄭 大均 東京都立大学名誉教授
  • 『隣国の発見 日韓併合期に日本人は何を見たか』(筑摩書房、2023)

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選考の経緯

第11回「国基研 日本研究賞」
ジョン・マーク・ラムザイヤー 米ハーバード大学教授
『慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破』(ハート出版、2023)

第二次世界大戦中の日本軍相手のいはゆる慰安婦、特に朝鮮人慰安婦が性奴隷ではなかつたといふことは、今やわが国では決着がついてゐると思はれるが、国際的には性奴隷説が未だ広く行きわたつてゐる。

本書の著者は、専門の経済学や経済法の立場から、戦前の売春婦と芸者の年季奉公契約に関心を持ち、1991年にそれについての論文を書いた。

その後、戦時の慰安婦が問題となり、特に、朝日新聞が、後に誤報と認めた吉田清治の慰安婦など朝鮮人強制連行説を長期間にわたつて真実であるかのやうな報道をし続けた結果、朝鮮人慰安婦性奴隷説が広く知られるやうになると、著者はそれに関心をもち、その結果、慰安婦は、強制連行ではなくて、年季奉公契約類似の契約を結んでゐたことがわかり、戦時慰安婦についての論文を書いた。

2021年(令和3年)1月に、産経新聞に著者とその慰安婦についての主張が紹介されるとその直後から、アメリカで著者に対して殺人予告を含む嵐のやうな人身攻撃が始まつた。学術雑誌に掲載された著者の論文撤回要求は、数千名もの学者の署名のある政治的プロパガンダであつた。

著者はその攻撃に対して誠実に学問的に反論したが、受け入れられなかつた。これは現在のアメリカの学界の残念な状況を示してゐる。

本書は、慰安婦に関する著者の当初の論文から反論に至るまでの4つの論文を編訳者らがまとめ、それに著者による経過説明、補充論文を加へたものを解説、翻訳したものである。

読者は本書を読めば、アメリカといふ自由民主主義の代表であるかのやうに思はれている国における全体主義的な風潮とそれに対する学問的良心とはどのやうなものであるかを理解することができる。

本書は、当研究所の日本研究賞にふさはしい。

講評 選考委員 髙池勝彦
国基研副理事長・弁護士

第11回「国基研 日本研究特別賞」
鄭 大均 東京都立大学名誉教授
『隣国の発見 日韓併合期に日本人は何を見たか』(筑摩書房、2023)

東京都立大の鄭大均(ていたいきん)名誉教授は、昨今の反韓気分に乗じて隣国の悪口を言いつのる日本論壇の常習執筆者をたしなめる知性の持主です。公平を念じる著者は新著『隣国の発見』(筑摩書房)で、日韓併合期にも朝鮮の山河や文化を肯定的に語った谷崎潤一郎、柳宗悦、安倍能成、浅川巧らがいたことをその文章を引くことで示しました。しかし戦前は韓国人を「実に有史以前に属するものなり」と否定的に断じた新渡戸稲造などもおりました。戦後は日本の植民地支配を過激に非難することで「良心的日本人」として韓国では聖人化された梶村秀樹などもおりました。

しかし本書はそんな「あけすけな偏見の持主たち」の弾劾ではありません。日本や朝鮮の螢研究でノーベル賞候補(一九三八)にもなった、狭間(はざま)文一京城医学専門学校教授(一八九八-一九四六)を発掘、最終章に登場させたことで本書は光彩を発しました。狭間博士の存在はこれで世に知られました。選考委員一致の授賞となった所以です。

 螢来い。螢来い
 花婿の部屋に燈(ひ)をともせ
 花嫁の部屋に燈をともせ
 市(いち)に出掛けた父さんの
 帰る夜道に燈をともせ

これは「旅する科学者」が朝鮮の田舎で拾った民謡の狭間自身による訳です。

鄭教授は「独立後の韓国が戦前の時代を抑圧、収奪、抵抗の物語として語り続けることに不安と不満を覚え」、バランスのとれた三点測量を行ないます。平川はそこに共感を覚えます。日本統治期に台湾で鉄道などインフラが整備され、学校・病院が建ち、農業に化学肥料が用いられたことは現地台湾の人にも肯定的に評価されています。それだけに、韓半島についても加害・被害者史観を脱却した、韓国系日本人鄭教授の複眼の見方にほっとします。日韓関係での難題は、日本人がかつて半島から与えられたこと、また与えたことを意図的に無視する風潮が、戦後、両国で続いたからだという鄭教授の指摘こそ正論と言えましょう。

講評 選考委員 平川祐弘
国基研理事・東京大学名誉教授


 

選考委員

委員長櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長
副委員長田久保忠衛 同副理事長・杏林大学名誉教授
伊藤隆 東京大学名誉教授
平川祐弘 東京大学名誉教授
渡辺利夫 拓殖大学顧問
髙池勝彦 国基研副理事長・弁護士
 

推薦委員

推薦委員 ジョージ・アキタ
米ハワイ大学名誉教授

ジェームズ・アワー 
米ヴァンダービルト大学名誉教授

ブラーマ・チェラニー
インド政策研究センター教授

ケビン・ドーク
米ジョージタウン大学教授
第一回「寺田真理記念 日本研究賞」受賞

ワシーリー・モロジャコフ
拓殖大学日本文化研究所教授
第一回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞

ブランドン・パーマー
米コースタル・カロライナ大学准教授
第一回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞

許世楷
津田塾大学名誉教授

アーサー・ウォルドロン
米ペンシルベニア大学教授

エドワード・マークス
愛媛大学准教授
第二回「寺田真理記念 日本研究賞」受賞

デイヴィッド・ハンロン
米ハワイ大学マノア校教授
第二回「寺田真理記念 日本研究奨励賞」受賞

楊海英
静岡大学教授
第三回「国基研 日本研究賞」受賞

陳柔縉
コラムニスト・元聯合報(日刊紙)政治部記者
第三回「国基研 日本研究奨励賞」受賞

ロバート・D・エルドリッヂ 
元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長
第三回「国基研 日本研究奨励賞」受賞

ジューン・トーフル・ドレイヤー 
米マイアミ大学教授
第四回「国基研 日本研究賞」受賞

ロバート・モートン 
中央大学教授
第五回「国基研 日本研究賞」受賞

蓑原俊洋 
神戸大学大学院法学研究科教授
第六回「国基研 日本研究奨励賞」受賞

ペマ・ギャルポ 
拓殖大学国際日本文化研究所教授
第六回「国基研 日本研究奨励賞」受賞

秦郁彦 
現代史家
第六回「国基研 日本研究特別賞」受賞

李建志 
関西学院大学社会学部教授
第七回「国基研 日本研究特別賞」受賞

ミンガド・ボラグ 
フリーランスライター、通訳・翻訳家
第七回「国基研 日本研究奨励賞」受賞

トシ・ヨシハラ 
米戦略予算評価センター(CSBA)上席研究員
第八回「国基研 日本研究賞」受賞

李宇衍 
元落星台経済硏究所硏究委員
第八回「国基研 日本研究特別賞」受賞

エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ 
ワルシャワ大学教授
第九回「国基研 日本研究賞」受賞

李大根 
成均館大学名誉教授
第九回「国基研 日本研究特別賞」受賞

ジェイソン・モーガン 
麗澤大学准教授
第九回「国基研 日本研究特別賞」受賞

(順不同)