公益財団法人 国家基本問題研究所
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第一回(平成26年度) – 日本研究賞 授賞式

寺田真理記念 日本研究賞
産経新聞PDF

2014年7月9日付産経新聞に、
"「寺田真理記念・日本研究賞」授賞式"
の記事が掲載されました。
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第一回「寺田真理記念 日本研究賞」授賞式

 国家基本問題研究所は、日本研究を奨励し、真の意味での知日家を育てるため「寺田真理記念 日本研究賞」を創設し、平成26年7月8日(火)日本プレスセンターにて第一回授賞式を執り行いました。この7月8日は、国家基本問題研究所にとって、歴史的な一日でした。「寺田真理記念 日本研究賞」は、 来賓として祝辞をいただいた下村博文文部科学大臣の言葉を借りるなら、本来「国がやるべきこと」でした。 授賞式には100名を超えるゲストが参集して、受賞者や寺田真理さんを祝福、激励しました。

今回、民間のシンクタンクが成し遂げたこの賞の意義はとても大きいと思います。 会員の皆さまに、当日の主催者、来賓の「あいさつ」と受賞者たちの「喜びの声」、 安倍総理からの祝電などをお届けします。


(写真左から)田久保 忠衛(国基研 副理事長)、ワシーリー・モロジャコフ、劉岸偉、寺田真理(日本賞創設基金を寄付された)、ケビン・ドーク、ブランドン・パーマー、櫻井 よしこ(国基研 理事長)(敬称略)

受賞式の様子1
受賞式の様子2

櫻井よしこ理事長 - あいさつ

櫻井よしこ みなさんこんにちは、この会にようこそおいでいただきました。本当にありがとうございます。国家基本問題研究所は約七年前に設立したものです。そのときの私たちの初心は、日本国の国益を考え、この国のために戦略を考えなければいけない。省庁や業界の利益とはまったく別に、日本国民、そして日本国の未来、よりよい日本を作るために、私たちの全力を注いで考えていかなければいけないというものでした。

大目標は憲法改正です。そして、それに伴う価値観の大転換です。しかし、その前に多くの課題があると考えていました。

課題のひとつが、日本国そして日本の文化、私たちの暮らし方などが、あまりにも国際社会に理解されていないということです。私たちは、人類のために役に立ち国際社会のよりよい形をつくる力にもなりうると思っていますが、今それがなされていません。大事なことは、国際社会に日本を理解するお友だちをたくさん作っていくことだと思います。そのために、若い人々、中堅の人々にもっともっと日本国を研究していただきたい。そして、私たちもそのために何かをしたいと思っていました。

その具体的な形として実ったのが「日本研究賞」です。良い意味でも、悪い意味でも、日本国のすべての面をもっと知っていただき、ご批判いただくところはしていただき、本当の日本の姿を見ていただいたうえで、日本国のお友だちを作っていきたいという思いからはじまったのがこの賞です。

国基研創設から七年にして、ようやく実現したわけですが、そのきっかけを作ってくださったのが寺田真理さんです。

寺田さんは、日本とハワイを行き来しながら、外から日本を見て、日本のすばらしさを再認識する一方で、そのすばらしさを分かってもらえていないという現実に直面していました。寺田さんから日本を理解してもらうためには人材の育成が大切だということで、ご寄付をいただきました。

それを一つのきっかけとして「日本研究賞」が生まれました。今は、一滴の小さな流れです。この流れをやがて大きな流れにして、本当に日本と国際社会がより深く分かり合えるような日を一日も早く実現したいと思い、この「日本研究賞」を作りました。

今日は皆様方とともに、そのお祝いをすることができます。四人の受賞者の皆様方、本当におめでとうございます。そして奥様方にも心からのお祝いを申し上げたいと思います。今日にいたるまでには、多くの試みがありました。初めてのことですので本当に苦労しましたけれど、この日を無事に迎えることができ、うれしく思います。その喜びを皆様方と分かち合い、この希望を皆様方によって十倍にも百倍にもしていただけたらと思います。

寺田真理さん - あいさつ

寺田真理 受賞者の皆様、おめでとうございます。奥様方も遠路はるばるようこそお越しくださいました。日本を深く深く研究され、その成果を本になさったことに驚きと感激で一杯です。これらの本を多くの日本と世界の若い方々が読んでくださると、さらにうれしいことです。

そして、今回受賞された研究の内容は、アジアや世界に向けて、違った意味の日本を広めていくような気がします。外国の方が書いてくださったということで、今までの視点と違う日本が生まれるのではないかとも思います。どうかこれから先も、有意義な研究を続けてくださいますようお願いいたします。

また、櫻井さん、このような佳い日を迎えさせていただきありがとうございました。陰の力も大変でしたでしょうが、先生方もそんな思いでいらっしゃるのではないかと思います。そして、いろいろとお力を貸してくださいました皆様方に深く心から御礼申し上げます。

安倍晋三総理 - メッセージ

 本日は、「寺田真理記念 日本研究賞」が創設され、また、その第一回授賞式が盛大に開催されますことを、心からお慶び申し上げます。

日本は、美しい自然に恵まれ、長い歴史と伝統を持つ国です。私は、この日本に生まれ、日本人であることを、本当に誇りに感じます。だからこそ、日本は、内向きであってはなりません。グローバルな時代にあって、世界の人々と交わりながら、世界の中心で活躍する。日本は、そのような「世界に開かれた国」でなければならない、と考えています。

そのためには、海外の皆さんに、日本の真の姿への理解を深めてもらうことが、何よりも重要です。そうした意味で、外国人研究者による日本研究を奨励する、今般の「寺田真理記念 日本研究賞」の創設は、誠に素晴らしいものであり、寺田真理さんをはじめ、関係者の皆さんのご尽力に対して、心より敬意を表する次第です。

ケビン・ドーク教授は、私にとって古くからの友人でありますが、まさに初の「日本研究賞」を受賞するに相応しい方だと思います。また本日は、日本の朝鮮統治を研究したブランドン・パーマー准教授、日本とロシアの文化関係史に迫ったワシーリー・モロジャコフ教授といった若い新進気鋭の日本研究家の方々に加え、来日三十年を超え、まさにご自身が「知日派」の劉岸偉教授も、いらっしゃいます。本日の栄えある御受賞、誠におめでとうございます。

根拠のない情報、風評を媒体とする間接情報からは、日本と世界との真の相互理解は、生まれない。むしろ、これを阻害する。私は、そう考えています。だからこそ、私自身、時間があれば、世界に積極的に出かけ、日本の考え方を、直接、はっきりと発信するようにしています。そうした中にあって、日本の「真の姿」を、深く研究し、世界に向けて力強く発信してくださる、皆さんの存在ほど、心強いものはありません。皆さんの、更なる日本研究の充実と、益々の御活躍を、大いに期待しております。

最後となりましたが、櫻井理事長をはじめ国家基本問題研究所の皆さんの日頃からの活動に、改めて敬意を表します。そして、この「寺田真理記念 日本研究賞」が、世界中の日本研究者たちの大きな「希望の光」として、更なる発展を遂げることをお祈りして、私のお祝いのメッセージとさせていただきます。

平成二十六年七月八日 内閣総理大臣 安倍晋三

下村博文・文部科学大臣 - 来賓祝辞

下村博文 本来は、国がやるべきことを国基研がお始めになりました。そして、今日を迎えられたすばらしい四人の受賞者の皆様方、誠におめでとうございます。

日本という国は日本人が、そのすばらしさをいくら言っても、必ずしも評価されないところがあります。外国の方々にそのよいところを言っていただいて改めて認識するという部分がある中で、外国の方から見た日本を発信していただくということは、わが国の外交戦略など、いろいろトータルに考えたとき、大変な力になると思います。寺田さんのお力によってスタートした国基研の第一回の顕彰には、これから大きく期待をしたいところでございます。

四、五年前、櫻井さんと安倍総理(当時、野党で前総理でした)とインドに行きました。安倍さんは先にお帰りになって、私と山谷えり子さん、櫻井さんの三人で、インドのずっと奥にある、チベットのガンデンポタン(亡命政府)が認められているダラムサラに行ったことがあります。

そのときの縁だけではありませんが、私は八月にインドに行こうと思っています。その目的は、国基研がスタートされたこの賞と同じような発想にあります。「戦後レジームからの脱却」と言葉で言っても、国内だけでなく国外でも理解を得るのは難しいという状況があります。

そこで、パール判事から見た東京裁判をその後のことも含めて、インドの大学で研究、検証したら、どう捉えることになるのか。また、ガンジー首相と一緒に、今のインドを建国されたチャンドラ・ボースという伝説的な方がいますが、そのチャンドラ・ボースは実は台湾で亡くなっています。チャンドラ・ボースやパール判事の視点から、改めて第二次世界大戦直後の日本を見たとき、本当に今、日本人が思っているような、いわゆる東京裁判史観になるのか。日本人がそうではないと言っても、世界の方々はなかなか納得してくれない部分があります。

そこで、日本の戦後史をインドから見たとき、どう考えるかということを、いくつかのインドの大学と、もちろん日本の受け皿も必要ですが、共同研究ができないかという話をしてこようと思っているなかで、今日出席をさせていただいたのです。

さすが国基研で、そうしたことをすでに始められていて、なおかつ、著名な四人の外国の方々がその日本研究を発信をされているということは、本当にすばらしいことだと思います。

自分たちの視点だけではなく、国際的な視点で考えたとき、これからの日本のあり方というものが見えてくるのではないか。そのために、東京裁判史観や戦後を検証し、何が正しくて、何が問題だったのかということをしっかりと見つめながら、二十一世紀の日本のあり方を考えていきたい。その意味で、今回の寺田真理賞のスタートはすばらしいことだと思います。

国もしっかりとそういう視点をもって、世界に発信し、また共有、共感をしていただけるような国づくりをしていこうとお誓い申し上げ、お祝いとさせていただきます。おめでとうございます。

曾野綾子氏 - 祝辞

曾野綾子 今日は本当におめでとうございます。私は小説を書いております。日本では novel のことを小説と申しまして、小なる説を書く人間でございます。小なる説で大なる説を述べないことでございますから、私はこういう席に向かない人間ですけれども、伺ったのにはわけがございます。

そして、私から申し上げるのは変でございますが、何よりも日本を愛していただき、ありがとうございます。本当にうれしゅうございます。

その次に申し上げたいのは、寺田さんに対する賛辞です。こうした大事なことにお金をお使いになる、すばらしい女性が日本にいてくださったことは、何より私どもが範とすべきことでして、今日はおめでとうございます。

私は言葉づかいも顔つきも悪いものですから、クラスでどちらかというと、いじめっ子になる立場だとみんな思っているのです。ところが、私はいじめられていました。しかし、私は世間にうといものですから、いじめられていたのも実は分からなかったのです。

私はカトリックでございますが、戦争中に子供時代を過ごしたもので、毎年八月十五日には靖国神社にお参りします。そのことで、カトリックのマスコミで非常に叩かれたらしいのです。誠に無責任な話ですが、それを、私が知らないところで、ドーク先生がかばってくださったのです。つまり、バチカンは戦争中に、日本人が靖国神社に参ることをきちんと認めていたという文書を明らかにしてくださったのでございます。

私は、どこで、どういう方が書いたのか、まったく存じませんで、だいぶ遅くなってから見つけたんでございます。ドーク先生のおかげで、私は立場が大分よくなったんでございます。本当に感謝いたしております。

で、大変遅くなったんでございますが、お礼を申し上げようと、今日ここに伺ったわけです。

最後に一つだけ。日本は、ここにいらっしゃいます方々のお国がパートナーとして選ぶのに非常にいい国でございます。誠実で、働き者でございます。以前にはちょっと面白くないところもございましたけれど、私の周りなどは私に似たおかしな人間がいっぱい増えまして、おもしろい国になっております。どうぞ、信念を持って、日本を知的あるいは外交的なよきパートナーとして、お選びいただきますようお願いいたします。今日は本当におめでとうございます。