公益財団法人 国家基本問題研究所
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第一回(平成26年度) – 日本研究賞 受賞者

寺田真理記念 日本研究賞
産経新聞PDF

2014年6月19日付産経新聞に、
第一回「寺田真理記念 日本研究賞」の
記事が掲載されました。
内容はPDFにてご覧いただけます。
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日本研究賞
ケビン・ドーク(米ジョージタウン大学教授)

「A History of Nationalism in Japan」
(大声で歌え 君が代を = PHP研究所, 2009年)他

受賞のことば

ケビン・ドーク

 「寺田真理記念・日本研究賞」の初受賞者となり大変光栄です。私が調査研究して描こうとしたことに日本の読者の共感をある程度いただけたのではないかーそれは日本研究をする外国人学者にとっての最高の賞賛であると思います。長年にわたり私は日本研究の主流派に逆らって、我々が、日本人、外国人を問わず、近代の日本文化や世界における日本の存在についてもっと地球的な広い理解が必要であると主張してきた。私はまた、日本のナショナリズムが内包する普遍的な価値や、宗教的少数派、特に日本のカトリック信者が戦前の帝国主義や戦後日本で愛国的な市民であったこと、日本の神道と民主主義が深く融合していることについて書いてきた。

 日本文化に関心のある外国人は、しばしば日本を自分の伝統の対極にあるものとして単純化してきた。私自身は、日本の中の文化様式や人々の中にある日本的だが、また世界性のあるものを探求するアプローチをとってきた。カトリックは、この世界性のある日本の特に重要な部分であり、16世紀末から今日まで、信徒の数こそ多くはないが、伝統的で近代的な日本文化、社会に与えた実に大きな影響を与えてきた。近代における日本のカトリック教徒の経験からはもっと重要な教訓が得られると思う。というのは、日本人が完全にグローバルであると同時に前近代的な伝統的な文化にも深く結ばれることを教えてくれるからだ。カトリック信仰の日本人はフランスの伝道者や韓国、フィリピン、中国その他のカトリックとのつながりから独特の方法で世界に結びついている。「寺田真理記念・日本研究賞」は私が研究を続ける励みとなり、将来さらに近代日本のカトリック教徒で最も重要視される法学者の田中耕太郎氏に的を絞ろうと思う。田中氏は、自らの宗教的信念から世界法を要約しているが、それは世界法原理の概要を描いた1930年代当時と同様、今日も重要である。

 寺田真理記念・日本研究賞選考委員会委員の方々が私の微力な努力を認めていただいたことに感謝したいと思います。また、櫻井よしこ理事長には、世界的で民主的な日本を広めることを励まし、発言されてきたことにも感謝したい。そして、何にもまして、約40年間にわたり私を助け、家庭に迎え入れてくれた数え切れぬ日本の人々を忘れることはできない。様々な形で私に示してくれた深い親切心こそ、日本人を世界の中で際立たせる存在にしているのである。

略歴

 1960年生まれ。82年米国クインシー大学卒。シカゴ大学で日本研究により博士号取得。イリノイ大学助教授などを経て、現職。日本の京大、東大、立教大、甲南大などで学ぶ。著書に「日本浪漫派とナショナリズム」(柏書房)などがある。


日本研究特別賞
劉岸偉(東京工業大学外国語教育研究センター教授)

「周作人伝 ある知日派文人の精神史」(ミネルヴァ書房, 2011年)

受賞のことば

劉岸偉

 この度拙著『周作人伝ーある知日派文人の精神史』は国家基本問題研究所の「日本研究特別賞」に選ばれてまことに嬉しい。地味な研究書ともいうべき拙著の受賞は、これから日本研究に取りくむ後輩たちの大きな励ましとなるでしょう。かつて中国人の日本研究の遅れを一喝した戴季陶先生の批判を忘れず、時勢に流されることなく、しっかりと自分の目と足で研究活動を続け、東工大・北京清華大との合同養成プログラムにも参画し、未来を担う両国の英才の教育に微力を尽くしていきたい。来日して三十年、いつかこの生活者としての体験をふまえて、小泉八雲の『日本ー一つの解明』の如き著書が書けたらいいなあ、と空想しているこの頃です。

略歴

 1957年生まれ、専攻は、比較文学、比較文化史。北京外国語大学卒業後、北京大学大学院東方言語文学系を経て82年来日。東京大学大学院総合文化研究科比較文学・比較文化専攻博士課程修了、学術博士。札幌大学助教授を経て、現在は東京工業大学外国語研究教育センター教授。著作は、「東洋人の悲哀―周作人と日本」(河出書房新社)、「小泉八雲と近代中国」(岩波書店)など。


日本研究奨励賞
ブランドン・パーマー(米コースタル・カロライナ大学准教授)

「日本の朝鮮統治を検証する1910-1945」(共著, 草思社, 2013年)

「Fighting for the Enemy—Koreans in Japan’s War, 1937-1945」 
(日本の戦争と朝鮮人、敵のために戦って ※邦訳なし = 米ワシントン大学出版, 2013年)

受賞のことば

ブランドン・パーマー

 日本研究奨励賞をいただくことになったと聞いて大変恐縮しております。日本の朝鮮統治が公平で穏当なものであった、とする研究をさらに進めることが出来ます。日本の植民地政策についての歴史家の通説を覆したいと思います。

略歴

 1970年生まれ。97年ブリガム・ヤング大学で修士号取得(国際関係論)、2005年ハワイ大学で博士号取得(朝鮮史)。研究テーマは、日本の朝鮮統治、特に朝鮮人の戦時動員。


日本研究奨励賞
ワシーリー・モロジャコフ(拓殖大学日本文化研究所教授)

「ジャポニズムのロシアー知られざる日露文化関係史」(藤原書店, 2011年)

受賞のことば

ワシーリー・モロジャコフ

 今日は、国家基本問題研究所の日本研究賞を受賞しまして、心から感謝の意を表したいと思います。日本で有名、権威がある研究所が私の著作を高く評価したことは、予想外で特に楽しいサプライズでした。一大名誉です。この著作は、主に日露友好、相互理解、文化交流の物語です。帝政ロシアにおけるジャポニズムは、約20年前、モスクワ大学での私の博士論文のテーマでした。日露関係史の研究を続け、日露文化交流のために尽くしたいと思っています。

略歴

 1968年生まれ。93年モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学卒。東京大学社会科学研究所客員研究員などを経て、拓殖大学日本文化研究所教授、ロシア科学アカデミー東洋学研究所客員研究員。