細川昌彦の記事一覧
【第1043回】IPEF交渉に影を落とす対中意識の隔たり
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日米韓豪印や東南アジア諸国など14カ国が参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合で、重要物資のサプライチェーン(供給網)の強化に向けた協定を結ぶことが合意された。IPEFについては、当初から指摘しているように、台頭する中国を念頭に、「米国をアジアに関与させる」という戦略的な意味が重要だ。それとともにIPEF...
【第1042回】G7広島サミットが残した大きな課題
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 主要7カ国(G7)の広島サミットは、ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃的参加に耳目が集まった結果、「中国にどう向き合うか」という本来の重要テーマの影が薄くなった。しかし、広島サミットで注目すべきは経済安全保障とグローバルサウスへの関与であり、いずれも中国を念頭に置いたものだ。 首脳コミュニケの字面を追い、〝大本営発表〟の政府説明...
【第1024回】対韓国、ルール重視で「無原則の譲歩」を排せ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 韓国が朝鮮人戦時労働者問題の解決策を発表して、日韓関係が正常化に向かおうとしている。この問題で韓国が踏み出した機会を逃さず、日韓間の懸案を包括的に解決することは重要だ。韓国が要求したのは2019年の日本による輸出管理の厳格化措置の解除だ。日本は「大局的な見地」から官邸主導で譲歩したようだ。もちろん大局的見地は必要で、官邸が各省に譲歩を...
【第1010回】中国の反発を恐れて輸出管理の基本を歪めるな
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 2月6日の本欄で、日本も国際協調の下で行おうとする半導体輸出規制の対象が中国であることを明確にすべきだと提言した後、多くの問い合わせをいただいた。輸出管理という一般になじみの薄い分野だけに説明を補いたい。 日本政府は中国を刺激することを避けたいので、中国だけが対象にならないよう処理しようとしているようだ。外為法上、従来あるワッセナ...
【第1006回】対中半導体規制で「輸出管理の新時代」直視を
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 先月末、米国の先端半導体の対中輸出規制に日本、オランダが同調することで合意したと伝えられた。正式発表をしないのは、日蘭が米国に同調することへの中国の反発を懸念したからだとされている。 米国の規制は従来とは次元が異なる。トランプ前政権では中国通信機器最大手ファーウェイ(華為技術)など特定企業を標的にしたのに対して、今回は中国全体を対...
【第995回】防衛省の「自前主義」を排して国力を結集せよ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 政府が「国家安全保障戦略」など安保3文書を公表した。これまでの安全保障政策を大きく転換するものと評価したい。とりわけ国の防衛は防衛省だけでなく省庁横断的に取り組み、国全体が担い手であることを打ち出している点は重要だ。 ただし総論ではそう言いながら、具体論に至るとそれと相反する防衛省の「自前主義」が露呈している。 ●新たな研...
【第984回】首脳会談で繰り広げる「半導体の供給網」の綱引き
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 今月11日以降、アジアにおいては東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の一連の首脳会議、主要20か国・地域(G20)首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催された。注目すべきはその機会に行われた日米韓、米中、日米、日中、中韓などの首脳会談だ。それらに共通する経済分野でのキーワードは「サプライチェーン(供給網)」だ。 ...
【第982回】習氏3期目で激化する技術争奪戦に要警戒
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 習近平中国国家主席が共産党総書記としての3期目をスタートさせた。注目すべきは10月の共産党大会における習氏の活動報告だ。ここ数年、習政権が長期的な米中対立を見越して展開している「強国」路線が明確に示されている。そこでのキーワードは「双循環」「自立自強」「国家安全」の三つだ。 ●外国企業の中核技術を狙う 「双循環」とは、半導...
【第965回】対中経済安保に軸足を置いたG7
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 ドイツで先進7か国(G7)貿易相会合が開かれた。注目すべきは、中国を念頭に「経済的威圧」への深刻な懸念を初めて取り上げて、共同声明に盛り込んだことだ。 ●「経済的威圧」への共同対処 近年、中国は巨大な中国市場や供給力をバックに相手国の政策を変更するよう圧力をかけている。習近平国家主席は2020年4月の党の会議の講話において...
【第961回】IPEF交渉、「米国主導」のお寒い内実
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の交渉開始が正式に合意された。台頭する中国を念頭に、「米国をアジアに関与させる」という戦略的な意味は重要だ。 当初は参加に難色を示していたアジアの国々も、首脳レベルの戦略的判断で参加を決断した。ただし中国への対抗色が出ることを嫌い、声明ではそうした色彩を消している。 ●アジ...
【第958回】経済安保の有事法制を早急に作るべし
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 経済安全保障推進法が成立し、それを着実に実施することは当然だ。しかし、これで満足してはいけない。次に取り組むべきは経済安保における有事の法制度整備だ。経済安保推進法はいわば平時の法制だ。 ●日本版の国防生産法を 例えば、経済安保推進法には半導体など重要物資の安定的な供給を確保するための措置が規定されている。民間企業が国内生...
【第950回】学術会議の新見解は前進だが要注意
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日本学術会議が軍事と民生の双方で活用できる「デュアルユース」(両用)の先端科学技術の研究を事実上容認する見解を示した。この見解は、小林鷹之科学技術担当相に軍民両用研究などへのスタンスを問いただされて回答したものであることに注目すべきだ。 この動きには二つの背景がある。 まず、学術会議は年間10億円もの血税を投入されながら、特定...
【第940回】サハリン2の権益維持へ日本は踏ん張れ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 6月30日、ロシアのプーチン大統領は、日本の商社が出資する極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の運営権をロシア政府が設立する新法人に移行する大統領令に署名した。現在サハリン2の権益すなわち株式資産を有する外国企業は、ロシア側が示す条件に同意すれば新法人の株主として参画できる。同意しなければ、サハリン2からの撤退を余儀なく...
【第935回】輸出管理問題解決のボールは韓国側にある
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 韓国の新政権が発足し、戦後最悪とまで言われる日韓関係の関係改善へ期待が高まっている。そのためには朝鮮人戦時労働者の問題をはじめとする日韓間の懸案解決が不可欠だ。懸案の一つが3年前に日本が韓国に対して発動した輸出管理の厳格化措置だ。 ●「空騒ぎ」に過剰反応 相手国の輸出管理が信頼できる場合、その国に対して簡便な手続きで輸出で...
【第933回】歴史を参考にすべき国際経済秩序作り
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 今、西側諸国と中露の対立を背景に、国際経済秩序が「分断の時代」を迎えている。対露経済制裁が顕在化させたのは、西側先進7か国(G7)の結束とともに、新興国・途上国の西側からの乖離だ。こうした状況で秩序作りをどう進めるべきか。それを考えるうえで歴史を参考にしたい。冷戦終了直後の輸出管理のワッセナー・アレンジメントと1980年代末のアジア太...
【第924回】クアッドとIPEFに見る新国際経済秩序の胎動
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 先週の日米首脳会談、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足、日米豪印(クアッド)首脳会議の開催という一連の動きは、国際経済秩序にとって大きな意義を有する。そこには変革への胎動を見いだすことができる。 ●重層的な経済安保の枠組み 第1に、国際経済秩序が掲げる旗印がこれまでの「貿易自由化」から「経済安全保障」へとシフトしつつ...
【第921回】新・経済枠組みはアジアに実利があるのか
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 来日中のバイデン米大統領は「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の発足を発表した。昨年10月に構想を明らかにして以来、関係国と協議を重ね、ようやく「中身の議論を開始する」スタートラインに立った。しかし、果たしてうたい文句である「新たな経済圏」の構築につながるのか。 ●日本がIPEFの橋渡し役 中国の環太平洋経済連携協定(T...
【第918回】対ロ制裁にはエネルギー安保の視点が必要
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 先進7か国(G7)は5月8日のテレビ首脳会議でロシア産原油の原則禁輸に合意し、ロシアへの圧力を強めた。日本もG7の結束を重視せざるを得ないと判断した。経済制裁に「返り血」は付き物で、当然覚悟しなければならない。大事なことは、制裁を科す方と科される方のどちらのダメージが大きいかを冷静に見極めることだ。 ●厳しい選択だった原油禁輸...
【第898回】日本はサハリン事業から撤退すべきでない
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米国がロシア産の石油、天然ガスの輸入禁止に踏み切った。ウクライナに侵攻したロシアの資金源を断つことは重要だとして、バイデン政権が米国世論、議会の要求に応えたものだ。日本としては、国際協調は重要であるものの、自国のエネルギーの安定供給を揺るがすならば簡単に同調できない。冷静に自国のエネルギー安全保障について判断することが必要だ。 一...
【第883回】国は企業を「人権リスク」から守れ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 自民党が「人権とビジネス」について提言を検討しているようだ。報道によれば、新疆ウイグル自治区などの人権状況が懸念される中国などを念頭に、企業が取引先等での人権侵害のリスクを調べて予防・対処する「人権デューディリジェンス(DD)」に焦点を当てるという。 欧州では人権DDを義務化する動きがあり、日本も企業の取り組みを進めるべく、政府と...
【第877回】成長戦略・経済安保を妨げる電力コスト
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日本経済の停滞が言われて久しい。今後の経済見通しでも、日本は先進国の中でも依然低迷している。政府も危機感を持ち、成長戦略は常に政権の重要政策となって、政府における会議や計画は枚挙にいとまがない。未来投資会議、成長戦略会議、成長戦略実行計画、グリーン成長戦略などなど。しかし、単なる看板の付け替え、お化粧直しの感も否めない。 経済成長...
【第862回】日本は「輸出管理・人権イニシアチブ」を支持せよ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 バイデン米大統領主催の「民主主義サミット」が9、10の両日、オンラインで開催された。約110か国・地域の首脳らを招待しての異例の規模だが、招待国の選定には戦略的観点から疑問も投げかけられた。それはともかくとして、成果として「輸出管理・人権イニシアチブ」という新たな枠組みを発足させたことは注目すべきだ。問題は、その発足に関する重要な共同...
【第836回】台湾「歓迎」、中国を「要観察」に―TPP加盟申請
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国の環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請を受けて、台湾も加盟を申請した。前稿(第831回)で「台湾も早期に加盟申請すべきだろう」と指摘したが、台湾の動きは予想以上に早かった。昨年署名された「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP)への参加は中国によって阻まれ、このままではアジアの経済圏で孤立しかねないとの危機感があった。 ...
【第831回】中国のTPP加盟申請にどう向き合うべきか
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。昨年11月の習近平国家主席の積極発言からある程度予想された動きだ。中国の狙いは、巨大市場を武器にアジアの経済秩序の主導権を取ること、米国の対中包囲網への揺さぶり、さらには反保護主義のアピールといった面もあろう。さらに「バイデン米政権は通商戦略の優先度が低く、何も動けないだろ...
【第814回】「人権考慮の輸出管理」から逃げていいのか
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国の新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡って、米欧で貿易を規制する動きが急速に強まっている。 米国は新疆産の原材料を使う綿製品、トマト製品、太陽光パネル部材を輸入禁止にしている。この関連でユニクロの綿シャツの輸入を税関で差し止めた。また、人権侵害に加担している企業と利用され得るモノに着目して輸出を規制しており、既に多くの中国企業に事...
【第804回】安保上の当然の行為は企業統治と無関係―東芝株主総会問題
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 東芝の株主総会の運営が公正でなかったとする外部調査報告書が公表された。東芝が経済産業省と一体となって「物言う株主」の株主提案権の行使を妨げたとし、そのために経産省が外為法の問題がないにもかかわらず、その規制をもって介入したとのストーリーに仕立て上げられている。 しかしこれを鵜呑みにした報道に惑わされず、実態を冷静に見る必要がある。...
【第795回】ユニクロ輸入停止は「及び腰」人権政策への警鐘
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 5月10日、米国の税関当局がユニクロのシャツ輸入を差し止めたことが公表された。人権問題を巡る米欧と中国の対立によって日本企業も深刻なリスクに直面している。 27日~28日には主要7カ国(G7)貿易相会合が予定されている。議長国の英国は強制労働問題も議論する意向だ。中国の人権問題を最優先するタイ米通商代表とこの問題で共振し、及び腰の...
【第786回】テンセント問題が迫る楽天と政府の対応
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 楽天に対する中国IT大手テンセントの子会社からの出資について、3月の発表直後から2度にわたって本欄で経済安全保障にかかわる懸念を指摘してきた。そうした懸念の声を意識してか、楽天はこの件の説明を大きく変えて、懸念払しょくに躍起になっている。政府も対応を迫られ、最近になって「監視」していく方針が報道されている。しかし、これで懸念が解消され...
【第778回】楽天が抱える「テンセント・リスク」
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 3月15日付の「今週の直言」(第774回)で、楽天に対する日本郵政の出資と、中国IT大手テンセント(騰訊)の子会社からの出資について懸念を指摘した。ここでは経済安全保障にかかわる後者の問題をさらに深掘りしたい。 一つは、日本の外為法による規制の心もとなさだ。 2019年秋、欧米による投資規制強化の動きに呼応して、日本も外為法を...
【第774回】日本郵政・楽天の提携に潜む経済安保の落し穴
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日本郵政と楽天は12日、資本・業務提携を発表して、衝撃が走った。日本郵政が楽天の第三者割当増資に応じ、1500億円を出資する。これにより日本郵政は楽天の株式の8.32%を握る。両社は物流、携帯電話事業、金融など幅広い分野で提携を強化する。ビジネス戦略としてみれば、提携のシナジー(相乗)効果を期待して評価もできよう。しかし、そこに潜む重...
【第767回】「供給網の見直し」は日米協力の好機
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 バイデン米大統領は2月24日、重要部材の供給網の問題点と対応策を検証する大統領令に署名した。半導体、高性能電池、医薬品、レアアース(希土類)が重点4品目だ。バイデン氏は「米国の国益や価値観を共有しない外国に依存できない」と強調した。むろん中国を念頭に置いてのことだ。バイデン政権も前政権と同様に、中国に厳しく臨むのだろうか。 重点4...
【第762回】バイデン政権の対中強硬は言葉だけか?
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 バイデン米大統領と習近平中国国家主席は先週、初の電話協議をした。米側発表によると、バイデン大統領は、香港、新疆ウイグルの人権問題や台湾への軍事的圧力、不公正な経済慣行などの懸念を伝えたという。対する中国側の発表は、米中対話の枠組みの再構築を米側に呼びかけたことを強調する。 バイデン大統領がまず強硬姿勢を示しておくことは、超党派で対...
【第742回・特別版】米国よ、TPP復帰へ目覚めよ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国の習近平国家主席が11月20日、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加意欲を表明した。地域包括的経済連携協定(RCEP)に署名した直後というタイミングをとらえて、バイデン次期米政権の機先を制し、自由貿易、多国間主義の旗手であるかの如く振る舞う。 政治的ポーズだけではない。習主席は他国にサプライチェーンの中国依存を高めさせて、経...
【第740回・特別版】RCEP署名で交錯した関係国の思惑
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日中韓、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する地域包括的経済連携協定(RCEP)が署名された。人口、国内総生産(GDP)ともに世界の3割を占める巨大経済圏ができた。世界の内向き志向の中で、貿易自由化の進展は評価できる。しかし過大評価は禁物だ。貿易自由化のレベルは環太平洋経済連携協定(TPP)に比べてかなり見劣りする。関...
【第739回】「自由で開かれた」抜きでインド太平洋を語るな
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 14日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を終えた記者会見での菅義偉首相の発言が波紋を呼んでいる。これまでの「自由で開かれたインド太平洋」と言わずに、「平和で繁栄したインド太平洋」と言い換えたのだ。 ●価値観外交のキーワード 「平和と繁栄」に反対する者はいないだろう。問題はそれをどうやって達成するかだ。軍事力を背...
【第737回・特別版】バイデン政権と「グリーン」で戦略的協力を
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米大統領選でバイデン氏の当選が確実になった。バイデン政権における日本の対米戦略を考えるうえで、カギの一つは環境問題だ。バイデン氏は2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを打ち出し、地球温暖化対策を目玉政策としている。具体的には、気候変動パリ協定に早期に復帰したうえで、クリーンエネルギーへの投資と環境規制の強化に力点を置く。 ...
中国との学術協力、政府自ら安全保障判断を 細川昌彦(明星大学経営学部教授)
米中による輸出管理をめぐる規制の応酬で、日本企業が翻弄されている。 中国の輸出管理法が10月17日、全国人民代表大会(全人代)で成立し、12月1日に施行される。中国に対して輸出管理を武器に振りかざす米国への対抗措置としている。米国に対峙する自信をつけた中国が「域外適用」を明確に打ち出したことは深刻だ。 米中という2つの大国が力を背景に他国を自国の判断に従わせようとする。日本など第三国...
【第696回】対中ビジネスに安全保障マインドを
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 米中対立が激化する中で、日本の経済界の安全保障意識が懸念される。もちろん巨大な中国市場のビジネスチャンスは無視できない。しかし、同時に安全保障リスクを頭に置かなければ、米国の虎の尾を踏むことにもなりかねない。 2018年8月、米国は2019年度国防権限法で、ファーウェイ(華為技術)など中国企業5社を安全保障上の懸念により政府調...
電通依存と役所の足腰劣化 細川昌彦(中部大学特任教授)
新型コロナによる売り上げ激減の中小企業などに給付する持続化給付金を巡って国会でも大問題になっている。769億円の事業を一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が受託し、その97%にあたる749億円が広告最大手の電通に再委託されている。 これに対して、この協議会が不透明で、実体のない“幽霊法人”“トンネル法人”ではないかと報道されている。さらに政権と電通の癒着だと批判されている。果たしてそう...
【第669回】コロナ経済対策で戦略的な国家ファンド設立を
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 コロナショックによる深刻な経済的打撃を受けて、各国で巨額の経済対策が打ち出されている。その中で生活支援や失業対策ばかりが注目されるが、見逃してはならない動きがある。3月下旬、欧米各国では「対内投資規制の強化」と「国家ファンドの設立・強化」という企業の買収防衛策が相次いだ。コロナショックによる株価急落によって重要企業が外国企業に買収...