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細川昌彦

【第982回】習氏3期目で激化する技術争奪戦に要警戒

細川昌彦 / 2022.11.07 (月)


国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦

 

 習近平中国国家主席が共産党総書記としての3期目をスタートさせた。注目すべきは10月の共産党大会における習氏の活動報告だ。ここ数年、習政権が長期的な米中対立を見越して展開している「強国」路線が明確に示されている。そこでのキーワードは「双循環」「自立自強」「国家安全」の三つだ。

 ●外国企業の中核技術を狙う
 「双循環」とは、半導体などの重要産業を戦略的視野に立って国産化する「国内循環」と経済の相互依存を他国への武器に使う「国際循環」だ。また、重要産業の供給網の強化を「国家安全」の重要な柱の一つと位置付けている。台湾有事の際に、西側諸国による経済制裁を不可避と考え、それに備えていると見るべきだ。
 活動報告で見逃してならないのは「自立自強」を実現するために「基幹的な核心技術の争奪戦に勝利する」としていることだ。中国企業が中核技術を持たないことが重要産業の国産化を妨げているとの危機意識が背景にある。
 問題は中核技術を外国企業から入手しようとしていることだ。その手法は、まず中国企業にない技術を持つ外国企業に中国企業と合弁を組ませ、中国国内で生産させる。次いで、中国企業による中国ブランドだけを「国産」とすることで、合弁相手の中国企業に技術が渡る仕組みにする。この手法で重要産業の中核技術を相次ぎ標的にしていく。
 こうした中国の意図と戦略は数年来顕著で、広範かつ組織的だ。半導体、電子部品、新素材、工作機械、産業用ロボット、複合機、高性能医療機器など重要産業をリストアップし、産業ごとに獲得すべき技術を絞っている。いずれも日本企業が競争力を有する分野だ。

 ●半導体で迫られる企業判断
 主戦場は半導体だ。バイデン米政権は新たな対中輸出規制を打ち出した。軍事利用される先端半導体の供給を止める狙いで、日本、欧州など同盟国にも同調を求めている。これまで中国は巨額の資金で半導体の自給率の向上を急いできたが、これで先端半導体において西側諸国に数世代遅れたままでいる可能性が出てきた。
 米国の規制では半導体の製造装置も対象としているが、今後、半導体の材料も焦点になってくるだろう。中国は半導体の供給網を国内で構築することを狙って、この分野に強い日本企業にも中国国内での生産を働き掛けている。企業の経営者は、中国の戦略的意図を踏まえたうえで、中国市場にどう向き合うべきか重要な判断を迫られる。(了)