公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

富坂聰の記事一覧

 米国のドナルド・トランプ大統領が11月、日本と韓国の訪問を終え、中国に降り立つころから、日本では静かなため息が広がったのではないだろうか。  案の定、韓国を離れるころから北朝鮮に対する大統領の厳しい発言は鳴りを潜め、この話題が取り上げられる頻度も急速に減っていった。  トランプ氏は北京に降り立って突然トーンを変えたように見えるが、私は、ある種の既視感に襲われていた。というのも今年3月のレック...

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 2つの相反する要素が両極に存在する。そんな印象を強くした中国の19大(中国共産党第19期全国代表大会)であった。  まず習近平の権力基盤についてだ。日本のメディアは「習一強」の確立と騒ぐが、それはいま始まったことではない。逆に、俗にいう「習近平思想」の党規約への盛り込みに人々の反応は冷え切っていた。  従来からある「中国の特色を持つ社会主義思想」という言葉に「新時代における習近平の」を形容詞...

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 もはや論点が少なくなってしまったので、再反論の必要はないかとも思いましたが、事務局から促されたので最後の反論をしようと思います。  要するに、歴史問題をめぐって私の見解が「宮家邦彦氏と同じ」だと言いたいということなのでしょう。宮家さんも、私にある種のレッテルを貼るためだけに利用されて気の毒だと思います。また宮家さんが『WEDGE』(2015年6月号)に寄稿された文章も、1億3000万人の民を抱...

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 西岡氏への再度の反論に際し、まず私の発言や立場を不正確に伝えるルール違反をしないことをお願いします。例えば、「日韓合意で韓国の約束違反を問題にしない富坂氏が」との記述ですが、私は「問題にしない」と発言・記述したことはありません。品位のない行為は慎んでください。  私は前回2月1日付で、「西岡氏の文章を読む限り、大使らを一時帰国させるという強い措置であったからこそ、ああいう反応を引き出せたと納得...

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 西岡力氏が1月24日付の本欄に書いた『大使召還は効果あり。富坂氏への反論に代えて』に対し、短く反論します。  西岡氏の反論は1月11日付の拙稿『駐韓大使の一時帰国は早計に過ぎる』に対してですが、私はこの中で日本外交があまりに対症療法に陥っていることを問題視しました。日本外交は最終目的地(つまり最終的に何が国益か)を定めないまま、日々持ち上がる問題に受け身で対応してばかりいるために一貫性を欠き、...

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 韓国の市民団体が釜山の日本総領事館前に慰安婦像を設置した問題で、日本政府はその対抗措置として駐韓国大使と釜山総領事を一時的に帰国させると発表し、9日、長嶺安政・駐韓大使は帰国した。  2015年12月の日韓合意の内容を考慮すれば韓国側の対応には疑問符が付く。日本人が厳しい措置を求めても当然だろう。  だが、筆者は市井の人々がそうした発想に流れることは理解できても、政府が制裁的な対抗策を打ち出...

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 10月27日、六中全会(中国共産党の第18期中央委員会第6回全体会議)が閉幕した。習近平政権の折り返しまであと1年に迫った最後の中央委員会全体会議であらためてわかったことは、習近平の〝一強〟ぶりと党内粛清の嵐が今後も吹き荒れるということ、そして群衆(大衆)路線の強調が同じように今後も重視されることだった。  中国の中堅幹部以下の世界には、上の政策に対して対策で骨抜きにする狡猾さがあるものの、あ...

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 ヒラリーかトランプか――。米大統領選挙を前に日本では新政権のアジア政策を心配する声が高まっている。私もよく「トランプだと中国も困るのでは?」と訊かれ戸惑う。「誰が大統領でも困らない対策を講じるのが中国の外交戦略」であり、日本のように外交の吉凶を大統領の個性に委ねたりしない。ちなみに「中国の海洋進出はオバマの弱腰による」というのも都市伝説で、中国人に言えば、みな笑う。  中国が海洋進出を前進させ...

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拓殖大学海外事情研究所教授・国基研企画委員 富坂聰     7月26日、中国は元共産党中央政治局常務委員で情報・司法・公安部門を統括する中央政法委員会書記だった周永康(本名は周元根)の起訴を正式に発表した。周は昨年12月に当局の監視下に置かれたとされる。公表の遅れには反腐敗キャンペーンを指揮する習近平(党総書記・国家主席)の逡巡があるのではとの憶測を生んでいただけに、「虎(大物)...

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