公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

湯浅博の記事一覧

国基研企画委員・主任研究員 湯浅博    トランプ米政権の対外政策は、安全保障と通商の両面から中国と対決し、「新冷戦」の到来を覚悟したかのようだ。ペンス副大統領がワシントンで4日行った演説をもって、レーガン元大統領がソ連を「悪の帝国」と呼んだ瞬間を彷彿とさせるとの論評は妥当であろう。米国はこれまで、国際秩序を無視した中国の影響力拡大を見過ごしてきたが、ペンス演説は「それらの日々を...

続きを読む

国基研企画委員・主任研究員 湯浅博    帝国主義外交の典型は、大きな軍事力を振りかざしながら、にこやかに相手国を懐柔する狡猾こうかつさではなかったか。ロシアのプーチン大統領はまさに、「東方経済フォーラム」に参加した安倍晋三首相をソフトな声で迎えながら、その背後で中国との合同軍事演習「ボストーク2018」をぶつけてきた。中露関係の強さを合同演習で敵対国の米国に誇示しつつ、その同盟...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    確かに、米朝首脳会談を開催した6月12日は、歴史的な1日になった。劇場型の政治指導者2人が「朝鮮半島の完全非核化」へ向けて原則的に合意したからだ。トランプ米大統領は会談後の記者会見で、当初もくろんだ大量破壊兵器の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」が、共同声明に書き込まれていない点を指摘され、「時間がなかった」といら立ち気味に答えた。不完全であ...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    中国が主導する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の野望が、ついに逆回転を始めた。構想に乗りかけていたマレーシアで、マハティール新政権がマレー半島高速鉄道計画の中止を表明したからだ。途上国によくある権力の腐敗、宗教の対立、経済の混乱は、拡張主義の中国が構想を押し付ける絶好の機会を提供する。ナジブ前政権下のマレーシアはまさに政府債務が国内総生産...

続きを読む

 中国の経済圏構想の「一帯一路」は、誰しも現代版のシルクロードとして陸と海から西方へ向かうものと考える。実際に習近平政権は、米国との摩擦を避けるためもあって、古代シルクロードの沿線国にインフラ投資を繰り返してきた。ところが、中国は米国の「裏庭」にあたる中南米にも食指を伸ばして、ここに「一帯一路」をかぶせようとしている。そこには経済的理由のほかに、米国の関心を自国周辺に移させ、アジアで自由に行動させ...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    米英仏による今回のシリア攻撃は、世界への関与にうんざりしていた米国が「自由世界の戦略本部」として踏みとどまった証しではないか。この攻撃で、シリアを支援するロシアを直接的に抑止し、中国と北朝鮮を間接的に牽制した。国際秩序は今、これら独裁色の強い権威主義的政権からの挑戦を受けている。しかも、いくつかの危機は、米国に不都合な時期に同時発生する複雑さだ。...

続きを読む

 中国の習近平政権による現代版シルクロードの経済圏構想「一帯一路」の正体が、ようやく見えてきたのではないか。拡張主義の中国にとって、途上国によくある権力の腐敗、宗教の対立、経済格差の混乱は格好のターゲットになる。その地が、戦略的要衝であれば、間違いなく手を突っ込んでくるだろう。インド洋に浮かぶ小国モルディブは、その受難をまともに被った。  美しいサンゴ礁と1000以上の島々からなるモルディブは、...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    中国の習近平政権による現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」(BRI)が東南アジアから南西アジアにかけて難航している。中国は相互利益を強調するが、実態は「略奪経済」ではないかという疑いが広がっているからだ。  BRIは、陸のシルクロードである「帯」と、海のシルクロードである「路」の二つの経済圏を築き、これを一体化して、米国を凌駕するような超大...

続きを読む

 トランプ米大統領が居眠りしていようと、中国の習近平国家主席が毛沢東のような権力を握ろうと、インド太平洋地域の新たな安全保障の枠組みは着実に動きはじめた。マルコム・ターンブル豪首相の日本訪問と同じ今月18 日に、ニューデリーでも日米豪印の海軍トップが参加して連携の協議を開始したからだ。  とくに、ターンブル首相の訪日は、最大の貿易相手国・中国に気兼ねしつつも、日米豪印の「安全保障ダイヤモンド」に...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    ベトナム中部ダナンで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、「インド太平洋」戦略を掲げて巻き返しを図る米国と、「一帯一路」構想の実利で磁場を広げる中国が激突した。とくに環太平洋経済連携協定(TPP)離脱でアジア関与が疑われたトランプ米大統領は、11月10日の演説で初めて「インド太平洋」という地理的概念を多用し、経済を語りながら安全保障への関...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    北朝鮮危機の下で安倍晋三首相は衆院解散を選択した。野党は即座に「大義がない」「政治空白をつくる」と批判を浴びせた。すると朝日新聞が先回りして、学校法人森友学園への国有地払い下げ問題や加計学園の獣医学部新設問題の「疑惑隠し」だと強調し、野党に政権攻撃の手本を示した。それまで野党は、森友・加計問題で「衆院を解散して信を問え」と主張してきた手前、すぐに...

続きを読む

国基研企画委員 湯浅博    かつてない逆風の中で、第3次安倍第3次改造内閣がスタートした。気になるのは、安倍晋三首相による憲法改正の表明に躊ちゅう躇ちょがみられることだ。学校法人加計学園の獣医学部新設問題への対応や国会審議の強引な運びへの批判を受け、内閣改造後初の記者会見の冒頭発言では改憲構想への言及を避けていた。記者の質問を受けて初めて「スケジュールありきではない」と述べ...

続きを読む

国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博    責任ある政治家は、自衛隊の「隠蔽体質」などをめぐり空論をもてあそぶことをやめ、日本が直面する安全保障上の危機に向き合うべきである。北朝鮮は日本の政局をあざ笑うかのように、再び大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。射程が1万キロを超えて米国本土に達するとみられることから、米国の対北攻撃が現実味を帯びてきた。ところが、至近距離に...

続きを読む

国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博    骨の髄まで大国主義の中国は、二国間協議が思い通りにならないと、共同文書を拒否し、記者会見も平然とボイコットする。ワシントンで開催された閣僚レベルの米中外交・安全保障対話がそれだった。同じ時期にハノイで予定されていた中国とベトナムの国防当局高官による国境防衛交流プログラムも、中国側が一方的にキャンセルした。ともに南シナ海の一時の静...

続きを読む

国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博    戦争の犠牲もいとわぬ「瀬戸際政策」は、北朝鮮が長く対米外交に使ってきた得意手である。それを今回の朝鮮半島危機では、逆に米国のトランプ政権が用いているように見える。オバマ前政権が「戦略的忍耐」を名目に、北の核開発を放置してきたツケの処理である。ティラーソン国務長官が国連安保理閣僚級会合で「いま行動することに失敗すれば災いを招く」と...

続きを読む

国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博    3月に東アジアを初訪問した米国のティラーソン国務長官は、北朝鮮に対する「戦略的忍耐は終わった」と宣言した。では、北朝鮮の核開発を断念させる手立ては、本当に残されているのだろうか。オバマ前政権の「戦略的忍耐」という不作為のおかげで、北朝鮮はすでにソウル、東京、グアムを破壊する能力をほぼ手中に収めている。長官が「あらゆる選択肢を検討...

続きを読む

国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博    予測不能のトランプ米政権下で、日米同盟はどのように生き残るのか。トランプ大統領は就任演説で「古くからの同盟を強化する」と述べ、安倍晋三首相も日米同盟を「永遠の同盟」と位置づけている。しかし、大統領は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を葬り、1980年代の古いイメージで日本の不公正貿易をなじるばかり。対中抑止に欠かせない同盟の行...

続きを読む

 このような首脳外交ができるのは、日本の歴代首相の中でも卓越した戦略観の持主しかいないだろう。安倍晋三首相の豪州、東南アジアの4カ国訪問は、南シナ海を結節点としてインド洋と太平洋に橋を架けるための戦略外交である。首相が今回の歴訪で伝えようとしたのはシンプルな2つの力強いメッセージであり、その結束力をもって米国の新政権を動かそうとしている。  共同対処のターゲットとなるのは、南シナ海で7つの人工島...

続きを読む

 中国は年明けから海軍初の空母「遼寧」を使った宣伝戦に余念がない。南シナ海で艦載機による離発着訓練を、連日テレビに映し出し、領海や海洋権益で決して譲歩しないことを内外に示した。日米が年末にハワイの真珠湾で「和解力」を発信しているときに、中国はわざわざ西太平洋にまで空母を押し出して「敵対力」を誇示した。  狙いは米国の新しい政権に向けた危険なテストなのか、あるいは今年秋に開催する中国共産党大会に向...

続きを読む

国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博    なんといっても、安倍晋三首相とプーチン大統領の日露首脳会談は、日本にとって最悪のタイミングで行われた。「プレス向け声明」のどこを見ても、北方4島にかかわる「領土」も「国境」という記述がない。共同経済活動が最大の成果というのなら、ロシアのプーチン大統領の笑い声が聞こえてきそうだ。  ●安倍首相の目論見は雲散霧消!  安倍首...

続きを読む