公益財団法人 国家基本問題研究所
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湯浅博の記事一覧

ロシアのプーチン大統領は、同国カザンで10月下旬に開いた主要新興国によるBRICS首脳会議で、ウクライナ侵略に対する免罪符の獲得に失敗した。プーチン氏は加盟国を5カ国から9カ国に拡大した「BRICSプラス」の初開催をテコに、欧米によるロシア孤立政策の「失敗」を印象付け、制裁解除の足掛かりにしようと目論んだ。しかし、「制限なし」の協力を侵攻直前に誓ったはずの中国から、逆に侵略戦争を終わらせるよう求め...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    石破茂新首相が自民党総裁選で高々と掲げた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想は、首相就任3日にして消えていた。10月4日の所信表明演説で、自らの政治信条をあっさり封印してしまったからだ。同盟国やパートナー国からの拒否反応に怯んだためか、あるいは解散・総選挙を控えて刺激的な表現を避けたかったのか。どちらにしても、石破氏は軍事オタクではあ...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    中国広東省深圳市で日本人学校に通う男子児童(10)が中国人の男に刺殺された事件に、深い悲しみが広がっている。そして、都合の悪い事実から目をそらす中国当局の隠蔽体質と、徹底した抗議と再発防止に動こうとしない日本政府に対する憤りが収まらない。つい6月にも、江蘇省蘇州市で日本人母子への切り付け事件があったばかりではないか。二つの事件が日本人を標的に...

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中国とロシアの独裁政権は、米国主導の秩序解体を視野に「包括的戦略的連携パートナーシップ」の深化を掲げた。それは単に、中国がロシアのウクライナ侵略戦争を後押しするだけでなく、ウクライナ戦争が反米枢軸の強化を目指す戦争であることを意味している。 「共通の敵」へ連携 プーチン・ロシア大統領の訪中は、ウクライナ侵略後で3度目の対面による首脳会談となった。昨春のモスクワでの会談は、プーチン氏が戦...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    バイデン米大統領が7日に行った一般教書演説は、自由と民主主義が「国内外の両方で同時に攻撃にさらされている」と警鐘を鳴らし、ウクライナ支援を力強く打ち出した。侵略国家ロシアの優位は、力で現状変更しようとする中国を勇気づけるから、ウクライナ支援は日本の国益とも合致する。バイデン氏が議会に呼び掛けたように、これ以上ロシアのプーチン大統領を喜ばせない...

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先の米中首脳会談による「雪解け」ムードにもかかわらず、台湾海峡から南シナ海にかけての海域ではなお、赤い警告灯が点滅している。 11月15日にサンフランシスコ近郊で開催された首脳会談で、習近平中国国家主席は台湾に対して軍事行動をとる計画はない―との心強い誓約を披歴した。それから4日後の19日、中国空軍の戦闘機、早期警戒機など9機が台湾海峡の中間線を超え、これまで通りに台湾を威嚇した。これら空軍...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    米議会の未曾有の混乱は、「帝国の復活」を夢見るロシアと中国の独裁国家を勇気づけている。米下院はつなぎ予算からウクライナ支援を除外したうえ、米国史上初めて議長を解任してしまった。米議会の機能不全とウクライナ支援の凍結は、欧州だけでなく、日本などアジアの同盟国をも不安に陥れる。中国が「米国弱し」と誤算して、台湾攻撃を仕掛ける懸念が急速に高まるから...

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迫りくる独裁国家群の脅威は、歴史的な不和を引きずる民主国家を強力な結束へと導いた。8月18日、ワシントン郊外の米大統領別荘キャンプデービッドで開催された日米韓3カ国首脳会談は、覇権主義的な中国に対して軍事面の「抑止」と経済面の「リスク回避」で結束することで合意した。北朝鮮、ロシアと枢軸関係にある中国が、差し迫った衰退によって対外強硬策へ向かう危険性があるだけに、日米韓が「インド太平洋を越えた協力」...

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ロシアの軍事会社ワグネルがモスクワに反旗を翻した時、ロシアの「無制限」のパートナーである中国は、控えめな反応に終始した。予測不能なロシアに対しては、過去の経験から静観する方が妥当であるとの慎重な判断からだろう。ただ言えることは、習近平中国国家主席がプーチン・ロシア大統領を支える「賭け」のリスクが、これまでよりも高くなってきたということだ。 即座の反応を控えた中国指導部 クーデターへの早...

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中国外交はその時々の都合で、「穏歩」と「急進」を交互に繰り返してきた。威圧的な「戦狼外交」を棚上げしたはずの中国が、今また対米強硬姿勢に転じている。習近平国家主席が3月初旬の演説で、自国に対する「全面的な封じ込め、包囲、抑圧」の勢力として米国を名指しで非難し、「我が国の発展に前例のない深刻な課題を突き付けている」と強硬度のペダルを踏み込んだ。自らの経済政策の失敗を隠し、米国による先端半導体の輸出規...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    習近平中国国家主席がロシアによるウクライナ侵略戦争の和平案を引っ提げて、今週訪露する。中国は3月に入って、湾岸地域で敵対関係にあったサウジアラビアとイランを仲介し、外交関係の再開合意を引き出すことに成功したばかりだ。その勢いを駆って、今度は欧州の戦争で「善意の調停者」を演じようとしている。  中国の秦剛外相は自国を平和志向のピースメーカーと...

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ロシアによるウクライナ侵略戦争開始から1年を迎え、世界は新たな地政学的な展開を始めた。ユーラシアのど真ん中で展開する熱戦は、侵略者のロシアとこれを迎え撃つウクライナとの攻防である。しかし、同時進行しているのは、民主主義秩序に挑戦する中国と、これに対処する米国によるグレートゲームだ。仕掛けたのは、見込みのない「和平構想」を掲げつつ、ロシアへの武器売却を検討する中国である。 偽装和平案を提示 ...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    中国の人口が61年ぶりに減少に転じた。国連の「世界人口予測」や中国社会科学院の予想より8年も早い頭打ちである。同時に2022年の国内総生産(GDP)の伸びも、政府目標の5.5%を大きく下回って景気減速が明らかになった。中国の労働人口はすでに減少しており、今後、高齢者数を上乗せしながら若年者数を減らしていく。この歴史的な構造変化により、習近平国...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    安倍晋三元首相が指摘したように「台湾有事は日本有事」に直結し、岸田文雄首相が述べたように「今日のウクライナは明日の東アジア」になり得る。日本はロシアの侵略戦争、中国の台湾恫どう喝、北朝鮮のミサイル乱射のトリプル危機の最前線にある。日本は総力を上げて戦争を抑止しなければならない緊急事態を迎えている。ところが国会の選良たちは、国内スキャンダルの泥...

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国基研企画委員兼研究員 湯浅博    欧州とインド太平洋の民主国家群が、ユーラシア大陸の専制国家を取り囲むように手を結んだことは歴史的な前進であった。北大西洋条約機構(NATO)が採択した今後10年の指針「戦略概念」は、ロシアを「直接的な脅威」に、中国を「体制上の挑戦」と位置付けて、新冷戦の回帰不能点を超えた。その中露枢軸と東で対峙する日本は、対露制裁で欧州と足並みをそろえ、イン...

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ロシアのウクライナ侵略戦争は、形を変えた米露戦争の様相を濃くしている。バイデン米政権の戦略目標は、オースティン国防長官の言う「ロシア弱体化」という侵略の代償を独裁者に求めている。そのために、ウクライナに対する軍事支援、人道支援として330億ドルという巨費を米議会に要求した。この額だけでもロシア国防費の約半分にあたるが、議会がさらに上乗せして総計400億ドルを拠出することになった。 英紙フィナ...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    バイデン米政権の戦略目標は、21世紀が独裁国家優位の時代になるのを防ぐことにある。ロシアのウクライナ侵略戦争によって、分裂気味だった北大西洋条約機構(NATO)が強化され、インド太平洋でも対中抑止を念頭におく日米豪印の4カ国戦略対話(クアッド)が大きな一歩を踏み出した。今後、中露枢軸を封じ込めるには、クアッドと欧州、アジアの有志国との連携...

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中立国のスウェーデンとフィンランドがNATO(北大西洋条約機構)加盟に舵を切ったことにより、プーチン露大統領の戦略的な敗北が決定的となった。ウクライナに侵略したプーチン氏が掲げた戦略目的が、NATOの東方拡大を阻止することであってみれば、軍事力の恫喝がかえってロシアにとっては悲惨な結果を招いた。自由社会がウクライナ戦争から得た教訓は、力ずくの拡張主義に対する最大の抑止が「同盟の結束」であることを確...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    岸田文雄首相が先の6カ国訪問の締めくくり会見で述べた「ウクライナは明日のアジア」との修辞は、現状変更勢力の中露に対抗する米欧との連帯を示す表明であった。ロシアにとって西の隣接国はウクライナだが、東の隣接国は日本であるという現実を考えれば、妥当な判断だ。しかも、目の前には地域覇権を目指す中国が、ロシアとの新しい枢軸を形成している。他方、岸田...

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日本には、「核論議すること自体が抑止である」との空疎な楽観論が跋扈していたことがある。しかし、ウクライナを侵略するプーチン露大統領は、「核の恫喝」で世界を震撼させ、朝鮮半島にはなお核を抱えた「悪魔の跳梁」がある。そして、核を増強する中国を含め、日本周辺の戦略環境は劇的に変わった。日本は米国が差し掛けている「核の傘」を見直し、核抑止力を再構築すべき時を迎えている。 米国の「核の傘は」万全か ...

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安倍晋三元首相が米国の核兵器を自国内に配備して共同運用する「核の共有」論の必要性を提起して以来、核抑止力の議論が活発になってきた。もっとも、同盟国に依存する核論議には、肝心の米国がそれを同意するだけの戦略的意義と相互利益がなければ話にならない。かつて、佐藤栄作政権が日本に対する米国の「核の傘」を獲得した外交術に、重要なヒントが隠されている。 日本の政治家は、国民の中に核アレルギーがあると信じ...

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ウクライナを侵略するロシアの指導者が、「核の恫喝」を口にしたことにより、世界は「手負いの熊」がいかに危険であるかを理解した。キエフ陥落という悪夢の中で、先進7カ国(G7)はロシアとの対決で結束し、北大西洋条約機構(NATO)は本来のロシア封じ込め戦略へ引き戻された。だが、中国だけは戦略的利益のために、米国に対する中露連携の「新たな枢軸」を手放さない。 侵攻を事前に知っていた中国 中国政...

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ウクライナ国境をめぐる米国とロシアの緊張は、台湾に圧力をかける中国にとっては追い風に違いない。米国がウクライナはじめ「欧州正面」に手を取られれば、台湾防衛に動くアメリカンパワーがそがれるからである。米国に対するロシアの要求が通っても、破綻して戦争になっても、対米瀬戸際外交の「先行モデル」として台湾海峡で援用できる。 プーチン露大統領にとってソ連崩壊が「20世紀最大の地政学的悲劇」である以上、...

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バイデン米大統領は、「米国はインド太平洋にとどまる」と宣言し、中国の習近平中国国家主席は、「戦略的安定」に向けて将来的に誓約するかどうかの検討を誓約するという雲をつかむような話をしていた。11月16日に開催の米中初首脳会談(オンライン)は、もともと期待値が低く、やらないよりはマシという実体のないサミットだった。ここから導かされる自由世界の教訓は、国防費を増やして抑止力を高め、直ちに対中投資に制限を...

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成長の著しいASEAN(東南アジア諸国連合)をめぐって、アメリカと中国が「勢力圏」の争奪を活発化させている。アジア軽視のトランプ前大統領に対し、バイデン大統領は「自由で開かれたインド太平洋」を掲げてアジア外交を積極展開し、中国を「ルールに基づく秩序への脅威」と位置付けた。対する中国は、これら首脳会議などを通じて「ASEANは近隣外交の優先事項」と応じて、綱引きは激しさを増している。 米国の影...

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総選挙さなかの日本を威圧するように、中国とロシアの海軍艦隊が「巡視活動」と称して列島をほぼ一周した。軍事行動による民主国家への威嚇行為は、1996年の総統選挙中の台湾に対し、中国が台湾海峡に向けたミサイル演習で揺さぶった海峡危機を想起させる。 あの時、台湾人は脅しに屈することなく結束を見せたが、安全保障に鈍感な日本の政治家たちの反応は鈍い。岸田政権は中露による威嚇行動に、日米同盟の抑止力強化...

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アフガニスタンからの撤収で戦術的な痛手を受けた米国は、すかさず戦略転換して「対中国リバランス(再均衡)」に舵を切った。途端にインド太平洋地域では、米中大国間競争がめまぐるしく回転を始めた。特に、インド太平洋の南シナ海や東シナ海で、米中が空と海で一触即発の火花を散らしている。特に中国軍機による台湾の防空識別圏への派手な侵入が耳目を集めるが、実際には米主導で対中包囲を恐れる習近平国家主席が国内の危機か...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    環太平洋経済連携協定(TPP)の11カ国は、米国の巨大経済力を急追する中国の加盟申請を拒否できるのか―。米英豪3カ国が対中抑止の新しい安全保障の枠組み「オーカス」を発足させると、中国はこれに対抗するかのようにTPP加盟を申請した。台湾も間髪を入れずに名乗りを上げ、自由貿易協定であるはずのTPPがにわかに政治化してきた。  TPPにはもと...

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アフガニスタンからの撤収で戦術的な痛手を受けたバイデン米政権が、具体的に「対中リバランス」へと動き始めた。バイデン政権がすぐに手を付けたのが、米英豪3カ国からなる安全保障の新しい枠組み「オーカス」の発足と、日米豪印4カ国安全保障戦略対話「クアッド」の対面による初の首脳会議である。米国はこれら2枚の抑止カードで中国を包囲する構えだ。撤収の失敗が米国の威信を傷つけてしまった以上、持てる外交・安全保障の...

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アフガニスタンの首都カブールが、あっけなくイスラム原理主義武装勢力、タリバンの手に落ちたとき、歓喜の声を上げたのは隣国のパキスタンであった。これまで、タリバンへの支援疑惑を表向きは否定していたものの、イムラン・カーン首相はついに「アフガンは奴隷の足かせを解いた」と本音を吐いた。アフガン大波乱の勝者は、人種的な結びつきの強いパキスタンだったのだろう。 アフガンは中央アジアの地政学上の要衝であり...

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 果たしてバイデン米政権は、12月にリモート開催する「民主主義サミット」に、台湾やベトナムの参加を呼び掛けるだろうか。中国が核心的利益だという台湾は、「活気に満ちた民主主義」であるし、共産党支配とはいえベトナムは、対中抑止の地政学的な利益を共有している国だ。もしも中国に配慮して彼らの参加を見送れば、「権威主義に対抗するサミット」の存在意義が問われるだろう。 台越も参加できる枠組み ここ...

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 「米国の衰退」を確信する中国共産党が、このところ戦術的後退のポーズを見せはじめた。国際社会から香港情勢やウイグル弾圧、武漢ウイルス対応への批判が高まり、これ以上の対中包囲を避けるための一時的な退避である。他者を欺く外交は、「米中新冷戦」演説といわれた2018年10月のペンス前副大統領による対中非難直後にも採用されている。ただし、戦術的後退は対中批判をかわすための詐術であって、政策転換ではないから...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    インド太平洋に目を向けた英国が、欧州勢の先陣を切って大きな一歩を踏み出したことを歓迎したい。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)11カ国は英国の加盟申請を受けて6月2日、閣僚会議で英国との交渉開始を決めた。その10日ほど前には、英空母打撃群が米海軍の駆逐艦とオランダ海軍のフリゲート艦を従え、インド太平洋へ向け7カ月間の航海に出た。米中間の...

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 アメリカのバイデン政権は、多くの外交・軍事資源を米中新冷戦の「アジア正面」にシフトしようとするものの、中東の火薬庫とロシアの拡張主義という2つの壁に阻まれる。パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派組織ハマスのイスラエル攻撃と、北極圏の覇権を握ろうとするロシアへの対処である。とりわけ、イスラエルとハマスの戦闘は、長引けばアメリカ外交の柔軟性が失われ、代わって中国に国際社会における指導力を誇示...

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 米ソ冷戦は、「欧州正面」が両陣営の主戦場であったが、現下の米中新冷戦は「アジア正面」が主戦場になる。欧州正面の最前線は東西ドイツであったが、アジア正面の最前線は台湾であり、台湾有事は連動して日本の有事になる。中国共産党が日本の尖閣諸島を「台湾の一部」と決めつけている以上、尖閣奪取に動いて先島諸島が戦火に見舞われる可能性が高くなるからだ。 歴史的な対中方針の明確化 バイデン米大統領が就...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    史上初の日米豪印4カ国(クアッド)首脳会議がオンラインで開催され、インド太平洋地域における民主主義国家の結束を印象付け、対中抑止への一歩を刻んだことは意義深い。自由世界の秩序に挑戦する中国は、米国不在で生じた空白を力で埋めようとしてきただけに、クアッドの結束や拡大を最も警戒してきた。4カ国は今後、外相会議のほか、年内に対面での首脳会議を開...

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 南シナ海と東シナ海の3つのフラッシュ・ポイントで緊張が高まっている。7月の中国共産党創設100周年、来年の第20回中国共産党大会を前に、バイデン米政権が弱みを見せれば、習近平国家主席の中国は伝統的な拡張主義の誘惑に抗しきれなくなるだろう。その一つが尖閣諸島の緊張の高まりであり、とかく戦略観に乏しい菅義偉政権には、力のバランスを回復させる政策行動を早急に求めたい。 危機強まる尖閣情勢 ...

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 尖閣諸島周辺の領海で、中国公船による侵犯と居座りが常態化している。あちら中国海警局の艦船は、大型化して機関砲まで積んでいる。この“第二海軍化”した中国海警局に、外国公船に対する武器使用まで認める海警法が2月1日に施行された。 中国は海警法によって主権や管轄権が外国に侵害されたときには、海警所属の公船すべてに武器使用など、あらゆる措置を取らせることを意図している。つまりは、日本が沖縄県の尖閣...

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 「一帯一路」を疾駆する列車が脱輪するのも、それほど時間はかからないのかもしれない。2020年12月12日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「中国が世界から撤退する」との衝撃的な見出しで、中国の抱える海外貸付が多くの国で焦げ付いている事実を明らかにした。この経済圏構想は、投資家が二の足を踏む非効率なインフラであっても、習近平政権が「地政学のツール」として気前よく貸し付けてきたツケであろう...

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ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心とした環太平洋の一連のオンライン首脳会議で、中国の存在感が目立った。特に、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の発足に対する米国の認識は、「中国の大勝利にはほど遠い」と米紙が論評するなど、やや近視眼的で見通しが甘い。中国は実態もないのに「法の支配」を掲げ、東アジアで緩やかな連携の輪を広げつつある。米国が大統領選による社会の分裂が尾を引き、政治の空白から戦略観...

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