太田文雄の記事一覧
文民統制には制服組の信頼も大切 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
10月10日に石破茂首相は「戦後80年所感」を出した。その中で首相は、先の大戦が何故避けられなかったのかに関して「文民統制」が機能しなかったことや、世論を煽ったメディアに政治の意思決定が引きずられた点等を挙げた。 筆者は平成13年から17年まで防衛庁情報本部長に任じ、平成14年から16年までの2年間、防衛庁長官だった石破氏に仕えた。その実体験に基づき、統制される側の制服組の立場として、統制す...
高市政権は公明より維新や国民と連立を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
高市早苗氏が自民党総裁に選出された10月4日の夜、公明党の斎藤鉄夫代表は、高市氏の靖国神社参拝や歴史認識、そして外国人との共生政策等で懸念が解消されることを自公の連立政権を継続する条件とした。 これに対し、5日朝のフジテレビの番組に出演した日本維新の会の藤田文武共同代表や国民民主党の古川元久代表代行は、首相の靖国参拝を問題視しないことを表明している。公明党が首相の靖国参拝などにクレームをつけ...
「海行かば」は鎮魂歌 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
宝塚歌劇団は9月24日、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で10月26日まで上演中の宙(そら)組公演のショー「BAYSIDE STAR」で、「海行かば」をソロ歌唱するシーンについて、24日から歌唱を取りやめると発表した。その理由として「軍歌はエンターテインメントにふさわしくない」といった批判が寄せられたためと報じられている。 筆者は元海上自衛官として、大東亜戦争の日米海戦海域で写真のような洋上慰霊祭...
【第1292回】首相は実現不可能な主張より現実直視を
国基研企画委員兼研究員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 石破茂首相は9月23日の国連演説で「安保理改革の実現」と「核兵器なき世界」の実現を訴えた。両方とも、言うは安いが実現の可能性はゼロに等しい。 安保理改革をどうやって行うのか。ウクライナを侵略したロシアは安保理5常任理事国の一つであり、そのロシアを安保理から排除することは、まず不可能であろう。日本が願う常任理事国入りも...
防衛有識者会議の提言に賛成する 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
9月19日に「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」(座長・榊原定往元経団連会長)の提言が公表された。元自衛官として、とりわけ次の2点に関して賛成の意を表したい。一つは、非戦闘目的の5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)に該当する防衛装備品のみ輸出を認めてきた現行ルールの緩和要請であり、二つ目は潜水艦への長距離ミサイル搭載の意義に言及し、原子力潜水艦を念頭に「次世代動力」の導入を主張した点である。...
タイフォン・ミサイルシステムの展開を歓迎 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米軍が新たに開発した地上発射型の中距離ミサイルシステム「タイフォン」を日本に初めて展開させ、15日、山口県岩国市の米軍岩国基地で報道陣に公開した。11日から実施中の自衛隊との大規模共同演習で、九州や沖縄などの離島防衛を想定した訓練のためとしている。 これまで米国は、冷戦末期の1987年に旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約により、地上発射型の中距離ミサイルを配備できなかった。それを尻...
「戦争」や「攻撃」の忌避から脱却せよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
9月5日、米国のトランプ大統領は、国防総省を「戦争省」に改称する方針を示した大統領令に署名した。日本では、また狂った大統領が奇妙なことを言い出したと受け止める向きが多いが、米国では建国間もない1789年から第2次世界大戦直後の1949年まで、この官庁の名称は一貫して戦争省であった。 War Collegeの奇妙な和訳 米国の首都ワシントンにある国防総合大学(National Defen...
NHKの悪意ある印象操作 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
8月16日と17日にNHKは「シミュレーション〜昭和16年夏の敗戦〜」を放映した。番組では、日米開戦前に設立された首相直属の「総力戦研究所」が日米戦争に踏み切れば日本必敗というシミュレーション結果を出したのに対し、所長であった飯村穣陸軍中将が所員の自由な議論を阻害し、結論を覆す圧力をかけた人物として描かれている。お決まりの軍人イコール好戦主義者というNHKのイメージ操作によって史実が歪められている...
「不戦」で領土・主権を失っても良いのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
沖縄戦終了から80周年の6月23日前後、テレビの番組は戦争体験者の「戦争は絶対やってはいけない」とする声を収録した「不戦」の特集が多く、この傾向は終戦80周年の8月に向けてますます高まって行くであろう。 だが我が国が直面しているのは沖縄県の尖閣諸島を奪おうとする中国であり、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルを日本海に撃ち込んでいる北朝鮮であり、中国と軍事協力をして北方を脅かすロシアの存在である。...
米のイラン攻撃を日本は支持せよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米トランプ政権は、イランの核開発関連施設をB2爆撃機搭載の地中貫通爆弾(バンカーバスター)などによって攻撃した。石破茂首相は、メディアから米の攻撃を支持するかを問われ「政府内で議論する」と回答したが、かつてジョージ・W・ブッシュ大統領が北朝鮮、イラクと並べて「悪の枢軸」と呼んだイランの核開発を止めた意義を強調して支持を表明すべきであった。 北朝鮮核開発を思い起こせ 1994年に、当時の...
情報は親中政治家によって歪められる 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
5月26日夕方「日本の最南端である沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)で、中国の海洋調査船が事前の同意を得ずに活動した」と報じられた。NHKは第3管区海上保安本部の発表として「中国の海洋調査船による沖ノ鳥島周辺のEEZでの事前の同意のない活動が確認されたのは2024年1月1日以来で、過去10年間で9件目」と伝えた。 しかし実際には、中国が沖ノ鳥島を「岩」だと主張し始めた今世紀初頭から中国の...
シリア政権崩壊はロシアのブーメラン 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
シリアのアサド政権が崩壊した。主因は、後ろ盾となっていたロシアがウクライナ侵攻でシリアを支援できなくなったことと、ロシアがけしかけて始まった昨今の中東紛争で、レバノンのイスラム主義組織ヒズボラもイスラエルの攻撃でダメージを受け、シリアを支援できなくなったことだ。ロシアのウクライナ侵攻と中東での親イラン勢力支援がブーメランとなってロシアに帰ってきた。 ロシアの中東支援挫折 ウクライナの反...
「非軍」でクアッドの海保相互運用に対応できるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
21日に米デラウエア州で日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会議が開かれ、中国を念頭に海洋安全保障協力の強化で一致し、共同声明では海上保安機関が相互運用性を向上させることがうたわれた。 米豪印3カ国の海上保安機関(沿岸警備隊)が全て準軍事組織であるのに対し、日本の海上保安庁のみが海上保安庁法25条で非軍事組織と定められており、3カ国の沿岸警備隊と有効に相互運用性を向上させられるのか疑...
【第1185回】日米の安保感覚を一致させよ
国基研企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 9月19日、米海軍の制服組トップであるリサ・フランチェティ作戦部長が「米国の戦闘海軍のための航海計画」2024年版を公表した。同計画は2022年にも前作戦部長によって公表されているが、その後ロシア・ウクライナ戦争に伴う黒海での海戦や、紅海におけるイエメンの反政府武装集団フーシ派との戦いの教訓を含め、ロボットや自律システムの軍事利...
国は戦死者の発生に備えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
4月に来日したアキリーノ米インド太平洋軍司令官(海軍大将=当時)は、2027年までに中国軍は台湾に侵攻できる能力を完成させる計画だとの認識を示した。バーンズ米中央情報局(CIA)長官も昨年、「中国の習近平国家主席が人民解放軍に対し、2027年までに台湾侵攻準備を整えるよう指示を出した」との認識を示している。 台湾有事により日本で存立危機事態や武力攻撃事態が認定され、自衛隊に防衛出動が命じられ...
日米台比越豪の連携で中国に立ち向かえ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
英国際戦略研究所(IISS)主催のアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で6月1日、オースチン米国防長官は、中国が南シナ海でフィリピンに対して行っているハラスメント(嫌がらせ)を危険と非難する演説をした。 海上で中国の嫌がらせを受けているのはフィリピンだけではない。ベトナムは南シナ海の沿岸海域で中国の非合法漁業活動や、2000年に合意したトンキン湾中間線をベトナム側に押し出す動きに苛立ってい...
「専守」では防衛できないことが立証された 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
ロシアの侵略に対するウクライナの防衛戦で、これまで北大西洋条約機構(NATO)は欧米がウクライナに供与した武器でロシア領内の目標を攻撃することを認めてこなかったが、最近になってNATO要人がこれを認める発言を始めた。ウクライナの防衛戦で「専守防衛」が効かないことを立証した形になり、日本も国是としてきた専守防衛を見直す契機とすべきだ。 ウクライナのロシア領攻撃容認へ 5月26日、NATO...
ドローン侵入で露呈した国内体制の欠陥 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
海上自衛隊の護衛艦「いずも」をドローンで空撮した動画が中国のサイトに投稿されたことが問題となっている。本件に関してはドローンの「いずも」上空への侵入を許した防衛省・自衛隊に非難の声が上がっているが、見落とされている重要な我が国国防上の欠陥がある。それは、侵入したドローンに妨害電波をかけようにも、さらには自衛隊が運用するドローンを管制しようにも、自衛隊への電波割り当てが限られていることだ。 電...
【第1138回】世界的連携を妨げる国内体制の不備
国基研企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 岸田文雄首相は4月10日、バイデン米大統領とホワイトハウスで会談し、「未来のためのグローバル・パートナー」と題した共同声明を発表した。11日の米議会上下両院合同会議での演説では、国際秩序を守るため日本は米国と共に「大きな責任を担う」と述べた。 現在、国際秩序を乱しているのは、ウクライナ戦争、中東での戦争、そして台湾海峡と南シ...
自衛隊にかみついた朝日の占領軍史観 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
陸上自衛隊の第32普通科連隊(埼玉県大宮駐屯地)が4月5日に硫黄島で日米合同の戦没者追悼式に参加したことをX(旧ツイッター)の公式アカウントで紹介した際、先の戦争を「大東亜戦争」と呼んだのを問題視する記事が7日の朝日新聞デジタル版に掲載された。 筆者は、以下の二つの理由で、大東亜戦争の呼称を問題視する朝日新聞こそ、占領軍に押し付けられた歴史観に立っていると糾弾したい。 政府の正式名称は...
リンクしている欧州、中東、アジアの紛争 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
ウクライナ・ロシア戦争は膠着し、中東ではイスラエルによるイスラム原理主義組織ハマスへの攻撃が止まらず、中国は台湾が実効支配する金門島海域に海警船を常駐させ、フィリピン船には嫌がらせを行っている。日本の報道では、こうした世界各地の紛争が個別に伝えられているが、3者はリンクしていると捉えることが妥当であろう。 過去にも連動の事例 2014年にロシアがウクライナのクリミア半島を併合した際、中...
基地跡地利用を視察する能天気な知事 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
2月2日から3日間、玉城デニー沖縄県知事はフィリピンの米軍基地が返還された後の跡地利用を視察した。在比米軍基地が返還されたのは冷戦終結直後の1991年であり、台湾有事が予測される現在と国際情勢は全く異なる。 台湾有事の際の住民保護に責任を有する県知事としては、基地跡地利用の視察よりも、沖縄県民保護の実動訓練を優先すべきではないのか。 米軍を撤退させて後悔した比軍 1991年にフィ...
トランプ政権復活は双務同盟への機会 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今年の米大統領選挙の共和党候補決定へ向けた1月15日のアイオワ州党員集会で、ドナルド・トランプ前大統領が圧勝し、次期大統領に選出される可能性がますます否定できなくなってきた。 トランプ氏といえば、現職の大統領だった2019年に「米国は日本が攻撃されれば戦うが、米国が攻撃されても日本はソニーのテレビで見ていられる」と発言したことで有名である。この発言は片務性の同盟に甘んじている日本に対し「健全...
【第1106回】台湾総統選から日本が学ぶ教訓
国基研評議員兼企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 1月13日に実施された台湾総統選の選挙戦で、中国は結果が自国に有利になるよう台湾に様々な手段で影響力の行使を試みた。その教訓は日本への教訓でもある。それを二つ挙げるとすれば、一つは「アメとムチに対する強靭性」を培うことであり、もう一つは「偽情報による認知戦への対策」を講じることである。 ●中国のアメとムチ 「...
日本は「安保ただ乗り者」になるな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
新年早々、能登半島地震と、救済に向かう海上保安庁の航空機と日航機の衝突事故が起き、メディアは関連報道ばかりである。一方で、昨年12月23日にはインド洋で日本企業所有のタンカーが攻撃された。1月3日、米政府は日英など12カ国と共同声明を出し、各国商船への攻撃を続けるイエメンの親イラン武装勢力フーシ派に警告を発したが、声明で攻撃をやめる相手ではない。 12月23日のタンカー攻撃の後、インド海軍は...
商船護衛不参加なら湾岸戦争の二の舞いに 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
イスラエルを訪れたオースチン米国防長官は12月18日、イエメンの親イラン民兵組織「フーシ派」による船舶攻撃が続いている紅海周辺で各国の商船を護衛する多国籍部隊を発足させ、護衛活動を「繁栄の守護者作戦」と命名した。米軍主導の海洋安全保障の枠組み「多国籍海洋部隊(Combined Maritime Forces=CMF)」の下で、紅海とアデン湾を活動海域とする「多国籍任務部隊(Combined Tas...
【第1097回】日台抑止力強化へ政治意思を示せ
国基研企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 ロシアとウクライナの戦争が膠着状態に陥り、最大の軍事援助国である米国の議会が与野党対立によりウクライナ向け追加援助で合意できない状況にある。このままでは、ロシアがウクライナに対し「侵略し得」の状態を作り出すことになりかねない。 この状態を見ている中国の習近平政権は、台湾侵攻も成功するチャンスがあると判断して、侵略に踏み切る可...
自衛隊ポジティブリスト法体系の弊害 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
11月19日、イエメンの親イラン民兵組織「フーシ派」は紅海で日本郵船が運行する自動車運搬船を拿捕した。また25日には、アラビア海でマルタ船籍の貨物船がイラン製無人機による自爆攻撃を受けたとの報道もあった。イスラエル・ハマス戦争が継続する限り、こうした事案が将来とも生起する可能性がある。アデン湾に海賊対処のために海上自衛隊は護衛艦や哨戒機を派遣しているが、2011年をピークとして海賊件数が減少してい...
対中情報戦と主権防衛で後れを取る日本 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
11月18日にオーストラリアのマールズ副首相兼国防相は、日本の排他的経済水域(EEZ)内で潜水作業をしていた豪海軍フリゲート艦に中国駆逐艦が14日にアクティブソナー(音波探知機)を作動させ、潜水員の耳を負傷させる危険な行為をしたと公表した。 これより先、フィリピン政府は9月26日、フィリピン漁船の漁を妨害するため中国の海警や海上民兵によって設置された障害物を沿岸警備隊が撤去したとして、その画...
海底インフラの防護担当に防衛省も 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
11月11日の産経新聞は、先月バルト海で起きた天然ガスパイプラインと通信ケーブルの破壊に「中国船が関与か」「意図的の疑いも」と報じた。本年2月に台湾と離島の馬祖列島間を結ぶ通信用の海底ケーブルが切断されたことは10月10日の「ろんだん」で「誰が海底ケーブルを防護するのか」と題して記述したが、我が国の徳之島でも、今年1月に海底ケーブルが断線したことによりインターネット接続、電子決済ができなくなるとい...
台湾軍と自衛隊の直接交流を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
岸田文雄首相は11月3日、フィリピンのマルコス大統領との首脳会談に臨み、4日にはフィリピン議会で演説して「自由と法の支配を守り抜く」との決意を示した。5日にはマレーシアでアンワル首相と首脳会談を行い、自衛隊とマレーシア軍、海上保安機関間の共同訓練など海洋分野の協力強化で一致したと報じられている。日本から台湾、フィリピン、マレーシアに連なる第一列島線の防御を強化するための外交と評価される。また10日...
【第1083回】核についての議論を活性化させよう
国基研企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 10月19日に米国防総省が中国軍事力に関する年次報告書を公表した。メディアは「2023年5月の時点で中国は500発以上の核弾頭を保有し、2030年までに1000発を超える」と、予測を遥かに上回るペースで核戦力の強化が進んでいることに着目したが、仔細に読んでみると、注目すべき記述はそれにとどまらない。 ●中国近海から米本土...
ハマスの奇襲はイスラエル情報機関の失敗か 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
イスラム武装組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃したことに関して、イスラエル情報機関の失敗とする論調が多い。真相は未だ判明していないが、過去に「インテリジェンスの失敗」(Intelligence Failure)」と評されたことが実際には「政策の失敗」(Policy Failure)であったことが多かった事実を指摘したい。 「失敗」とされる事例の実態 今世紀初頭に起きた「インテリジェンスの...
イスラエルを見て我が国を正せ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
イスラム武装組織ハマスの攻撃に対するイスラエルの対応を海外メディアで見るにつけ、我が国に欠落している重要な幾つかの点を感じる。 それは戦っているイスラエル兵士の為の献血に何時間も待って祖国のために貢献しようとする一般市民の姿であり、海外に長年住み続けているユダヤ人が家族を現地に残して予備役の招集に積極的に応ずる姿である。 日本では「戦争になったら逃げろ」と説く人物が保守系テレビ番組のレ...
誰が海底ケーブルを防護するのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
日本は海外とのインターネット通信の99%を海底ケーブルに頼っているため、ケーブルを切断されれば、通信上の鎖国状態となる。それほど重要なインフラであるにもかかわらず、その防護を政府機関のどこが担当しているのか明確になっていない。 平成11年に定められた総務省設置法の3条には任務として「情報の電磁的方式による適正かつ円滑な流通の確保及び増進」が明記されているので、総務省の所掌といえる。 本...
NHKに改めて望む公平・公正性の確立 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
9月19日、東京・新宿にある産業遺産情報センターを櫻井よしこ理事長はじめ国基研の有志約10名が訪れ、加藤康子センター長(国基研企画委員)の案内で見学した。同センターは一言で言えば、明治の日本人が開国以来の短期間で産業立国を築いてきた足跡を全国23カ所の「産業遺産」でたどる展示である。その遺産の一つとして長崎県の端島炭坑(俗称・軍艦島)が展示されている。 軍艦島での朝鮮人虐待を捏造 昭和...
国交相は常に公明党で良いのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
9月13日に第2次岸田再改造内閣が発足した中で、国土交通相がまた公明党から出ていることに疑問を感じる。民主党政権が終了した2012年から約10年、連続して国交相は公明党である。公明党の若手の中には、防衛大学校准教授であった人物などもおり、その主張に違和感を覚えないこともあるが、党全体としてはいわゆる「平和の党」として自民党の安全保障政策の足を引っ張る主張が目立つ。そのうちの特に2点を指摘したい。 ...
中東欧の対中脅威認識が変化 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
8月20日から1週間、チェコの首都プラハで米国防総合大学(NDU)が主催した卒業生の安全保障セミナーに参加した。当初ルーマニアの首都ブカレストで行われる予定であったが、ウクライナとの国境付近にロシアのミサイルが飛来するに及び、急遽プラハに変更された。約100名の卒業生が参加した。 8月20日はソ連軍による1968年のチェコスロバキア(当時)侵攻の55周年に当たり、開催に協力したチェコ国防省・...
核抑止論は破綻せずウクライナで立証された 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
6日の「原爆の日」、広島市の松井一実市長は平和記念式典で「核抑止論は破綻している」と訴えたが、ウクライナ戦争で核抑止論は逆に立証されていると言える。 米の支援小出しは露の核への恐れ 米国のジョー・バイデン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻が迫っていた2021年12月の段階で、本来、曖昧にしておくべきであった米軍派遣を「検討していない」と述べた。これがロシアのウラジミール・プーチン大統領を...
NATOやインドと進む軍事協力 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
7月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の反対によってNATOの東京連絡事務所設置が「将来検討」となってしまった。 しかし7月末には、航空自衛隊の宮崎県新田原基地でフランス航空宇宙軍の主力戦闘機ラファール等と空自が共同訓練を行い、同軍参謀長ミル大将も訪日した。また6月には、沖縄東方海域で日仏米の海空軍が共同訓練を行い、日本からヘリコプター搭載母艦...

