公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

太田文雄の記事一覧

 冷戦の再来と言われる。米ソの軍事的対立状況を回顧することにより、米中軍事対立の今後を予測することは意義あることではないか。 当時のソ連は全面戦争時、米国に対する第二核報復能力を維持する為、オホーツク海を聖域化して、ここに戦略核ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)を潜伏させて米本土への報復核攻撃能力を維持することに務めた。 今日、南西諸島列島線は日本の領土であり、かつ東シナ海は水深が浅...

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 10日に韓国陸軍の白善燁元参謀総長が亡くなった。白将軍は、朝鮮戦争勃発時、未だ米軍が本腰を挙げる前に第一師団長として釜山を死守、自ら突撃を敢行し米軍の本格的参戦を助長させた。彼の行動がなければ現在の韓国はなかったことから救国の英雄と言える。この「天は自ら助くる者を助く」の教訓は、我が国の防衛にも当てはまる。 ハリー・ハリス駐韓米国大使やロバート・エイブラムス在韓米軍司令官が埋葬式にまで参列...

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 令和2年版の防衛白書が7月14日、公表された。今回の白書では中国に対する厳しい表現が目立っているが、それでも冷戦時代に旧ソ連に対して使われていた(潜在的)「脅威」という言葉は使われていない。尖閣諸島という日本の領土を侵略しようとしている国が脅威でないとでも言うのだろうか。 気になる点がもうひとつ。米国の日本に対する防衛努力を求める声が殆ど無視されていることである。 日本の防衛努力は十...

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 中国の人民解放軍海軍は6日までに、南・東シナ海と黄海の3海域で同時に軍事演習を行った。これに対抗するかのように1日から5日までの間、米海軍の空母ニミッツとロナルド・レーガンの2隻が南シナ海で演習を行い、米海軍の健在ぶりを示した。米空母にとって怖いのは中国大陸と駆逐艦に配備されている対艦ミサイルであり、仮に人民解放軍海軍保有の空母2隻と戦闘状態に陥入っても米海軍の完勝であろう。理由は艦載戦闘機の作...

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国基研企画委員兼研究員 太田文雄    6月26日、川勝平太静岡県知事は金子慎JR東海社長と会談、静岡工区内の水資源への影響を理由にリニア中央新幹線の工事を認めなかった。このため、当初予定されていた2027年の開通が困難となった。  中国はリニア新幹線に携わった約30名の日本人技術者を引き抜いて、自国でリニア新幹線を開発している。昨年11月14日の中国共産党系英字紙チャイナ・デ...

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 昭和31年、当時の鳩山一郎総理と船田中防衛庁長官は国会で「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」として「基地をたたくことは法理的には自衛の範囲」という見解を出している。即ち憲法上、敵基地攻撃能力を保有することに何ら問題がないことは64年も前に決着済みなのだ。 兵理上も、防御だけ、あるいは攻撃だけの手段で国防は全うできない。攻撃と防御の両手段併せ持つことが必要である。特に、昨今の...

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 日米安保条約は6月23日で締結から60年を迎えた。10年前の2010年6月17日、日米通商150周年、日米安保50周年記念セミナーがワシントンのウィラード・ホテルで行われ、筆者も「グローバルな公共財へのアクセス安保を保持しよう」(Let’s maintain secure access to the Global Commons)と題する講演を行った。 それにしても、この10年で世界情勢は...

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 中国海軍と思われる潜水艦が6月20日、潜没のまま鹿児島県口永良部島西のトカラ海峡の我が国接続水域を太平洋から東シナ海に向けて通過した。平成26年6月15日にも中国海軍のドンディア級情報収集艦がトカラ海峡を南東進したが、この時から中国はトカラ海峡を国際海峡と主張している。国際海峡であれば通過通行が認められるので潜水艦は浮上しなくても通峡できるからである。  これに対して我が国は、トカラ海峡は国際...

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国基研企画委員兼研究委員 太田文雄    6月15日、河野太郎防衛相は、山口県と秋田県に配備計画を進めていた地上発射型迎撃システム「イージス・アショア」について、「迎撃ミサイルの発射後に切り離されるブースター(第1段ロケット)を確実に陸上自衛隊演習場に落下させることができない」という理由で、計画を停止すると表明した。  敵の核弾頭搭載ミサイルが日本本土を襲えば、数十万、数百万の...

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 15日、河野太郎防衛大臣は山口県と秋田県で進めていた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画を停止すると表明した。理由はミサイル発射後のブースターを確実に演習場内に落下させることができないからだと言う。ブースターとは、発射する迎撃ミサイルを加速するための第一弾ロケットだ。長さにして数メートルで燃焼後の空タンクは、海上か演習場内に落下しなくても人命に影響を及ぼすことは万に一つの確率であろう...

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 5月28日の衆議院憲法審査会では、野党側の反対により、憲法改正に不可欠な国民投票法改正案の今国会成立が困難な見通しとなった。こうした状況では、憲法上裏付けのない自衛隊員の士気は上がらない。自分の約35年間の自衛官生活を振り返って述べてみたい。  ●最低だった1973年の違憲判決  昭和48(1973)年9月、いわゆる長沼ナイキ基地訴訟で札幌地方裁判所が「自衛隊は憲法第9条が禁ずる陸海空軍...

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 22日開幕した中国の全国人民代表会議(全人代)で中国共産党幹部は、これまで中台関係で使用してきた「和平統一」から「促進統一」に改めた。平和裏に台湾を統一する考えを捨て、武力行使をも辞さない意志表明の現れと見られる。26日に行われた習近平国家主席の全人代における軍幹部への演説でも、新型コロナウイルスへの対策を続けながらも軍の強化を着実に進めるよう指示した。  ●コロナ隠れ蓑に軍事的な攻勢 ...

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 中国の武漢ウイルス発生源について国際的な調査を要求するオーストラリアに対し、中国は牛肉の輸入制限を行った。中国外務省の趙立堅報道官は12日の記者会見で、調査要求について「間違った政治的解釈」と切り捨て、輸入制限は「中国消費者の健康と安全を守るため」だと主張した。  中国は昨年6月に孟晩舟ファーウェイ副社長を拘束したカナダに対しても食肉の輸入制限を実施。2010年には尖閣諸島周辺海域で海上保安庁...

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 緊急事態宣言が5月31日まで延長されたが、新型コロナウイルスの新規感染者の数は減少に転じて、一部の県では営業や学校を再開する所も出ている。既に「勝負あった」の感がする。  欧米に比し爆発的感染が防げたのは何故か? この点について外国のメディアは3月の時点から着目してきた。例えば米フォックスニュースは3月24日に「何故、日本はコロナウイルスの大量爆発が避けられているのか」とする分析報道を行ってい...

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 新型コロナウイルスの感染拡大による学校休校が長期化していることに伴い、「9月入学」の導入が議論されている。  安倍晋三首相は4月30日の参院予算委員会で「今後、学校再開に向けた状況を見極めつつ、文科省を中心に、9月入学も含めてさまざまな選択肢を検討していく必要がある」と述べた。筆者も9月入学案には賛成である。  その理由は、防衛大学校の国際教育研究官として、諸外国の士官学校と1学期間交流プロ...

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 政府の緊急事態宣言から2週間を経過したが、新型コロナウイルスの患者数は一向に減少する気配がない。5月6日までに収束する兆しは見えず、長期戦を覚悟しなければならない。  一方、北朝鮮の生物化学兵器からの脅威に備えてきた韓国や、中国の侵攻を何時受けるか判らない台湾など、常に敵と向き合って対策を練ってきた国々は、これまでウイルス感染の拡大防止でも見事な対応を示してきた。  翻って我が国は、高性能マ...

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 15日のNHK‐BS1で「パンデミックは世界秩序を変えるのか」という特集があった。番組内容をNHKのホームページから紹介すると以下のようなものである。  「新型コロナウイルスの感染者と死者の数が世界で最も多いアメリカ。感染は力の象徴でもある空母などにも広がり、アメリカ軍の活動は大幅な縮小を余儀なくされている。この機に乗じて、中国海軍は大規模演習を行うなど活動を活発化。コロナ終息後を見据えて影響...

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 西太平洋に展開する米原子力空母セオドア・ルーズベルトの乗員約4800名のうち300名が新型コロナウイルスに感染した。恐らく3月上旬にベトナムに寄港した際に乗員が上陸して感染したものと思われる。この実情を艦長が海軍上層部に訴えると共に、その写しをメディアにも送付したことから解任され、その解任した海軍長官代行も辞任した。  10日付の産経新聞によれば、米空母11隻中、4隻で感染者が出ており、米海軍...

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 新型コロナウイルスの感染蔓延で緊急事態宣言が発出された。諸外国の指導者は、今回の危機を第二次世界大戦以降最大の国家的危機と受け止め「戦時」という表現すら使っている。こうした国家非常時に、国民をリードしていく内閣総理大臣は戦時の指揮官とも言うべき存在であろう。  第3代統合幕僚長の折木良一元陸将は「自衛隊では休むことを戦力回復と呼ぶ」と述べている。戦時の指揮官には休んでもらわないと、適時適切な判...

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 昨年、米海軍協会出版部から『中共のスパイ活動―インテリジェンス入門―(Chinese Communist Espionage-An Intelligence Primer)』という本が出版された。著者は中国に関する米議会行政委員会副局長であり、CIA(米中央情報局)のカウンター・インテリジェンス分析官でもあったピーター・マティス氏と、陸軍で20年以上アジア勤務をしていたマシュー・ブラジル博士の2...

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