公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2024.01.22 (月) 印刷する

トランプ政権復活は双務同盟への機会 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

今年の米大統領選挙の共和党候補決定へ向けた1月15日のアイオワ州党員集会で、ドナルド・トランプ前大統領が圧勝し、次期大統領に選出される可能性がますます否定できなくなってきた。

トランプ氏といえば、現職の大統領だった2019年に「米国は日本が攻撃されれば戦うが、米国が攻撃されても日本はソニーのテレビで見ていられる」と発言したことで有名である。この発言は片務性の同盟に甘んじている日本に対し「健全な双務性の同盟を」と警告を発したという意味があり、トランプ政権再登場の可能性を日米同盟の危機と捉えるよりは寧ろ機会と捉えるべきであろう。

米英軍の攻撃を支援しない日本

識者の中には「日本は基地を提供しているのだから、日米同盟は片務性ではない」と主張する人が多い。東アジアに関してはそうかもしれない。しかし、中東では米中央軍に対して、日本は基地を提供していない。11日に米英軍が行ったイエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する攻撃は、紅海で日本郵船が運航する商船を拿捕し、またインド洋で日本企業所有のタンカーを攻撃したフーシ派の軍事基地を攻撃してくれたのであるから、片務的である。にもかかわらず、我が国は米英軍を支援せず、ドイツや韓国ですら参加した「航行の自由を守る」との10カ国共同声明にも加わらなかった。

仮にトランプ政権が実現したら、このような対応は完全にアウトだ。

厳しすぎる集団的自衛権行使の要件

米英の軍事行動を支援せず、共同声明にも加わらなかった最大の理由は、安倍晋三政権下で10年前に成立した平和安保法制が、野党などの反対で集団的自衛権発動の要件を厳しく限定的にせざるを得なかったためである。

すなわち、今回のような米英軍の攻撃を支援するには、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)と認定されなければならず、なおかつ自衛隊の活動は、戦闘行為が行われている現場以外での後方支援、捜索救助、船舶検査に限られる。

さらに米英軍と共に軍事攻撃に参加するためには、「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)と認定されなければならず、重要影響事態以上にハードルが高い。

安保分野で半人前の日本

また10カ国が発した共同声明の中に米英の「集団的自衛権」発動を支援する文言が入っていたため、日本は加わることができなかったと思われる。仮に集団的自衛権を行使できない日本がこの言葉を削除してくれと申し入れても、10カ国は「日本だけのために削除できない」と反対するであろう。要するに、未だに日本は安全保障上一人前の国家になってないのだ。

にもかかわらず、平和安保法制を白紙に戻せと主張する政党が我が国に複数存在するのだから、何をか言わんや、である。(了)