太田文雄の記事一覧
中国の対日工作は横断的に把握を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
8月24日に米議会の「米中経済・安全保障見直し委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)」は、『中国の海外における統一戦線工作(China’s Overseas Unified Front Work)』という約40ページの報告書を公表した。中国共産党隷下の中央統一戦線工作部が海外で親中派を育成のため行っている工作実態を明らかにし...
【第539回】日米同盟は盤石なのか
国基研企画委員 太田文雄 小野寺五典防衛相は8月28日の閣議で、平成30年版防衛白書を報告した。これまでの白書に比べ、分かりやすい見出しで最初に要約を持ってきているところは評価したい。一部の主要メディアは白書について、北朝鮮の脅威に変化なしとして地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入を正当化する道具であるかのような扱い方をしているが、580ページに及ぶ白...
マケイン上院議員の死を悼む 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米共和党のジョン・マケイン上院議員が8月25日亡くなった。81歳だった。議員と最後に出会ったのは数年前の太平洋艦隊司令官交代行事であった。父、祖父とも海軍大将であったことから海軍や太平洋艦隊に対する思い入れは強く、自身も海軍航空士官としてベトナム戦争に従軍した。 1967年にハノイ上空で撃墜されて捕虜となったが、厳しい拷問にも耐え、5年半の抑留生活から帰還した。1984年には政界に転じ、20...
防衛産業の機密保全向上が急務 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
7月に米ハドソン研究所が「日本との防衛産業セキュリティー・ギャップを縮小へ(Closing the Defense Industrial Security Gap with Japan)」というタイトルの報告書を作成した。概要は「今後、米・英・豪・加・ニュージーランドという5カ国(Five Eyes)で共有されている軍事秘密情報を日本も共有して6カ国(Six Eyes)になるためには、防衛産業の...
【第537回・特別版】中国海兵隊が狙う台湾・尖閣侵攻
国基研企画委員 太田文雄 米国防総省は16日、中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書を公表した。毎年春に公表されているが、今年は何故かこの時期までずれ込んだ。人民解放軍が一貫して能力を急速に向上させているという内容であるが、とりわけ2020年までに海兵隊(海軍陸戦隊)が従来の3倍に拡大するとの見積もりが出たことが注目される。現在の規模は2個旅団、約1万人であるが、...
「経済」という中国の新たな戦争手段 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
「地経学時代からみる21世紀の世界と日本」と題したシンポジウムが7月31日、都内で日本国際フォーラム共催の下、開かれた。基調講演を行ったのは米外交問題評議会上級研究員のロバート・ブラックウィル氏で駐インド大使の経験もある。 氏の近著に、『他の手段による戦争(War by Other Means)』があるが、中国による経済力を使ったグローバルな版図拡大の実態を描いたものだ。 地経学(Geo...
海の底で専守防衛は機能せず 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
「宇宙・サイバー空間の戦いが同時並行する現代戦において、日本が国是とする専守防衛は機能し得ない」。平成29年版の防衛白書を取り上げた2017年8月14日付の「直言」欄でそう書いた。宇宙空間、サイバー空間とも防御には限界があり、「やられたらやり返す」攻撃能力を保持することで、敵の攻撃を抑止する態勢を整えておかなければならないという意味である。今回は、海底の安全保障に関しても全く同様であることを述べ...
「サムライ」の名に値する戦が見たかった 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
サッカー日本代表「SAMURAI BLUE(サムライ・ブルー)」がワールドカップ(W杯)のロシアから帰国して出迎えの大歓迎を受けた。決勝リーグではベスト8進出は果たせなかったものの強豪ベルギー相手に見事な試合ぶりであった。だが、予選リーグでのポーランド戦における時間稼ぎのパス回しはいただけなかった。勝ち上がるための作戦だったとはいえ、観客席からブーイングが巻き起こったのは当然だった。日本サッカー...
サイバー戦士の大量投入で脅威増す中国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
任務が増大・拡大した反面、国防予算の強制削減が続いたことにより、岐路に立つ米軍の現状を別項で論じたが、本稿では、緒戦でものを言うサイバー戦に投入している人的資源について米中の差を比較してみたい 2016年の統合軍四半期刊行物(Joint Force Quarterly)に掲載された、米サイバー軍司令官ロジャーズ海軍大将(当時)へのインタビュー記事によれば、米サイバー任務軍の規模は約6200名...
米軍は今、広く薄い展開に 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
このところ在日米軍に絡む事故が続発している。航空機事故にせよ艦船事故にせよ、米軍基地の存在に反対する人達にとってみれば、不満の温床となっているであろうが、自衛隊(軍)経験者から見れば、それだけ与えられた任務が過酷で、人的にも機材面でも無理を強いられているのであろうと慮ってしまう。 その主たる原因は、北朝鮮情勢の緊迫化等に伴って任務が増大・拡大した反面、2013年から約5年にわたって国防予算の...
【第523回】「米国は矛、日本は盾」から脱却せよ
国基研企画委員 太田文雄 トランプ米大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習を「金がかかる」「挑発的」との理由で中止すると表明した。将来的には、在韓米軍の撤退を望んでいるとさえ言った。発表された米朝共同宣言は北朝鮮ではなく朝鮮半島の非核化をうたっており、韓国には核がないことから、米国が韓国に提供している拡大抑止(核抑止)が禁止対象になる可能性もある。 今回、...
政府はトランプ発言の真意を質せ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米朝首脳会談は北に多くを与えた米側の大譲歩と言える。共同声明にCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)のV(検証可能)とI(不可逆的)の言葉がなかった上に、トランプ大統領は記者会見で米韓合同軍事演習の中止まで言及してしまった。 ●CVIDはどうなった 北朝鮮は先月、豊渓里の核実験場を西側の報道陣を招いて爆破させたが、当初予定されていた専門家を招待することは拒んだ。これでは「検証...
米台関係の進展に日本はもっと学べ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
史上初の米朝首脳会談によって東アジアの冷戦が集結しようとする間に、もう一つの冷戦の産物である台湾海峡がきな臭さを増している。日本のメディアはほとんど報じていないが米台関係は相当改善し、それに対して中国が苛立ちを強めている。 台湾が中国本土の手に落ちてしまえば、中国の太平洋進出は自由になり、尖閣はおろか沖縄が危険に晒されるという事実を日本はもっと認識し、戦略的見地から台湾との関係改善に取り組む...
【第517回】独自の国際標準を創造する中国
国基研企画委員 太田文雄 週末にシンガポールで、各国の国防相や軍高官が参加するアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)が開催された。一昨年まで副総参謀長クラスを代表として送っていた中国は、昨年から軍シンクタンク副院長クラスの派遣にとどまっている。筆者も数年前に招待されて参加したことがあったが、本会議で中国は各国から袋叩きに会うので、政策決定に影響力のある代表を出さなく...
NHK特集の悪質な印象操作 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
5月19日に放送されたNHKスペシャル「日本の諜報 スクープ 最高機密ファイル」を見た。端的に言えば「防衛省情報本部の電波部が個人のインターネット内交信までを監視している。日本の情報によって他国が武力行使を行えば、武力行使を禁じた日本国憲法に違反する可能性がある」とする内容である。しかし、この番組は専門的な知識に乏しい素人が作成したとしか思えない、悪意に満ちた印象操作番組であることを指摘したい。...
中国のリムパック招待撤回は当然 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国防総省は5月23日、中国海軍の環太平洋合同演習(リムパック)への招待取り止めを発表した。 米側は、南シナ海の中国人工島を軍事化したことを理由としているが、5月初めにはアフリカのジブチ上空で中国軍基地から米軍機がレーザー照射を受けたこともある。どこまで米国は中国にナイーブなのかと思っていただけに、今回の決定は寧ろ遅きに失した感すらある。 ●理解に苦しむ王毅外相の反論 これに対し...
会談キャンセルの脅しに屈するな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
16日、北が南北閣僚級会談を突然キャンセルし、6月の米朝首脳会談の開催をも警告するようになったのは何故か。 日本のメディアが、「春より規模が小さい米韓空軍演習に反発しているのは何故か」とか、「北朝鮮の常套手段である首脳会談前の揺さぶり」とかコメントしているが、筆者は、これまでも本欄で既に書いているように、戦術核搭載の米爆撃機B-52を北は相当嫌がっていると推測している。 ●的外れな日...
【第514回・特別版】リビア方式核廃絶に必須な情報機関
国基研企画委員 太田文雄 米政府は北朝鮮の核廃絶に「リビア方式」を適用したい考えのようだ。リビア方式とは、国際原子力機関(IAEA)のような国際機関の査察では時間がかかりすぎるので、どこに核・ミサイル施設があるのかを既に掌握している外国の情報機関に核関連機材・物資を速やかに国外へ撤去させる方式である。リビアの場合、米国の中央情報局(CIA)と英国の秘密情報部(MI6)、...
北朝鮮以上に警戒必要な中国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
本年頭に『米中海戦はもう始まっている』(マイケル・ファベイ著、赤根洋子訳、文芸春秋)という本が出版された。著者は軍事ジャーナリストで、副題は「21世紀の太平洋戦争」。帯には「アメリカの親中派はこうして敗れた」とある。 内容は、数年前に出版されたマイケル・ピルズベリー著の『100年マラソン』と同様、これまで「米国は関与することにより中国も変わって行くであろう」との政策で臨んできたが、一向に中国...
シリア攻撃が与えた北への衝撃 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
先週4月16日付の「ろんだん」で、米英仏によるシリア攻撃は「化学兵器を依然として製造・保有している北朝鮮や、中国に対する有効なシグナルでもある」と書いた。その後、攻撃の詳細が判明するに及んで、筆者が想定していた以上に北への強いメッセージになっていることが分かってきた。 ●劣悪な防空システム 当時、シリアの防空システムは、地中海に展開する艦艇から低空で侵入してくる巡航ミサイル・トマホー...
【第510回・特別版】米軍高官証言に見る日本への期待
国基研企画委員 太田文雄 日本の野党やメディアが財務事務次官のセクハラ問題や野党議員に対する自衛隊員の暴言問題で沸いていた先週、米議会の公聴会では国際軍事情勢に重要な影響を与える将官2人の証言があった。 ●「強い日本」望む次期太平洋軍司令官 一人は太平洋軍司令官に指名されたフィリップ・デービッドソン海軍大将で、筆者が米海軍兵学校交換教官に任じていた時の学生で...
武力行使は解決策にならないのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米英仏がシリアの化学兵器製造・貯蔵施設に対して100発以上の巡航ミサイルを打ち込んだ。これに対して化学兵器の使用に対しては何ら解決策にならないとか、トランプ大統領が女性スキャンダルを躱すためだとかいうメディアの論調がある。だが筆者はそうは思わない。 この攻撃は化学兵器を依然として製造・保有している北朝鮮や、中国に対する有効なシグナルでもある。抑止には、事後の再行動を踏みとどまらせる懲罰的抑止...
「日報問題」は論点がずれていないか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米シンクタンク「プロジェクト2049」が3月30日、「White Warship and Little Blue Men(白い軍艦と小さな青い人達)」というタイトルの出版物を刊行した。副題は「The Looming “Short Sharp War” in the East China Sea over Senkakus(起こりそうな東シナ海での尖閣を襲う短期・急激戦)」。著者は、かつて米太平洋...
米韓演習「対北配慮で縮小」はウソ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米韓合同の軍事演習が4月1日から約1カ月の予定で始まった。報道によれば、今回の演習は、4月末に南北首脳会談、5月には米朝首脳会談が控えていることから、北朝鮮を刺激しないよう演習期間を半分に短縮、規模の面でも空母や爆撃機が参加しないことにしたという。だがこれは、軍事を理解していないメディア側の誤った判断である。 ●もっぱら軍事的観点で判断 本来、冬季の米韓合同軍事演習は、田畑が凍結する...
米国も懸念する韓国の政情 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
3月19日から1週間、米国の海軍大学院(カリフォルニア州)、ミシガン大学、マイアミ大学、空軍大学(アラバマ州)で、「北東アジアの安全保障情勢:日本と同盟国への影響」と題して講演した。北朝鮮の挑発、中国の軍事的膨張、ロシア軍の極東における活動の活発化に対する対抗策として日米豪印の4カ国協力構想を説明したのであるが、全ての講演場所で出た質問は「(協力構想には)何故韓国が入らないのか?」であった。特に...
インドも警戒する中国の「一帯一路」 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
3月7日、国家基本問題研究所とインドのシンクタンクであるヴィヴェカナンダ国際財団との定期意見交換会が東京・永田町の国基研で行われた。日本側は日米印豪の4カ国協力に関して発表したが、インド側は中国の「一帯一路」に関する発表を行い、彼らがこの構想に相当な警戒感を抱いていることがあらためて明らかになった。 筆者は5日の「今週の直言」欄で、中国の「一帯一路」は、実は「六帯三路」であることを指摘した。...
【第500回・特別版】実は「六帯三路」の中国経済圏構想
国基研企画委員 太田文雄 1日のBSフジの中国軍近代化に関する番組に、陸海空3自衛隊の元将官1人ずつが登場した。陸上自衛隊の元将官がBSフジの用意した中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の地図を補完して、陸路の「一帯」には①モンゴル~ロシア②中央アジア~西アジア③新ユーラシア・ランドブリッジ(横断鉄道)④インドシナ半島回廊⑤パキスタンのグアダル港に至る経済回廊...
中国の「微笑外交」にも騙されるな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
平昌オリンピックを巡る北朝鮮の韓国取り込み戦術に対して、河野太郎外務大臣は「北朝鮮の微笑外交に目を奪われるな」と発言している。しかし、それは日本の対中国外交でも心がけるべきことだ。 そんなことを考えたのは、日本の安全保障を司る政府高官から最近、「中国の王毅外相が、ニコニコ笑って対応して来たよ」という話を聞いたからだ。 モンゴル出身で、一昨年、国基研日本研究賞を受賞した静岡大学教授の楊海英...
三浦瑠麗氏のNPR認識は疑問だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国防総省が先ごろ公表した「核態勢の見直し(NPR)」について、国際政治学者の三浦瑠麗氏が、2月14日付の産経新聞「正論」で、「日本政府が今般の見直しを拡大抑止の強化だとして歓迎したのはおかしい」と書いている。 その理由として氏は、NPRの背景には「海外へのコミットメントに疲れた米国政治の本音が色濃く反映されている」と指摘し、「圧倒的な通常兵力による日本防衛への関与を下げたい米国政界の本音が...
米国内で批判広がる中国の情報戦 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
13日の「ろんだん」で「中国の情報戦に鈍感すぎる日本」を書いたが、中国政府肝煎りの文化機関「孔子学院」や中国製の通信機器によるスパイ活動が疑われていることについて、米国内で警戒と批判が広がっている。 日本時間の14日に行われた米上院情報委員会において、マルコ・ルビオ上院議員が「孔子学院や、華為(Huawei=ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)といった中国メーカーの通信機器が米国内でスパイ活動を...
中国の情報戦に鈍感すぎる日本 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
前回の米大統領選挙にも出馬した共和党のマルコ・ルビオ上院議員は5日、州内の4大学1高校に対し、中国政府肝煎りの文化機関「孔子学院」を閉鎖するように呼びかける書簡を送った。 また7日には、ルビオ議員とともに共和党のトム・コットン上院議員が連名で、人民解放軍系のIT企業である華為(Huawei=ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の通信機器を米政府が購入・リースすることを禁止する法案を提出した。本...
【第496回】トランプ政権の安保戦略は堅実
国基研企画委員 太田文雄 トランプ米政権が昨年12月に公表した「国家安全保障戦略」(NSS)、今年1月の「国家防衛戦略」(NDS)、そして今月の「核態勢見直し」(NPR)という一連の戦略文書を総括してみると、トランプ大統領自身が署名したNSSの巻頭言を除けば、中長期的視野に立った極めて堅実な戦略体系になっていると言える。 ●NSS巻頭言の問題点 トランプ大...
米国のSLCM能力即時回復を歓迎する 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国防総省は2日、今後5~10年の新たな核政策の指針となる「核戦略体制の見直し」(Nuclear Posture Review-NPR-)を公表した。 2009年4月のプラハ演説で、「核なき世界を目指す」として、同年のノーベル平和賞を受賞したオバマ前米大統領は、2010年のNPRで「非核攻撃抑止における核兵器の役割を削減する」とし、「米国は海軍水上艦艇と汎用潜水艦からの核兵器を含め、太平洋地...
米国防戦略は「同盟国の負担」も指摘 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
マティス米国防長官は19日、ワシントンで演説し、トランプ政権で初の「国家防衛戦略」を公表した。長官は「アメリカの国防の第一の関心事は今やテロではなく大国間の競争だ」と述べた。 演説は筆者の母校でもあるジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院で行われたが、これを聴いた友人は「鉄のカーテン崩壊以来、中国、ロシアに対する注意を振り向けてくれた」との感想メッセージを送ってくれた。 同日、国...
【第491回】中国軍の活発な行動を警戒せよ
国基研企画委員 太田文雄 中国人民解放軍海軍の潜水艦が11日に沖縄県尖閣諸島の大正島周辺の接続水域を潜行したまま航行した。フリゲート艦も随伴した。最近の中国は広域経済圏構想「一帯一路」に日本を取り込みたいためか微笑外交を重ねてきたが、一方で尖閣の領有を企図した軍事行動を活発化していることに我々は目をつむるべきではない。 今回の航行目的の一つは、日本の潜水艦探知能力を...
「いずも」へのF-35B搭載は正しい 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
海上自衛隊の空母保有は長年の願望であった。筆者が知る限り1980年代からその願望があったが、2つの制約要素があった。1つは憲法上の制約、もう1つは米国(米海軍)の反対であった。 後者に関して言えば、現在の「ひゅうが」型が構想された1990年代に、米海軍には「はるな」型ヘリコプター搭載艦の後継として、災害対策にも使用するため搭載ヘリ数を増加させると説明していた。 ●攻撃型空母には該当せ...
NSSの米国第一主義は視野狭すぎぬか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
トランプ米政権下の国家安全保障戦略(National Security Strategy-NSS-)が18日、公表された。大統領の巻頭言で先ず気付かされたのは経済最優先の姿勢である。優先順位は「経済」を第一に、「軍の再建」「国境防衛」「主権保護」が続き、これまでのNSSが優先的に掲げて来た「自由・民主主義」や「人権」といった価値観は5番目に列せられている。 巻頭言では、ならず者国家としての北...
自衛隊員の安全確保という野党の偽善 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
防衛省が離島防衛などに巡航ミサイルを導入する方針に対して、早速野党は「専守防衛に違反する」として反対を唱えている。しかし、長射程巡航ミサイルを保有せずに、占領された島嶼を奪回しようとしたり、イージス艦の防護に当たったりするのは自衛隊員に「特攻作戦」を強いることに等しい。その同じ野党は2年前の安全保障関連法案の国会議論では、自衛隊活動拡大に伴う自衛隊員の安全確保の観点から反対した。矛盾してはいない...
中台の軍幹部は通じている? 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
国家基本問題研究所と台湾安全保障協会の両シンクタンクによる第2回日台交流会議が12月7日、台北で行なわれ、筆者も参加した。 今回は、本年10月に米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」から出版された『The Chinese Invasion Threat(中国侵略の脅威)』について意見交換を行なった。 同書によれば、「2020年までに中国は台湾侵攻の準備を終える」とされ、産経新聞が本...
巡航ミサイル導入で先ず論ずべきこと 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
小野寺五典防衛相が8日の記者会見で、長距離巡航ミサイル導入の関連予算を平成30年度予算案に計上する方針を正式に表明した。筆者は本欄や『今週の直言』で何度も導入の必要性を訴えてきたので、「ようやく」という感想である。ただ、現在の議論に欠落していると思われる点があるのでそれを指摘したい。 ●目標捜索、インテリジェンスは? 通常、こうした作戦の流れは、先ず捜索して目標を特定、攻撃し、その後...