公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2018.10.17 (水) 印刷する

日本は旗幟を鮮明にせよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 米中の「新冷戦」が厳しさを増す中、日本は旗幟を鮮明にすべきである。米国は同盟国であるのに対して、中国は我が国の領土を狙おうとし、かつ価値観を異にする国である。にもかかわらず、「日米同盟、日中協商」とか言って米中両国に良い顔をしようとする人達もいる。安易な対中協力は、米国の不信感を招きかねないので止めるべきだ。

 ●八方美人外交では侮られる
 昨年の北朝鮮による弾道ミサイルの度重なる発射に伴って、日本も慌てて弾道ミサイル防衛(BMD)システムの配備を加速させたが、実際にはもっと早く取り組むべきであった。
 1998年、当時の防衛庁(現防衛省)は、以前から米国より共同研究を求められていたBMDの概算要求をしようとしたが、これに待ったをかけたのは外務省だった。この年に予定されていた中国の江沢民主席(当時)訪日が、共同研究へ参画することによってキャンセルされる事態を恐れたからであった。
 このため、共同研究参画の概算要求は1年先延ばしされたが、同年8月31日には北朝鮮が発射したテポドン1号が日本上空を越えて太平洋に落下し、日本は大慌てする羽目になった。当時の外務大臣が「概算要求は未だ間に合わないか」と防衛庁に電話してきたのは有名な話である。八方美人的外交は一見波風が立たず、耳あたりも良いが、安全保障努力の足を引っ張る結果となってしまう。

 ●中国の対日外交はご都合主義
 10月14-15日に都内で行われた「東京—北京フォーラム」(言論NPO主催)の政治・外交分科会で、川口順子元外務大臣は、安倍晋三首相が提唱する「自由で開かれたアジア・太平洋戦略」と中国の「一帯一路」構想をドッキングすべきだなどとナイーブな主張を展開し、最後の全体会議では元日銀副総裁の山口廣秀氏は日中が協力して自国第一主義の米国に対抗すべきだとまで発言した。
 安全保障分科会に出席した中国側メンバーには、かつて「アメリカが台湾に介入したら中国は核戦争をも辞さない」と発言した朱成虎・元人民解放軍少将ら対日強硬派の姿も目立ったが、最近は急に日中安保協力を主張し、南太平洋での共同演習や日中共同の海上交通路防護などを提案し始めている。日米離反策としか思えない。
 彼らは一方で、年内に出される日本の防衛計画大綱と憲法改正案に懸念を表明しつつも、日中安保対話の頻度を高め、また上海でもやろうと言う。こんなフォーラムは中国側のペースに巻き込まれるだけだ。