公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

太田文雄の記事一覧

国基研評議員兼企画委員 太田文雄    米国上空に飛来した中国の偵察バルーン(気球)を米空軍はF22戦闘機で撃墜した。同様な領空侵犯が日本でも起きた場合の法整備は遅れている。  自衛隊法84条の領空侵犯に対する措置には、侵犯機を「着陸させる」か領空外に「退去させる」の2選択肢しかなく、撃墜する権限は明示されていない。82条の3に弾道ミサイル等に対する破壊措置規定があるが、落下に...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    1月11日にワシントンで行われた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2+2)の共同発表には「日本の南西諸島を含む地域において、日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増加させることにコミットした 」とある。日本の閣僚がコミットした以上、米側はもう使えると判断したのだろう。直後の13日に米海兵隊が沖縄県の下地島空港(宮古島市...

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11日に行われた日米外交・防衛閣僚による安全保障協議委員会(通称2+2)の共同発表で、沖縄の米第12海兵連隊が2025年までに第12海兵沿岸連隊(Marine Littoral Regiment=MLR)に改編されることが明らかにされた。筆者は、先週の「ろんだん」で統合海洋軍(Integrated Maritime Force=IMF)構想について論述し、その中にMLRが含まれることに言及したが、...

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昨年末に閣議決定された安保3文書において、海上保安庁は海上法執行機関として位置付けられたので、軍としての機能を保持しないことを定めた海上保安庁法25条は改正の必要なしとする論調がメディアに散見される。しかし、海上保安庁と共に中国の海洋進出を阻止する米国の沿岸警備隊は、海上法執行機関であると同時に5軍(陸・海・空・海兵隊・沿岸警備隊)の一つであり、海上保安庁は軍としての機能を保持した方が日米同盟を強...

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12月16日に閣議決定された安全保障3文書は多くの安保関係者に高く評価され、筆者も同意するが、敢えて不満足なところを挙げると、その一つが国防教育の強化を謳っていない点である。 国家安全保障戦略の始めの方に「国家としての力の発揮は国民の決意から始まる」(5ページ)とあるのは、まさにその通りで、現在電力施設の多くをロシアの攻撃によって破壊され極寒の中にあってもなお多くのウクライナ国民が対露戦を戦...

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12月16日に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の、いわゆる安保3文書が閣議決定された。これに先立って政権与党である自民党と公明党が12日に3文書に合意したが、ペロシ米下院議長訪台後に中国が我が国の排他的経済水域に弾道ミサイルを着弾させたことに関する「国家防衛戦略」の記述で「わが国および地域住民に脅威と受け止められた」の自民党案に対し、公明党は「わが国および」を削除するように主...

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11月末に防衛研究所が公表した報告書『中国安全保障レポート2023―認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国』は、現状の分析と報告が中心で、中国の認知戦にどう対応すべきかの具体策が書かれていない。 認知戦とは、「敵の認知・思考・決定を形成もしくはコントロールすることを目指す作戦」(報告書42ページ)と定義される。卑近な例として、某テレビ番組のレギュラー・コメンテーターが言うような「戦争に...

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12月7日、政府が航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改称する方針を固めたと報じられた。これに関連して、海上自衛隊も海洋自衛隊と改称すべきではないかと思う。その理由は、海上自衛隊が海の上だけを守っているのではなく、潜水艦の運用や機雷掃海などにより海面の下も担当しているので、現在の名称では実態にそぐわないという理由が一つ。もう一つは近年、海底ケーブルや海底パイプラインといったインフラの重要性が高まっているの...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    11月29日、米国防総省が中国の軍事力に関する年次報告書を公表した。我が国における防衛論議との関係から、特に注目すべきだと思われる核戦力の増強および海軍・海警の一体化の2点を取り上げたい。  ●核戦力の増強  内外メディアが報じたように、報告書は中国の核弾頭配備数が現在の400発強から2035年までに1500発に増えると予想している...

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11月22日に「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の最終報告書が公表された。「総合的」とうたいながら、会議の構成メンバー10人に国防の現場を知る元自衛官が1人も入っていないという人選の不健全さから、満足できる結果が出てくるようには思えなかったが、まさにその通りであった。報告書の問題点を幾つか指摘したい。 核の「か」の字も出てこない ロシアがウクライナの戦場で核兵器を使用する...

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11月10日から19日までの予定で、今年最大の日米共同演習キーン・ソードが実施されている。陸海空自衛隊員約2万6000人と米軍約1万人が南西諸島を舞台に大演習を行う。 10日に海上幕僚監部の幹部から「沖縄の港湾に入港できなくなるような雰囲気になっている」との話を聞いた。沖縄の港湾施設を管理する部署に入港申請を出しても「岸壁が開いていない」とか「舫もやい(岸壁に係留するためのロープ)を取る作業...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    10月27日、米国防総省は「国家防衛戦略」(NDS)、「核態勢見直し」(NPR)、「ミサイル防衛見直し」(MDR)の3文書を公表した。このうちNPRは核搭載海洋発射巡航ミサイル(SLCM-N)の開発中止理由を初めて公に説明しているが、同盟国として大きな懸念が残り、納得できない。実際には議会がSLCM-N予算を復活させたが、弾頭部の予算は未だ...

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先月、鈴木俊一財務相は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防費と同様に、海上保安庁予算など安全保障に関連する経費を幅広く防衛費に算入することに含みを持たせる発言をした。今月13日のBSフジのプライムニュースでも、岸田文雄首相はそれを是認するような発言を行った。 NATO加盟国が沿岸警備隊のような軍隊以外の武力組織の予算を国防費に含める際、その武装組織は「軍事訓練を受け、軍事力として装備さ...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    10月12日、米国の「国家安全保障戦略」が公表された。この中で新たに整理されて出てきたのが「統合抑止」の概念である。その内容は「ドメイン(領域)横断的な統合」「地域横断的な統合」「紛争範囲横断的な統合」「米政府横断的な統合」「同盟・パートナー国との統合」の五つである。  しかし、「統合抑止」の名に隠れて純粋な軍事力の役割を軽視することがあ...

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ロシアのウクライナ侵略は、かつて自国の領土だった土地を、口実をつけて武力で奪うという現象だ。10月5日、プーチン・ロシア大統領は、ウクライナの4州をロシア領とし、ロシア語を公用語として、来年から住民に徴兵を課すとの大統領令に署名した。 2013年5月8日の中国共産党機関紙『人民日報』は「沖縄の主権は未解決」との記事を掲載した。また2016年8月12日にも、人民日報系の環球時報(電子版)は「沖...

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予定より2日遅れの9月1日から7日まで極東で行われている4年に1度のロシア軍事演習ボストーク(東方の意)は、当初5カ国の参加とされていたが、開始直前になって14カ国に膨れ上がった。他方で、参加兵力は4年前の約30万から5万に、航空機は約1000機から140機に縮小している。 参加国は初参加のインド以外に、中国、モンゴル、ラオス、アゼルバイジャン、ベラルーシ、タジクスタン、アルメニア、キルギス...

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8月30日から開始される4年に1度のロシアのボストーク(東方の意)軍事演習を前に、中国共産党系の環球時報英語版であるグローバル・タイムズは25日、「中国が陸海空3軍を初めて派遣」との記事を掲載した。一見、中露の軍事協力が深化しているかのように見えるが、実態は疑わしい。 ウクライナ戦線にロシア軍は東部戦区の陸空軍をも派遣しているために、東部戦区の陸空軍は極めて希薄な状態になっている。従って、演...

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8月13日の産経新聞に「戦争になった場合、あなたは国のために戦いますか」という問いへの回答に関する国際比較が掲載された。日本は「はい」という答えが群を抜いて低く、13.2%で世界最低であった。 筆者は昭和62年(1987年)の『防衛白書』執筆担当であった際、「国民と防衛」の章で各国の現状を比較する企画を行った。その結果、諸外国は憲法に「国防の義務」を明記しており、それを記述していない日本国憲...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    ペロシ米下院議長の訪台(8月2~3日)に伴い、台湾を威嚇する中国の軍事演習が実施されたが、中国が同時に行った非軍事面での「攻撃」にも注目すべきだ。軍事力と非軍事的手段を複合的に組み合わせた「ハイブリッド戦」への備えを我が国も加速させる必要がある。  まず2日夜、中国国営メディアは「人民解放軍空軍のSu35が台湾海峡を横断した」と報じた。こ...

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7月29日、ロシア国防省は8月末から9月初めにかけて極東地域で大規模な軍事演習を行うと発表した、NHKはその分析として「ウクライナへの軍事侵攻を続ける中、大規模な軍事演習を行うことで、十分な兵力があるとアピールする狙いがある」と報じている。同日の産経新聞は一面トップで「津軽海峡高まる緊張」とし、サブタイトルを「進む中露連携」とした。しかし筆者の見解は多少異なる。 高まるオホーツク海の戦略的意...

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7月13日に東京で行われた国基研日本研究賞関連行事で、受賞者エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ博士(ポーランド)の日本・ポーランド関係史に関する講演を拝聴した。講演では戦前におけるポーランド軍と旧日本軍の諜報協力について話があったが、2000年代初めのイラク復興支援におけるポーランド軍と自衛隊の協力関係については触れられなかったので、当時、防衛庁情報本部長であった筆者の体験を紹介したい。 「武装...

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ロシア海軍が黒海に敷設した機雷による海上封鎖により、ウクライナの穀物輸出ができなくなり、それによって引き起こされた世界的な食糧危機がロシア側の〝武器〟として使われている。 機雷は日露戦争の時代から使用され、日本海軍は機雷により、ロシア太平洋艦隊旗艦ペトロパブロフスクを撃沈し、座乗していた司令官で当時屈指の名将とされたマカロフ中将が死亡した。逆にロシアが敷設した機雷により、日本海軍も当時、保有...

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6月22日公示される参議院選挙に向け、各党の公約が出揃ったが、政権与党の安全保障に関する公約を見てみると、国民世論の動向よりも周回遅れのような気がする。岸田文雄総理大臣は16日、テレビ朝日の番組で「核共有」に関して慎重な姿勢を示すとともに、先月のNHK番組でも歴代政府の防衛政策である「専守防衛」を見直す考えがないことを改めて示したが、これも国民世論の動向からはかけ離れている。 「専守防衛見直...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    ケビン・メア元米国務省日本部長が自衛隊の国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」をロシアに侵略されたウクライナに供与するよう提案した。軍事的見地からと国際的な責務という観点から賛成したい。  6月半ば、ウクライナは英国とデンマークから供与されたばかりの米国製の対艦ミサイル、ハープーンで黒海のロシア海軍タグボートを破壊したと発表。米政府もウクライ...

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ロシアのウクライナ侵略や、最近の中国の海洋進出に関して「認知戦」と言う新しい概念が出回っている。認知戦とは、偽情報により相手の認知を誤った方向に導き、判断を狂わせる戦いの手法であるが、別に目新しい概念ではない。 2500年前の孫子の時代に、すでに「兵は詭道(騙す事)なり」として、その実例を「能なるもこれに不能を示し (能力があっても能力がないふりをし)」「用なるもこれに不用を示し(用いている...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    米政府は6月29日から8月4日まで行われる環太平洋合同演習(リムパック)の参加国をこのほど公表したが、この中に台湾は含まれていなかった。リムパックは米海軍主催で2年に一度実施されるもので、2022会計年度の米国防権限法は今年のリムパックに台湾を参加させるようバイデン政権に促していた。また、2020年に台湾の当時の厳徳発国防部長(国防相)も参...

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バイデン米大統領の今回の訪日に際し、米国が新たに提唱したインド太平洋経済枠組み(IPEF)へのASEAN諸国参加に関しては、米国より遙かに高いASEANの信頼度を得ている日本の役割が欠かせなかった。 24日に行われた日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」首脳会合の共同声明に記載された不審船探知などの海洋状況把握(Maritime Domain Awareness-MDA-)に関しても、これま...

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岸田文雄首相は23日、来日中のジョー・バイデン米大統領と首脳会談を行い、米国が核兵器と通常戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」の強化に向け、閣僚を含め緊密に協議することで一致した。だが首相は拡大抑止に関する信頼性について、さらに踏み込んで質すべきだったのではないか。 北朝鮮は、今回のバイデン大統領の日韓歴訪に際し、大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験と核実験を行う可能性があった。日本政府高官は...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    ウクライナ侵略後、ロシアが核兵器使用をほのめかして威嚇する中で、我が国においても核攻撃に対する不安から、米国との核共有や日本独自の核保有を検討すべきだとの議論が高まっている。そうした不安の一因はバイデン政権の政策にある。  まずウクライナがロシアに侵略された際の対応について、本来なら曖昧にしてロシアに侵略を躊躇ちゅうちょさせるべきところ、...

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連休中に自民党の小野寺五典安全保障調査会長と佐藤正久国防議連事務局長が米国に出張し、戦略国際研究所(CSIS)を始めとするシンクタンクで、年末までに取りまとめる予定の国家安全保障戦略等における「反撃能力」などについて説明した。報道によれば、出席者からは「日米の合同司令部がない中、どのように反撃を行うのかなど疑問点も多くある」との指摘がなされたという。 北大西洋条約機構(NATO)を始め米韓同...

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ウクライナを侵略したロシアは当初、5月9日の対独戦勝記念日までに一定の成果を挙げて国内的に戦勝ムードを祝う予定であったが、東部2州の完全制圧すらままならない状況である。如何にロシア軍の侵攻が拙劣であるかは、純軍事的観点から約20年前のイラク戦争と比較してみると良く判る。 拙劣さ目立つロシア軍 国土面積と人口で比較すると、ウクライナが60万平方キロメートル、4300万人であるのに対し、イ...

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自由民主党の安全保障調査会は4月26日、「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」を公表した。 長年、幹部自衛官として国家安全保障に携わって来た者として、今回のウクライナ戦争の教訓から、「提言」には多くの疑問点がある。 北は核ミサイル保有の可能性 3頁目の情勢認識(北朝鮮)では、短距離弾道ミサイルや核実験の再開に関する記述はあるものの、我が国を狙った核弾頭搭載の短距離弾道ミサ...

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政府の国家安全保障戦略などの改定に向けて、自民党の提言が21日まとまり、「敵基地攻撃能力」については、「反撃能力」に呼称変更したうえで保有することが盛り込まれたと報じられている。 「反撃能力」とは敵からの攻撃を受けて初めて攻撃に移れる能力である。厳密に言えば、敵が明らかに我が国を攻撃しようと企図していて、弾道ミサイル防衛では能力的に迎撃が難しいと分かっていても、敢えて敵からの攻撃がない限り行...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    財務省は4月20日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、自民党内で広がる防衛費増額論を「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」と牽制したと報じられている。  しかし、自衛官として国家の安全保障に任じてきた筆者としては逆に、国家の安全が保障されず今日のウクライナのような状況になれば、国民の生活や経済は...

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連日のようにウクライナ戦争において報道各社が報じ、コメンテーターが論評するのを聞いていて、軍事的常識の欠落を感じる。コメンテーターの多くは、ロシアやウクライナ・欧州の地域研究者であって、必ずしも軍事的な専門知識があるようには見えない。またNHK等の報道各社も、軍事的に見れば非常識である用語を平気で使用していることには驚かされる。これらは、戦後一貫して軍事問題を忌避し続けてきた日本社会の縮図とも言え...

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バイデン米大統領は3月28日、2023年会計年度(22年10月~23年9月)の優先施策を盛り込んだ予算教書と国家防衛戦略(National Defense Strategy-NDS-)及び核態勢報告(Nuclear Posture Review-NPR-)のファクトシート(概要書)を発表した。予算は最終的に議会の判断を待つことになるが、教書ではバイデン政権の取り組み方針が窺われる。 国防予算...

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何故、ウクライナでロシアは苦戦しているのか?これを『孫子の兵法』から立証してみたい。 「五事」で戦う前に勝敗判る 「兵は国の大事、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」の有名な言葉から始まる『孫子の兵法』の、次に書かれている「これを経はかるに五事を以ってし」の「五事」によって、戦う前からロシアが苦戦することが窺える。 「五事」とは「道」「天」「地」「将」「法」だ、と孫子は説...

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安倍晋三元総理が「核共有についての議論を喚起すべき」と先月末のテレビ番組で述べたところ、世論調査では約8割の人達が議論すべきとの意見であった。 しかるに自民党の安全保障調査会が今月15日に第1回目の会合を行ったものの、会合を取り仕切る幹事長代理は、会合はこれで打ち切る旨の発言をしたと報じられている。 非核三原則の見直し不可欠 会合では有識者が「陸上に核を配備すれば敵の格好のターゲ...

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北大西洋条約機構(NATO)の加盟国ではないウクライナに物理的な戦力は提供できないが、支援はしたい米国は、インテリジェンスの提供を始め、ウクライナはそれに基づいて善戦していると考えられる。そう判断する理由の一つは、20名しかいないロシア軍の将官中、既に5名がウクライナ軍の狙撃兵によって射殺されていることである。これは、おそらく米国が収集したロシア軍の通信傍受と暗号解読による分析情報(Signal ...

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ロシアのウクライナ侵略に関するテレビ番組で気になるのが、コメンテーターの言動やゲストへの「死者をこれ以上増やさないためにゼレンスキー大統領は降伏すべきではないか」とする質問である。かつて福田赳夫元総理は「人命は地球よりも重い」と言ってテロリストを世に放った。いわゆる「平和教育の賜物」であろうが、戦争における降伏は、特に相手が全体主義国家の場合、奴隷化あるいは敵の尖兵として使われることを意味する。そ...

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